ネットワークポリマー
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特集号: ネットワークポリマー
33 巻, 5 号
ゴムとネットワークポリマー
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
解説
  • 伊藤 眞義
    2012 年33 巻5 号 p. 235-241
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
    (フィラー)を混合したポリマーナノコンポジットである。この材料の大きな特徴は,高分子物質を液体状態で使用することであり,これによりゴムの基本特性であるエントロピー弾性を発現させることができる。ゴム材料が液体状態で可逆的な変形を行うためには,変形によって分子鎖同士の相対的位置関係が変化しないようにする必要がある。このため,ゴム材料には分子鎖同士を部分的につなぐ架橋構造が導入され,その構造は硫黄架橋や過酸化物架橋のように化学結合で形成されている場合と,分子鎖の凝集構造制御を利用したハード相(たとえば結晶相)による物理結合で形成される場合がある。フィラーゲル相は,生ゴムとフィラー間の相互作用によって形成される。この相互作用はフィラーと生ゴムの種類に依存する。相互作用が小さい場合,フィラー配合によりゴム材料の弾性率は増加するものの,フィラーゲル相はほとんど形成されず,強度の増加も小さい。相互作用の増加に伴い強度が増加するとともにフィラーゲルが出現する。このことは, フィラーゲルがゴム材料の強度に深く関与していることを示している。フィラーゲルの構造と量は,フィラー種および生ゴムの化学構造と分子量に依存する。ここでは,フィラー種としてカーボンブラックとシリカを取り上げ,これらと種々の生ゴムとの組み合わせで発現するフィラーゲルについて紹介する。
総説
  • 平田 靖
    2012 年33 巻5 号 p. 242-249
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
    低燃費タイヤは,汎用タイヤ対比一本当たり約57kg のCO2 削減が可能となる。CO2 削減に有効な低燃費タイヤの進歩を支える代表的な技術としてシリカ配合がある。シリカ配合の特長は,背反性能である「転がり抵抗」と「ウェットスキッド抵抗」の両方を改良できることである。その特長を発揮するためには,シリカを充分に分散させる必要があり,さまざまな方法が開発されてきた。一般的に使用されるシランカップリング剤に加えて,更なる分散や補強の改良を目指した分散改良剤やシリカ用ポリマーの分子設計が行われ,大幅な改良効果が達成されている。一方,近年発達著しい分析技術と計算科学の導入によるナノスケールでの構造解析や物性予測技術も進んでおり,ナノスケールでの階層構造の定量化やエネルギーロスの発生機構が解明されつつある。このようなシリカ配合用原材料の分子設計とナノ解析技術を活用して,「転がり抵抗」と「ウェットグリップ性能」を最高レベルで両立化させたタイヤが開発され,すでに市販されている。
  • 白井 博史, 松田 孝昭
    2012 年33 巻5 号 p. 250-258
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
    省資源・省エネルギーの見地から,自動車タイヤに要求される重要な性能として省燃費性が大きくクローズアップされている。自動車の走行抵抗に大きく寄与するのはタイヤの転がり抵抗であり,この転がり抵抗を低減する技術開発が活発に行われており,多くの新しい素材が提案されている。シリカ配合タイヤは,省燃費性とウェットグリップのバランスを飛躍的に向上できることから,近年,タイヤトレッドにシリカを配合したエコタイヤの普及が目覚ましい。しかしながら,シリカは表面シラノール基の水素結合による凝集でカーボンブラックと比較して分散しにくいという問題がある。アニオン重合を利用した溶液重合スチレン・ブタジエン共重合体(S-SBR)は,タイヤの転がり抵抗を低減できる材料としてシリカタイヤトレッドに多用されており,更に官能基を導入した変性SBR を用いることで,シリカの分散性を改良しシリカタイヤの性能を向上させることが可能となった。 本報では,アニオン重合技術を活用した末端変性SBR,両末端変性SBR,マルチファンクショナルSBR の最近の変性技術について述べた。
  • 河原 成元, Chaikumpollert Oraphin, 山本 祥正
    2012 年33 巻5 号 p. 259-266
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
    架橋点は加硫ゴムの物性を支配する重要な因子の一つである。架橋点の構造を精緻に解析するためには,加硫ゴムが重溶媒に溶解しないことを考慮し,固体NMR 法による実証的構造解析法を開発する必要がある。そこで,固体NMR 法による加硫天然ゴムの架橋点の構造解析について過去30 年間の研究成果を概観する。まず,加硫機構に基づく推定構造および推定計算法により求めた化学シフトの値を用いた13C-NMR スペクトルのシグナルの帰属とその問題点を述べる。次に,最新の技術を駆使して開発された磁場勾配高速マジック核回転プローブを用いた固体NMR 法による1H および13C シグナルの実証的構造解析の成果を詳述する。最後に,帰属したシグナルと加硫ゴムの物性との関係および加硫機構に関して考察を行う。以上より,磁場勾配高速マジック核回転固体NMR 法の開発により創成された加硫天然ゴムの架橋点の構造と物性に関する研究分野の現状把握を図る。
  • 加藤 淳, 池田 裕子
    2012 年33 巻5 号 p. 267-280
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
    コンピュータートモグラフィーを結合させた透過型電子顕微鏡(以下,3D-TEM と略記,電子トモグラフィーとも呼称)を用いることにより,ゴムマトリクス中のナノフィラー凝集体の三次元(3D)像を再構築することができる。天然ゴム(NR)中のカーボンブラック(CB)とシリカの分散に関する3D-TEM 観察結果を示した。 CB 凝集体がさらに凝集して形成されたネットワーク構造を,その3D 像と加硫ゴムの物性とを組み合わせて解明した。一方,光透過性とフィラー充てん量との関係に関しては,疎水性シリカと親水性シリカを充てんした架橋天然ゴム(NR)で顕著に異なることを示した。疎水性シリカ充てん量が増加しても,前者のNR の光透過性はほとんど変化しなかった。これに対して,後者のNR では,光学異常が発生した。すなわち,親水性シリカの充てん量の増加に伴い,最初は光透過性は減少するが,再び,光透過性は増加した。そこで,3D-TEM を用いて,シリカネットワークを解析した。その結果から,その孤立鎖の長さの二乗と,その密度の積を用いた多重光散乱の式を提案,その式により,二種のシリカ充てんNR の光透過性の相違を明らかにした。
  • 鮎田 梓
    2012 年33 巻5 号 p. 281-288
    発行日: 2012/09/10
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
    ゴム製品は,硫黄等の加硫剤を用いて架橋する代表的なネットワークポリマーである。そのゴム製品に,同じネットワークポリマーであるフェノール樹脂を配合して補強する手法は古くから知られており,ゴム物性向上に大きな役割を担ってきた。フェノール樹脂と硬化剤(ヘキサメチレンテトラミン,等)をゴムに配合して,ゴムの加硫工程中にフェノール樹脂を硬化させ,ゴムの加硫によるネットワーク構造に加えてフェノール樹脂のネットワーク構造を形成することで,ゴム製品の硬度,弾性率,強度,等の諸物性が向上する。このため,ゴムとフェノール樹脂の相溶性,分散,ネットワーク構造を議論する事は重要である。本稿では,ゴム製品の主要な用途である自動車用タイヤでのフェノール樹脂によるゴム補強について総説した。タイヤの要求特性に対して,最近のフェノール樹脂および硬化剤等の周辺技術の開発状況と,フェノール樹脂によるゴム補強メカニズムの解明への取り組み,ネットワークポリマーの今後の課題の一つであるリサイクル技術,今後の技術開発動向について解説する。
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