ネットワークポリマー
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特集号: ネットワークポリマー
36 巻, 5 号
エポキシ樹脂の新展開
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 大山 俊幸
    2015 年36 巻5 号 p. 211-222
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    ラジカル重合可能な改質剤ポリマーをモノマーの状態でエポキシ樹脂に添加・溶解し,エポキシ樹脂の硬化と並行して改質剤モノマーのラジカル重合を行うことによって硬化物の強靭化を達成する「in situ 重合法」について,最近の研究成果を紹介する。In situ 重合法では,硬化樹脂内における改質剤の分散性が大幅に向上し,その結果として硬化物の強度低下等を抑制しつつ強靭化することが可能となる。また,改質剤添加時の未硬化樹脂の粘度低下や,改質剤ポリマーを別途合成し準備しておく必要がないこともin situ 重合法の利点である。高耐熱性ビニルポリマーであるN- フェニルマレイミド-スチレン共重合体(PMS)などのin situ 生成により,酸無水物硬化,アミン硬化,およびフェノール硬化エポキシ樹脂の強靭化が可能であり,さらにカチオン重合硬化脂環式エポキシ樹脂についてもin situ 重合法が適用可能であることが示された。また本稿では,エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(ベンゾオキサジンおよびシアナート樹脂)へのin situ 重合法の適用による樹脂硬化物の強靭化についても簡単に紹介する。
  • 竹澤 由高
    2015 年36 巻5 号 p. 223-231
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    エポキシ樹脂等の絶縁性ネットワークポリマーの熱伝導率を高めるためには,繰り返し単位内にメソゲン骨格を導入してフォノン散乱を抑制する高次構造制御の手法と,ネットワーク内の橋かけ密度を増やしフォノン伝導を向上させる手法がある。前者の方が熱伝導率向上効果は大きいが,両者の組合せが最も有効である。さらに,コンポジット化するとメソゲンエポキシ樹脂特有のフィラー表面に形成されるフォーカルコニックドメイン(高熱伝導領域)の効果でベース樹脂の見掛けの熱伝導率が1.4 倍程度向上することが確認された。このコンセプトに基づいて,窒化ホウ素フィラーをランダムに高充填した構造にすると,厚さ方向の熱伝導率が41 W/(m・K)とアルミナを超える高い熱伝導率を示した。また,空間的に拘束されていないワニス状態からメソゲンエポキシ樹脂の球晶構造を形成させると,そのフィルム状硬化物は1.2 W/(m・K)とガラス並みの高い熱伝導率を示した。
  • 玉祖 健一, 松本 幸三, 遠藤 剛
    2015 年36 巻5 号 p. 232-238
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    火災リスクの低減のため,高分子材料には難燃性が求められている。エポキシ樹脂においても難燃性が求められており,一般にテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)が難燃剤として使用されている。しかし,ハロゲンを含む難燃剤の使用は焼却時にハロゲン化ダイオキシンが発生する懸念があるため,TBBPA を代替できるハロゲンフリー難燃剤が求められている。ハロゲンフリー難燃剤として金属水酸化物や窒素含有化合物などが研究されているが,中でも,リン含有化合物は最も盛んに研究がおこなわれており,実際に難燃剤として工業的にも利用されている。本稿では,エポキシ樹脂で使用されている難燃剤の中でも特にリン系難燃剤に着目し,市販されている難燃剤から最近の研究例,リン系難燃剤による難燃化の機構に関する知見を解説する。
  • 岸 肇
    2015 年36 巻5 号 p. 239-245
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    化学架橋のゆえ解体性や再利用性に制限があるエポキシ樹脂について,高い信頼性を維持しつつ必要に応じた分解・除去・再賦形を可能とするための分子設計や組成設計を目指した精力的な検討が行われるようになった。 共有結合の化学分解・熱分解によるリワーク型エポキシ樹脂,加熱膨張剤添加とネットワークポリマーの粘弾性制御を併用した解体性エポキシ接着剤,溶剤溶解性を活用した解体性エポキシポリマーブレンド,イオン伝導性を付与した通電はく離型エポキシ接着剤,熱可塑性エポキシ樹脂について解説する。
  • 吉田 顕二
    2015 年36 巻5 号 p. 246-254
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    半導体封止用エポキシ樹脂成形材料は,機械的外力,湿度,熱,紫外線などから半導体素子を保護する目的で使用されており,半導体パッケージの薄型化,小型化,高密度化に伴い高性能化,高機能化が行われてきた。また近年では,世界的な環境保護への意識の高まりから,環境対応や省エネルギー対応が要求されている。本稿では,半導体封止用エポキシ樹脂材料の概要を,次いで半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の難燃化,高耐熱化の取り組みについて解説する。
総合論文
  • 有田 和郎
    2015 年36 巻5 号 p. 255-264
    発行日: 2015/09/20
    公開日: 2015/11/28
    ジャーナル フリー
    物理的耐熱性に関して,エポキシ基濃度が異なる各種アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂と,平均エポキシ基数の異なるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いて架橋密度と諸物性の関係を明かにし,それぞれを比較することで,エポキシ基濃度およびエポキシ基数がガラス転移温度や,その他の重要特性におよぼす影響をそれぞれ分離して定量的に解析した結果を紹介した。一方,化学的耐熱性に関しては,市販のさまざまな構造のエポキシ樹脂を用いて検証した結果を紹介した。架橋密度を高める手法では,他の機能目標が相反関係となることが明らかとなり,そのメカニズムを先人の理論を用いて解説した。更に架橋密度の増強手法ではなく,新たな分子設計技術の開発の必要性を示し,特殊骨格導入による開発事例を示した。
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