日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 市原 靖子, 後町 みどり
    セッションID: 2E11
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 2年前より特別養護老人ホームの常勤PTとして関わっている。現場で介護職員の過剰介護を目に当たりにし、機能低下が作られていることを感じた。その上、機能訓練指導員の基準である「1対100」では、対象数の多さに1対1での訓練による全利用者の機能向上は難しいと考えた。そこで、当施設のリハビリの方向性を「リハビリ専門職(以下リハ職員)による1対1での訓練をいかに多くの利用者に提供するか」から「ADL内で利用者にいかに多くの能力を発揮してもらう機会を増やすか」に方向転換することで機能向上を目指すことにした。そのためには、日頃介助に当たる介護職員の協力が不可欠である。介護職員にも機能向上を意識してケア・訓練を実施してもらうための、取り組みを行った。その機能向上効果について報告する。 <方法> 当施設における常勤OTが1対1で定期的な訓練を中心とし取り組んだ平成15-16年度の2年間(以下A群)と、以下_丸1_~_丸3_の活動を実施した平成17-18年度の2年間(以下B群)を比較した。 _丸1_PT評価によるADLの動作分析と、介護職員の行うアセスメントを比較・議論することで、介助方法の見直しとADLの問題点を介護職員に情報提供・共有した。 _丸2__丸1_で明確となった問題点に対し、リハビリテーション計画をPTが作成するだけでなく、ケアの基本となるケアプラン作成にPTが関与し、介護職員が主となり問題解決と機能向上に向けたプランを実施した。プラン実施方法の統一は、PTから介護職員へ個別指導することにより対応した。 _丸3_更に定期的にケアプラン実施状況の確認と実施による効果判定をPT・介護職員が議論することで、プラン内容の変更・充実を図り、確実に実施できるようにした。 <結果> 全利用者に対するリハ職員が行う1対1の訓練の割合は、A群では83%、B群は15%と減少した。全利用者に対する機能向上を視点としたケアプランの割合はA群で31%、B群で85%と増加した。その結果、介護度の軽度化は、A群で2%、B群で11%と増加した。逆に重度化は、A群で22%、B群で16%と減少した。PTの1対1の訓練にかかる時間は減ったものの、介護職員のケアを支援していく時間が増えたことで、生活内に機能向上の視点を導入でき、実際に利用者の機能向上が図られた。 <考察> 利用者の機能向上へつながった理由は、機能向上の視点がPTのみの問題に留まることなく、介護士がケアの問題として捕らえられ、ケアの視点が大きく変わったことにあると考えた。施設での利用者の身体機能の向上は、利用者に関わる時間の多さから介護士の提供するケアの質に委ねられている所が大きい。2年経過した現在、介護職員自ら利用者のできることを見つけようとする姿を目にする。これからは、利用者のできる機能を介護職員が見極め、それを生かす介助方法を身につけるための援助もリハ職員の大きな役割と考える。 <まとめ>  介護職員中心でのケア・訓練でも、PTの関わり方により利用者の機能向上を図ることができた。
  • 鈴木 直光, 太田 哲也
    セッションID: 2E12
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【目的】近年の肥満児増加に伴い、その改善と予防のため当科では一昨年より夏季休暇を利用して学童肥満児のリハビリ入院を行っている。肥満は子どもたちにとり、身体的、精神的負担をもたらしている。外来診療だけではキャンセルやドロップアウトのケースが多く、どうしても細かな指導が行えなかった。そこで、各種肥満のスクリーニング検査、運動リハビリ、親子の栄養相談、早起き早寝など生活習慣の見直し等を一括して行い、同世代との集団生活の中で実践するために3泊4日の合宿形式の入院を試みた。【対象】学校健診や外来通院中に肥満を指摘された患児で、平成17年度は3名(男1、年齢6-11歳)、平成18年度は4名(男2、)の計7名である。診断は単純性肥満6例、2型糖尿病1例で、肥満度は17-72%(平均41%)である。【リハビリ内容】1.食事療法:低カロリー食(標準栄養所要量の80%)、栄養相談。2.運動療法:消費エネルギーを200Calに設定し、リハビリ室内外で理学・作業療法士の指導の下に自転車こぎや縄跳びなど行った。3.生活指導:規則正しい生活(早起き早寝、TV2時間以内)、食事の食べ方(よく噛み、時間をかけて楽しく食べる)、体を動かす(お手伝い、階段を使う、朝のラジオ体操)、生活改善のためのミニレクチャーなど。【症例1】7歳女児。肥満度47.5%。野菜嫌いで、スナック菓子やアイス等をお小遣いで自由に購入して食べていた。母親も肥満。腹部エコー上脂肪肝あり、尿酸7.0と軽度の上昇を認めた。食事療法1400Cal、運動療法200Calで行い、嫌いな野菜も食べられるようになった。【症例2】12歳男児。肥満度72%。スナック菓子を大袋で食べていた。母親も肥満。AST/ALT=44/109, UA11.1, 腹部エコー上脂肪肝あり。脳波上睡眠時無呼吸なし。食事療法1800Cal、運動療法200Calで行い、運動に対しては消極的であったが、間食はなくなり食事療法は守れた。【考察】今回の入院における成果として、1.食生活や運動など生活習慣の乱れを自覚したこと、2.肥満について学んだこと、3.実践可能な生活習慣を体験したことが挙げられる。また今後の方針としては、よい生活習慣をいかに継続するかが最大のポイントである。そのためには、定期的な外来受診を継続させて本人および家族の意識を改革することが重要である。同時にリバウンドのやせすぎにも注意を払う必要がある。今後はさらに先輩の経験談話やピアカウンセリングも導入していきたい。
  • 對馬 夏子, 在原 由佳, 飯居 サト子, 北 和枝, 西向 留美子
    セッションID: 2E13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【緒言】
      厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を策定しているが、対象は事業所に勤務する労働者のみであった。当ドックの受診者は、壮年期の男女が全体の70%、農業従事者が30%を占めており、受診者との日々の関わりの中で保健師がストレスへの介入の難しさを感じている。今回、壮年期の農業従事者を対象にアンケート調査し、今後の支援に繋がる結果が得られたので報告する。
    【対象・方法】
    当ドックを受診した40歳~59歳の男女各100名にストレスの実態と保健師に期待する役割についてアンケートを実施。
    【結果・考察】
     ストレスを抱えている人の割合は、男性33%・女性39.5%であり、女性の方がストレスを抱えている割合が高かった。
     メンタルヘルスに関心がある人は男性27.3%・女性38.4%だった。その中でストレスを抱えている人は、男性58.3%・女性57.6%で、半数以上がメンタルヘルスに関心があった。
    ストレスの内容については、男女共に「家族との関係」が最も多かった。背景として仕事も家庭も常に家族と生活を共にすることで家族以外の人と話す機会が少なく気分転換を図りにくいこと、互いの状況をよく知っている為に素直に意見を言うことが困難になっていることと推察する。また少数ではあるが、「農協や地域での役職について」「共同経営で人間関係に気を遣う」等、農家特有の意見もあった。更に女性では、「夫が農協や地域の役職を受けた」との解答もあり、労働力の負担が増すこと等から本人だけではなく、家族全体に影響を及ぼすことが農家の特徴と言える。
    対処法については表の示す様に、男性では「スポーツ」が1位であり、これはストレス対処法及び健康管理において望ましいと言われている。生活習慣病の予防を担う保健師として、健康教育等を活用しスポーツへの参加を多くの受診者に普及することは重要な役割である。2位以降に、男性では「お酒」「たばこ」女性では「食べる」ことがあげられているが、過度な飲食やたばこは、生活習慣病への影響を考えると適切な対処法とは推奨できない。これらの調査結果を活用し、個々の受診者に合った対処法を共に考えていく必要がある。
     保健師に相談を望む割合は、男性49%・女性34.9%だった。期待する役割としては男女共に「話を聴いて欲しい」が最も多かった。よって、まず受診者に接する場では、受診者が話したいことを話せるような雰囲気づくりを心がけていくことが大切な役割と考える。
    【結語】
    _丸1_農業従事者では、ストレスを抱えている人の半数以上はメンタルヘルスに関心があり、ストレスの内容は「家族との関係」が多い。
    _丸2_農家では、一人が農協や地域での役職を受ける等の変化があることで、家族全体に影響を及ぼす。
    _丸3_保健師の役割は、スポーツへの参加を呼びかける健康教育に加え、個々の受診者に合ったストレス対処法を考えると共に、ストレス等受診者の話したいことを傾聴することである。
  • 石崎 勝義, 中川 直子, 大瀧 雅寛, 椎貝 達夫
    セッションID: 2E14
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈目的〉コンポストトイレは,多孔性物質(おが屑など)を用いて,投入屎尿を堆肥化する.北欧を中心に普及が始まっているが,わが国でも山岳・公園・工事現場・介護用トイレなどで利用されている.将来は湖沼・内湾・地下水などの水環境保全の観点から水洗トイレに代わる次世代のトイレとして期待されている.
    しかしコンポストトイレは水洗トイレと異なり,排泄物を生活環境内にとどめておくため,病原微生物による二次感染について懸念する人もいる.
    そこで本研究では,コンポストトイレの衛生学的安全性を調べることを目的とし,従来の水系病原微生物のリスク評価をコンポストトイレに適用して病原微生物における感染リスク評価を行った.

    〈方法〉まず,モデル細菌やモデルウイルスである大腸菌ファージを用いて温度,含水率によって不活化係数がどのように変化するかを調べた.コンポストトイレの担体に4種類のモデル微生物,モデルウィルスを投入して経時変化を観察した. この実験では,担体として実際にコンポストトイレで使用したおがくずを用い,これに微生物を投入した.担体の温度を35℃,40℃,45℃,50℃に保ち,抽出法により担体中の微生物濃度を一定間隔で連続的に測定し,微生物濃度変化を調べた.
    さらに,病原微生物のコンポスト型トイレ内での消長を予測するために,不活化係数の温度と含水率によるモデル化を行った.そして,コンポストトイレの取り出し口に現れる病原微生物数をシミュレーションし,コンポストを取り出す際に病原微生物に曝露するリスクを算出した.

    〈結果〉病原微生物の二次感染リスク計算結果を図 2に示す.実験結果より,病原細菌よりも病原ウイルスの方が問題であると考えられたが,病原ウイルスでも,ロタウイルス,エンテロウイルス共に,二次感染リスクはほとんど0(MSエクセル2003計算限界値2.229×10-408以下)である.これはコンポスト型トイレ容量が大きいこと,攪拌スピードがゆっくりしていてコンポストトイレ内での滞留時間が長いため,病原ウイルスが充分に不活化されたことなどが要因として挙げられる.
    このように,環境保全のためにも今後期待されているコンポストトイレの衛生学的安全性は,コンポストトイレが正常動作していればほぼ安全であるということが示された.

    〈参考文献〉Nakagawa N., M. Otaki, H.Oe ,2006, Application of microbial risk assessment on a residentially-operated Bio-toilet, Journal of Water and Health, 4,479-486.
  • 長谷川 伴子, 小野塚 育子, 上村 美知子, 藤田 智恵美, 久保田 文雄, 山本 麻理子
    セッションID: 2E15
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    <緒言>近年、健康を害するという理由から、禁煙の推進がさけばれ、日本はもとより世界に及んでいる 日本看護協会は2001年に「たばこ対策宣言」を行い、看護職のたばこ対策に取り組んできた。医療従事者として喫煙の危険性・禁煙の重要性を自覚するとともに患者・対象者への教育指導が看護職の責務となっているからである。当院においても2004年に看護部を中心として、院内に禁煙対策委員会が発足した。アンケートにより職員の喫煙の実態調査を行い、院内禁煙・ポスター掲示・研修会等で禁煙の啓蒙に取り組んできた。そこで、その後2年が経過し、職員の禁煙・喫煙の現状を知り、師長として院内禁煙対策推進委員会と連携して組織でどのように活動すべきか今後の課題としてまとめた。 <方法>2年前にアンケートを行った職員に(退職・転勤・入職者を除く)アンケート調査を実施。 <結果>調査対象者188名中187名の回答で回収率99.5%となった。 現在の喫煙者数は57名、吸っていない職員は116名、そしてこの2年間に禁煙できた職員も9名いたことがわかった。禁煙には挑戦したという職員も19名、それ以上に最初から禁煙などする気が無い人も多くいた現状にあった。禁煙できた職員の中には、研修会参加により喫煙の危険性を感じたり、喫煙場所がなくなったこと、たばこの値上がり、体調不良や家族の為など現実的な理由が上げられており、反対に禁煙できなかった人はイライラするなど精神的な慰安を得る目的になっていた。  健康を預かる病院職員として、喫煙することをどう思うかという質問の回答では、 _丸1_ マナーを守って人に迷惑を掛けなければ吸っても良い(18名) _丸2_ 吸うべきでない(49名) _丸3_ 個人の自由(30名) の3つに分けることができた。 <今後の課題>喫煙の有無に関わらず、個人の自由と答えている職員や、喫煙者でも、吸うべきでない(良くない)と知りながら、精神的慰安を得る為吸っている人がいる。その中には、きっかけがあれば止めたいと考えている人も少なくない。これらを踏まえ、今後、研修会などの啓蒙活動を継続していく必要がある。
  • 井坂 茂夫, 湯浅 譲治, 大貫 新太郎, 塩見 興, 秋間 秀一
    セッションID: 2E16
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    前立腺癌は米国男性では癌の罹患率第一位、死亡原因としては第二位となっており、本邦でも増加率が一位で、その克服は高齢男性の健康維持のために重要な課題となっている。PSAを指標とした早期診断が可能となってきており、スクリーニングの試みが広く行われるようになってきた。人口5万4千人の幸手市では平成15年度から住民検診にPSAを採用してきたので、その成果について報告する。 【目的】前立腺癌の早期診断、早期治療を目指し行政と医師会が協力体制を構築しPSA検診を実施した。 【方法】埼玉県幸手市では前立腺研究財団からの助成を受け、平成15年度よりPSA検診を開始し、17年度まで助成は継続された。PSA検診の開始にあたっては専門医グループが働きかけて、関連市職員の勉強会、医師会での講演会など準備段階を経て、住民検診に50歳以上男性のPSA検査が導入された。初年度は試行的意味合いもあり、集団検診を除外して個別検診のみに無料でPSA検査が導入された。二年目は個別、集団両検診に無料で、三年目は両検診に一部自己負担(500円)で実施された。二次検診体制を幸手総合病院、済生会栗橋病院、牛村病院の3施設で組織した。PSAが4ng/ml以上の場合、2次検診施設を受診するように勧奨し、2次検診としては、直腸指診、経直腸エコー、エコーガイド下多部位前立腺生検を行うことを原則とした。検診の実施、報告、集計に際しては個人情報の保護に努めた。 【結果】3年間で2461名がPSA検診を受診した。年代別の内訳は、40代25名、50代561名、60代1304名、70代527名、80代40名、90代2名であった。15年度338名が1次検診を受診し、25名(7.4%)が要精検であり、うち12名(3.5%)が2次検診を受診し、7名(2.1%)に前立腺癌が発見された。16年度は1068名が受診し、83名(7.7%)が要精検であり、65名(6.1%)が2次検診を受診し、18名(1.7%)に癌が発見された。17年度は1055名が受診し、58名(5.5%)が要精検であり、35名(3.3%)が2次検診を受診し、7名(0.66%)に癌が発見された。3年間を集計すると2461名が1次検診を受診し、166名(6.7%)が要精検であり、112名(4.6%)が2次検診を受診し、32名(1.3%)に癌が発見された。がん症例の特徴を解析すると、年齢階層分布では60代後半と70代前半に多く、PSA分布では10ng/ml未満が13例、10から20が8例、20から50が7例、50ng/ml以上が4例であった。生検病理所見のグリソン・スコアは6以下が16例、7が8例、8以上が8例であった。臨床病期はB0:8例、B1:17例、B2:4例、C:2例であった。殆どが早期癌として根治的治療を受けることができた。 【結論】PSA検診により前立腺早期癌の発見率が向上し、地域住民の前立腺癌に対する認識が深まった。
  • 桐原 優子, 林 雅人, 秋田県農村医学会共同研究班 班員
    セッションID: 2E17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>平成15年に健康増進法が施行され、日本医療機能評価機構により認定される良い病院の認定条件に「全館禁煙」が加えられた。禁煙について全国的に意識が高まっている現在、医療に携わる厚生連職員の喫煙の実態を探ることを目的として研究を行った。
    <対象および方法>対象は秋田県厚生連職員男性867名・女性3,408名、計4,275名とし、喫煙に関するアンケート調査を行った。
    <結果及び考察>対象背景を年代別にみると男性は50代、女性は40代が最も多くを占めており、各々30.1%・30.4%であった。職種別では男性は医局が29.1%と最も多く、次いで事務が23.6%で、女性は看護部が74.5%を占めていた。健康増進法第25条「受動喫煙防止のための措置」を知っている人は男性の30代が52.8%と最も低かった。次に20代は男女とも57.8%と知っている人は少ないという結果であった。日本医療機能評価機構により認定されるよい病院の認定条件に「全館禁煙」が加えられたことについて知っている人も男性の20・30代で各々44.1%・47.8%と低い状況であった。喫煙状況は現在喫煙男性43.5%・女性16.2%、以前喫煙各々23.3%・7.5%、非喫煙各々33.2%・76.2%であった。年代別にみると現在喫煙者は男性30代で50.8%と最も多く、年代とともにやめている人が増えていた。女性は20~40代で17~19%の人が吸っていた。職種別には男女とも看護部が男性68.7%・女性19.3%と最も多く、次いで栄養科であった。朝起きてから吸い始めまでの時間をみると、本数を多く吸う人ほど吸い始めの時間が早いという結果であった。吸い始めの時間が早いほどタバコの依存性が強いといわれているが、今回も同様の結果がみられた。どんな時に吸いたいと思うかについては男女とも飲酒時・食後・ストレスを感じた時が多く、特に女性はストレスを感じた時の割合が多くを占めていた。看護師の喫煙率が高いのは仕事上のストレスとの関係が強いと思われるため、その対策を工夫することは重要である。吸う時は家の人や他人が気になるかについては、男女とも各年代で8割前後が気にしながら吸っていた。たばこをやめた人にやめたきっかけや理由を聞くと、最も多いのが男性は健康のためが40.7%・女性は妊娠.出産が27.4%であり、次いで男性は病気、女性は健康のためが多かった。たばこをやめてよかった点については男女とも咳や痰が減った・食事がおいしくなったと答えた人が多かった。現在吸っている人に今まで禁煙を試みたことがあるか聞いてみると男女とも半数の人があると答えていた。禁煙を試みようと思っているかについて男性は各年代64.0%~74.0%、女性は20代以下で81.0%と最も多く他の年代は57.0%~66.0%の人がやめようと思っていることがわかった。今後タバコに関する取組に参加するかについては「是非したい」と「ややしたい」を合わせても男性は23.6%~28.6%、女性は15.6%~24.6%と少なかった。
    <まとめ>病院は医療を扱った専門職の業種であり、一般の人よりも率先して禁煙に取り組むべき立場にある。今後は禁煙に向けての周辺の環境づくりや失敗しない方法を工夫していかなければならない。
  • 小林 加代子, 杉山 和久, 岡本 歩, 鎌倉 真理子, 武山 直治
    セッションID: 2E18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉大腸がん検診の精検方法として全大腸内視鏡検査(以下CS)を第一選択とすることが推奨されているが、当農村検診センターの平成17年度集計では注腸X線検査(以下注腸)の方がCSよりも多く実施されていた。また飛騨地域においても大腸がん死亡が近年増加傾向にあることからも大腸がん検診の検討が必要と考えられた。検診効果を高めるためには検診に携わる地域の関係機関が連携しなければならない。そこで大腸がん検診検討会を開催し、飛騨地域の現状を分析し、今後の方向性を検討したので報告する。 〈方法〉開催日:平成18年11月24日  参加機関:飛騨保健所、高山市保健センター、精検医療機関(当院を含めた4施設) 内容:1)飛騨地域の大腸がん登録・死亡状況、2)検診実績及び精検方法の分析(CS・注腸をそれぞれ第一選択で実施した場合のがん発見割合と病期の割合(H13~17))3)検診と精検受診勧奨の方法について各機関が発表し意見交換を行った。 〈結果〉1.大腸がん登録・死亡状況の分析:表1より飛騨地域の大腸がん死亡率は全国と比較して高く、特に女性は最近の死亡率が2倍に増えていた。検診実績は表2のように精検受診率・癌発見率とも全国とほぼ同じである。しかし精検受診率が70%台と低いことが検診効果の上がらない一因と考えられた。大腸がん罹患率は増加していることを認識し、地域住民に対し、正しい知識の普及に努める必要性を認識した。2.精検方法の分析:H17年度の精検方法は注腸 (38.2%)、CS (33%)で注腸の方が多く実施されていた。精検方法によるがん発見割合は、CS(7.3%)、注腸(1.8%)でCSの方が高い結果であった。精検方法による発見がんの分析では図1のように第一選択でCSを実施した場合は、ステージ0・Iの発見割合が約80%に対し、注腸は約55%。IIIa以上はCSで4%に対し注腸は30%であった。注腸では小さい所見を見逃す可能性があり、進行の早い陥凹型大腸癌は発見できない。このことから第一選択として注腸を続けることは危険との意見が出された。しかし、開業医など精検機関によっては、医師不足や検査科の体制によりCSを積極的に実施できないとの意見も出された。飛騨地域は人的資源が少ないため、精検機関が互いに交流を深め、精検としてのCSを少しでも多く実施できるよう努力する必要性を認識した。 〈まとめ〉この検討会により各機関が問題を共有でき連携の必要性を認識することができた。この会を継続し有効な検診実施に向けて取り組みたい。
  • 小澤 正実, 渡辺 敏成, 橋本 隆, 児玉 吉彦, 山本 満, 北川 美明, 児玉 美鈴, 水野 伸一, 玉内 登志雄
    セッションID: 2E19
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉現在、わが国における乳がんは罹患数(率)および死亡数が増加傾向にある。2004年より40歳以上の全女性を対象としてマンモグラフィ(以下、MMG)(40歳以上50歳未満はMLOとCCの2方向撮影、50歳以上はMLOの1方向撮影)と視触診との同時併用方式で2年に1回実施することになった(2004.4.27 厚生労働省老人保健課長通達)。MMGは、乳がん検診の最も標準的で診断能に優れた有効な検査法であるが、その一方でMMGによる乳がんの診断には10%~15%に見逃しがあるといわれている。 今回、当院における乳がん検診の実績と精度管理の向上(見逃し減少)に対する取り組みについて報告する。 〈方法〉_i_)当院における乳がん検診は、現在 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会の指針に従い、施設と出張(検診車)にて同時併用方式で実施している。 _ii_)精度管理の向上に対する取り組み _丸1_当院乳がん検診の社会的背景・検診システム(機器等)変移の影響を見直す。 _丸2_米医学研究所の報告によればMMGで描出不能な乳がんは、「標準撮影法では容易に描出できない部位にある」・「高密度の乳腺組織内に覆い隠されている」・「がんが非常に小さい」場合とされている。これらのピットフォールとなりうる問題点の改善に努める。 〈結果〉 _丸1_当院の乳がん検診年次推移 年度 2002 2003 2004 2005 総受診者 3279 3213 3097 2910 MMG実施者 1129 1331 1732 1998 要精検者 222 335 320 280 精密受診者 197 300 296 251 初診者数 281 367 292 368 がん発見数 3 3 1 7 がん発見率 0.09 0.09 0.03 0.24 社会的背景からかMMG実施者は増加傾向である。 2004年より読影が認定医によるダブルチェックに変更し、がん発見率が上がった。その反面、通知方法を郵送に変更により精密検査(以下、精検)受診率の低下が見られた。 _丸2_MMG描出不能乳がん:標準撮影では描出困難で視触診で指摘あり発見された乳がん1例と精検時超音波検査で発見された1例を経験した。 〈考察〉精度向上の取り組みとして、視触診を出来るだけ反映し撮影前に行い医師の指示で追加撮影を行うことにした。高密度の乳腺に対しスクリーン/フィルムからCRシステム(50μm)への変更に伴い、乳腺内コントラストをやや高くでき描出能向上が見られた。また、アーチファクトとノイズの軽減も見られたが、微細な石灰化の描出はやや劣った。今後、さらにポジショニング・撮影技術向上と撮影条件やパラメータ等の検討が必要と考えられた。
  • ~佐久地域の成人女性の骨密度検診結果から~
    新津 亜希子, 中澤 あけみ, 井出 まさ子
    セッションID: 2E20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1、はじめに
    現在、寝たきりの原因は脳血管疾患についで転倒による骨折となっている。その対策として平成7年より老健法による健康診査に骨密度検診が加えられた。当院でもその予防として、集団健康ヘルススクリーニングの中に骨密度検診を加えて実施してきた。今回成人女性の骨に影響を及ぼすライフスタイルの現状を把握し、食習慣および生活状況と骨密度との関連を明らかにし、生活改善のため健康教育等に役立てることを目的として,成人女性のライフスタイルと関連する問診結果と骨密度について検討し、考察した。
    2、研究方法
    ・対象:南佐久地域の企業,住民の骨密度検診受診者(女性)5627人 ・実施期間:1999・5月~2005・9月 ・方法:骨密度受診者の検診結果と問診表の回答状況のデータより解析。同一者が複数回受診していた場合には最新のデータを採用。未回答の問診項目を含む場合は対象から除外。
    ・各問診項目に対する回答(「はい」,「いいえ」)と骨密度検診結果(正常,異常)との関連を全年齢および年代別に,χ2検定により検定した。(対象年齢は問診項目により異なる。以下参照)
    *問診項目(対象年齢):1) 骨折・骨関節手術の既往,2) 親兄弟に骨粗鬆症や骨折あり,3) 昔から痩せている,4) ダイエット中,5) 牛乳嫌い,又は、飲むと下痢,6) カルシウム入りの健康食品を毎日摂取,7) 太陽に当たる機会僅少(1)~7):全年齢対象),8) 総入れ歯,9) 生理不順(20~50代),10) 45才前閉経(50~70代),11) 1年生理なし(~50代),12) 生理がある間に両卵巣を手術した(全年齢),13) 授乳中(~40代)
    3、結果
    4、考察
    解析から除外した総入れ歯と親戚に骨粗鬆症ありの項目以外は,全年齢でみると有意な関連を認めたが,年代別に見ると必ずしも一貫した関連とは限らなかった。その中で顕著な項目は40歳以後の骨折歴と,昔から痩せの項目であった。とりわけ後者は全年代を通じて関連を認めており,栄養摂取や食生活のあり方が骨密度を左右する可能性を強く示唆している。生理不順,45歳前閉経,1年間生理なし,両卵巣手術の項目はいずれも50歳代の受診者において関連を見ており,女性ホルモンが関与する骨密度への影響が,50歳代において顕在化しやすいことの傍証となった。総入れ歯の項目は該当者が僅少で,今後骨密度問診より除外可能かと考えた。
    今回の解析結果は,骨密度検診における問診作業が,食生活および女性のライフスタイルにおける骨密度への影響を的確に把握する有用性を示唆している。そのため問診作業の正確さと緻密さが求められる。
  • 星野 寿恵, 新橋 久美子, 前田 育子, 草野 健, 窪薗 修
    セッションID: 2E21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉当センターでは、平成18年9月から11月の3ヶ月間、平成20年度から始まる特定健診の試行および特定保健指導に資するデータ収集を目的として人間ドックの全受診者を対象に腹囲測定を実施した。〈BR〉これらの結果から、5年間の体重変化および腹囲と内臓脂肪症候群関連項目(血圧・脂質・血糖)との関連について検討し、さらに、飲酒・喫煙・食事などの生活習慣と肥満がどのように関連しているか検討し若干の考察を加え報告する。〈BR〉〈対象〉性および年齢によるバイアスを除去するため、平成18年度に当センター人間ドック受診者中腹囲測定を実施した者(n=2,407)のうち、50歳代男性で、5年前の受診歴があるもの(n=433)を対象とした。〈BR〉〈方法〉腹囲により3群(85_cm_未満・85_cm_以上90_cm_未満・90_cm_以上)に分けて5年間の体重変化と血圧・脂質・血糖との関連および食習慣との関連を比較した。体重変化はBMI25以上を肥満とし、25未満維持、25未満から以上へ、25以上から未満へ、25以上継続の4群に分類して比較した。さらに食習慣としては、飲酒・穀物摂取量・味付けなどでの関連および喫煙の有無による比較も行った。〈BR〉〈結果〉5年前よりBMI25未満群に比べ、5年前より肥満群は腹囲に関係なく内臓脂肪症候群関連項目がいずれも高値で、かつ悪化する傾向にあった。〈BR〉生活習慣について比較すると飲酒の有無別では、飲む者の割合が最も少なかったのは5年前肥満→現在標準群であった。腹囲別に比較すると、腹囲85_cm_未満の群では、飲酒しない者は全員標準体重を維持していた。腹囲90_cm_以上の群では、飲酒する者に比べ飲酒しない者の方が5年前肥満→現在標準群の占める割合が多かった。さらに、飲む者の中では、体重標準群の占める割合が腹囲90_cm_未満に比べ、著しく減少する。また、飲む者の飲酒量で比較すると、過剰摂取している者は、5年前肥満→現在肥満群に最も多かった。喫煙の有無について比較すると、腹囲90_cm_未満では喫煙しない群の方が喫煙する群に比べ、肥満者の割合が多かった。しかし、腹囲90_cm_以上では、喫煙する群の方が喫煙しない群より肥満者が多かった。〈BR〉食習慣について比較すると、穀物摂取量が一番不足しているのは、5年前標準群→現在肥満群であった。また、腹囲90_cm_以上の者の約8割が、穀物摂取量が不足していると答えた。食事が腹八分であるかどうかについては、腹囲85cm以上90_cm_未満群では満腹になるまで食べる者に肥満者の割合が多かった。また、体重変化別に見ると、BMI25未満維持群に腹八分食べると答えた者が最も多く、満腹になるまで食べる者は、5年前肥満→現在肥満群に最も多かった。さらに運動習慣については、体重変化別に見たどの群においても、運動習慣のない者が、運動習慣がある者の人数を上回っていた。〈BR〉また、血圧、脂質、血糖の検査結果との関連では、標準維持群、次いで肥満→標準群で好成績を示した。〈BR〉〈まとめ〉種々のバイアスを除去するために50歳代男性に限定して、その体重変化と内臓脂肪症候群に関する検討を行った。その結果、腹囲が強く関与するものと殆ど関与しないものがあり、また、保健指導が効果的なものとそうでない項目もあることが示唆された。さらに、考察を加え、効果的な保健指導のあり方も追求して報告する。
  • 原口 誠, 橋口 孝, 重信 隆彰, 栫井 昭裕, 草野 健, 窪薗 修, 齊藤 和人
    セッションID: 2E22
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【目的】
     AIはPWVと同じく血管の硬化度を表すが,全く同じではないと報告されている。そこで,AIとPWV,頸動脈エコー所見,血圧および生化学検査値との関係を検討した。
    【方法】
     当健康管理センターの頸動脈エコー検査を施行され,かつABI>0.95の男子(H18年9月〜H19年4月)494名を対象とした。頸動脈エコーより,左右の内中膜厚の平均(IMTav), 左右のプラークスコアの総和(PS),血管弾性係数(β)を,PWVとして右hbPWV,左右平均のbaPWV,ABIを,さらに,右上腕動脈波より求めたPEP,ETを,生化学としてFBS,HDL,TG,TC,尿酸と末血を指標としてAIとの関係を検討した。
    【結果】
    単相関ではhbPWV,年齢,ET, 心拍数,PEP,IMTav,身長,TG, BMI,PS ,SBP2,baPWV,SBP,TC,DBPの順にAIと有意な弱い相関(r=0.350〜0.095)が得られた。AIを従属変数としてすべての変数でスッテプワイズ解析を行うと喫煙,拡張期血圧,hbPWV,SBP2, TG,PEP,年齢,収縮期血圧,ET/PEP,身長,ETの順に選択された(cR2=0.366)。
    IMTavを従属変数とすると年齢,PS ,BMI,身長SBP,の順に(cR2=0.356),PSを従属変数とするとIMTav,年齢,ABI,心拍数, baPWVの順に選択された(cR2=0.285)。
    【結論】
    IMTav,PSがAIの有意な変数として選択されず,左心機能に関与するETおよび血管の硬化度を表すhbPWVが有意な変数として選択されたことより,AIは主に左心機能や血管の硬化度を表すものと推測された。しかし,これ以外の多くの変数が選択されているので今後の検討が必要である。
  • 河合 啓行, 中神 信明, 中神 未季, 出口 恵三, 牧野 富久代
    セッションID: 2E23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    当健康管理センターでは、平成16年10月より睡眠時無呼吸検査(以下SASドック)を導入している。今回、他職種との連携を図りながら取り組んでいる活動経過と今後の課題について報告する。
    <目的>
    SASドックの啓蒙活動
    <方法>
    【調査期間】 平成17年4月1日~平成18年3月31日
    【調査対象者】
    当院専用の健康調査票の問診項目より
    _丸1_いびきがひどいと言われたことがある
    _丸2_睡眠中に息苦しくて目がさめる
    _丸3_睡眠中に息がとまる
    _丸4_夜中に目がさめた後、なかなか寝付けない
    _丸5_十分な睡眠をとっても、昼間眠たい
    以上の5項目に1つでも該当がある者及び診察等で症状がある者をSASの疑いがある者とし、事業所別(性別、年代別)に受診状況を調査した。
    その調査結果から、以下の活動を実施した。
    1)健診当日問診時に保健師が、SASの疑いがある者にSASドック受検を勧奨
    2)健診当日診察時に医師が、SASの疑いがある者にSASドック受検を勧奨
    3)健診事後指導時に医師及び保健師が、SASの疑いがある者にSASドック受検を勧奨
    4)生理検査科担当者によるPR(検査申込)用のパンフレット作成とその活用
    _丸1_各事業所(担当者)へのPR、行政関係者への利用案内の働きかけ
     _丸2_健診案内にパンフレット同封
     _丸3_健診当日、保健師、医師の指示により受検者へのパンフレット配布
    <結果>
    【SASドック年代別利用件数】
    平成17年 平成18年 年 齢   男 女 男 女 ~29才以下 1 0 1 1 30~39才   8 3 4 0 40~49才 9 3 9 1 50~59才 12 4 10 2 60~69才 3 0 0 0 70才以上 1 0 0 0 計   (人) 34 10 24 4 男女合計(人) 44 28 【申込み依頼先状況】
    平成17年 平成18年 個人申込 13人 2人 事業所申込 10事業所 15事業所 <考察>
    生理検査科からの提案により検査の導入が始まり、院内TQM活動で検討を重ねながら、啓蒙活動を行ってきた。年々件数が増加している状況ではないが、導入時より徐々にSASドックに対する受検者の関心が高まってきていると思われる。今後も各事業所や行政関係者への働きかけ等を継続し、院内の関係職種と共に受検件数を増加させ、地域のニーズに即した質の高い健診を提供していきたい。
  • 薩川 亜希, 児玉 美鈴, 山下 恵里子, 鶴岡 千恵子, 松永 勇人, 玉内 登志雄
    セッションID: 2E24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉職員の健康診断結果返却方法に関する要望を明らかにし,返却方法を検討する. 〈方法〉対象者:当院職員で,2006年度定期健康診断,または人間ドックを受けた282名.調査期間:2007年3月22日~3月29日.調査方法:自記式質問紙調査法により,各所属長よりスタッフに配布回収した.分析方法:単純集計を行い,自由記載の内容は,分類しカテゴリー化した.倫理的配慮:対象者に書面にて研究の趣旨等を説明し,調査の回答をもって,了解同意を得た. 〈結果〉回収率93.6%,有効回答率92.2%. 「医師・看護職」152名(58.5%),「コメディカル」44名(16.9%),「事務職・看護助手」45名(17.3%),「その他」19名(7.3%).  健診結果で「異常あり」とした者は,「20歳代」38名(47%),「30歳代」25名(45%),「40歳代」51名69%,「50歳以上」35名(81%).異常ありの項目は,「脂質」70名,「体重」31名,「肝機能」31名の順に多かった. 結果の返却方法は「通知(書面)」209名(80.4%)が最も多く,次いで「個別面談」43名(16.5%)であった. 結果返却に必要な情報については,「検査値」96名,「精密検査」67名「自分の結果にあった食事」65名の3項目に意見が集中した.「検査値」の項目での具体的な内容は,『検査値の意味する内容・見方』『異常値から考えられる疾病・危険性』があがった.  結果返却後の情報受け取り方法については,「資料」118名,「相談室の設置」64名,「院内メール」52名であった. 〈考察〉結果返却方法は,従来どおりの「通知」が多数を占めた.結果返却に必要な情報への関心の高さは,職種による差はなく,「検査値」「精密検査」の項目が多かった.医療職が多いため「検査値」については,理解しているものと判断していたが,『検査値の意味する内容・見方』『異常値から考えられる疾病・危険性』等を含めた資料提供の必要性が明らかになった.「精密検査」に対する要望は,現在,該当者に添付している資料の内容と同一事項が多くあり,十分周知されていないことが明らかになった.従って,該当者には直接説明をする機会を設け,安全衛生委員会等でも概要を管理者に伝え,全職員への指導・勧告の実施要請をしていく必要があると考えた. 自分の結果にあった食事に対しては,個別性のある資料の考案作成をする必要がある.そのためには,個人の生活実態を把握し,対象者自身が必要性に気づくような支援の提供が必要だと考えた. 当院においても,年齢上昇と伴に健康診断結果異常者の割合も増加している.特に「脂質」「体重」「肝機能」等の生活習慣に関連したものが多い.今回の調査結果では,個別相談の要望は16.5%と少ない.2008年より特定健康診断・保健指導が開始され,内臓脂肪症候群に着目した生活習慣改善に重点を置いた指導がされる.内臓脂肪症候群の予防には,ポピレーションアプローチ(普及啓発)をしていくことは当然だが,個々の生活背景を考慮した個別的指導を欠かすことはできない.調査では通知の要望が多く,資料やメールといった媒体を介しての情報提供を望んでいたため資料の充実を図り,健診結果返却後も,必要に応じて,資料やメールでの情報提供,個別支援などを適宜行える体制を整えていくことが必要とされる.
  • ~行動変容の動機づけについて~
    小口 尚子
    セッションID: 2E25
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <BR>〈緒言〉現在、人間ドックで保健指導が行われているが、現在の保健指導が受診者にとって行動変容の動機づけになっているかを明らかにするためこの研究に取り組んだ。<BR>用語の定義<BR>ProchaskaとDiclementeによって考え出された変化のステージモデルでは、人の行動が変わり、それが維持されるには5つのステージを通ると考えられ、そのステージは以下のように示される。<BR>ステージ_I_(無関心期)…6カ月以内に行動を変える気がない時期<BR>ステージ_II_(関心期)… 6カ月以内に行動を変える気がある時期<BR>ステージ_III_(準備期)…1ヵ月以内に行動を変える気がある時期<BR>ステージ_IV_(行動期)…行動を変えて6カ月以内の時期<BR>ステージ_V_(維持期)…行動を変えて6カ月以上の時期<BR>〈方法〉対象は、平成18年12月18日~28日までの人間ドック受診者107人であり、保健指導後自記式の質問紙を配布し回答後に回収した。回収率は100%であり、その内の有効回答97人について分析した。<BR>〈結果〉<BR>「ステージ_I_~_III_」について、保健指導前後の行動変容の変化をみてみると、「ステージ_I_」から「ステージ_II_・_III_」に上がった人が11人中6人 (54.5%) 、「ステージ_II_」から「ステージ_III_」に上がった人が13人中9人(69.2%)であった。「ステージ_II_・_III_」の行動開始時期について、保健指導前は「開始時期は未定」と全員が答えていたが、保健指導後は「明日から始める」と時期が明確になった人が65.4%(17人)いた。 保健指導後「ステージ_II_・_III_」の人の行動開始時期と健康に対する不安の有無を比較した結果、健康に不安が「ある」が9人(20%)、「ない」が8人(17.8%)、開始時期が未定である人の中で、健康に不安が「ある」が3人(6.7%)、「ない」が25人(55.6%)であり、有意差が認められた。(p<0.05)<BR>〈考察〉<BR>保健指導後にステージが上がった人は54.2%だった。また、保健指導前のステージ_II_・_III_の中で、保健指導後に行動変容時期が「明日から始める」と明確になった人が65.4%いた。このことから、現在の保健指導は、受診者にとって行動変容の動機づけになっていると思われる。<BR>また、健康への不安の有無が行動変容の開始時期に影響していることが明らかとなった。保健指導者は受診者に対し、健診結果と生活習慣との関連性を説明し、受診者が自分の身体で起こっていることを認識できるように支援することで、受診者にとって行動変容の動機づけがしやすくなるのではないかと考えられる。確実に行動変容を促す保健指導をしていくためには、保健指導者が多方面からの情報収集をし、情報量を蓄えていくことが必要である。また、限られた時間の中で保健指導に必要な情報を得るコミュニケーション技術の向上、その情報を瞬時に分析し、支援方法を判断する力を磨いていくことが重要である。 <BR>〈結論〉<BR>現在の保健指導は、受診者にとって行動変容の動機づけになっている。しかし、確実に行動変容を促す保健指導をしていくためには、保健指導者は、多方面の情報を蓄えていくことや、情報を得るコミュニケーション技術、瞬時に分析する力、支援方法を判断する力を磨いていくことが重要であると考えられる。
  • ~今後の保健指導のあり方を考える~
    山口 千穂, 久保 知子, 川村 洋子, 碓井 裕史, 石田 和史
    セッションID: 2E26
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 平成20年度より施行される特定保健指導は、メタボリックシンドローム(MS)に着目し、その要因となっている生活習慣を改善するために効率的かつ効果的に保健指導を行い、MS該当者及び予備群を減少させることを目的としている。そこで、特定保健指導に向けて、当院ドック受診者の生活習慣を分析し、MSに対応した保健指導のあり方を検討した。 <対象> 平成18年4月より12月の間に、当院において人間ドックを受診した40~74歳1562名(男性919名、女性643名)の中で、糖尿病・高脂血症・高血圧治療及び受診勧奨者を除く1097名(男性597名、女性500名)を対象とした。 <方法> MSの諸種パラメーター、特定保健指導階層レベル(平成19年4月に示された標準的な健診・保健指導プログラムの判定基準に基づく)で、生活習慣との関連を男女別に統計学的に解析した。なお、年齢によって統計学的調整を行った。 <成績> I MSの諸種パラメーターと生活習慣の検討 a)腹囲 「満腹まで食べる」男女、「日常活動度が軽い」「揚げ物が多い」男性、「野菜の摂取が少ない」女性では高値を示した。 b)BMI 「満腹まで食べる」男女、「野菜の摂取が少ない」女性、「運動を全くしない」女性は高値を示した。 c)空腹時血糖値 「飲酒習慣がある」女性は高値を示した。 d)中性脂肪 「日常活動度が軽い」男性は高値を示した。 e)HDL-C 「日常活動度が軽い」「喫煙習慣がある」男性は低値を示した。 f)収縮期血圧・拡張期血圧 「飲酒習慣がある」男性、「食品の組み合わせを考えていない」女性は高値を示した。 _II_ 特定保健指導階層レベルと生活習慣の検討 階層レベル別では、積極的支援レベル179名(男性161名、女性18名)、動機づけ支援レベル133名(男性85名、女性48名)、情報提供レベルは88名(男性61名、女性27名)、非該当者697名(男性290名、女性407名) であった。積極的支援群男性は、「満腹まで食べる」「運動をほとんどしない」「日常活動度が軽い」が高率であった。積極的支援群女性は、「野菜の摂取が少ない」が高率であった。 <結語> 当院におけるMS該当者及びMS予備群は、男性に多く認められ、特徴的な生活習慣として偏りのある食行動や活動度の低下がみられた。これらを踏まえ、対象者自らが生活習慣を客観的に把握するような指導案作りの作成と対象者に対する共感の姿勢を基盤にした働きかけを大切にしたい。
  • 須貝 勝, 神保 隆行, 麩澤 由希子, 野瀬 友裕, 斉藤 博子, 大橋 恭彦, 山田 彰
    セッションID: 2F101
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈はじめに〉2004年診療報酬改定で新設された亜急性期入院医療管理料を算定する病床(以下、亜急性期病床)は、急性期治療後に当該病室へ90日を限度に患者を受け入れ、退院患者の概ね6割以上の居宅等〔居宅および介護老人保健施設、介護老人福祉施設(老健等)を含む〕への退院を施設基準としている。当院においても2004年7月より36床を亜急性期病床として開設し、在宅復帰に向けて、週6日のリハビリテーション(リハビリ)、病棟スタッフとの協力体制によるADLの拡大、および在宅復帰支援担当者との連携強化を行なっている。今回、当院における亜急性期病床の役割と、高齢者の在宅復帰に向けた成果や課題について報告する。
    〈対象・方法〉2006年度当院における亜急性期病床にてリハビリを実施した患者(亜急性期リハ患者)の平均在院日数・疾患別居宅等退院率を調査した。また高齢者の整形外科疾患において在宅復帰が問題となる大腿骨頚部骨折患者についても亜急性期病床開設前後の居宅等退院率・平均年齢・平均在院日数を調査し、比較・検討を行なった。
    〈結果〉2006年度における全リハビリ実施患者(全リハ患者)数延べ980名に対し、亜急性期患者は283名(28.9%)であった。平均年齢は全リハ患者が66.9歳、平均在院日数は38.8日に対し、亜急性期リハ患者は75.4歳、68.5日、うち亜急性期病床に限った平均在院日数は37.3日であった。亜急性期リハ患者の疾患別内訳は、整形外科疾患203名(71.7%)、脳血管障害21名(7.4%)、神経筋疾患6名(2.1%)、内部疾患41名(14.5%)、外科疾患12名(4.2%)であった。居宅等退院率は全体で75.6%(居宅66.8%・老健等8.8%)疾患別では、整形外科疾患が90.2%(82.8%・7.4%)、脳血管障害等65.0%(40.0%・25.0%)、内部疾患57.1%(45.2%・11.9%)、外科疾患53.9%(46.2%・7.7%)であった。次に亜急性期病床開設前の2000、2001年度の大腿骨頚部骨折患者92名(開設前)と2006年度の亜急性期病床における同患者(開設後)57名について比較した。居宅等退院率は開設前84.7%(61.9%・22.8%)に対し開設後82.4%(61.4%・20.0%)と差はみられなかったが、平均年齢と平均在院日数は開設前が78.2才、53.3日に対し、開設後は82.0才、62.8日とともに上昇がみられた。
    〈考察〉当院では亜急性期病床の整形外科疾患のリハビリ対象患者が7割を占め、うち9割が居宅等の退院を果たしている。また亜急性期病床に高齢者患者が集中していることや、開設前後における大腿骨頚部骨折患者の平均年齢が上昇していたにもかかわらず在宅等退院率に差がなかったことから、亜急性期病床の導入によりリハビリ体制が充実し、高齢者の円滑な在宅復帰に繋がったと思われる。
    〈おわりに〉今後も、亜急性期病床による病状の安定化とさらなるリハビリの充実化が求められるとともに、患者に適した医療資源を提供し、高齢化社会における地域医療に貢献するために、在宅医療や介護施設との連携を深めていきたい。
  • ~リハビリ・看護業務検討会活動を通じて~
    和田 範文, 若生 和彦, 大野 貴子, 佐藤 弘枝, 大塚 幸子
    セッションID: 2F102
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院は、平成15年7月に(財)日本医療機能評価機構の新基準による認定(Ver.4)を県内で初めて受けた。このことを契機に、チーム医療の更なる推進と各部署との業務の明確化・効率化を目的とした業務検討委員会を行うこととなった。今回は、リハビリ・看護業務検討会の取り組みの経過と、その成果および今後の課題について報告する。
    【委員の構成と開催頻度】看護部よりは整形外科病棟看護師長、脳神経外科病棟看護主任、内科混合病棟看護主任の3名と、リハビリ科からは2名の計5名で任期は1年である。開催頻度は隔月の指定曜日を設定している。
    【経過と成果】平成15年度の開催当初には、まず各々の業務の効率化を主体とした課題の整理や改善策の検討をした。内容としては、術後早期の患者の土曜日リハビリの実施や入院患者搬送の対応方法、MRSA等感染患者の訓練室使用の拡大を図った。16年度には、業務として看護師側より、入院患者のリハビリ状況が把握できず看護師の関心も低下しがちといった意見があり、進行状況を的確に確認できる記録方法を検討し活用していった。また、合同勉強会としてリハビリ概論、トランスファー技術およびスタッフの腰痛予防などの実践的な内容の研修会を開催した。17年度・18年度には、電話応対などで煩雑であった入院患者のリハビリ予定時間を、院内LANを利用したメールで伝達することとした。この方法は透析部門でも活用されるようになった。合同勉強会では、摂食・嚥下障害患者の増加に伴い、その知識を深めていくとともに、個々の患者に対して適切な嚥下方法を病棟で共有できるための掲示物を作成し病室に掲示した。また、勉強会の参加者を対象にアンケート調査を行い今後の参考にしていった。
    【今後の課題】この検討会を通して決められた内容は、確実に各病棟スタッフに伝達され、協働した業務がされてきている。しかしながら、看護側・リハビリともまだまだスタッフの定着率が十分ではないため、継続した業務の遂行に支障をきたしているのが現状である。そのため検討された内容を再確認することも必要なテーマとなっている。また合同勉強会においても、比較的新人の参加が多いために、基礎的な内容を取り入れざるを得ないため、マンネリ化していくことが懸念される。
  • ~生活機能評価の考案~
    中井 智博, 鈴本 宜之, 河合 恵美子, 鈴木 ふみ子, 酒井 順子, 岡田 史子, 早川 富博
    セッションID: 2F103
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)の導入にあたり、本人や家族の希望が重視され過ぎて、本当に必要な人に対して訪問リハが提供出来ているか疑問なことがある。また介護認定の一次調査では調査員によって判定の仕方が異なることもあり、要介護者の認定結果に大きな影響を与えている。生活機能を評価するには、医療系サービスでは一般的にFIMやBarthel Indexがよく使われるが、福祉系サービスにおいては介護支援専門員も含め馴染みが少なく理解されていないことを経験上感じている。そこで誰でも簡単に生活機能を評価し,目的や目標を明確にすることによりサービスを公正に導入し、実際の日常生活に反映できるように独自の生活機能評価スコアを考案した。評価項目や判定基準は介護認定の一次調査を参考にし、活動面は「できる活動」と「している活動」に分けて評価し点数化した。今回、一年間介護保険の訪問リハを利用した要介護者を対象に「している活動」の比較検討をした。 【対象】 2005年10月から2006年9月までで、介護保険からの訪問リハを利用した26名(男性12名・女性14名)を対象とした。年齢は56歳~93歳であり平均75.5±10.1歳。 【方法】 生活機能評価スコアは、1)機能面の麻痺拘縮等4項目16点・意思疎通5項目10点・問題行動10項目10点と、2)活動面の移動動作6項目24点・複雑動作3項目12点・特別介護3項目12点・身の回り動作4項目16点の2部に分けて評価する。活動面では同じ項目を「できる活動」と「している活動」の2面から評価する。判定基準は自立(4点)・ 一部介助(3点)・見守り(2点)・ 全介助(1点)・ 不可(0点)の5段階とする。今回、活動面を中心に「できる活動」の得点に「している活動」の得点が近づけたかどうかを2005年(前回)と2006年(今回)の「している活動」で比較した。 【結果】 介護認定からみた改善度で分類すると改善14名(54%)、不変7名(27%)、悪化5名(19%)であった。調査期間中に入院し著しく機能低下した3名と死亡1名を除く22名を解析対象とした。「できる活動」の移動動作は19±5.2、複雑動作は6.8±2.5、特別介護は10.5±2.7、身の回り動作は13.3±3.9、活動面の合計得点は49.6±13.3であった。「している活動」についてみてみると移動動作と複雑動作は前回の15.8±5.3と5.2±2.3から今回の17.5±5.7と6.1±2.7へと有意(p<0.05)に高くなった。特別介助と身の回り動作では、前回9.8±2.9と12.6±4.3から今回9.8±3.2と13.1±4.3で有意な得点変化は認められなかった。合計得点をみると前回44.1±13.7が今回47.8±14.2へと有意(p<0.05)に増加した。 【考察】 今回、生活機能スコアで「できる活動」と「している活動」を分けて評価することにより、要介護者の機能、能力を把握し、「している活動」を「できる活動」へ近づけて行くことができた。これは点数化することで動くことができるのに動かない要介護者、動けないと判断し手を出しすぎる介護者や介護職員に説明指導することで、共通の目標設定や計画の立案及び実施が可能となり、過剰介護による能力低下を防ぐことができた。
  • 土屋 匡
    セッションID: 2F104
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    JA佐久浅間農業協同組合では、通所介護施設におけるリハビリテーションの必要性が高まったことから理学療法士の出向という形で小諸厚生総合病院に委託しました。JA佐久浅間農協協同組合は浅間山麓に位置する人口約10万人の佐久市と人口約4万5千人の小諸市の広域を担当している組合です。更に、福祉分野にも力をそそいでおり通所介護施設では、佐久市に3施設、小諸市に1施設、また宅老所を2施設運営し、約300件以上の利用者が利用しています。 今回、主に通所介護施設における機能訓練体制の導入と位置づけについて取り組むことができたので報告します。 出向期間は2005年4月から2007年3月の2年間で機能訓練体制加算に対する取り組みと、翌年2006年4月の介護保険改定からは個別機能訓練加算および介護予防(運動器の機能向上)等に取り組みました。 主な取り組みは以下に示すと通りです。 1.機能訓練評価表を作成し利用者の機能状態と日常生活動作の把握のために全数評価を行いました。 2.通所介護における機能訓練の位置づけと意味を裏付けるため、職員や利用者に対するリハビリテーションの理解と啓蒙を行いました。 3.各職種との連携と情報の共有を図るため各施設の組織体制の把握 4.専門性を活かした機能訓練と日常生活指導の両立 5.パソコンによる作成書類の一括作成を行うことで合理化を図りました。  近年、通所介護施設も高齢化、重症化しており日常生活に何らかの支障をきたす利用者が年々多くなって来ています。リハビリテーションに於いても専門的知識を活かし、より在宅を視野に入れた包括的な機能訓練を行わなければなりません。それには医学的リハビリテーションだけでなく、広い視野をもった総合リハビリテーションの必要性が感じられます。今後、総合リハビリテーションを行うに当たり、他職種との連携と地域社会との連携がより重要と考えます。
  • ~重度高次脳機能障害を呈した一症例の治療を通して~
    吉井 俊英, 森井 幸一, 河村 章史
    セッションID: 2F105
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉左半側空間無視(以下:USN)は臨床上、頻繁に認める高次脳機能障害の1つであり、その病態は様々である。また、病態の解釈も様々な報告があり、最近ではUSN患者のワーキングメモリー障害を問題視する報告がある。今回、重度高次脳機能障害を呈した1症例の治療介入を通して、USNとワーキングメモリー(以下:WM)との関連性について考察したので以下に報告する。

    〈症例〉脳出血による右頭頂葉皮質下病変を呈した78歳女性。リハビリテーション開始時(発症後1ヶ月)左側上下肢に軽度不全麻痺を認め、感覚機能は重度鈍麻を呈していた。高次脳機能障害はUSN症状を主症状とし、身体失認、相貌失認、構成障害、失行、前頭葉症状等、複数の障害を認めた。症例は日常生活活動(以下:ADL)上、要介助状態であり、高次脳機能障害がADLの阻害因子となっていることは明らかであった。尚、本症例は2年前より認知症の診断を受けていたが、受傷前はADL自立レベルであった。

    〈経過〉治療開始時より左側認識向上を目的とし、体性感覚-視覚を介した治療介入を実施した。それにより、BIT上の検査成績向上を認めたが、ADL上において自立度の向上は認められない状態であった。その後の評価により前頭葉障害が行動制限因子として考えられたため、前頭葉課題を追加して訓練を実施した。しかし、紙面上検査での得点向上は認められたものの、ADL上で介助者の目の離せない状態に変わりはなかった。症例は、自己身体を視覚、体性感覚的に認識が困難であり、さらに意思決定による適切な行動をするという点で大きな問題を抱えている様子であった。

    〈考察〉本症例においてADLの阻害因子が高次脳機能障害であることは前述の通りである。評価より特に、選択的に注意を向け、視覚認知をし、行為をするという行動の一連の流れの破綻をきたしていると思われた。Awh&Jonides(1998)によると視空間的WMのうち空間的WMは頭頂-前頭前野間に顕著なネットワーク結合があり、選択的注意により維持されるという神経解剖学的証拠があると報告されている。また、現在では前頭前野はWMのセンターであることは明らかにされているが、主に背外側部(46野、9野)は視覚情報処理過程における背側経路からの投射を受け、空間性情報に関与しているとされている。そして、背外側部は今行っている課題や計画遂行のため、WMとして保持している情報をモニターしたり操作したりする過程に関与している。ゆえに本症例の行動を考えみるに、背側経路の障害が示唆され、空間認知のみならず、意思決定に重要とされるWMの破綻が示唆される。本症例の治療経験を通し、今後の臨床展開においてUSNとWMの関連を視野に取り入れた治療の必要性が考えられた。
  • ~Bunstrom Stageの活用を試みて~
    沼田 英恵, 額賀 ゆかり, 椎名 伸枝, 鳥畑 好江
    セッションID: 2F106
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【はじめに】当病棟に脳卒中で入院した患者は2006年で161名おり、前年に比べて67%増加している。脳卒中発症後の回復過程において、病巣の増悪により麻痺が悪化することがある。そのため麻痺レベルの把握は患者の早期異常発見に繋がる重要な観察項目である。しかし、看護師個々人の主観的な観察により表現方法が異なり、言語化が難しい状況であった。そこで、リハビリテーション科と協力し、Bunstrom Stage(以下Br.Stageとする)を活用して看護の質の向上を図り、さらに利便性を考え、ポケットサイズのスケール表を作成した。このことで統一した指標ができ、麻痺レベルの表現統一が図れ、看護師の意識の変化に繋がったので報告する。 【目的】Br.Stageを活用することで看護師間の麻痺レベルの表現統一が図れる 【研究方法】 期間:2006年7月~10月 対象:当病棟看護師19名 方法1.アンケート調査(Br.Stage活用前) 2.Br.Stageについての勉強会 3.ポケットサイズのスケール表作成・配布 4.アンケート調査(Br.Stage活用後) 【結果】Br.Stage活用前アンケート調査は、麻痺の観察について、スケール表を用いていないと答えた看護師が19名(100%)であった。さらに伝達方法としてジェスチャーを使用していた。Br.Stageを知っているかについては、よく知っているの回答が1人(5%)、知っているが説明はできない等、内容が理解されていない看護師が18人(95%)という結果となった。Br.Stage活用後のアンケート調査は、スケール表があった方がよいという設問に対して19人(100%)がよいという結果であった。活用できたが13人(64%)、その理由として麻痺の程度が把握でき、統一された伝達ができたと答えたものが半数以上であった。スケール表を用いたことで個別性のある看護介入に繋がったという意見もあった。活用できなかったは6人(36%)で、その理由はわかりづらいという回答であった。ポケットサイズのスケール表を今後さらに活用していくことで改善できるという意見が聞かれた。 【考察】これまで19名が麻痺の程度を伝達する際に不便を感じていたが、スケール表を活用したことによって表現方法の統一ができたと半数以上の看護師が答えており必要性を認識し活用することができた。Br.Stageを活用することで、リハビリテーション科との共通理解にも繋げることができたと思われる。活用できなかったことに対しては、勉強会の持ち方と導入までの期間が短かったことが考えられる。さらに、病棟内で統一した指標をもとに観察することで、自分達の行う看護に繋がったと思われる。今後、継続して使用することで、さらに、浸透していくと示唆される。 【結論】スケール表の活用により麻痺レベルの表現統一がされることによって、患者に対する看護の介入、指標ができ、意識の変化に繋がった。また看護師間とリハビリテーション科との共通理解に繋げることができた。
  • 大日向 志保, 小出 和代, 松井 克明, 秋月 章, 中村 裕一
    セッションID: 2F107
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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     一般に脳血管疾患発症後の予後は,出血量,病変部位,麻痺の程度,年齢などが相互に影響しあっていると考えられている.本稿では,早期に予後予測をし,リハビリテーションを効率よく行うための目安とするために,出血量,上肢麻痺の程度,発症時の年齢が上肢機能および日常生活活動(以下ADL)に及ぼす影響を調べた. <BR>[対象] 1997年4月から2005年3月までの9年間で長野松代総合病院(以下当院)に入院し,リハビリテーションを実施した被殻出血70例のうち,脳血管疾患の既往のない,被殻出血CT分類の_I_型16例(平均年齢67.2±11.3(SD)歳)を対象とした. <BR>[方法] 上肢麻痺は上肢Brunnstrom stage(以下Br.stage)にて発症時,1ヶ月後,2ヶ月後,調査時(50.3±23.1(SD)ヶ月)の4時点で評価を行った.上肢機能は上肢機能実用性評価基準を一部改変して使用し,実用手,補助手,廃用手に分類した.ADLはBartel Index(以下BI)を使用し,発症時,退院時(1.68±0.81ヶ月),調査時(50.3±23.1ヶ月)で評価した.出血量はCTのvolume積算機能を用い,医師により算出された.統計学的検討には,相関係数および直線回帰分析,Wilcoxon符号付順位和検定を用い,有意水準はいずれも5%未満を有意とした. <BR>[検討項目] _丸1_出血量と上肢Br.stageの関係,_丸2_上肢Br.stageの変化,_丸3_上肢機能の変化と上肢Br.stageの変化の関係,_丸4_上肢Br.stageとADLの関係の4項目である. <BR> [結果] _丸1_出血量と上肢Br.stageの関係では,出血量が多いと上肢Br.stageが低く,出血量が少ないと上肢Br.stageが高くなり,相関が認められた(r=0.70,p<0.0025)._丸2_上肢Br.stageの変化では,発症時にBr.stage_I_であった4例のうち2例がBr.stage_II_に回復し,残り2例は変化がみられなかった.発症時Br.stage_II_であった3例のうち2例はBr.stage_III_に回復し,1例は変化が見られなかった.発症時Br.stage_III_であった2例はBr.stage_VI_に回復し,発症時Br.stage_IV_であった1例もBr.stage_VI_に回復していた.Br.stage_V_であった4例のうち3例はBr.stage_VI_に回復し,残り1例は回復がみられなかった._丸3_上肢機能の変化と上肢Br.stageの変化の関係では,発症時に上肢Br.stageが_III_以上であった9例は調査時にはすべて実用手となっており,発症時Br.stage_I_であった4例はすべて廃用手となっていた.また,発症時Br.stage_II_では3例のうち2例は補助手になり,残り1例は廃用手にとどまっていた._丸4_上肢Br.stageとADLの関係では,Br.stage_V_,_VI_である症例は,高齢で意欲低下がみられた1例以外は全てBIが100点となっていた. <BR>[考察] 衛藤ら<SUP>1)</SUP>の報告と同様に,上肢の麻痺は出血量が多いほど強く,発症時に上肢Br.stage_I_,_II_と麻痺が重度である場合は予後不良であること,ADLの自立度は麻痺が強くても年齢が若いと良好で,麻痺が軽度であっても高齢で,意欲低下や認知症などがあると予後不良であることが今回の検討より判明した.  入院期間の短縮化が進む中で,今回の結果を基に,早期に予後予測・ゴール設定を行い,リハビリテーションを効率的に行っていくことが今後も重要であると考えられた. <BR>[文献]1)衛藤誠二ほか:被殻出血における正中神経刺激短潜時体性感覚誘発電位と上肢機能.リハ医学,1996.
  • 森井 幸一, 仲井 宏史, 河村 章史, 田畑 良祐, 江崎 豊英, 吉井 俊英, 野々村 容典, 益田 和明
    セッションID: 2F108
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【はじめに】外傷による上腕骨近位端骨折に対し、骨折の転位が著明で整復や強固な骨接合を行うことが困難な場合や、あるいは骨頭への血行障害が考えられる場合などでは人工骨頭置換術が適応とされる。また、術後リハビリテーション(以下RH)においては、関節内外の血腫や筋腱および関節包等軟部組織の損傷により関節拘縮を生じやすい要素が存在するにもかかわらず、慎重な進行が求められ後に機能障害を残すことが少なくない。今回我々は、上腕骨近位端骨折後、人工骨頭置換術を施行された症例に対し術後RHを経験する機会を得たためその訓練経過と成績を報告する。

    【対象】平成17年12月~平成19年4月の期間に当院にて上腕骨近位端骨折後人工骨頭置換術(エクリス人工骨頭;TOKIBO)が施行され、そして術後RHが行われ経過観察が可能であった5例(男性2例、女性3例)5肩(右3例、左2例)を対象とした(内1名は現在継続中)。年齢は56~84(平均71.2)歳であった。

    【方法】術後のRHの進行については、人工骨頭置換術後RHプロトコールを当科で作成し、その進行は各主治医の判断とした。 術後RHのプロトコール内容としては、大・小結節が仮骨形成される3週前後までは0~90°の他動的な前挙運動やstooping exerciseを行いgleno-humeral jointの可動域を確保し(他動的伸展外旋運動は禁止)、術後3~4週後は徐々に他動的運動範囲を拡大し自動介助運動を行うこととした。この時から開始される各運動は無理な可動範囲の強制は避け可能な範囲でscapular plane上から徐々に可動範囲を拡大していくよう心がけた。5週前後から自動挙上や抵抗運動,cuff exercise等複合的な肩関節の運動を開始した。

    【結果】上腕骨近位端骨折の内訳は、Neer分類の3-part(脱臼)骨折2例、4-part骨折2例で、その他、粉砕(脱臼)骨折+骨幹部骨折1例であった。発症から手術までの期間は6~13(平均9.4)日、術後RH開始までの期間は6~12(平均8.2)日、術後自動運動開始までの期間は15~38(平均25.2)日であった。術後からRH終了日までの期間は117~149(平均138)日で、3例が診療報酬改定後の算定日数制限による終了であった。RH終了時自動挙上(前挙)は30~115°(平均88.7°)で、JOA scoreは34~79(平均62.6)点であった。また、X線評価では肩峰-骨頭間距離(AHI)の狭小化が1例、上腕骨下垂位が1例にみられた。

    【考察】上腕骨近位端骨折に対する人工骨頭置換術後成績に影響を与える因子として、受傷から手術までの期間、脱臼の有無、大・小結節の固定性(転位・吸収)、年齢、筋力不足、内科的合併症があり、術後RHを行う上で大・小結節の固定性や筋力不足は特に注意を要すると考えられる。今回経験した症例では、術後腋窩神経麻痺を合併した症例を除いた他の症例において、明らかな大結節の転位・吸収等はないものの自動挙上可動域は105~115°と充分といえる結果には至らなかった。算定制限によりRHを終了される症例も多く、今後は我々セラピストも大・小結節などの骨片の固定性を包括的に評価し固定性が充分な症例においてはより早期の積極的なRHの展開が必要であると考えられた。
  • 岡村 秀人, 小鳥川 彰浩, 林 伸幸, 大西 雅之, 岩越 優, 四戸 隆基, 佐藤 正夫
    セッションID: 2F109
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【目的】腰痛はDeyo RAら,Frymoyer JWらによると,欧米の先進諸国において,最も頻度の高い症状の一つであり,仕事の長期欠勤の最も一般的な原因であると述べている.また,我が国の腰痛有病率をみてみると,20歳代の男性は29%,女性は22%で,30~60歳代は年齢や性別にかかわらず約30%,70歳代の男性は28%で女性は47%である。特に,職場における腰痛有訴率として甲田は看護業務においては64.5%(n=896)とかなりの高率に起こりうるものと述べている.今回、当厚生連に所属する職員を対象に,腰痛の有訴率を調査することで実態を把握し,腰痛のQOL(Quality of Life)におよぼす影響等を検討してみた. 【対象】岐阜県厚生連に所属する職員で、書面にて研究の趣旨を説明し,同意を得た1,168名(男性279名,女性889名,職種別内訳は医師81名,看護部665名,コメディカル部門157名,事務・その他265名,勤続年数11.4年±9.94年)とした.(有効回答率81.8%) 【方法】調査として,元来よく用いられるOswetry low back pain disability question- nnaire や日整会腰痛疾患治療成績判定基準等ではなく,腰痛に特異的な疾患特異的な評価尺度であるRolland-Morris Disability Scale(以下 RDQ)を用い,アンケート調査にて行った. 【結果】職員全体の腰痛有訴率は58.0%であった.性差でみると,男性48.0%,女性61.1%であった.職種別では医師48.1%,看護部65.9%,コメディカル部門43.9%,事務部門・その他は49.1%であった.年齢別にみると,10歳代は0.0%,20歳代56.1%,30歳代は52.7%,40歳代は65.2%,50歳代は58.7%,60歳代は60.9%であった.経験年代別では10年未満が55.6%,10年以上20年未満が56.6%,20年以上30年未満が64.0%,30年以上が65.5%であった.また,腰痛を訴えた者のRDQ値においては,全体平均は2.78点であった.性差でみると,男性2.86点,女性2.75点であった.職種別では医師2.44点,看護部2.76点,コメディカル部門3.01点,事務部門・その他は2.76点であった.年齢別にみると,20歳代2.08点、30歳代は2.37点,40歳代は3.10点,50歳代は4.01点,60歳代は2.64点であった.経験年代別では10年未満が2.26点,10年以上20年未満が3.00点,20年以上30年未満が3.08点,30年以上が4.44点であった. 【結語】腰痛有訴率からみると,性差においては女性が高く,看護部は他職種に比して顕著に高い傾向がみられた.経験年代別にみると経験年数が増加するに伴い高くなる傾向がみられた.腰痛のQOLにおよぼす影響を示すRDQ値において,性差は特にみられなかったが,経験年代別にみると経験年数が増すにつれて高くなる傾向がみられた.
  • 小坂 真貴, 松井 克明, 秋月 章, 瀧澤 勉, 山崎 郁哉
    セッションID: 2F110
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    長野松代総合病院(以下当院)では膝前十字靭帯(以下ACL)損傷者に対して、自家屈筋腱を使用した関節鏡視下再建術を施行している。今回、ACL再建術施行後の筋力回復への再建時の半月板、軟骨の合併損傷の影響を検討したので報告する。 <BR>[対象と方法]1999年8月から2006年3月までの6年7ヶ月の間に当院において、40歳未満で自家屈筋腱での関節鏡視下単一ルート再建術を施行し、約1年後に抜釘術を施行した155例であった。そのうち両側半月板損傷、内側側副靭帯損傷を合併したものは除外し、ACL単独損傷および半月板損傷、軟骨損傷を合併した106例を今回の対象とした。男性は59例で,再建時の平均年齢は28.46±7.14(SD)歳,女性は47例で,再建時の平均年齢は23.89±8.06歳であった。155例中、ACL単独損傷は28例(15.5%)、半月板損傷は116例(74.8%)、軟骨損傷は44例(28.4%)であった。 <BR>膝屈伸筋力の筋力測定はCybex350にて角速度30deg/secにて測定し、患側筋力を健側筋力で除した値を患健比とし、術前、術後6週、術後3ヶ月、術後6ヶ月、術後12ヶ月(抜釘時)において、男女別に比較検討した。 <BR>統計学的分析にはダネットの多重比較検定を用い、危険率5%未満を有意とした。 <BR>[結果] 今回、ACL単独損傷群の抜釘時筋力の患健比は、男性で約86%、女性で約82%の回復を示していた。全体では抜釘時の膝伸展筋力患健比は50%未満が3%、50%以上80%未満が32.6%、80%以上が64.4%であった。抜釘時の膝屈曲筋力は50%以上80%未満が16.4%、80%以上が83.6%であった。 <BR> 男性の術後6ヶ月時点での膝伸展筋力患健比において、内側半月版損傷合併群が0.71±0.12(SD)とACL単独損傷群の0.86±0.13に対し有意に低下していた。 <BR>女性の抜釘時での膝伸展筋力患健比において、外側半月版・軟骨損傷合併群が0.64±0.15とACL単独損傷群の0.82±0.08に対し有意に低下していた。 <BR>ほかの群間では男女ともに膝屈伸筋力の回復に差を認めなかった。 <BR>[考察]男性の術後6ヶ月での膝伸展筋力患健比において、内側半月板損傷合併群がACL単独損傷合併群に対し低下していたが、抜釘時には差を認めない事から一時的な回復遅延と考えた。しかし、女性の外側半月板・軟骨損傷合併群は膝伸展筋力患健比が約64%と低下していた。この原因については明確ではないが、今回の結果で平均年齢においてほかの群より高かったことは一因であるかもしれない。 今回、外側半月板損傷と軟骨損傷を合併する女性では、筋力回復が他の群と比べ不良であったことから、この合併症を有する症例に対しては長期的な評価や筋力訓練において特に配慮する必要がある。
  • 矢口 春木, 村野 勇, 橋本 貴幸, 中安 健, 大西 弓恵, 小林 公子, 大山 朋彦, 秋田 哲, 瀧原 純, 岡田 恒夫(MD)
    セッションID: 2F111
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【目的】当院では、2002年7月より人工股関節全置換術(以下THA)において、整形外科医師とクリニカルパス(以下パス)を作成し施行している。今回、パス施行より約5年経過するにあたって、当院でのTHAパス施行患者における状況について検討した。 【当院のパス】術前に機能評価、術後運動療法、脱臼予防、松葉杖練習を指導する。術後は翌日より床上リハビリ再開し、SLR、大腿四頭筋セッティング、足関節自動運動を施行する。術後2日ドレーン抜去後より離床を進め、股関節可動域を開始し、術後3日より筋力強化・平行棒内より起立・疼痛内歩行練習を施行する。術後2週までには病棟T字杖歩行を開始し、術後3~4週程度で退院となり、入院期間が28日間の予定である。 【対象】対象は2002年7月から2007年3月の間で、初回THAを施行し術後パスを用いた女性35名・男性7名で平均年齢は66.3±8.5歳の42例46股関節とした。 【調査項目】(1)診断名、(2)入院期間、(3)(2)よりA群・B群・C群に分け、バリアンスを抽出し検討した。 【結果】(1)対象者の診断名は、変形性股関節症(以下OA)35股、関節リウマチ(以下RA)6股、大腿骨骨頭壊死5股であった。(2)平均入院期間は39.7±13.2日間で、パス通り術後3週間(28日間)以内で退院した症例は6症例であった(A群)。約87%においてパスより入院期間が延期していた。延期する症例は、パス終了予定日より2週経過まで延期する群(B群)と、パス終了予定日より3週以上経過して明らかに長期化した群(C群)と分かれる傾向にあった。(3)A群では、OA基盤としたTHAであることと、バリアンスに制限を認めない症例であった。B群では、身体的な問題よりもバリアンスコード4Sで示される在宅でのケア提供者の不足や患者自身の精神的な問題により遅延する傾向にあった。C群では、バリアンスコード1A・2Gで示される合併症の存在など身体状態の問題と術後合併症のため医師の指示により遅延する傾向でパスにはあてはまらない症例であった。具体的な理由として各疾患に共通する項目は両側罹患例による初回片側施行時で、OA例で3例、大腿骨骨頭壊死例で2例であった。また、各疾患でOAであれば他関節疾患(膝OA・後彎症)で3例、術後合併症(感染危惧・循環器疾患)で2例、RA・大腿骨骨壊死であれば骨移植や術中骨折による荷重開始時期の遅延で各2例、また両側とも同入院期間でTHAを施行した1例で入院期間の遅延がみられた。 【考察】今回パス施行患者において入院期間の検討を行ったが、対象とした半数以上の症例においてパスより遅延していた。A・B郡においては、環境設定・情報の共有・パス後期での理学療法によるADL練習の強化により、効果的なパスの運用につながると考えられる。C群においては、障害の重症度に比例しており、対応するパスの作成が必要と考えられた。
  • 菊地 浩之, 横田 順, 高島 賢治, 高野 康二
    セッションID: 2F112
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉
     転移性肝臓癌や肝細胞癌等の治療の一手法として、当院ではラジオ波焼灼療法(RFA : Radio Frequency Ablation)が用いられている。平成18年1月の厚生労働省通達に、高度先進医療の施設基準の中に、臨床工学技士の配置が明記されている。当院では、同年2月よりRFAが導入され、その時点から患者への安全治療の一貫として臨床工学技士も関与している。高度化する医療技術の中で臨床工学技士の役割の重要性が認識される中、RFA治療に関する今後の展望を含めて報告する。
    〈目的〉
     チーム医療の一員(医師、看護師、放射線技師、臨床工学技士)としての役割と操作介助することによる安全な治療を目指す。
    〈対象〉
     転移性肝臓癌や肝細胞癌等の超音波エコー下経皮的焼灼術、開腹下における術中焼灼術の適応患者
    〈使用機材〉
    本体Boston Scientific社製RF3000、焼灼針LeVeenニードルΦ2.0/3.0/3.5/4.0cm、超音波診断装置
    〈臨床工学技士の主な業務内容〉
     使用機材の準備、出力の調整、操作者の介助、治療経過の記録、データベースの作成を行っている。詳細は下記の表に示す。
    〈考察〉
     ラジオ波焼灼装置の基本原理は電気メスと同様な出力を通電するシステムであるが、通電時間(一回の焼灼に約1~5分間を数回繰り返す)が長いため対極板を4枚(通常の電気メスは1枚)装着する必要がある。機器の特性などを習熟した上で操作、治療を行わないと重大な熱傷事故を引き起こす可能性がある。このことからもRFAは厚生労働省からの高度先進医療の施設基準の中に臨床工学技士の配置が明記されたものと思われる。以前は治療に関して「立ち会い」の名目で業者も治療に参加していたが、平成20年4月より医療機器業公正取引協議会から「医療機関等における医療機器の立ち会いに関する基準」が策定され業者による立ち会いが禁止される。そこで、高度医療機器に対して臨床工学技士と各職種の専門知識を一つに終結することで医療を安全かつ、円滑に行う事ができる。そのために、継続して日々技術ならびに知識の向上に努める必要があると考えられる。
    〈おわりに〉
     RFAのような高度先進医療機器を使用する場合、医療事故を未然に防ぎ患者の安全確保と操作を行うことが臨床工学技士の役割である。今後も、業務の迅速な改善や(記録、安全確認等の問題の発見)、他部門と連携がとれ、継続して安全な医療を提供して行くことが重要であると思われる。
  • 佐藤 舞子, 大島 和佳子, 村山 正樹, 加藤 崇, 山田 勝身, 長谷川 伸, 倉持 元
    セッションID: 2F113
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>一般に血液透析(HD)患者には低蛋白血症が認められ、この原因の一つとして体蛋白の合成の低下と異化の亢進が考えられている。この異化亢進には透析膜の生体適合性の良否も影響を与えていることが指摘されている。また透析膜からのアルブミン漏出も原因の一つでもある。そこで今回、我々は生体適合性が高くかつアルブミン漏出のない異なる透析膜(EVAL膜、PS膜)を用い、透析中に腎不全用アミノ酸製剤を付加した透析方法において、膜素材の違いが各溶質の除去と栄養状態に及ぼす影響を検討した。 <方法>外来通院透析患者5名(平均年齢69.6±9.7歳、平均透析歴8.4±4.4年、男性3名:女性2名、平均BMI18.14±1.18、平均DW44.04±5.97kg、糖尿病性腎不全3名:慢性糸球体腎炎2名)を対象とし、腎不全用アミノ酸製剤を透析ごとに投与しEVAL膜(Kf‐m12)とPS膜(APS‐11UA)を用い6ヶ月間のクロスオーバー試験にて、各溶質除去率、血清総蛋白、アルブミン、総コレステロール、トランスフェリン値及びHb、Ht値の変動を検討した。また透析液エンドトキシン濃度も併せて測定した。 <結果>BUN、Cre、UA、β2‐MGの除去率はPS膜で有意に増加した。さらにBUN、Cre、UA、IPの透析前値がEVAL膜に比べPS膜では低下傾向が認められた。Kt/VはPS膜変更後、3ヶ月以降有意に増加した。血清総蛋白濃度はEVAL膜に比べPS膜変更後有意に増加した。血清アルブミン値には両者間で有意差は認められなかったが、開始1ヶ月、3ヶ月、6ヵ月後でEVAL膜で0.75%、3.57%、-10.85%、PS膜で4.01%、8.18%、7.10%とPS膜で増加率が高かった。貧血改善に関してHt、Hbについては両者間での有意差はなかった。また、EPO使用量については両者間で特に差は見られなかった。総コレステロール値およびトランスフェリン値にも、観察期間中差はなかった。また、透析液(廃液)へのアルブミン漏出はともに認めなかった。透析液エンドトキシン濃度は観察期間中1EU/l以下であった。 <考察>今回の検討で、生体適合性が高くかつアルブミン漏出のない透析膜としてEVAL膜とPS膜を使用したが、PS膜にて血清総蛋白濃度の有意な増加と血清アルブミン値の増加傾向を認めた。この理由の一つとして、EVAL膜に比べPS膜ではKt/Vの有意な増加と各種溶質除去率の増加が認められたことから、小分子物質から低分子量蛋白に至るまで効率よく除去できた結果、蛋白の異化を促進する、もしくは合成を抑制する尿毒症物質の除去効率が向上した可能性が考えられた。その結果、同じ生体適合性が高くアルブミン漏出のないといわれているダイアライザー膜を使用していても、血清総蛋白およびアルブミン値の増加に差が出たのではないかと考えられた。 <結語>同じ生体適合性が高くかつアルブミン漏出のないダイアライザー膜を使用していても、血清総蛋白濃度、血清アルブミン値の増加には差異を認めた。これは膜の溶質除去性能の差に由来していると思われ、より除去性能の高い膜素材の選択は必要と考えられた。
  • 折田 祥悟, 吉田 昌浩, 今橋 美香, 新美 文子, 小俣 利幸, 及川 治, 磯貝 修, 柴原 宏, 高野 靖悟
    セッションID: 2F114
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】バスキュラーアクセスカテーテルは、透析導入時・アクセス不全によるシャント造設までの、一時的に使用されており、脱血不良等のトラブルもしばしば発生し得る。
    GentleCath:ジェントルキャスカテーテルは、軟質化されたカテーテルが血流にそよぎ、又180°位相した大孔径の脱血孔により、血管壁へのへばりつきや血栓形成を防止することで、これらのトラブルを減少させた上記カテーテルを当院にて開発するに至った。
    【目的】JMS社製クリットラインモニター(以下CLM)を用いて、バスキュラーアクセスカテーテルの再循環率を測定し、GentleCath :ジェントルキャスダブルルーメンカテーテル(以下Gentle-D) GentleCath Triple:ジェントルキャストリプルルーメンカテーテル(以下Gentle-T)の有用性について検討した。
    【方法】当院にて、上記のバスキュラーアクセスカテーテルを使用し、血液浄化療法を施行した症例を対象にCLMを用いて、Gentle-D・Gentle-Tの順接続時、逆接続時における血流量:100ml/min・200ml/min・300ml/minの再循環率・静脈圧、また最大血流量の測定を行った。
    【結果及び考察】Gentle-D・Gentle-Tはその構造から、脱血不良を抑制し高血流量が得られた。再循環率は、共に順接続時に血流量:300ml/minまでは5%以下であった。Gentle-Tは、カテーテル先端に輸液ルートを備え、再循環率も少ないことにより、急性期での血液浄化療法を安全に施行できることが確認できた。しかしGentle-D・Gentle-T共に逆接続時は血流量の増加に伴い、再循環率も上昇することから、逆接続での使用は十分な注意が必要であり、定期的に再循環率の測定をして、その程度を把握することは、透析効率の低下・カテーテルの交換時期の確認に必要と考えられる。
    【結語】Gentle-D・Gentle-Tは今回観察中、その構造上から脱血不良を認めず最大血流量、再循環率において優れており、有用であると考えられた。
  • 佐藤 真澄, 井上 知, 廣瀬 智明, 今橋 美香, 新美 文子, 折田 祥悟, 佐藤 健太郎, 斉藤 慎一, 小俣 利幸, 高野 靖悟
    セッションID: 2F115
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院は許可病床数437床、日本医療機能評価機構、地域医療支援病院、災害拠点病院を取得している地域中核病院である。今回、当院における臨床工学技士の業務について振り返り、今後の方向性について考える。
    【経過及び現状】
    当院は1993年4月に新卒の臨床工学技士1名を初採用、看護部所属で透析室に配属され、透析業務を行う。その後1999年4月医療技術部所属で臨床工学室を立ち上げ、臨床工学技士6名で透析業務、ME業務を拡大。現在、臨床工学技士12名(男5名、女7名)、助手1名で業務を行っている。
    臨床工学室は透析部門、病棟ME部門、手術室・心臓カテーテル部門の3部門に分かれている。透析部門ではHD、HDF、HF、L-CAPの臨床業務および関連機器の保守管理。病棟ME部門では生命維持管理装置を主体としたME機器(35機種562台)の保守管理、人工呼吸器、除細動器、患者監視装置などの病棟ラウンド(使用中点検)、急性血液浄化療法(CHF、CHDF、CHD、PE、DHP、PA)、高気圧酸素療法、医療ガス管理。手術室・心臓カテーテル部門では、心臓血管外科手術時の入室前から手術中の人工心肺操作、手術後搬送業務、心臓血管外科及び整形外科での自己血回収業務、補助循環業務、手術室で使用している機器(体外循環関連機器、麻酔器、麻酔モニタ、電気メスなど)の保守管理、心臓カテーテルの診断・治療時の補助及びIVUS操作を行っている。また、臨床業務以外に、ME機器購入の選定、スタッフへのME機器の勉強会、臨床工学技士養成校からの実習生を受け入れ、教育指導を行っている。
    【結果及び考察】
    ME機器の保守管理、病棟ラウンド(巡視点検)、各種勉強会を行うことにより故障トラブルが減少、運用が円滑となり医療安全につながった。また、病院機能評価取得時には、業務・緊急時の対応マニュアルを整備し業務手技の統一化、ME機器の管理責任者が明確になり臨床工学技士の有用性が高まった。最近では、臨床工学技士養成校から実習生を受け入れることにより指導力の向上及びスタッフのモチベーションが向上した。
    現在の問題点としては、管理機器が年々増加しており、開設当初に業務拡大を行うために管理を行った生命維持管理装置以外の機器管理が負担になっている。また、技士の配置体制も、半年から1年のローテーションにて各業務を行っていたが、各診療科がセンター化され、専門性が高まった。そのため、ローテーションでの対応が厳しくなり、2006年度より3部門化となった。今後の課題としては、業務の固定化も視野に入れ、各部門の専門技士の育成も必要と思われる。また、2008年度より業者立会い規制が始まるため、ペースメーカー業務や手術室業務が増えることも予想されているため、早急な人員増、研修が必須であると思われる。
    【まとめ】
    臨床工学室の設立は医療安全、チーム医療、経済面からみても有用である。
  • ~業務支援システムの構築~
    田中  直樹, 小辻  俊通, 大倉  実紗, 小西  敏生
    セッションID: 2F116
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院は病床数460床の地域中核病院であり、平成17年に臨床工学部門であるCE部が設立された。現在、臨床工学技士8名でME機器管理業務、血液浄化業務、循環器業務などを行っている。医療技術の進歩に伴い各種ME機器が導入され、業務拡大を求められるなか、効率的に業務を行うため、臨床工学技士業務支援システム(以下CE Office)を作成したので報告する。 〈方法〉CE Officeは、データベースソフト「File Maker Pro」で作成し、サーバーとして「FileMaker Server 7」を設置した。クライアントは各部門に設置し、院内LAN上で接続し、どこからでも情報が閲覧、書き込みができる環境にした。また、各クライアントごとにアカウントとパスワードを設定し、セキュリティーを強化した。機能としては、掲示板として、メッセージ(申し送り)、勤務表、待機表の作成。ME機器管理では、バーコードを使った貸し出し返却システムや、機器管理台帳、メンテナンス計画。血液浄化では、透析記録用紙やサマリーの発行、検討会の資料作成。循環器では、心臓カテーテル検査、PCI、QCA、IVUSデータ管理や、物品管理などがある。又、メッセージを必ず見るように、掲示板を初期画面とし、そこから各部門のデータベースにアクセスできるようにした。 〈結果〉院内LANを使用することにより、どこからでもアクセスでき、効率的に業務が行うことができた。掲示板を使用することで伝達が確実かつスムーズに行うことができた。ME機器管理では、貸し出し返却システムにバーコードを使用することで、容易に作業が行うことができ、誤記入がなくなり、データの信頼性が向上した。血液浄化では、患者データを透析記録用紙に反映することにより、転記ミスや記載漏れを少なくすることができた。循環器では、患者個別でデータをリアルタイム入力することができた。また、過去のデータ検索が容易になり、医師に迅速な情報提供がおこなえた。 〈まとめ〉データベースを自作することにより、低コストでシステムを構築することができ、施設に即した情報だけを管理することができるので、効率的に業務を行うことができた。また、必要に応じてシステムを変更することができ、今後の業務改善につながると考えられる。
  • 池部 晃司, 白井 和美, 笹谷 真奈美, 水野 誠士
    セッションID: 2F117
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    [症例]
    75歳、女性 主訴:嘔吐、意識障害 家族歴:特記事項なし 既往歴:肝・膵・腎障害あり、糖尿病、高脂血症あり 現病歴:平成18年1月18日、高熱のため近医受診し、インフルエンザと診断される.タミフルを処方され、帰宅.翌19日に解熱.20日朝、転倒し、夕方からめまいがあった.21日、嘔吐や意識が朦朧とするため、近医受診し、インフルエンザ脳炎や脳血管障害合併を疑い、当院救急外来へ搬送される. 現症:来院時意識障害があり、会話不可、発熱39.0℃であった.頭部CTより右側頭骨錐体後方の硬膜外あるいは硬膜下に点状のairが認められた.右乳突蜂巣の内部にはeffusionを疑わせる軟部影がみられ、背側の骨には一部に溶骨性変化が認められ、感染性中耳炎による骨破壊の結果、硬膜外あるいは硬膜下にairが漏出した可能性が示唆された.WBC:8.7K/μl、CRP:11.22mg/dl、血沈は亢進しており、髄液検査では多核球:26944/3/μl、TP:1010mg/dl、Gul:0mg/dlで細菌性髄膜炎を疑い、入院となった.

    [経過]
    入院後、細菌検査担当者が緊急出勤し、髄液検体でグラム染色を実施し、多数の白血球に貪食されるグラム陽性連鎖球菌を認めた.培養終了後の検体を用い、尿中肺炎球菌抗原検出キット(BINAX NOW)にて検査し、陽性の反応を得た.直ちに主治医に報告した.尿検体では陰性であった.培養では羊血液寒天培地にムコイド状のα溶血を呈するグラム陽性連鎖球菌を認めた.生化学的性状がカタラーゼ(-)、オプトヒン感受性(+)であり、Streptococcus pneumoniaeと同定した.薬剤感受性試験はPCG:0.12、MEPM:≦0.12、CTX:0.25、VCM:0.5μg/mlであった.ICU入室後、PAPM、CLDM、輸液により治療を開始する.翌22日には血圧、発熱ともに低下したが、CRPは高齢のためか劇的な改善はみられず、入院2日後には40.79mg/dlに上昇した.しかし、4日目以降改善の傾向がみられ、7日目には3.05 mg/dlに低下した.25日にはICUから一般病棟へ転床となったが、右耳痛と難聴があり、27日に耳鼻科へ転科し、中耳炎の治療を開始した.徐々に右耳痛と難聴がなくなり、2月11日退院となった.

    [まとめ]
    感染性中耳炎を起因とする肺炎球菌による細菌性髄膜炎を経験した.髄膜炎は診断、治療に迅速性を要する感染症であり、本症例ではグラム染色などの迅速な対応に加え、尿中肺炎球菌抗原検出キットの使用により早期から細菌性髄膜炎の診断ができた結果、後遺症も残らず、治癒させることができた.本キットは髄膜炎の早期診断の一助となる有用な検査法であると思われる.
  • 佐藤 嘉洋, 相原 乃理子, 鍛代 久美子, 小俣 芳彦, 菅沼 徹, 井野元 智恵, 飯尾 宏, 中安 邦夫, 篠田 政幸, 別所 隆
    セッションID: 2F118
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】2004年6月に乳癌取扱い規約第15版が発刊され,細胞診における報告様式も大きく変わった.当院においては,取扱い規約に先駆けて2003年7月より新報告様式を採用している.また新報告様式を導入した経験を当学会において発表し,当院での改善も行ってきた.今回われわれは,更なる精度向上を目的とし,乳腺穿刺吸引細胞診における「鑑別困難」例について,組織診断との対比および問題点について検討を加え報告する. 【対象および方法】2003年7月から2007年4月に当院で乳腺穿刺吸引細胞診が施行された,検体適正例574例中,「鑑別困難」とされた78例について検討を行った.組織診が行われたものについては,細胞診と組織診を比較検討した.また細胞診については,再度鏡検し問題点の抽出を行った. 【結果】検体適正574例中「鑑別困難」は78例(13.6%)であった.乳癌取扱い規約第15版によると“「鑑別困難」は検体不適正例を除いた細胞診総数の10%以下が望ましい”と付帯事項に記載されている.当院の13.6%は付帯事項に近い数値を示すものの,改善すべき数値であった.さらに「鑑別困難」の中から組織診と対比できた症例は,50例であり,組織診で良性24例,悪性26例だった.細胞診にて「鑑別困難」とされる場合は, “良悪の鑑別が困難な場合”特に重積性を伴う小型細胞の集塊があり,背景にはっきりとした裸核細胞(筋上皮細胞)が認められない場合や採取されている細胞が少なく,数個の小型細胞が索状様配列を伴う場合に分けられた.また細胞診と組織診との完全な不一致例はみられなかった. 【まとめ】当院での乳腺穿刺吸引細胞診での精度向上のため「鑑別困難」例に対し,再度検討を行った.「鑑別困難」とされる要因として,そのほとんどが「不規則な重積性」「配列」「筋上皮の有無」であった.これらは,FibroadenomaまたはPapillomaとDuctal carcinoma(Papillotubular carcinoma)との鑑別や細胞量の少ない悪性いわゆるDuctal carcinoma(Scirrhous carcinoma)と良性(正常)との鑑別に苦慮していた.「鑑別困難」例は,鏡検側の要因(経験や能力など)がほとんどであり,改善すべき事項であった.今後「鑑別困難」と報告する場合は,細胞検査士および細胞診専門医とでディスカッションすること.またその旨を所見に記入し,正確に臨床側に報告することで精度の向上が期待できると考えられた.
  • 吉本 一恵
    セッションID: 2F201
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 安全で安心な輸血医療が行なわれるために、厚生労働省は平成16年9月に「輸血療法の実施に関する指針」の一部を改正し、輸血前後の感染症マーカー検査の在り方について方向性を示した。当院でも輸血医療の安全性を確保する目的で平成18年5月より輸血前後の感染症検査実施を決めた。以下に輸血療法委員会で決議した輸血前後の感染症検査についての取り組みと実施状況について報告する。
    <方法> 1)輸血マニュアルの一部改定
    平成18年4月より輸血マニュアルの「輸血に関する説明書」に輸血前後の感染症検査を実施すること、輸血検査のための採血検体を2年間保存すること、生物に由来する原料や材料を使って作られた医薬品(血液製剤)による感染等の健康被害について救済する「生物由来製品感染等被害救済措置制度」があることを追加記載し、患者に説明することとした。
    2)輸血前感染症検査の実施
    輸血前感染症検査は、輸血依頼時に交差試験用血液と輸血前感染症検査用血液を採血しておき、厚生労働省が示した「輸血療法の実施に関する指針」で定められている輸血前検査(HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体・HCV抗体・HCVコア抗原・HIV抗体)がすべて実施されるように輸血実施後に検査科において検査項目を依頼することとした。
    3)輸血後感染症検査の実施
    患者が輸血後2~3ヶ月経過した時に、検査科で作成した輸血チェックリストをもとに該当者をリストアップし、外来患者は1ヶ月後に入院患者は2ヶ月後に「輸血後感染症検査通知書」を各科に配布することとした。患者自身には輸血後感染症の必要性を説明し、検査を勧める目的で「輸血後感染症検査のご案内」を渡し、来院時に持参していただくこととした。また医師のオーダー画面には輸血後感染症セット項目をつくり必要に応じて依頼してもらうこととした。
    4)輸血前検体の保存
    輸血前感染症検査で使用した血清1ml程度をポリチューブにて-20℃で2年間保存することとした。
    <実施状況> 平成18年5月より12月までの輸血感染症検査実施状況は、輸血実施人数138名でそのうち輸血前感染症検査を実施した人数85名、輸血後感染症を実施した人数30名(死亡者人数20名)であった。頻回輸血患者を除いた輸血前感染症実施率は68%、死亡者を除いた輸血後感染症検査実施率は46%であった。
    <考察・まとめ> 当院輸血システムはオーダリングシステムではなく手作業で行っているため検査オーダー漏れや輸血後感染症検査実施日時の把握など課題もあるが、輸血前感染症検査は検査科でオーダー入力をすることにより成果を上げることができた。また輸血後感染症検査は、「輸血後感染症検査通知書」、「輸血後感染症検査のご案内」などの発行や各診療科・病棟の協力があったため比較的良い結果となった。今後さらに実施率を向上させ安全な輸血医療を実施していくためには医療スタッフの連携が必要不可欠であり、そのためには輸血療法委員会を通じて話し合い、より一層の努力をしていきたいと考える。
  • 吉田 真理, 佐藤 真美, 山本 順子, 木村 由美子, 矢吹 貢一, 児玉 正吾, 佐藤 長典, 高野 康二, 福岡 俊彦
    セッションID: 2F202
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉人工呼吸療法に関する重大な医療事故が全国各地で報道されている。そのほとんどが呼吸療法に精通した医療職が充実していれば防げた事故と思われる。そこで、当院では人工呼吸器使用患者の安全を確保する目的で「3学会合同呼吸療法認定士(以下呼吸療法認定士)」の合格者を中心に、平成17年2月より「呼吸療法チーム」を結成した。それぞれの職種での専門分野の知識を統合して、病院内における呼吸管理のレベル向上を目的に活動しているので報告する。
    〈チーム構成〉呼吸療法認定士 8名(看護師 5名 理学療法士 1名 臨床工学技士 2名)と呼吸器内科医師(日本呼吸器学会指導医)1名の合計9名で構成されている。
    〈活動目標〉「人工呼吸器による事故防止のための教育の実施」「呼吸療法認定士の各病棟最低1人の配置」の教育と広報活動に重点を置く。
    〈活動実績〉_丸1_全職員を対象にした勉強会の開催(年2回)_丸2_少人数制で行う人工呼吸器の使い方(毎月2回4チーム程度に分けて直接機械を操作する実践編)_丸3_理学療法士による排痰理学療法の実践_丸4_口腔ケアを通したVAP感染予防を目的とした院内統一した口腔ケアマニュアルの作成と勉強会(歯科衛生士と連携)_丸5_人工呼吸器のアラームとナースコールの連動システムの構築(アラームが鳴ると病棟ナースコールと担当看護師のPHSにも連動して発信するシステム)_丸6_人工呼吸器用電源延長コードの作成(プラグ側をL字型プラグ、ソケット側はロック付を標準装備)_丸7_人工呼吸器の初期設定の院内統一(ME中央管理部門から貸し出す時点での統一)_丸8_人工呼吸器指示書および確認チェックシート作成(医師の指示、看護師、臨床工学技士が確認、看護師は最低でも1日3回の勤務交代時に2人で患者のベッドサイドで設定確認をする。臨床工学技士は看護師がチェックした内容の確認と機械の動作確認、安全性を重視した点を確認する。_丸9_その他、呼吸療法認定士の受験対策として講習会、試験の案内書配布、受験者の試験に対する疑問点の勉強会など
    〈考察〉人工呼吸器使用患者の安全確保と事故防止を第一に考えた場合、人工呼吸器に慣れるのが一番であると考え、機械に触れて、見て、記録する手法=「人工呼吸器指示書および確認チェックシート」を用いた。この手法で一年間行った後の意識調査では「必要である」と答えた人が、導入前は46%、導入後は99%であった。以前は机上の上の申し送りで指示と実際が違うことがあったが、勤務交代(3交代)毎に実際に看護師2人がベッドサイドで確認するという手法は安全がより確保できるようになったと考えられる。看護師自身の意識からも2人で点検記録することから、より安心感を与えたようである。
     勉強会を何回か実施したことにより呼吸器管理に興味を示し始め、勉強会にも積極的に参加するようになった。また、チームの会議では、それぞれの職種の集まりであることから、様々な意見、提言が寄せられ、より専門的な知識も得られ、発展的なチームとすることができた。チーム活動の目標である各病棟に最低一人の呼吸療法認定士の配置目標は達成出来ていないのが今後の課題である。
    〈おわりに〉今後もチームで活動し、人工呼吸器関連の医療事故ゼロ、そして呼吸管理の医療の質向上に向けて活動して行きたい。今年度からは、独立した委員会として発足し、より活発な活動が期待されている。
  • ~統一した安全安楽な行動制限を目指して~
    西島 由佳, 伊藤 亜希, 長谷川 つかさ, 中野 みさと, 藤田 牧子, 江本 はる美
    セッションID: 2F203
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】看護師が正確に患者情報を捉え、統一した行動制限を実践しているかを調査する。 【研究方法】1)調査期間:2006年7月1日~12月10日 2)調査対象:当病棟看護師調査に同意の得られた看護師23名。調査方法:自記式質問紙法。質問項目は_丸1_対象属性2項目_丸2_質問項目は行動制限についての情報収集6項目・記録6項目・マニュアル6項目・安全具の使用方法5項目[5段階評定法 5:絶対にしている4:ほぼしている3:時々している2:あまりしていない1:全くしていない]、自由記載1項目にて構成。調査開始時に目的と倫理的配慮について文章で説明し調査を依頼した。統計処理はSPSS11.0にて行った。 【結果および考察】有効回答率は91.1%。情報収集の項目では「スタッフ同士の情報交換」平均値3.81(SD1.03)、「患者の状況をみて情報収集」3.75(SD0.91)、「行動制限観察記録用紙情報」3.38(SD1.11)、「フローシート情報」3.33(SD1.19)、「カルテ情報」2.71(SD0.95)の順で、最低値は「カンファレンス情報」2.38(SD1.02)であった。記録の項目では、最高値が「行動制限観察記録用紙」平均値3.24(SD1.13)、「カンファレンス記録」3.05(SD1.19)、「行動制限開始時記録」3.00(SD1.00)、「医師カンファレンス記録」2.55(SD1.05) 「行動制限変更時記録」2.52(SD1.03)、「看護計画記録」1.86(SD0.79)で全体的に低値であった。これにより、記録の充実が図れていない為に患者情報をカルテやフロ-シートから得ず、スタッフ間での口頭情報が主となり、統一した看護実践につながっていない事が示唆された。マニュアルの項目に関しても、「目的理解」「基準理解」「開始手順理解」「危険アセスメント実施」の4項目の平均値が3.05~3.24と低値で、「チームカンファレンス実施」「医師カンファレンス実施」3.52~3.75と高値であった。このことから定期業務は実施できているが、院内マニュアルを熟知できていないまま看護実践を行っていることが理解できた。安全具の使用方法の項目は5項目とも、平均値3.80~4.19と高値を示し的確な看護実践ができていると考えられる。 対象属性別にみると看護師経験年数では、「マニュアルの基準理解」(p<0.05)に有意差が見られた。有意差のあった項目の平均値は1~2年目、3~4年目、5~6年目が2.60~3.25と低値に対し、7年目以上は4.25で高値であった。有意差は認められなかったが「マニュアルの目的理解」においても7年目以上が4.00と他の経験年数より高値を示していた。以上から、経験を重ねた看護師は看護実践を行う為にマニュアルを熟知する必要性を理解していると考えられる。 病棟での経験年数では、安全具の使用方法 (p<0.05)で有意差が見られた。1~2年目の平均値が他より低値であったのは、安全具の使用方法マニュアルがないこと、行動制限に対して経験が浅いことが関係していると考えられる。 自由記載で‘行動制限を統一して行える方法が必要’‘行動制限内容が正確に伝わる方法が必要’‘カンファレンス回数を増し、情報を共有化し適切な行動制限の検討が必要’の意見があった。行動制限を統一して行うためにカンファレンス情報を共有し記録することが必要と理解している反面、実施に至らない現状であると考えられる。 【結論】今回の調査により、マニュアルの周知徹底がされていないこと、情報を共有化する為の記録が徹底されていないことが明確となった。これは患者情報を得る手段がなく、統一した看護実践が出来ていないことを示唆する。今後、記録の重要性を再認識しマニュアルの徹底を図り、統一した看護実践を目指し改善策を検討していきたい。
  • 近藤 久子
    セッションID: 2F204
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【はじめに】医療の現場で事故に遭遇した患者は感情的に混乱した状態であり、医療者が医学的立場で主張しても問題が大きくなるばかりである。そこで医療コンフリクトマネジメント技法を用い、ケア的応答によって患者側のニーズや問題を明確にして対応することで感情的混乱を自らの力で克服していった1事例を考察する。
    【医療コンフリクトマネジメントとは】 医療の現場で不利益なことが起こった場合、家族は不安や葛藤に襲われパニック状態になることがあるため、医療者側と家族の意見・価値観に相違が生じ、対立する。これらを解決するため、調停者が家族と向き合いながら主張や不安を聞き出すことで現実を正しく理解してもらい、立ち直れるように支援することで悲嘆から回復できるようにする。
    事例紹介 患者:90代男性。独居。下痢・嘔吐で入院中に夜間譫妄のため転倒した。その直後の頭部CT撮影に異常はなく、退院後2週間してから脳外科で硬膜外血腫と診断され血腫除去術を行った。既往として経皮的腎瘻造設
      クレームの内容 医師から譫妄を「一時的なボケ」と説明されたことや看護師が転倒した際、家族に協力を依頼したことで強い怒りをもった。
    【結果】
    _丸1_1回目面談(表1参照)
    1回目の面談は平行線をたどり、次回に再度面談となった。
    _丸2_調停者との話し合い(表2参照)電話や面会時を利用して患者側の思いを受け止めた。医療者には患者の言い分に対して真意を確認した。
    _丸3_2回目の面談 家族はこれまでの思いを述べた。「転倒によって、硬膜下血腫が発症したので混乱してしまい、現実を認識できなかった」と素直な思いを述べ、医療者側は転倒によってご家族に不安を与えたことを真摯に受け止めた。調停者から「その当時はどのような状況でしたか」と質問を投げかけることで、当時の状況を看護師から家族に正しく伝えることができた。家族は「父のことをよく覚えてくれてありがとうございました。」と真相を理解する言葉が聴かれた。
    【考察】患者の転倒で家族が混乱している時に、医療者が医学的正論を前面に出したことが今回の原因と考える。調停者と応答を重ねていくうちに感情が沈静化し、現実を正しく認識しようという気持ちに変化し、変容が見られたと考える。そのことでお互いの思いが理解でき、納得のいく合意が得られた。
    【まとめ】紛争の対応には医療コンフリクトマネジメント手法が有効であるとおもわれる。
    表1第1回目の面談 患者の主張:これだけの(転倒後手術)ことをされたので最後まで責任を取ってほしい。
    表2 調停者との会話 患者の主張:説明をまだ十分にしてもらっていないのでもう一度説明してほしい。
  • ~透明フィルムドレッシング材での大きさの比較・検討~
    加藤 やよい, 大谷 恵実子, 工藤 政茂, 石田 伸也, 大野 祐子
    セッションID: 2F205
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈はじめに〉バスキュラーアクセスには、シャントタイプと非シャントタイプが ある。BR 後者は維持透析の導入時や、内シャント閉塞時・急性腎不全などの緊急用としてバスキュラーアクセスカテーテル(以後カテーテル)が留置される。BR 当院ではADL低下予防と、カテーテル挿入時の合併症が少ない事を理由に内頸部に挿入することが多い。頸部は関節可動域が広く、透明フィルムドレッシング材(以後ドレッシング材)の固定後、皮膚に隙間ができやすく、CDCガイドラインの7日毎の交換が保てず2~4日で交換している現状である。今回、頸部の可動域を考えドレッシング材の大きさに着目して、研究を行ったのでその結果を報告する。BR 〈研究目的〉カテーテル挿入部保護に用いるドレッシング材の、頸部における剥がれにくい貼用法を研究する。BR 〈調査対象〉 被験者:同意を得たスタッフ5名BR 実施者:研究メンバー(対象と実施者を変更せず皮膚と手技の条件を一定にする。)BR 実施場所:腎センター処置室内患者用ベッドに被験者が臥床した状態で実施する。 尚、処置室内気温は26℃とする。BR ドレッシング材の大きさ:現行サイズと、BR 現行の1/4サイズ。(カテーテルのU字部分にかからない為 )BR 〈結果〉今回の結果(図1)で、現行サイズと1/4にカットしたサイズでは、剥がれた割合に有意な差が認められた。BR   図1 ドレッシング材の大きさと 剥がれた面積の平均値    〈考察〉カテーテルは直径約4mmと太い為、挿入部を保護するドレッシング材と皮膚に隙間ができ易い。そして頸部は屈曲60°・伸展50°・左右回旋60°・左右側屈50°と関節可動域は広い為、1/4サイズに比べて現行のサイズだとドレッシング材の面積が大き過ぎて、頸部の動作による皮膚伸展の影響により、隙間を作ったと考える。また頸部の長さ・太さ等、患者の体格によっては現行のサイズでは大きすぎて、ドレッシング材外縁が下顎部や頭髪と、ドレッシング材が密着しにくい部位にかかっていた。さらにカテーテルはU字に湾曲しており密着しにくく、現行サイズだと100%U字に沿って剥がれていた。ドレッシング材の使用方法には「創部の外縁より2~3cm大きい物を選択する事」とドレッシング材の添付資料にある事から、1/4サイズでも5cm×6cmの大きさがあるので挿入部の保護には十分な大きさがあると考える。BR 〈結語〉現行サイズが剥がれやすい原因は、皮膚の伸展や患者の体格により隙間ができる事、サイズが大きすぎてカテーテルのU字部分や頭髪にかかる事である。又、現行のサイズだと固定テープを剥がすとドレッシング材が一緒に剥がれていた。以上の事は1/4サイズのドレッシング材を使用することで回避される為、1/4サイズの方が有効である。BR
  • 谷田部 哲夫, 海老原 準
    セッションID: 2F206
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉最近、いろいろな病院でさまざまな医療事故が起きている。医療機器管理の必要性または安全性が求められている現在、当院でも平成14年4月に臨床工学部が設立され人工呼吸器をはじめとして様々な医療機器の保守管理を行ってきた。中央管理のシステムの構築、機器の定期点検・修理全般に携わりハード面での安全確保は確立することができた。平成17年8月に臨床工学技士の立場からME機器関連の内容を中心に、医療従事者の資質向上として忘れている知識の掘り起こしと、新しい情報の提供をコンセプトに院内新聞(以下CEmail)を発行してきた。そこで今回、CEmailの紹介とCEmailがどのような形で浸透しているのかアンケートをとり検討したので報告する。 〈方法〉対象は医師を含む全職員とした。内容は、知っているか・読んだことはあるかなどの認知度について、その他、分かりやすいか、業務に役立つかなど5段階評価とした。 〈結果〉CEmailは2カ月に1回定期的に発行して各部署1~2枚配布している。紙面は、縦型A3用紙1枚1面の縦2段構成である。内容は特集記事・MEの戯言(コラム)・レスピレトリーケアー・豆知識の4つから成り立っている。アンケートの回収率は83%であった。知っていると答えた人は93%、読んだことがある人は92%でほとんどの職員に浸透していることが理解できた。また、読んだことがない人達の理由は、見たことがない・知らないと答えた人が殆どであった。分かりやすかったですかの問いでは、5の評価は23%で、4の評価は40%であった。業務に対して役立つ内容であったかの問いでは5の評価は21%で、4の評価は35%であった。また、職員個々において身近なME機器が様々ありいろいろな感想・意見が得られた。 〈考察〉現状では、ワンポイントアドバイス的に、機器を安全に使用するために最低限知ってもらいたいポイントを、イラストや写真を多用し、分かりやすい言葉で説明している。今後は、院内外で報告された安全性の情報や、ME機器に関連した講習会の情報、または新規納入機器の情報などの掲載にも力を入れたい。 〈結語〉このCEmailの発行以降、スタッフからは内容が分かりやすく、役に立つ、また部署の末端からはいつでも手軽に閲覧できるので便利でよい。個人的には、コピーして保存しているなどの意見もあった。しかし、内容がありすぎ・字が多くて読みづらいなどの指摘もあった。今後の課題としては全ての職員が読んでいる状況にはまだなく、発行部数・間隔など、より確実に情報を伝達する方法について検討する必要があると思われた。やがては、院内LANを利用した情報の提供や個々のME機器の取り扱い注意などの情報提供も考慮していきたい。
  • 天野 博貴, 山本 誠, 上村 小奈美, 田中 明美, 大塚 昌良, 宮崎 聡, 高畑 武司, 大川 伸一
    セッションID: 2F207
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院は人口約10万人を有する、神奈川県伊勢原市にある413床の一般病院である。市内には他に一般病院が2病院あり、うち1病院は大学病院である。診療所は55施設ある。所属医師会は、隣接する秦野市と併せた秦野・伊勢原医師会である。
     地域医療連携室が設置され7年が経過した。2006年度の紹介患者総数は10089人で、うち2730人が放射線科への画像診断での紹介であった。地域医療連携室が設置された2000年度の紹介患者総数は4394人であり、放射線科への紹介は128人であった。紹介患者総数の増加に比し放射線科への紹介患者数の増加が顕著で、このことは画像診断に対するニーズの高さを物語っている。同時にこのニーズを的確に捉え、紹介数の増加を目指した取り組みを行ったことが功を奏したと言える。また全紹介患者の地区別内訳と放射線科のそれでは若干の相違が見られる。
     今回は地域医療連携における画像診断へのニーズと放射線科の役割について、紹介患者数の推移と今後の可能性も含めて考察し報告する。
    【放射線科紹介患者数の推移と全体に対する割合】
     2000年度の紹介患者総数は4394人、放射線科への紹介は128人(2.9%、月平均10.7人)、2001年度は4831人に対し268人(5.5%、22.3人)、2002年度は6499人に対し1391人(21.4%、115.9人)、2003年度は8100人に対し2323人(28.6%、193.6人)、2004年度は9226人に対し2415人(26.2%、201.3人)、2005年度は9510人に対し2205人(23.2%、183.8人)、2006年度は10089人に対し2730人(27.1%、227.5人)であった。
     2002年度に急増したのは、前年度にMDCTが導入されたのに加え、それまで0.5テスラMRI装置1台であったのが1.5テスラMRI装置が増設された結果である。2005年度に一旦数が落ち込んだのは、0.5テスラMRI装置を1.5テスラMRI装置に更新するための工事期間中に、検査待ちが長くなり紹介を敬遠された結果と推察される。2006年4月には1.5テスラMRI装置2台体制となり、MDCTも増設され2台となったことにより、検査待ちが短縮された結果、検査紹介が戻ったものと考えられる。
    【地区別紹介患者数における放射線科の特徴】
     紹介患者数の地区別内訳では、全体と比べ放射線科では平塚市と中郡からの紹介患者数の割合が多いのが特徴である。このエリアでは高額医療機器の整備が遅れており、かつ新規開業が多い。また隣接する秦野市や厚木市に比べ道路の渋滞が少なく患者送迎が容易である。当初よりそのことを睨み、このエリアに積極的な営業を展開した結果が数字となって現れていると思われる。
    【今後の戦略と可能性】
     診療所では保有が難しい高額医療機器による画像診断のニーズは確実に増加している。特に新規に開業する比較的若い先生方からの依頼の割合が多い。開業前に大学病院や総合病院に勤務し、画像診断の依頼を出すことが日常茶飯事であった先生方にしてみれば当然のことである。即ち地元医師会の範囲内にとどまらず、隣接エリアの医療施設での高額医療機器の導入・更新状況を常に把握すること、新規開業情報を詳細かつ的確に得ることが、紹介患者数の着実な増加に繋がるものと考えられる。
  • 村田 郁子, 萩原 利江, 山本 誠
    セッションID: 2F208
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的 当院は地域支援病院を目指し、平成12年より地域医療連携室を設置し、地域連携を推進しております。薬局においても院外処方発行率約55%の現状にあり、地域薬局との連携強化のため、薬局研修会を開催し3年経過したので報告いたします。 2.方法 平成16年3月より開始し、1年間に8回、平成19年3月現在まで計25回 開催しました。対象者は主に市内薬剤師会加盟の地域薬局薬剤師とし、他は近隣病院薬剤師と当院勤務薬剤師及び勤務者です。参加者には次回の開催案内を行い、更に市内薬剤師会宛に案内をすると、薬剤師会で参加の取り纏めをして、3日ほど前に地域医療連携室に出席者リストが送られてきます。 開始1年間は地域薬局薬剤師の出席に配慮し第3木曜日19:00~20:00としたが、近隣薬剤師会の研修会と重なったため、希望の曜日・週についてアンケート調査を実施し、平成17年6月より第2木曜日に変更、時間も18:30~20:00とし現在に至っています。 研修内容は各疾病の新しく改訂されたガイドラインの理解、希望の薬効分野、その時のタイムリーな新薬・話題を中心に行なっています。また当院医師講義、当院薬剤師の事例報告も随時行っています。平成17年9月より日本薬剤師研修センター集合研修認定研修会として登録しました。 3.結果 開始当初の参加人数は地域薬局薬剤師、病院薬剤師各10名の合計20名程度であったが現在は地域薬局薬剤師の参加が平均30名と増加し計40名となっています。 研修会実施後の研修評価のアンケート調査では適切で業務に役立つとほぼ満足しており、今後の継続参加と希望研修内容の回答を得ました。 4.考察及び結論 地域連携の一環として開始し、“共に学ぶ”姿勢を強調し、参加者の希望を確認しながら継続開催してきた薬局研修会は場所が当病院会議室で近いため時間的に参加しやすい、また日本薬剤師研修センター認定研修会として登録した事がこれから認定薬剤師習得を目指す薬剤師にとっての参加理由になり、地域薬局薬剤師に認知され多くの参加を得る事ができ、3年間継続する事ができました。 今後も更に内容を充実させ、地域薬局との連携強化のため業務に役立つ研修会を継続して開催していきたいと考えています。
  • 倉益 直子, 江連 とし子, 柴田 教子, 黒田 かよ子, 西塚 裕子, 馬場 百合子, 田内川 明美
    セッションID: 2F209
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)
      急性期病院において新人看護師の離職率が増加傾向にあり、新人の受け入れ体制の整備と新人看護師に対する院内教育の改善が緊急の課題となっている。当院では、昨年より教育専任者を置き、新人教育委員会を中心に、採用時オリエンテーションや院内研修、現場の受け入れ体制のチェックを行ってきた。その中で、新人の教育環境に差があることや、指導モデルであるプリセプター自身も過重でストレスを抱えているなどの問題も明らかになった。そこで、プリセプターをサポートし、新人教育の院内標準化を図ることが必要であると考え、「新人看護師育成パス」の作成を試みたので報告する。
    (方法)
    1)2006年4月~2007年3月
    2) 方法
    _丸1_ 2006年の新人教育の現状を把握するために、新人看護師24名・プリセプター21名・新人担当指導者(看護主任)12名に対して集団面接およびアンケート調査を実施
    _丸2_ _丸1_の結果をもとに、指導者を中心に年間の指導計画書として「新人育成パス」を作成
    (結果および考察)
    _丸1_ 新人看護師へのアンケート(4段階評定尺度・回収率83%)では、プリセプターは親切に指導してくれた(4点中3.8点―以下同様)上司はたびたび声をかけてくれた(3.7点)1年間で辞めたいと思ったことがある(3.2点)入職前に思っていた仕事と実際はかなり違った(3.05点)夜勤に入る時期は適正だった(2.89点)受け持ち患者を持つ時期は適性だった(2.93点)医療事故をおこさないか不安だった(3.6点)仕事で認められたことや褒められたことがある(2.89点)集合教育は役にたった(3.05点)などの回答であった。アンケートから新人は職場での支援にほぼ満足しているものの業務への不安を抱えていることがわかった。
    _丸2_ プリセプターへのアンケート(4段階評定尺度・回収率67%)では、プリセプターとしての役割が果たせた(4点中2.42点以下同様)プリセプティとの信頼関係が築けた(2.78点)上司のサポートが得られた(3.5点)他のスタッフのサポートが得られた(3.14点)プリセプターをやって良かった(2.57点)であった。プリセプター自身も、どう教えたらいいか難しさを感じながらも、新人の育つ姿が嬉しかったという意見もあり、信頼関係にもつながっているが、「どう教えたらいいかわからなかった」という意見から、指導方法についての共有化が必要であることがわかった。
    _丸3_ 現場での指導上の悩みは、プリセプターとのマッチングの問題や業務と指導の兼務で中堅看護師の負担増の問題、新人の一人立ちの時期の評価の問題などであった。全体として、その部署の上司やスタッフの考えや関わりが違っておりそれぞれが悩みながら新人を育てていることがわかった。
    _丸4_ 各部署共通の指導計画書として作成した「育成パス」は横軸に12ヶ月、縦軸に技術チェックやコンピテンシーチェック、集合教育、育成面接などを教育プログラムとして配置した。夜勤業務に入る時期や受け持ち患者を持つ時期をチェックリストにより客観的に判断できるようにした。「育成パス」は、部署間の情報の共有化を図り受け入れ体制の差を少なくすることができた。
      (まとめ)
    「新人育成パス」を作成したことにより、新人教育に必要な教育環境の整備ができ、指導の標準化を図ることができると考える。
    参考文献:1.小坂智恵子 「新任者の育成デザインを設計する指導計画書」
                          看護実践の科学  Vor31 No4 2006.4 
  • ~応援を研修として位置づける試み~
    塚田 和美, 渡邊 豊子, 波多野 直子, 板倉 範江, 神宮 みつる
    セッションID: 2F210
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院では部署間の応援機能が確立されておらず、突然の休み・慢性的な人員不足からくる応援依頼があった場合、看護管理室がスタッフの人数・入院患者数を確認し応援可能な部署へ依頼しているのが現状である。スタッフの意識も「行ってあげる」「お手伝いだから」といった思いが感じられる。 平成20年には移転新築を控えており、病棟が再編成されるため、応援機能の充実は必要不可欠となってくる。そこで飯田市立病院看護部で取り組んだ応援体制を参考にし、看護師個人の学びの蓄積を意識させる応援を、院内研修と位置づけ取り組んだ。 <目的> 1. 所属部署で体験できない看護業務を研修し、看護実践能力の向上を図る。 2. 他部署の状況を知り、業務改善の手がかりとする。 3. 看護技術の統一と看護のレベルアップを図る。 4. 移転に向けて部署間の連携強化を図る。 5. 患者ケアの充実を図る。 <方法> 1.期間:平成18年6月から12月 2.対象:卒後3年以上の看護師 3.方法 1)研修の定義づけ   [予定院内研修]    事前に予定を立て部署間で調整を図り    効果的に計画した研修   [緊急院内研修]    看護力の低下が予測された部署より依頼を受け目的を持って応援する研修 2)研修別の記録用紙を作成 3)記録用紙の運用の体制を整える 5)研修を受け入れる側・出す側の体制を 整える。 <結果>総研修件数123件のうち、記録用紙の活用は42件で34%の提出でそのほとんどが緊急研修であった。内容は清拭・処置・食事介助・患者移送といった看護ケアが中心でであったが、研修者からも受け入れ側からも多くの気付きと、学びが得られ以下のような意見が聞かれた。 ・研修者は自分の部署でも取り入れたい業務の工夫を学ぶことができた ・受け入れ側は、研修者が不安なくケアに入ることができ、患者様に安全な看護が行えるような情報提供の必要性を感じた ・受け入れ側は指導内容の振り返りができ、責任ある指導につながった <まとめ>今回の研修を通して個人のスキルアップも図ることができた。研修に出す側・受け入れる側の体制を整備したことにより、各部署間の垣根を越えた交流の場として職員がのびのび相互成長でき、よい成果がでたと思われる。 この研修を継続することにより看護業務の統一を図ることができ、移転後の病棟間の連携強化にもつながると思われる。更にこの取り組みの定着により看護の質の向上が図れ、患者満足度を高めることになると期待する。
  • 中野 純一, 犬飼 真生, 川口 義明, 大田 健, 山下 直美
    セッションID: 2F211
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉1985年に宮本らにより行われた藤枝市における成人の気管支喘息の有症率は3.14%であった。この調査によりそれ以前の文献上の報告による1960年代の喘息有症率1〜1.2%,あるいは1970年代後半から1980年代前半の喘息有症率1〜2%という結果と比較して1985年の成人の喘息有症率が増加していることが示された。その調査後の医療統計により,喘息受療率・患者数の増加が示され,喘息患者の外来患者数の増加が示されている。このような患者数増加の傾向は気管支喘息の特徴としてその年齢分布が小児から成人と社会的な活動が期待される年代にわたっており,その点で医療のみならず社会的にも気管支喘息は注目されている。このような状況の中で同一の地域における喘息有症率の変化を検討することは正確に気管支喘息の動向を把握しかつ喘息に関与する要因の解明と対策のために重要である。小児の喘息有症率に関しては福岡県北九州市における調査があり,1971年1.7%に対して1985年5.4%であり小児喘息の有症率の増加は明らかにされている。一方で成人における同一地域での喘息有症率の検討はない。このような背景をもとに我々は1985年に引き続き藤枝市において成人の喘息有症率について検討を行うこととした。 〈方法〉今回の調査では藤枝市の都市部、農村地区および中間地区の4地域で15歳以上の4187人を対象とし,米国胸部疾患学会の制定した要項 (ATS-DLD) をもとに調査を行った。アンケートの項目としては症状と医療機関での診断をもとに有症率および現症とを解析した。 〈結果〉有効回答率91.5% (3829人)であり,今回の有症率は4.15%と1985年(3.14%)より増加していた。さらに各地域での降下ばいじん,NO2 ,SO3 などの大気汚染の変動と有症率の変化について検討したが,両者に有意な相関は認めなかった。ただしNO2の変動率は、その喘息増加率と弱い相関を示した。また喘息の背景因子としては喘息以外のアレルギー性疾患の合併が喘息者(59.8%):非喘息者(28.9%)であり,また自宅でのペットの飼育が喘息者 (50.9%):非喘息者 (4.1%)と有意差 (p < 0.05)を認めた。 (考案)今回の検討で成人の喘息有症率の増加が示され,その一要因として環境中のアレルゲンの重要性が示唆された。家畜の種類やその飼育形態に関してさらなる検討が望まれる。さらに今回の環境測定では捉え切れていないが、農村地区の開発の中で交通量の増加による微小粉塵などの変化が喘息と関連する可能性もあわせ検討が必要と考えられた。
  • 山田 学, 大林 浩幸, 大塚 守紀, 服部  哲男, 重山  昌志, 直井 秀樹, 永木 寛之, 伊藤 美智子, 西尾 政則, 平石 孝
    セッションID: 2F212
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 患者自身が過去4週間の喘息コントロール状態を短時間で自己評価できる喘息コントロールテスト(ACT)を用い、喘息患者の評価をした。
    【方法】2006年3~4月に受診したStep2以上の喘息患者133名(平均65.9±16.3歳、男68女65名)を対象にACTを実施した。専門医患者群90名と非専門医患者群43名間でACT結果の差を検討し、専門医患者群のACT値は、GINAガイドラインに基づく専門医評価と相関するか検討した。
    【成績】 全体の45.1%(60名)が25点満点、43.6%(58名)が24~20点となったが、専門医・非専門医患者間の各ACT値は23.5±2.8、21.5±4.2(p=0.0021)と有意差があった。非専門医患者群は専門医患者群と比較し、吸入ステロイド剤導入時期に有意な遅れがあり、肺機能検査施行率も著しく低かった。専門医患者群のACT値はGINA評価と相関し(Spearman相関係数 0.49943、p<0.0001)、GINA評価とACT評価が一致した患者は76.7%(69/90名)いた。一方、GINA評価でnot well controlled患者群で、ACT総合点20点以上の自己評価をした、過小評価群が20名存在した。
    【結論】今回の検討を通じ、ACTは専門医・非専門医並びに、各患者にとって有用なツールであることが示唆された。また、専門医・非専門医患者群間の喘息コントロールに対する患者評価の格差、喘息過小評価群の存在など、さらなる臨床的なアプローチが必要な課題が明らかとなった。
  • 福島 幸司, 川井 麻衣子, 平原 沙弥花, 白井 正広, 寺島 茂, 風間 暁男
    セッションID: 2F213
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【はじめに】胸腺上皮性腫瘍は、その細胞、構造学的異型度の違いによって胸腺腫と胸腺癌に大別される。胸腺腫は、形態学的、機能的に本来の胸腺を模倣した臓器特異的な腫瘍である。それに対して、胸腺癌は胸腺上皮の細胞学的、構造学的性格が消失すると同時に、未熟T細胞を誘導する機能までも脱落した腫瘍である。今回われわれは胸腺癌の一例を経験したので、その細胞像を中心に報告する。 【症例】47歳、男性。当院人間ドック受診時に、胸部XPにて前縦隔の異常影を指摘され当院呼吸器内科受診。胸部CTおよびMRI検査にて9cm大の多発嚢胞を有する腫瘍を指摘され、胸腺全摘、左腕頭静脈合併切除、人工血管置換術が施行され、迅速組織診および捺印細胞診が行われた。 【捺印細胞所見】背景に壊死物質やリンパ球を認め、類円形~紡錘型の核を有する上皮様細胞集塊が散在性にみられ、細胞質は乏しく裸核状であった。核は大小不同を示し、クロマチンは粗顆粒状に増量していた。腫瘍細胞集塊は核線を伴って木目込み様に配列し、低分化扁平上皮癌または小細胞癌が疑われた。また一部には真珠形成細胞が認められた。 【病理組織所見】切除された胸腺腫瘍は9.5 x 9.2 x 4.3 cm大で,肉眼的に割面では多数の嚢胞を形成し,その内腔に壊死物質が充満していた.組織学的に間質の著明な線維化を認め,やや大型の異型核を有する腫瘍細胞が浸潤性に増生し,著明な壊死と角化傾向を呈していた.また脈管侵襲も認められ,免疫組織化学的に上皮性マーカー陽性,リンパ球系マーカーおよびクロモグラニンAは陰性であり胸腺癌(扁平上皮癌)と診断された. 【まとめ】胸腺癌は比較的稀な腫瘍であり、胸腺悪性腫瘍の約0.2~1.5%を占める。一般に予後は不良で5年生存率は約35%であるが、これは発見、診断時にすでに進行しているためと考えられる。胸腺癌で最も頻度の高い組織型は扁平上皮癌であるが、他臓器でみられるような腺癌、未分化癌、癌肉腫、神経内分泌癌等もみられる。従来、縦隔腫瘍に対して細胞診が行われる機会は少なく、その詳細について記載された文献等も僅かであった。しかし画像診断法の進歩により穿刺針を用いて細胞診が行われようになり、今後は細胞診で診断される症例も増えてくると考えられる。縦隔腫瘍は様々な組織型が出現する可能性があり鑑別診断に苦慮することが多いが、多彩な細胞像を念頭に入れて診断することが望ましいと思われる。
  • 辰見 妙子, 城本 節子, 尾神 正子
    セッションID: 2F214
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈はじめに〉 慢性疾患がわかったときの親の苦悩は大きい。年齢が小さければ小さいほど、親としての自責の念や将来への悲観、治療内容によっては日常生活が制限され、親の不安や負担は大きくなる。小児科領域は患児自身へのアプローチと同じくらい親へのアプローチも大切になる。そして、親同士のセルフヘルプによる親のエンパワメントを高めることも大切な支援である。今回、地域の身近な取り組みとして、慢性疾患児を抱える親の会を立ち上げたのでその経過を報告する。 〈方 法〉 1. 立ち上げのきっかけ:ある患児の母親の思い  平成17年10月に入院していた2歳ネフローゼ症候群患児の母親が相談室に来談。他の患児や親がどのように生活しているのか、兄弟児へのかかわりにも悩み、長期の付き添い入院がもたらす家庭との二重生活は相当ストレスとなっていた。相談室では母親の気持ちを受け止めながら、様々な事を振り返る機会を提供した。県内の患者会情報も提供したが、集いが遠方で参加困難であり、地域で情報交換ができないものかという話になる。これをきっかけに、患者の親を主体とした親の会を立ち上げる方向で、病院として検討することになる。 2.「若鮎の会」の立ち上げ 平成17年12月、小児科医師、病棟・外来の看護師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーにて協議し、慢性疾患児を抱える親のニーズと対象者について検討した。対象者は、当面は1ヵ月以上の入院生活を経験している可能性の高い院内学級入級者と小児慢性疾患申請者とした。親の会の名称「若鮎の会」は地元木曽川を上流へと泳いでいく若鮎のように、力強くたくましく生きていってほしいという願いを込めて命名した。 〈結果及び考察〉 平成18年2月、87名を対象にアンケートを実施し、35名(40%)から回答を得た。今後の会への参加希望者は28名であった。疾患は、血友病、_I_型糖尿病、慢性腎炎、心身症などである。疾患は違っても「将来への療養上の不安」「兄弟へのケア不足」「経済的な問題」「保育園・幼稚園・学校との関係」など共通の問題を抱えていることが明らかになった。医療従事者や同じ親同士の交流を希望しているにもかかわらず、その機会が得られていない事もわかった。4月に第1回の集いを開催。親同士の経験を語り合い、今後の活動の意義を確認した。9月の休日に第2回を開催し、ゲームや座談会など昼食をはさん家族ぐるみでの交流ができ、日頃の家庭での対応も知ることができた。平成19年3月には入院中の親も交えて第3回を開催。今後の活動は年3回とし、勉強会やレクリエーションなど、より有意義な内容にしていく予定である。 疾患の違う親同士での交流はうまくいくのか内心不安もあったが、治療療養生活上の悩みには共通点が多々あった。特に、親の主体性にかかわる療養上の人手不足やメンタルケアの部分で、親が思った以上に悩み、対処している事実を知り、医療従事者がもっと配慮すべき点が沢山あることを実感した。親を支える事が患児を支えることになるのであり、そのことを忘れずにより充実したサポートシステムを皆で創りあげていきたい。
  • 矢口 豊久, 田中 友里, 都島 由希子, 渡部 俊也, 猪川 祥邦, 菅江 崇, 柴田 有宏, 高瀬 恒信, 中山 茂樹, 梶川 真樹
    セッションID: 2F215
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉近年進行・再発の大腸癌に対してFOLFIRI, FOLFOX法は標準化学療法として定着してきた. 2005年4月6日にはオキサリプラチンが我が国でも薬価収載となり, FOLFOXの治療が可能な環境が整った.しかしながらオキサリプラチンの投与量が85mg/m2に制限されており, 使用可能なプロトコールはFOLFOX4またはmFOLFOX6に制限されている. 当院では2004年11月より, 進行・再発大腸癌に対してFOLFIRI法(de Gramont regimen)を導入し, その後mFOLFOX6, FOLFOX4を取り入れ,その効果と副作用について検討したので報告する. 〈方法〉2004年10月から2007年4月までの2年6ヶ月の間にFOLFIRI, mFOLFOX6, FOLFOX4を含む治療を行った進行・再発症例36例, 平均年齢61.3歳(23-84歳)を対象とした. 男性20例, 女性16例, Performance status 0; 32名, 1; 4名であった. 2週間または3週間に1回投与した. これらの治療後, なおPerformance statusを維持している症例については肝動注療法, 放射線療法, UFT/Uzel内服, S1内服などの治療へ移行した. 〈結果〉36例中, 投与開始後2ヶ月以上経過して効果を評価した.35例のうちCR 0, PR 13, SD 14, PD 8例であった. これらの症例の累積生存率を示す(図1). 2年5ヶ月を経過したところでの50%生存期間は21.0ヶ月, 50%Progression Free Survival は7.4ヶ月であった(図2). 副作用としては, 36例中投与が直接の原因と思われる死亡例を2例に認めた.1例はFOLFIRI投与後GCSF投与に反応しない白血球減少, もう1例はFOLFOX4投与後,重度の間質性肺炎であった. そのほか12例にGrade 1以上の白血球減少を認めた. またGrade 1以上の脱毛を9例, 食欲低下を15例,に認めた. 〈考察〉Tournigandら(2004)はFOLFIRI施行後のFOXFOX6投与においてMean Survival Rateを21.5ヶ月と報告している. FOLFIRI・FOLFOX法は欧米で2週間毎の治療を基本として効果のエビデンスが論じられた. 進行・再発症例に対して新たな道を開く一方で,重篤な副作用も認められる. 慎重な投与が必要であり,2週間毎の投与にこだわらなくても十分な結果が得られることが示唆された.
  • 山岸 健太郎, 長谷川 伸, 倉持 元, 林  和直, 福原 康夫, 五十川 修
    セッションID: 2F216
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉慢性膵炎による膵頭十二指腸切除術後、糖尿病を発症し糖尿病性腎症による慢性腎不全にて血液透析を開始後、巨大仮性膵嚢胞を合併した症例を経験したので報告する。 〈症例〉56歳。男性。 〈家族歴〉特記すべきことなし。 〈既往歴〉1972年十二指腸潰瘍手術。1974年胆嚢摘出術。 〈現病歴〉1985年慢性膵炎、膵真性嚢胞腫にて膵頭十二指腸切除術施行。1988年糖尿病(HbA1c 10.6%)にて外来治療開始。2000年8月9日、糖尿病性網膜症の診断。2002年2月Cre 2.3mg/dlと糖尿病性腎症による慢性腎不全と診断。2003年1月30日血液透析開始。2006年9月16日腹部膨満感出現、腹部エコーにて多量の腹水、門脈圧亢進症と診断。腹部・骨盤部CTでは多量の腹水のみで著明な側副血行路は認めず。上部消化管内視鏡検査では、varixを認めず。2006年11月3日食欲不振にて入院。 (入院時現症)身長171cm。体重39.5kg(DW)。血圧134/84mmHg。心拍数90/分,整。体温38.0度。眼球結膜に貧血あり。心肺音に異常なし。腹部膨満、腹部触診にて波動を認めた。浮腫なし。 (入院時検査所見)血液・生化学検査はRBC 394万/μl, Hb 11.0g/dl, Ht 35.5%, Plat 14.6万/μl, WBC 7000/μl, AST 31IU/l, ALT 25IU/l, ALP 287IU/l, LDH 141IU/l, CK 74IU/l, AMY 33IU/l, BUN 16.4mg/dl, Cre 3.20mg/dl, UA 2.8mg/dl, Na 145.9mEq/l, K 3.1mEq/l, Cl 99.2mEq/l, Ca 10.9mEq/l, IP 4.3mg/dl, TP 5.5g/dl, Alb 3.3g/dl, TC 92mg/dl, TG 182mg/dl, CRP 23.32mg/dl, BS 95mg/dl, HbA1c10.1%であった。 〈入院後経過〉胸部X線上、肺炎所見を認め、急性呼吸不全のため人工呼吸器管理となった。腹部・骨盤部CTで以前腹水と診断されていたものは腹部から骨盤部にかけての巨大仮性膵嚢胞と判明、直ちにドレーン留置。膵嚢胞からの培養は陰性。その後ドレーンクランプするも、膵嚢胞サイズの増大なく12月9日、ドレーン抜去した。その後数ヶ月経過するも仮性膵嚢胞は縮小傾向にあり良好な経過をたどっている。 〈考察〉仮性膵嚢胞は、急性膵炎、慢性膵炎の急性増悪、膵外傷などに続発して発症後1~2週間で明らかになることが多い。本症例では21年前に慢性膵炎に対し膵頭十二指腸切除術を施行されているが、その後膵炎は認められていない。しかし、血液透析開始後3年経過してから膵仮性嚢胞の存在が明らかになり、発見された時点で巨大なものになっていた。血液透析患者に仮性膵嚢胞が見つかり、また本例のような巨大仮性膵嚢胞は極めて珍しい。 一般に仮性膵嚢胞は自然消退するものが多いが、直径5cmを超え、6週間以上持続する仮性膵嚢胞ではドレナージを考慮するべきであり、合併症を伴わない仮性膵嚢胞はドレナージにより45~75%の成功率で安全に治療できるとされている。本症例のように巨大な場合、圧迫症状に加え、破裂、出血、感染などの合併症が生じやすいと考えられ早期にドレナージを施行するべきであると考えられ、本症例のような巨大仮性膵嚢胞にも経皮的ドレナージが有効であった。 〈結語〉慢性膵炎による膵頭十二指腸切除術後糖尿病を発症し、糖尿病性腎症による慢性腎不全となり血液透析が導入された患者に、腹腔から骨盤腔にわたる巨大膵嚢胞を認めドレナージにて改善できた症例を報告した。
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