メルコ管理会計研究
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11 巻, 1 号
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研究論文
  • 安藤 崇
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 11 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    環境マネジメント・コントロールとは環境戦略の実現や創造(創発・共創)のために,マネジャが他の組織構成員に影響を与えるビジネス・プロセスである。環境マネジメント・コントロールの最大の特徴は,推進プロセスの最終段階である「企業内外でのコミュニケーション」にある。本論文では企業外におけるコミュニケーション・プロセスのことを「外部環境マネジメント・コントロール」とよぶ。安藤(2017b)から外部環境マネジメント・コントロールの特徴的なプロセスを「①企業と外部主体のインタラクション→②オープン・イノベーション→③CSV(Creating Shared Value)」と確認した。本論文では次の段階として,外部環境マネジメント・コントロールの促進要因を明らかにすることを目的とする。筆者は3社の事例分析(日本コカ・コーラ,森永製菓,パナソニック)から(1)「守りのCSV」より「攻めのCSV」の要素が強いほど,(2)環境戦略の射程となる外部環境システムがハイレベル(高次元)になるほど,(3)コミュニケーションのストレスが強いほど,「漸進的イノベーション(Utterback 1994)」よりむしろ「急進的イノベーション(Utterback 1994)」を通じて,多様なCSVパフォーマンスの質的向上をもたらすことを明らかにした。

  • ―従業員の能力に対する主観評価―
    小笠原 亨
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 11 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    本稿では,日本の一部上場企業1社の人事データをもちいて,主観評価の決定要因について明らかにする。これまで主観評価に関する先行研究では,評価者が残余利益請求権者の立場にないため恣意的なものとなる可能性や認知バイアスによる評価の歪みなど,そのデメリットが強調されてきた。しかし,本稿では評価者は前年度の成果や昇進などの客観的な基準をもちいて主観評価を行う傾向があり,かつその影響力が十分に高いことを実証的に明らかにする。本稿における分析結果は,日本企業における主観評価が従業員の能力を反映する基準をもちいて評価しているという点において,適切に運営されていることを示唆している。

  • ―産業集積地域を対象とした質問票調査をもとに―
    山口 直也
    2019 年 11 巻 1 号 p. 29-42
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,我が国の中小企業における管理会計の導入状況を明らかにすることである。この目的を果たすため,調査対象を限定することによる研究成果の限界を認識しつつ,新潟県燕三条地域,東京都大田区,大阪府東大阪地域の3つの産業集積地域を対象として,郵送質問票調査を行った。全般的な導入状況を分析したところ,次の6つのことが明らかとなった。第1に,予算編成,業績評価(予算実績差異分析),損益測定,原価計算,原価管理,資金管理の導入状況については,損益測定と資金管理では約8割の企業が,原価計算では4社に3社程度が,原価管理,予算編成,業績評価では約5割の企業が導入していた。第2に,先行研究と比較すると,今回の調査の方が原価計算と予算管理では導入割合が高かった。第3に,会社の年数,規模,顧客の特徴,製品の特徴,経理体制といった会社の特性と,予算編成,業績評価,損益測定,原価計算,原価管理,資金管理の導入状況の関係性について,統計的に有意な関係性は認められなかった。第4に,予算編成,業績評価,損益測定,原価計算,原価管理,資金管理以外の管理会計手法では,「設備投資の経済性計算」,「バランスト・スコアカード」と「品質原価計算,品質コスト管理」について,10社以上が導入していた。第5に,見直しや導入が必要な管理会計分野があると考えている中小企業が相当数存在することを確認できた。第6に,予算編成に関して,導入状況(導入,未導入)と見直し・導入の必要性の有無との関係性について,統計的に有意差が認められた。

書評
事例研究
  • ―エブリイ社の事例―
    星野 優太
    原稿種別: 事例研究
    2019 年 11 巻 1 号 p. 45-58
    発行日: 2019/01/10
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル フリー

    本稿は,エブリイホーミイグループの中核企業であるエブリイ社にインタビューしてその特徴を分析し,成功要因と課題を提示したものである。エブリイホーミイグループは,食に関する総合プロデュースグループとして新しい企業価値を生み出すという壮大な理念のもとに様々な事業を展開してきた会社である。

     エブリイホーミイグループの成功の要因は,11のグループ企業が一つのホールディングス体制のもとに多様な業態の理念と戦略を共有し,中核のスーパーについて次々と新たな店舗を開拓しつつ,新しいビジネスモデルを打ち出してきたことにある。しかも,それぞれの店舗は選択と集中により地域で一番を目指すという戦略,基幹店である緑町店などは産直売り場を思い切って3倍にするという圧倒的な集客力を実現する戦略等,ユニークな経営をおこなったところにその特徴がある。

     とくにエブリイの優れた点を挙げると,一つは,独自のビジネス・マインドを持って経営をしていること,もう一つは,ミッションとメッセージを通じて有為な人財を育てていること,さらに付け加えれば,時流をいち早く読んで,その時代にタイミング良く新しいビジネスモデルに基づく店舗を開設していることにある。

     そうしたエブリイのユニークな経営と新たなビジネスモデルの成功の要因について,実際の比率分析からその証拠を見出してみようというのが,本事例研究の狙いである。最後に,まとめとエブリイの今後の課題を提示している。

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