日本農村医学会学術総会抄録集
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第59回日本農村医学会学術総会
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  • 大谷 雅也, 菊地 孝哉, 浅野 善文, 佐藤 重雄, 杉田 暁大, 矢崎 憲二, 菊地 顕次
    セッションID: P1-A4-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院では呼吸器疾患の早期発見と肺の健康維持を目的に、2009年12月より日本呼吸器学会が提唱している「肺年齢」を日常診療に導入している。今回、肺年齢と呼吸機能障害について検討したので報告する。
    【対象】2009年12月から2010年3月までに当院で呼吸機能検査を行った、入院・外来患者のうち20歳から79歳までの483名(男性287名、女性196名)、平均年齢59.5±14.4歳を対象とした。
    【方法】測定したデータからV(・)50とATI(Air Trapping Index)を呼吸機能障害の目安とした。末梢気道障害の指標としてV(・)50の50%未満の割合と、肺年齢-実年齢の差との関係を検討した。また、肺年齢を有効活用するために用いているFEV1/FVCと%FEV1の情報を取り込んだ評価コメントとATI (ATI(%)=(VC-FVC)/VC×100)の数値について、呼吸機能障害の程度を検討した。評価コメントはA群(異常なし)、B群(境界領域)、C群(肺疾患の疑い)、D群(COPDの軽症疑い)、E群(COPDの中等症から最重症疑い)の5群に分類されている。
    【結果】
    1. 従来の換気障害の判定(拘束性、閉塞性、混合性)で正常とみなされた群に、肺年齢が実年齢より5歳以上高かった人の割合は32.6%であった。
    2. V(・)50が50%未満の割合では、肺年齢-実年齢差、0歳以下は1.7%、1~4歳は8.3%、5~10歳は12.5%、11~15歳は37.5%、16~20歳は53.8%、21歳以上は70.6%であった。肺年齢-実年齢の差が高くなっていくにつれ、V(・)50の50%以下の割合が多くなっていた。
    3. ATIの数値では評価コメントA群は-0.6%、B群は1.0%、C群は3.9%、D群は2.4%、E群は4.6%であった。評価コメントCの領域からATIの数値が高くなっていた。
    【まとめ】今回の検討により、従来の換気障害の判定では見逃されていた早期の末梢気道障害を発見することができた。また、呼吸機能障害の程度を反映する結果が得られた。これにより、肺年齢を用いることによって呼吸器疾患の早期発見と肺の健康維持の有用性が示唆された。
  • -暴露後の経過と健康不安-
    南部 泰士, 桐原 優子, 月澤 恵子, 今野谷 美名子, 木村 啓二, 林 雅人
    セッションID: P1-A4-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    秋田県南部の一地域に暮らす石綿検診受診者の石綿関連業務従事後から現在までの経過を明らかにし,今後の情報提供・保健指導等の支援につなげることを目的に調査を行った.対象者10名の石綿関連業務従事期間は平均11.1±2.12年,従事後平均29.8±4.64年が経過していた.石綿暴露予防のための職場講習は当時も行われておらず、石綿を吸い込まないための個人対策も全員が行っていなかった.石綿検診を受診した経緯は,新聞やポスターなどのマスメディアを通して石綿の危険性を知り,自ら情報を得たのがきっかけであった.秋田県では健康手帳に係わる健康診断の委託医療機関は現在6か所のみであり,A病院は秋田県南部で唯一の石綿検診機関である.それにも係わらずA病院での石綿検診受診者は本研究対象者10人のみで,石綿関連作業従事者の多くが未受診である可能性が高いことが考えられた.石綿管理手帳交付要件は手帳を所持していない5名が知らなかった.日常の健康不安は「いつ発症するかわからない」「長期に管理しなければならない精神的負担が大きい」「石綿といわれても症状が無いからわからない」であった.
    全国的に石綿労働災害認定数や悪性中皮腫が増加していることから,地方においても今後,石綿被害は多くの問題が明らかになることが予測される.受診者と長期にわたる関わりから健康不安を軽減するために,1.救済制度などの法律に熟知し個々の検診者に適応する,2.長期に渡る関わりから受診者の健康課題を追跡し,QOLが維持できる支援を行う,3.研究活動を続け社会的に公表し,救済に結びつくよう医療者としての責任を果たす支援が重要であることが考えられた.
  • 須田 秀俊, 横山 孝子, 松島 松翠
    セッションID: P1-A5-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    <緒言>若月俊一により確立された八千穂村の全村健康管理事業は、50年を経過している。その始まりを調査するなかで、これは戦前からの農村保健運動の成果をとりいれた経過が明らかになったので報告する。    <結果および考察>農村医学会が発足する以前の戦時下すでに、岩手県をはじめとして産業組合が組織をあげて農村保健運動を推進していた。この実行組織として全国協同組合保健協会では、病院建設、国民健康保険代行、保健婦養成の3点に重点をおき、病院建設は岩手県、保健婦養成は島根県や山形県をモデルに進めていた。佐久病院設立においても、そのモデルは岩手県の広域医療組合であった。そのほか、労働科学研究所の農村労働調査所の成果や、当時開設された農村保健館の事業、そして恩賜財団母子愛育会による愛育村の保健婦活動の成果をとりいれていた。そして対住民の現場においては、保健婦業務支援の保健補導員を下部組織におき、産業組合病院が保健指導を支援することを理想としていた。これは、戦後昭和30年代に若月俊一が、八千穂村をフィールドとした全村健康管理活動につながる前史である。   このほか、各地の産業組合病院では、症例研究会が開催されており、栃木県の足利病院や、秋田県の平鹿病院では特に盛んであった。また無医村対策として、保健婦を町村ごとに作られた、国民健康保険組合におくことを目的に保健婦養成に力を入れていた。  しかし昭和18年に、それまで国策の健民運動にそった農村保健運動は、治安維持法違反による指導幹部逮捕により活動停止状態となり、終戦を迎えた。戦時下における保健協会の指導幹部は黒川泰一 高橋新太郎 小宮山新一の3人であった。   昭和30年代に八千穂村の全村健康管理がはじまったころは、各地で数多くの同様な取り組みがなされていた。しかし現在も継続されているのは、八千穂村(現佐久穂町)と沢内村(現西和賀町)ほか数例しかない。農村医学の性質を見出すには、農村保健運動から現在に至る普遍性とは何かの検討が必要である。
  • 疋田 善平
    セッションID: P1-A5-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    【抄録】私、終戦直後から国立京都病院で住民健診と家庭料理持参の面会で、微熱がとれ食欲出るなどのイメージング療法を学び、健診と家庭生活(家族の楽しい雰囲気)を基盤とした医療活動で、病院を家庭に持ち込め、と人間の尊厳を損なわない“全村病院構想(部落が病院、診療所は看護師詰所、自宅を病室)を提唱し、それが実現に努めるに、高齢者はどんどん増え70歳現役の時代であるのに子供が少ないのが目立つようになり、少子高齢化が急速に進行してきた。例えばK部落では、人口901人が580人に、小学生は201人から27人に、S部落では人口231人が107人に、小学生は、72人がたった1人に、激減した。お産は今まで年平均24~25件あったのに、昨年はたった3件と村中の話題になった。この様な少子高齢化社会の出現に、国はケア介護老人施設を打ち出して来たが、要はケア老人数からみて、同施設入所は現実不可能と思われる。例え各県1施設としても収容人員は300人足らずで全員入所は困難です。たとえ入所出来ても失うものばかりで、先ず第一に家族を、地域を失い、役割(仕事)まで失う。廃用は進み、痴呆が出てきて寝たきり製造施設にもなりかねない。ところがケアを宅配すれば自宅で生活が出来、失うものは無く自宅に居られるのがケア完備集落構想です。結果、超高齢化社会では全村病院構想にケアの宅配を充実させる、ケア完備集落構想に往診をすれば在宅ホスピスが可能となり在宅死、即 満足死出来ます。 要は、家族にどれだけの看護力があるかだ?この点、家族の絆を密にし、社会教育で相互扶助力を高揚すればよいそれが、日本古来の素晴らしい育児方法を取り戻せばよいでしょう。 【最後の一言】超高齢化社会の医療がどうあるべきかは、私の考えと経験から出生直後から家族の絆を密にし、社会的相互扶助力の『心の遺伝子』を大切にすることでしょう。
  • 鈴木 るり子, 名原 壽子
    セッションID: P1-A5-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    目的】岩手県沢内村(現西和賀町)の保健・医療体制は沢内方式とよばれ、地域包括医療の先進事例として評価されている。この沢内村で展開された地域包括医療が与えた影響について検証する。 【方法】聞き取り並びに文献 【結果及び考察】沢内村は1950年代後半まで豪雪、貧困、多病・多死の村と言われていた。1957年の乳児死亡率は、全国平均の2倍と高率であった。1957年無競で村長に当選した深沢晟雄は、「自分たちで自分たちの生命を守る」ことを、住民と行政の共通課題として掲げ社会教育を基盤にした村づくりを展開した。1960年12月からの老人医療費無料化、翌年4月からは60歳、乳児の医療費無料化を実施した。その結果当時では予想できなかった全国初の乳児死亡ゼロを1962年に達成したのである。 1962年に「沢内村における地域包括医療の実施計画」が策定され、健やかに生まれる、健やかに育つ、健やかに老いる、を目標に掲げた。この目標実現に向けて保健と医療の一体化を図った包括医療の体系化は、沢内方式として、地域包括医療のモデルとなり、国内外に大きな影響を与えた。 沢内で展開された地域包括医療は行政の責任で実施されたことに特徴はあるが、その根底にあった豪雪、貧困、多病・多死の悪条件を住民とともに克服し、沢内村に住むための環境を整えていく実践は、住民の意識を変えた。まさにプライマリーヘルスケア、ヘルスプロモーションの実践であった。
  • 高木 彰, 立身 政信, 小野寺 文男, 戸田 克彦
    セッションID: P1-A5-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉 岩手の農村は、厳しい農業環境のなかで、医療はもちろん保健衛生の面でも苦悩に満ちた変遷を辿っている。昭和初期から平成までの社会的変遷のなかで、「岩手のJAグループは医療・保健活動をどのように推進し、展開してきたのか」を紐解き、今後の農村とJAグループの厚生事業に役立てること(温故知新)が後世への使命である。
    〈背景〉疾病予防(結核などの感染症)とその早期治療を目的として昭和13年に施行された旧国民健康保険法に基づく保健医療活動を、産業組合が代行することになった。これが現在のJAグループによる農村保健の始まりである。戦後、農業協同組合法公布(昭和22年)により岩手県厚生農業協同組合連合会を設立(昭和23年)したものの、昭和25年に解散し、医療部門は県営医療施設(県立病院)へ移管した。以降JAいわてグループは県・市町村・医師会・予防医学協会等と健診活動を中心に連携して推進してきた。こうした経緯を次の視点からまとめた。
    〈視点〉_丸1_歴史的背景と農村保健・医療の経緯(産業組合時代・農業協同組合法公布後・昭和50年以降) _丸2_農協婦人部(現JA女性部)の健康管理(農協大会での緊急動議) _丸3_県・市町村・関係団体(医師会・医科大学・予防医学協会等)とJAグループの連携 _丸4_JA健康寿命の新たな創造
    〈まとめ〉岩手の農村とJAグループの歴史を振り返り、JAが「健康で生きがいのある暮らしづくりにむけた健康増進活動」と「少子・高齢社会の負託・ニーズに応える高齢者福祉活動」に取り組むことが、「地域貢献・地域再生」の観点からも重要なテーマであることを確認した。今後も継続的な課題として推進していくことが重要と考える。                                    
  • 百瀬 義人, 畝 博
    セッションID: P1-A5-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    <目的>体力測定結果を運動歴の有無別に比較して効果の違いを検討することにより、今後の運動プログラムに活かすこととした。
    <方法>対象者: 教室の趣旨に賛同し、自主的に参加した高齢者(65~85歳)43名。教室概要: 目的;1)歩行機能を維持する、2)こころとからだの疲れ具合を減らす。期間;平成21年5月~平成22年3月。回数;24回。時間;午前10時~11時30分。指導スタッフ;運動指導士2名、保健師1名。教室の流れ;受付⇒体調チェック⇒健康講話⇒実技(ストレッチング、ゲーム、レジスタンス・トレーニング、マッサージ)とし、途中で休憩を入れた。体格・体力測定項目: 身長、体重、握力、開眼片足立時間、長座体前屈、5m歩行時間(最大歩行)、Timed up and go test(TUG)。アンケート調査項目: 運動歴(≧10分の運動を≧2回週)、転倒歴、現病歴、家族構成、日常生活活動の不自由さ、半年間のこころとからだの疲れ具合。効果の評価: 初回と終了時の2回の結果から、前後差を比較する。有意差検定: paired t-test.
    <結果>運動歴あり群(28名)の効果は、BMI(+0.3kg/m2, p<.05)、握力(+1.4kg, p<.01)、TUG(-0.71秒, p<.001)、疲れ具合(こころ;-0.9点, p<.05、からだ;-1.4点, p<.05)だった。運動歴なし群(15名)の効果は、TUG(-0.73秒, p<.05)のみ。
    <考察>運動歴なし群の疲れ具合のスコアが減らなかった理由として、運動を一生懸命行うことによるオーバーユース(使いすぎ)や疲労回復能力が関連している可能性があり、さらなるトレーニング指導方法の工夫が必要と考えられた。
  • 藤井 隆, 対馬 浩, 政田 賢治, 久留島 秀治, 前田 幸治, 辻山 修司, 平林 晃, 台丸 裕
    セッションID: P1-B1-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    胸痛で救急搬送された83歳、男性。冠動脈造影より回旋枝#11の巨大冠動脈瘤由来と考えられる血栓により末梢塞栓像を認め、急性心筋梗塞(側壁)と診断し血栓吸引を施行した。後日、冠動脈瘤評価のため施行した心臓CTで、回旋枝 #11に約20mm径の冠動脈瘤と冠動脈起始部から末梢に至る左右冠動脈外膜周囲に数mmに肥厚した全周性の腫瘤様肉芽組織(CT値50~100HU)を認めた。CTでは腹腔動脈根部、腎動脈近位部周囲、左内頸動脈、両側総腸骨動脈、内腸骨動脈、大腿動脈周囲にも冠動脈と同様の肉芽組織を認めたが、胸腹部大動脈瘤は認めなかった。PETで前述の動脈に加え腎臓、両側顎下腺、脾臓に集積像を認めた。頭部MRIで下垂体茎部の腫大を認めた。また血清IgG:8194mg/dl、IgG4:2630mg/dlと異常高値と抗核抗体強陽性(1280倍)を認めた。腎生検の組織において高度の形質細胞浸潤(IgG4陽性)を認めた。
    以上よりIgG4関連疾患と診断しステロイド療法開始した。ステロイド剤の反応は良好でIgGは正常化(1217mg/dl)、IgG4は著減(362mg/dl)した。2ヶ月後に前回CTでは認められなかった胸部大動脈瘤の破裂により死去された。
    血管病変としてのIgG4関連硬化性疾患は、炎症性腹部大動脈瘤と後腹膜線維性増殖などが知られているが、両者を併せて慢性大動脈周囲炎(chronic periaortitis)とした概念も広がりつつある。本例は、IgG4関連硬化症疾患の表現形として、中型動脈である冠動脈周囲炎(coronary periarteritis)に加え、巨大冠動脈瘤を合併し心筋梗塞を発症した希な例であったので報告した。
  • 松崎 淳, 文字 亜矢子, 伊藤 大起, 河村 洋太, 杉原 達也, 干場 泰成, 相澤 達, 井関 治和
    セッションID: P1-B1-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    <当院の概要>相模原協同病院(当院)は1945年に地域の無医村解消のためにJAにより開設され、現在は地域の中核病院としての役割を担っている。当院循環器センターは、循環器内科8名・心臓血管外科3名の常勤医がおり、併せて39病床(うちCCU5床)からなっている。当院における心臓リハビリテーション(心リハ)は、2007年に急性心筋梗塞(AMI)の急性期心リハを開始し、その後2008年に外来通院による回復期心リハを立ち上げた。現在は、狭心症・心筋梗塞・慢性心不全・開心術後等を中心に急性期・回復期心リハに取り組んでいる。
    <急性期心リハ> 当院では、AMIに対して原則として緊急PCIを行っているが、術後は心リハプログラムに付随したAMIパスで管理を行っている。重症度に合わせて10日間・15日間コースのいずれかを選択し、可能な限り退院前に心肺運動負荷試験(CPX)を行っている。また、栄養士による栄養指導、薬剤師による服薬指導、医師による心臓病教室を行っている。また、開心術についても同様に心リハを行っている。心不全については、個々の症例により基礎疾患や治療方針が異なるため、病状に応じて行っている。
    <外来(回復期)心リハ>入院中に心リハを行った症例を中心に、回復期心リハを行っている。問診を行った後に、バイタルを確認し、集団でウォームアップ及び有酸素運動(エルゴメーター等約30分)を約1時間かけて監視下で行っている。原則としてCPXでのATレベルの運動強度、心拍数に基づいた運動処方を行っており、CPXは心リハ開始前及び開始約3ヶ月後に行っている。また地域連携を深めるためにも、近隣の医療機関からの症例も積極的に心リハを行っている。
    <今後の課題>退院後の回復期心リハの参加は約2割程度であり、特に退院後に就労が必要な若年者や、通院が困難な高齢者等をどのようにフォローしていくかが今後の課題と思われる。
  • 太附 広明, 内藤 莉紗, 和田 朋子, 松崎 淳, 相澤 達, 井関 治和, 干場 泰成, 杉原 達矢, 河村 洋太, 伊藤 大起
    セッションID: P1-B1-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    【目的】
    当院では、2007年4月に心臓リハビリテーション(心リハ)の運営を開始した。本研究の目的は入院期の急性心筋梗塞(AMI)患者の臨床的背景を先行研究と比較し、基礎資料作成と改善点を検討する事である。 【方法と方法】
    対象は2007年4月から2009年3月の2年間に心リハを実施したAMI患者73例(男性57例、女性16例)である。
    方法は、臨床的背景20項目を診療録より抽出し、4つのグループに整理し先行研究と比較した。即ち、「患者属性」:年齢、性別、同居者の有無、「医学的情報」:責任冠動脈、CK最高値、LVEF、残存狭窄の有無、発症時刻、「冠危険因子と生活習慣」:高血圧の有無、糖尿病の有無、脂質異常症の有無、喫煙の有無、飲酒の有無、運動習慣の有無、肥満度、「入院後経過」:心合併症の有無、運動器合併症の有無、200m負荷心電図異常の有無、リハ開始日数、入院期間である。
    【結果および考察】
    年齢は65.7±12.0歳で高齢者が多く、男性が3/4以上であった。責任冠動脈はRCA29例、LAD31例、LCX11例、冠攣縮2例、CK最高値は2015.3±1845.3IU/L、LVEF は51.7±11.8%、残存狭窄は43.8%が有していた。高血圧、糖尿病、脂質異常症の合併率はそれぞれ69.9%、42.5%、49.3%、喫煙率43.8%、飲酒率46.6%、BMI24.5±3.5であった。心合併症率37.0%、運動器合併症率19.2%、リハ開始4.2±3.7病日、入院期間15.6±8.3(7-50)日で73.6%が病棟訓練で退院していた。
    各項目は先行研究と比較し概ね近似しており、大きな偏りは無いと判断され、心リハ運営後続施設としては妥当な結果と考える。しかし高血圧合併と肥満が多く、患者教育が重要と思われた。また、病棟訓練で退院している症例が多く、心リハ外来を充実させる必要性が示唆された。
  • 高山  啓, 大友  潔, 谷口 宏史, 村井 典史, 小松 雄樹, 垣田  謙, 鵜野 起久也, 角田 恒和, 藤原 秀臣, 家坂 義人
    セッションID: P1-B1-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    はじめに
    心房細動は外来で多く経験する不整脈のひとつである。特に高齢化している地域における心房細動の罹患率は決して低くなく、茨城県南地域も例外ではない。心房細動の治療において心原性脳梗塞、頻拍発作に伴う心不全を含めた合併症を予防することは重要であり、抗凝固療法、レートコントロールに加え、洞調律維持は重要な役割を果たしていると思われる。現在カテーテルアブレーション治療は薬物治療に抵抗性の発作性心房細動に対して広く行われるようになってきたが、従来より当施設では持続性心房細動に対するカテーテルアブレーションも積極的に行ってきた。当施設ではカテーテルアブレーションが心房細動治療の第一選択となるべく研鑽を重ねており、その現状と成績を検討する。
    当施設でのカテーテルアブレーション治療の現状
    当院におけるカテーテルアブレーション治療は累計5000例を超え、年間700例を超える症例の治療に従事している。現在の症例の70%以上は心房細動、心房粗動に対するカテーテルアブレーションである。当施設で開発した拡大肺静脈隔離術は高い安全性と治癒率を挙げており、発作性心房細動の治療に広く応用されている。また持続性心房細動に対しては左房に対する心房細動基質修飾術を加え更なる成績の向上を目指している。
    まとめ
    高齢化社会において心房細動は多くみられる不整脈であり、発作性、持続性心房細動に対するカテーテルアブレーション治療は有効な治療手段のひとつである。
  • 星野 有
    セッションID: P1-B2-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】過去7年間に当院で経験した破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血の症例で、救急外来での初期診療に難渋した13例について報告する。【方法】2003年4月から2010年3月までに当院救急外来を介して脳神経外科に入院した破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血の症例は145例(手術症例は119例)であった。このうち救急外来での脳神経外科担当医として、診断、検査あるいは治療の遅れから、一筋縄では行かなかった13症例を検討した。【結果】13症例を大別すると、9症例が非典型的な症状のため必要な検査が遅れたことが主因であると思われ、4例では前医の判断が遅れたことが主因と思われる症例であった。前者については、著明な頭痛が主症状ではなく、軽度の頭痛を訴えていたが、発熱、けいれん、嘔吐、めまい、認知症の症状が主症状であり、頭部CTの施行が遅れたと考えられ、このうち2例では当院初回脳血管撮影で脳血管れん縮の所見を呈し、さらにそのうち1例は動脈瘤が同定されず脳梗塞も併発し、待機手術で非典型的な部位に血栓化動脈瘤を認めた症例で、入院後の治療でも苦慮した。後者については、典型的な激しい頭痛でも搬送を見合わせれた1症例、頭部CT所見で少量のくも膜下出血の診断が遅れた2例(1例で初回脳血管撮影で脳血管れん縮の所見を呈した)、マイコプラズマ肺炎との合併が疑われ紹介が遅れた症例も1例あった。これらの症例においては、患者家族への対応にも神経を使ったことを付け加える。【結論】くも膜下出血は致死率が高い疾患であるので、非典型的な初発症状も念頭において初診医として診療に当たる必要性があると再認識した。
  • 沖井 則文, 清上 浩明, 高本 奉彦, 箕岡 智, 瀬藤 章義, 中川 拓哉, 大前 忠幸, 住元 一夫, 中佐古 直子, 久保 美津子
    セッションID: P1-B2-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    高速螺旋型CT scanner および解析ソフトの進歩により、従来まではRIを使用しなければ知りえなかった脳血流動態を比較的簡便に知りえるようになってきた。そこで我々は脳血管拡張薬であるアセタゾラマイドを用いてperfusion CTを行い、脳循環予備能につき検討した。 (方法)撮影装置:Bright Speed Elite(GE横河メテ゛ィカル)、ワークステーション:Aw Volume Share2 (GE横河メテ゛ィカル)。撮影方法:レベルは基底核、slice厚は5mm、造影剤は40mlのイオヘキソール370を正中静脈より4ml/secondで急速静注する。造影剤静注開始5秒後よりscanを開始し45秒間継続する。1秒1回転、電圧は120kV、電流は60mA、cine mode でデータ収集する。得られたデータは0.5秒間隔で再合成し、データ解析ソフトCT perfusion3を用いてCBV、CBF、MTTを計算する。翌日以降に同様の操作をアセタゾラマイド1000mg静注20分後に行ない同じくCBV、CBF、MTTを得る。これらのデータを視覚的に評価した。 (対象)脳血管障害患者11例:男性9例(内1例は3回施行、内1例は2回施行)、女性2例、年齢57歳から89歳(平均71歳) (結果) 全ての症例においてアセタゾラマイド負荷により健常側のCBFの増加、MTTの短縮を認めた。CBVはCBF、MTTに比較してその変化は少なかった。患側においてはアセタゾラマイド負荷を行ってもCBF、MTTの変化を認めない部位があった。 (結論)perfusion CTは脳血流動態の評価に非常に有用である。アセタゾラマイド負荷を行うことにより脳循環予備能の評価の指標になりうる。
  • 山田  健嗣, 壽美田 一貴, 芳村 雅隆, 平井 作京, 山崎 信吾
    セッションID: P1-B2-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    頚部頚動脈病変を有する患者の脳梗塞予防に対し頚動脈ステント(CAS)は有用とされるが、高齢者、特に80歳以上で周術期の脳卒中の危険性や死亡率が高いことを示す報告がある。近年農村部での高齢化に伴い、高齢者の治療の機会は増えてきており、今回自験例で高齢者におけるCASの安全性について検討した。【対象と方法】2006年1月から2010年5月まで当施設でCASを施行した135例を対象とし、年齢により3群に分けて比較した。70歳未満(A群)は49例、70~74歳(B群)は40例、75歳以上(C群)は46例で、症候性例は各々45%、65%、68%、平均狭窄率は71%、68%、75%であった。塞栓予防は遠位部バルーンもしくはフィルター装置を原則とし、必要に応じてParodi変法を用いた。【結果】全例でステントの病変部への留置・血行再建が可能であったが、C群ではguiding catheterの留置が困難な症例が目立った。平均所要時間(穿刺~止血)はA群79分、B群80分、C群91分で75歳以上の症例で長い傾向があり、C群では100分を超える症例が他群に比して有意に多かった。虚血性合併症はA/B群では起こらなかったが、C群の1例で術後2日目に心原性塞栓症による対側後頭葉の梗塞が起こった。術後3日以内の拡散強調画像で5mm以上あるいは複数個の梗塞巣の出現率はA群23%、B群25%、C群13%と3群間に差はなく、前述した1例を除き無症候であった。過潅流症候群はC群の1例で合併したがmorbidityには結びつかなかった。また、迷走神経緊張症が24時間以上持続した例は35%、27%、13%で高齢になるほど頻度が低い傾向があり、穿刺部皮下血腫の合併率に差はなかった(3.5~6.5%)。【結語】CASは高齢者、75歳以上の症例では難易度は高くなるが、合併症の危険性が増えることなく安全に施行できる手技であると考える。さらに、75歳以上の症候性例においても神経症状の改善が得られる場合が多く、CASの積極的な適用の妥当性が示された。
  • 勝木 竜介, 林 勝知, 上田 宣夫, 森 茂, 三鴨 肇
    セッションID: P1-B2-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は17歳女性、既往歴に特記すべきことはなかった。平成21年8月4日午前8時20分頃、自転車走行中乗用車に追突され約8m飛ばされた。意識レベル低下を認めたため、直ちに当院救命救急センター搬送となった。当院搬入時SpO2 96%(リザーバーマスク酸素10L)、心拍数110回/分、血圧146/68mmHg、意識レベルはGCS E1V1M4、瞳孔径は右8mm、左6mmと散大しており、両側とも対光反射は無かった。直ちに気管挿管し、人工呼吸管理とした。搬入約15分後のFocused Assessment with Sonography for Trauma(FAST)は陰性で、頭部CT検査にて外傷性くも膜下出血、多発脳挫傷が存在し、脳腫脹著明であった。その他精査の結果、右多発肋骨骨折に伴う右血気胸、中心性肝損傷、右腎・副腎損傷等を認めた。脳損傷、脳腫脹管理の目的で、右内頸静脈より逆行性にOpticathカテーテルを挿入、SjO2及び内頸静脈温を脳温としてモニターし、約35℃の軽度脳低温療法を48時間施行した。治療経過中SjO2は60-80%で推移し、第3病日頭部CTでは脳腫脹は軽減、第7病日には画像上浮腫は認められないまで回復した。第9病日には、意識レベルGCS E4V5M6となり、人工呼吸から離脱した。その後の検査では、長谷川式簡易知能評価スケール18/30、IQ76と軽度高次脳機能障害を残したが、第21病日、無事独歩退院した。<考察>頭部外傷に対する米国の大規模RCTにおいては、48時間程度の脳低温療法の効果は明確ではなかった。また、本邦における頭部外傷治療・管理ガイドラインでも、脳低温療法は、未だ確立された治療法とはされていない。しかし、本症例では軽度脳低温療法を施行し、良好な結果を得る事が出来た。<まとめ>軽度脳低温療法は重度頭部外傷に有効である可能性が示唆された。
  • 田辺 裕, 稲石 貴弘, 森本 大士, 直海 晃, 田中 友理, 柴田 有宏, 高瀬 恒信, 中山 茂樹, 梶川 真樹, 矢口 豊久
    セッションID: P1-B2-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例1 20歳代男性 H21年5月 祭りの最中に人を乗せた馬に腹部を蹴られた。救急病院入院したが翌日まで腹痛治まらず当院に転院。腹部は板状硬。CT上腹腔内遊離ガスと腹水を認め消化管破裂と診断。緊急開腹手術施行した。外傷性小腸破裂、汎発性腹膜炎に対し小腸単純縫合術、腹膜炎ドレナージ術施行した。術後経過は良好で11日目に退院した。
    症例2 60歳代女性 H21年7月 馬の調教をしている時に後ろ足で上腹部を蹴られ、救急車で当院受診。右上腹部に軽度圧痛認めた。CT上肝内側区域に不整な低濃度領域あり。採血上GOT/GPT 279/223と肝逸脱酵素の上昇が見られた。外傷性肝損傷と診断し、安静目的に入院。入院翌日にはGOT/GPT 90/136と低下しており、CT上も血腫の増大なく退院とした。
    症例3 30歳代男性 H21年10月 馬の世話をしている時に右鼠径部を蹴られ、救急車で当院受診。腹部は板状硬。CT上モリソン窩に少量の腹水を認めた。腹部所見から消化管破裂による腹膜炎を疑い緊急開腹手術を施行した。外傷性小腸破裂、汎発性腹膜炎に対し小腸部分切除術、腹膜炎ドレナージ術施行した。術後経過は良好で10日目に退院した。
    馬に蹴られたことによって入院、手術が必要となった症例を続けて経験した。 馬に蹴られるという外傷は、狭い面積に強い力がかかり、内部臓器損傷のリスクも高くなると考えられる。このようなケースの診療に当たる際はそれを踏まえてアンダートリアージのないようにする必要がある。
  • 梶  由依子, 野澤  彰, 近澤 珠聖, 高橋 文子, 加藤 英代, 小平 かおる, 飯野 直子, 熊倉 桂子, 小林 千鶴, 蛇沼 俊枝
    セッションID: P1-B3-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は99歳女性。高血圧症、脂質異常症、慢性心不全で近医通院中。糖尿病を指摘されたことはない。食事中に左上肢を中心とする間欠的な痙攣と意識障害が出現し頻度、持続時間の延長、症状の増悪を認め近医を受診。虚血性脳疾患が疑われたため脳神経外科紹介となる。頭部MRIにて髄膜腫を認め精査加療目的に入院。入院後もてんかん重積発作が継続する為ゾニサミドが開始となる。入院翌日血糖値1114mg/dlを認めインスリン開始後当院に転院となる。入院時傾眠傾向、発熱、脱水、高血糖、電解質異常、貧血を認めた。入院後の画像及び血液、尿、髄液検査より発熱の原因は肺炎、尿路感染症によるものと考えられた。
    症例は99歳と高齢であるが若い頃より口数が少なく、明らかな認知症は認めていなかった。通常はベッドにいることが多いが、食事は居間で家族ととり、日中はトイレ歩行もしていた。今まで糖尿病は指摘されたことなく1年前の尿検査でも尿糖はマイナスであった。
    高齢者は一般に自覚・他覚症状に乏しく症状が進行してから病気に気づかれることが多い。症例は痙攣発作で入院時血糖1118mg/dl、CRP17mg/dlと高血糖、高炎症反応を認めるも、入院までは通常どうり食事摂取しており、入院後も37度台の微熱程度であった。てんかん発作がなければ症状がさらに増悪するまで気づかれなかった可能性が高い。
    成人のてんかんの病因は、青年期あるいは小児期からのキャリーオーバーが考えられる先天性のてんかんから、青年期に多い頭部外傷性や脳腫瘍、高齢期における脳血管性てんかんまで多岐にわたる。本症例は脳腫瘍を認めたが周囲の明らかな圧迫所見は認めずてんかんの直接的な原因の可能性は少ないと思われたが虚血の可能性は否定できない。高血糖、脱水、電解質異常もありこれらの代謝異常がてんかんの原因となっている可能性も否定できない。てんかん発作抑制において、てんかんの診断(発作型・症候群分類)は治療方針を立てるうえにも重要である。経過と若干の考察をふまえて報告する。
  • 大須賀 健, 安田 憲生, 玉木 英俊, 大野 善太郎, 岩田 啓之, 飯田 真美, 鷹津 久登, 田中 孜, 森 良雄, 末松 寛之
    セッションID: P1-B3-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は78歳女性。特記すべき既往歴はない。最近3年間は健診を受けていなかった。平成21年11月上旬より37℃台の発熱が続いたため近医受診。肺炎の診断にて5日間抗生剤点滴治療を受けていたが、症状続くため自己判断で当科受診。CTで左舌区に閉塞性肺炎を認め精査加療目的で入院となった。画像所見では閉塞起点ははっきりせず、腫瘍性病変が存在する可能性あったため気管支鏡検査を施行したところ、舌区入口部は著明な壁肥厚を呈し白色膿苔が多量に付着していた。同部の組織診ではY字分岐を示し、アスペルギルスを示唆する真菌塊を認めた。培養検査でも同様の結果であった。結核菌および悪性所見は認めなかった。胸腹部CT、頭部MRI、骨シンチでも悪性所見は否定的であり、血液検査では腫瘍マーカー陰性、アスペルギルスIgE陰性、アスペルギルス抗体陽性であった。以上より本例は気管支内腔に発生した肺アスペルギルス症と診断、Lipsomal amphotericinBにて治療開始した。体調は良好となり、画像所見でも改善が認められた。5週間後の気管支鏡検査では壁肥厚は残るものの、舌区入口部の白苔はほぼ消退していたため退院となった。現在はItraconazole内服にて通院治療中である。
    肺アスペルギルス症は診断・治療等しばしば対応が困難となる疾患である。本例は明らかな基礎疾患やアレルギー素因を有さず、なおかつ気管支内腔に発生した比較的まれな肺アスペルギルス症であり、診断・治療経過に若干の文献的考察を加え報告する。
  • 鈴木 久史, 大野 智之, 須原 宏造, 柴田 翔, 松岡 英亮, 千葉 佐保子, 福岡 俊彦
    セッションID: P1-B3-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 FDG‐PETは原発性肺癌のリンパ節転移や遠隔転移の確認などの治療前評価に有用な検査である。今回我々は、術前のPET検査が多発肺癌の診断に有用であった症例を経験したので報告する。
    【症例】 症例は、他疾患フォロー中に右肺の異常影を指摘された72歳の男性。CTにて、右上葉に大きさ11x13mm、辺縁整、境界明瞭の充実性腫瘤を認めた。縦隔リンパ節腫大は認めなかった。肺癌を疑いPETを施行したところ、右上葉の腫瘤に集積を認めた他、さらに右下葉S6の一部にも集積が認められた。集積部位のCT所見は、7x16mmの小嚢胞周辺であった。嚢胞壁は薄く均等で充実部がほとんどない所見であったが、多発肺癌の可能性も考え、術中迅速病理診断を行う予定にて手術に臨んだ。全身麻酔下に胸腔鏡を用いて両病変部位をそれぞれ部分切除し迅速病理に提出したところ、上葉の腫瘤は低分化癌、下葉S6の病変は扁平上皮癌との診断結果であった。多発肺癌の診断のもと、右上葉切除+右S6区域切除および縦隔リンパ節郭清を施行した。病理組織学的検査の結果、上葉の病変が、大細胞神経内分沁癌(LCNEC)、S6の病変が中分化型扁平上皮癌と診断され、病期は両病変ともpStageIAであった。術後CBDCA+CPT-11による補助療法を施行し、現在外来にて経過観察中である。
    【考察/結語】 嚢胞周囲からの扁平上皮癌の発生はしばしば見られるが、今回の症例では、嚢胞は小さく、壁の肥厚も目立たない所見であり、PETの集積がなければ悪性病変とは疑いにくい病変であった。PET検査が多発肺癌の診断に貢献した一例であり、肺癌治療前のPET検査の有用性を示す症例であったため報告した。
  • -ハイリスク肺癌症例に対するより良い周術期管理をめざして-
    渡 正伸, 松浦 陽介
    セッションID: P1-B3-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】高齢者肺癌手術症例は増加傾向にある。当科でも肺癌手術症例の75%を65歳以上の高齢者が占めている。高齢者手術症例は、術前に何らかの基礎疾患・合併症を有することが多い。特に、COPD合併等の低肺機能症例では、術後合併症の発症率が有意に高いことが知られハイリスクな肺癌症例と言える。その様な症例に対し、当科では術前からの対策が必要と考えている。すなわち落ち込んでいる術前状態を呼吸機能はもとより運動機能や栄養面において少しでも改善させた後の手術を施行することが重要と言える。そこで我々はリハビリ科・栄養科と協同し、呼吸器外科周術期管理における「集学的チーム医療」に取り組んできたので、その成果について文献的考察を加え報告する。 【対象と方法】2009年10月以降の区域切除以上の手術が予定される肺癌症例を対象とした。症例を以下の1-4に分類し、リハビリ科・栄養科・当科、各部門にて術前治療を実施する。治療開始時と手術直前とで、肺機能・運動耐容能・栄養状態の改善状況について評価を行った。1. ppoFEV1.0<800ml and/or ppoFEV1.0%<40%。2. FEV1.0%<70% and/or %FEV1.0%<80%。3. 80歳以上and/or MRC息切れスケールGrade 2以上。4. 上記いずれにも該当しない。術前治療として、1, 2, 3はリハビリ科・栄養科へ紹介、呼吸理学療法器具の指導。1, 2は追加でtiotropium吸入を2週間以上施行。1は追加でSFC吸入を2週間以上施行とした。2009年10月~2010年5月の間に、対象症例は12例であった(男10例)。年齢60-84(74±9.5)歳、全例喫煙歴を有し(BI 965.5±489)、COPDを合併していた。肺機能の評価として、VC, %VC, FEV1.0, FEV1.0%, %FEV1.0%、運動耐容能の評価として、6分間歩行距離、歩行後Borg息切れ/下肢疲労スケール、歩行後HR、栄養状態の評価として、体重、Hb、リンパ球数、ALB、CHE、プレアルブミン、小野寺らのPNI、AC、AMC、TSFを使用し、t検定を用いて治療開始時、手術直前の比較を行った。 【結果】有意に改善が認められた項目は(p<0.05)、HR、Hbであった。肺機能については、有意差は認められなかったが、軽度改善傾向が認められた。一方、有意に悪化した項目も認められ、それらはリンパ球数、ALBであった。術後合併症については、対象症例の内、術後急性心不全の発症が1例に認められた(8.3%)。一方、同時期に施行された対象症例以外の肺癌根治術においては、術後4例に呼吸不全・肺炎等の合併症が認められた(11.8%)。いずれも手術関連死は認められなかった。 【結語】肺機能、術後合併症について、改善が認められる傾向にあり、「集学的チーム医療」は有効であることが示唆された。一方、予期しない増悪が認められた項目も認められ、今後症例を重ね、再評価を行っていくことが重要であると考えられた。
  • 冨田 知春, 稲垣 雅春, 高尾 茉希, 加藤 昭紀, 小貫 琢哉
    セッションID: P1-B3-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は29歳男性,既往に左肺結核症あり.明らかな気胸の既往はなし.喫煙歴は1日20本を11年間.10時頃より右胸痛が出現し,徐々に増強するため15時18分当院救急内科外来受診.胸部単純X線と胸部CT検査で胸水貯留を伴う右気胸を認め特発性血気胸と診断された.BP/HRと循環動態は保たれていた.直ちに当科へとコンサルトされ発症約7時間後,来院後2時間12分後より緊急手術を開始した.胸腔鏡で観察すると,第2肋骨レベル背側の胸壁に破綻した索状血管を認め,活動性出血を伴っていた.これを電気メスで凝固止血した.さらに右肺上葉に肺嚢胞を認め切除した.手術時間78分,胸腔内出血850ml,無輸血.術後経過良好で第2病日にドレーン抜去し,第4病日に軽快退院となった. 特発性血気胸(spontaneous hemopneumothorax:以下SHP)は自然気胸(spontaneous pneumothorax:以下SP)に400ml以上の胸腔内出血を合併する病態である.SPの1-12%に合併し1000ml以上の大出血を来たすことが多く容易にショック症状を来たす. そのため初期治療における循環動態の安定化と,止血と気胸の治療を兼ねた緊急手術が必要となる.ドレナージのみでの保存的治療では止血が得られず,循環動態が悪化してから手術となるケースも少なくない.そのため当院では保存的治療は行わずに特発性血気胸と診断された時点で速やかに緊急手術を行う治療方針としている.
  • 稲垣 雅春, 高尾 茉希, 冨田 知春, 加藤 昭紀, 小貫 琢哉
    セッションID: P1-B3-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当科は常勤医3名、年間入院数約350名、手術件数約140件であり、肺葉切除と自然気胸の電子クリニカルパスを使用している。【目的】最近の実際の手術症例を分析し、より実臨床に近い内容、使いやすい内容に改訂するためのポイントを明らかにすることを目的とした。【対象と方法】2008年・2009年2年間の手術症例を手術侵襲度別に次の3群に分類。肺葉切除(2ポート+小開胸、中~大開胸)、肺部分切除(1~2ポート+小開胸)、肺部分切除(3ポートのみ)。実際の経過とパスを比較し、パス改訂の内容を検討した。【結果】2年間の手術件数は計273件で、肺癌が96件、自然気胸が89件等。肺葉切除は82件で、VATSが50件、標準開胸が30件。肺部分切除(中)は31件、肺部分切除(小)は85件であった。肺葉切除では、入院から手術まで1~18日(中央値2日)、ドレーン抜去1~8日(3日)。点滴抜去2~18日(3日)。気管支鏡検査まで8~18日(9日)。術後在院日数7~52日(10日)であった。標準開胸とVATSでは、各々中央値で、ドレーン4日、3日。点滴3日、3日。気管支鏡10日、9日。術後在院14日、10日であった。入院の曜日は月、金、土が多く、退院の曜日は水か土が大部分であった。肺部分切除(中)では、入院から手術まで0~5日(2日)、手術からドレーン抜去1~9日(2日)、術後在院日数5~165日(10日)。肺部分切除(小)では、術後在院日数3~14日(4日)であった。【考察】2009年10月より完全週休2日制に移行、手術前日入院、土日入院の推進。パスを前日入院に変更。術前検査は全て外来で施行するので、パスからは削除。現在の肺葉切除、気胸の2つのパスから開胸肺葉、VATS肺葉、肺部分(中)、肺部分(小)の4つのパスへの変更を検討。退院日は各々、術後14日(同じ)、10日(短縮)、10日(延長)、4日(同じ)へ設定。開胸肺葉、VATS肺葉は月曜日手術と水曜日手術の2バージョンを作ることも検討。
  • 山根 俊夫
    セッションID: P1-B4-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに 健診に従事し、多くの受診者の診察とインタビューを通して、診断推論に基づく診断及び安心、納得する説明、信頼そして支援・支持する健診医師の「言葉の力」の大切さを痛感したので報告する。
    結果・考察 診断の第1歩は、問診表で軸となる所見を選び出し、鑑別を構築することである。大別すると、9項目に大別できる。健診での診察の特徴として、まず、診察時間の制約が厳しいことがあげられる。経験豊富な医師は、蓄積した多数の症例レパートリーから類似例を引き出しながら、瞬時に適切な疾患仮説を立てることができる。診断推論は、3つに大別できる。  今後、前向き推論を繁用し、言葉による安心、納得する説明と支援、支持で、受診者との信頼を得る健診活動を充実強化したい。
  • 斉藤 和美
    セッションID: P1-B4-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    演題 連続精検受診率の向上にむけての実態調査及び検討                                                          発表者氏名 斉藤和美(さいとうかずみ) 共同演者名 井上裕美子・曽我佳代 所属 大分県厚生連健康管理センター キーワード:受診勧奨・精検受診率・連続精検受診率 〈目的〉特定健診の精検受診率は,がん検診と比べて低い傾向にある。各々の受診 率及び連続未受診者の実態を明らかにし,受診率向上にむけ,今後の対応を検討する。 〈対象及び方法〉H19・H20のがん検診(胃・大腸),特定健診(高血圧・脂質・血糖)の精検受診率の平均を比較検討した。また,2年連続精検未受診者(1267名・平均年齢54.7歳)の性別・年齢・属性・検査結果値について検討する。 〈結果〉H19・H20の精検受診率の平均は,がん検診(胃79.1%・大腸65.9%),特 定健診(高血圧54.5%・脂質50.7%・血糖55.9%)である。2年連続で精検を勧めた 者のうち,がん検診(胃17.8%・大腸23.4%),特定健診(高血圧50%・脂質48%・ 血糖44.5%)が継続未受診であり,両者に有意差が認められた。性別では,女性より男性が,属性では住民検診より職域検診の方が受診率は低く有意差が認められた。年齢別では,がん検診は30・40代,特定健診は20~60代どの年代も受診率は低かった。検査結果では、血圧・HDL値は前年度(H19)に比べて悪化しており有意差が認められたが、その他の項目については差が認められなかった。  〈考察〉がん検診で連続精検未受診にしておかない理由に、将来的危機感がある。それに対して特定健診は、そこまでの予測がつかないために受診行動に至らないと考えられる。生活習慣病に対する認識は少しずつ高まっている中で、受診勧奨者についてはさらに受診への啓発が重要である。受診の必要性が本人に伝わるような工夫をおこなうことや、本人と話す場面となる健診の問診や結果説明時を大事にしていきたい。
  • 柳町 ちひろ, 川上 浩二
    セッションID: P1-B4-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉各種健診・人間ドックにてメタボリック・シンドロームを指摘されても、自覚症状がないため診察・指導などを受けられる方がいまだにすくないようです。何の前兆もなく働き盛りの家族や従業員を襲う突然死を防ぐ為に画像診断など客観的指標として有効な、動脈硬化予防健診を立ち上げました。
    〈対象者〉定期健診受診者975名の中から_丸1_50歳以上_丸2_身体計測検査判定がC判定_丸3_血圧、糖代謝、脂質代謝判定で、いずれかに判定D/E/Fがある方。 〈実施項目〉_丸1_CAVI・ABI_丸2_頚部動脈超音波検査(プラークスコア)_丸3_腹部超音波検査_丸4_LH比_丸5_喫煙の有無。
    〈結果〉CAVI(血管の硬さの程度):9例(26%)、ABI:5例(15%)頚動脈超音波検査所見:21例(62%)、腹部超音波検査:22例(65%)、LH比:23例(68%)、喫煙の有無:21例(62%)、頚動脈超音波検査にてplaqe疑い又はplaqeあり13例(38%) 腹部超音波検査にて腎結石:2例(6%)、水腎症疑い:1例(3%)、腎胞嚢胞:8例(24%)、胆嚢胞ポリープ:5例(15%)、肝嚢胞:1例(3%)、占拠性病変:1例(3%)
    〈考察〉生活習慣病は、突然死に至る高リスク群であり、動脈硬化の進展がその予後に大きな影響を及ぼす。しかし、その初期には特別な自覚症状を来さないことが多く、自分の今の状態が年齢を重ねるごとに、致命的な病態を引き起こすかを説明されても、なかなか実感をもって受け取ることができません。今回、動脈硬化予防健診にて同年代のデータと対比させてCAVI・頚動脈超音波検査画像などを示すことにより受診者の心に響くのを実感しました。
  • 高木 智徳, 野田 邦夫, 荒井 哲郎
    セッションID: P1-B4-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    (財)日本成人病予防会は、農山村地域住民に対する生活習慣病対策の一環として、昭和38年の設立以来、(財)JKAから競輪等の補助を受け、生活習慣病巡回検診車・検診用機器の整備をはかり厚生連病院の協力を得て検診活動の推進を行ってきた。  このうち、平成20年度に稼働した検診車57台(間接撮影)による胃集団検診の実態調査を行ったので報告する。 〔検診車の稼働状況等〕 検診車57台の年間平均稼働日数は93.9日、1日1台あたり平均受診者数は28.5人となった。 〔受診者〕 平成20年度の受診者総数は15万2,309人(男性7万2,450人、女性7万9,859人)で、年齢階層別では、男性は60~69歳が1万8,841人(男性受診者の26.0%)、女性も60~69歳が2万4,290人(女性受診者の30.4%)で最も多い。 〔要精検者・精検率〕 受診者の10.6%にあたる1万5,570人が要精検者となった。(男性8,633人(要精検率11.9%)、女性6,937人(同8.7%))年齢階層別では、男女とも70歳以上(男性13.2%・女性10.2%)が最も高い。 〔精検受診者・受診率〕 要精検者の68.6%にあたる1万679人が精密検査を受けた。(男性5,454人(精検受診率63.2%)、女性5,225人(同75.3%))年齢階層別では、男性・女性とも70歳以上(男性76.6%・女性80.1%)が最も多く、男性の29歳以下(38.7%)、女性の30~39歳(63.2%)が最も低い結果となった。 〔胃がん発見率〕 胃がんの発見者数は152人で、このうち男性は107人(発見率0.148%)、女性は45人(同0.056%)となり、男性の発見率が女性の2.6倍となった。 〔結論〕 昨今の検診機器の進歩等に伴い、間接撮影による受診者数が減少傾向にあるなかで、より多くのがんを早期発見するためには、いかに精検受診率の維持・向上を図っていくかが今後の課題である。要精検者に対する説明・指導、早めの検査予約など、受診勧奨への取り組み、健康管理の意識づけが一層求められる。
  • 日下部 望, 杉山 和久, 小林 加代子, 鎌倉 真理子, 松野 梢恵
    セッションID: P1-B4-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    〈緒言〉岐阜県飛騨地域では検診効果を高めるためH17よりがん検診検討会を開催している。検討会の内容を考察し報告する。〈方法〉検討会は年1回の開催。参加機関は検診機関(当院)、飛騨保健所、高山市、精検機関(当院、A病院、開業医)。胃がん死亡状況の分析、検診実績、受診勧奨について報告・意見交換した。〈結果〉検診実績は要精検率10%前後。精検受診率は90%前後であった。検討会では飛騨地域の胃がん発見率が全国より低いことが問題になった。原因を探るため精検方法を分析すると胃直接X線検査(UGI)での精検が4.8%あった。精検は検診よりも精度の高い方法で実施する必要がありUGIを行なう場合は鮮明な写真をとる必要があると認識された。医師会の協力のもと、胃内視鏡検査が行なえる施設を中心に精検機関が見直された。その結果UGI実施率が1.8%に減少した。精検機関は当院3割、A病院2割、開業医他が5割を占めており、H11~16精検機関別がん発見率はそれぞれ5.13%、1.10%、1.53%であった。実施数に比例した発見率が求められ、検診で指摘された部位だけでなく全体を隈なく観察する必要があると認識された。H17より前後3年間を比べると開業医他での発見率が0.29%から0.88%に増加していた。飛騨地域のH15~19胃がん標準化死亡比は男性79.7、女性77.1でH10~14と比べ横ばいである。市では受診率向上のため対象者全員に申込用紙を配布しているが特定検診の実施により受診率は低下している。〈考察〉がん検診検討会を行なうことで各機関が共通認識を持ち取り組んだため、精検方法や精検機関別がん発見率に少しずつ変化が現れている。〈まとめ〉検診効果を上げるためには検診受診率と精検受診率の向上、検診及び精検機関の精度維持が必要である。
  • ~過去11年間の発見がん推移を含めて~
    島崎 洋, 山岸 孝弘, 松本 和久, 中屋 俊介, 中村 俊一, 佐々木 泰輔, 永井 信, 近藤 規央, 今村 哲理
    セッションID: P1-B4-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈諸言〉 がんによる死亡を減少させる目的における集団検診の重要性は周知のとおりである.腹部超音波検診においては,一定の成果は見られるものの,術者依存性や臓器依存性が高く,解決すべき課題は多い.そのような中で,JA北海道厚生連放射線技師会では,平成15年度より「超音波検診の精度向上に関する委員会」を会内に設置し,腹部超音波検診の精度向上に向け,活動を続けている. 主な活動内容を以下に示す. ・ 施設内ドック超音波検査成績調査 ・ 各施設超音波検査実態調査(装置・走査方法) ・ トピックス配信 ・ 頚動脈検査マニュアルの作成 ・ 腹部超音波検査の代表的疾患マニュアル作成 ・ がん症例超音波画像の集約と会員への開示・教育  今回我々は,活動の主眼としている超音波検査成績について,院内施設ドックを行っている6施設を対象に,検査成績をまとめたので報告する. 〈検討項目〉 1)平成20年度における病院ごとの腹部超音波検査成績について調査した. 2)平成20年度における一次有所見内訳について臓器ごとに調査した. 3)平成10年度~平成20年度までの発見がん内訳について臓器ごとに調査した. 〈結果及び考察〉 1)全ドック受診者数53,758人中,腹部超音波検査受診者数は51,658人(受診率96.09%)であった.その他の項目は当日報告する. この結果は,北海道厚生連生活習慣病読影委員会のデータを一部参照した. 北海道厚生連生活習慣病読影委員会に深謝するとともに,今後も「超音波検診の精度向上に関する委員会」として検診精度向上の取り組みを行い,がん発見の向上を目指したい.
  • 辻田 朝海, 望月 静佳, 小林 則康, 内田 美寿子, 小林 克, 佐藤 敏行, 緒方 洪之
    セッションID: P1-B4-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】人間ドックでの上腹部超音波検査(以下US)は肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・脾臓の病変検索を主な目的として多くの施設で行われている。しかし、人間ドック全体で発見される癌は、上記5臓器に発生する癌よりも、消化管に発生する癌の方が多いとの報告がある。当院の人間ドックでは消化管を含めたUSスクリーニングを行っており、その結果USにて消化管腫瘍を指摘できた症例を経験したので報告する。
    【症例1】78歳女性。 USにて胃(幽門側)に19mmの壁肥厚と不整像を認めた為、胃癌疑いの旨を医師に報告した。翌日行われた上部消化管内視鏡検査にて1型胃癌と診断された。病理組織にて腫瘍径は27×20mmであった。
    【症例2】60歳男性。 USにて右下腹部(回盲部)に46×54mmの低エコー腫瘤を認めた。大腸癌疑いの旨を医師に報告し、同日午後に外科紹介となり下部消化管内視鏡検査にて2型大腸癌と診断された。病理組織にて腫瘍径は119×68mmであった。
    【考察】2008・2009年度に当院の人間ドック全体で発見された胃癌・大腸癌のうち、USを実施した症例は4例であった。このうち胃癌1例と大腸癌1例はUSにて腫瘍を描出できたが、残る大腸癌2例は指摘できなかった。USにて腫瘍を指摘できなかった2例のうち1例は、盲腸の腺腫内癌で、腺腫の大きさが5mmであった。もう1例は直腸Rs部に2型大腸癌があり、病理組織にて腫瘍径は35×21mmであった。消化管腫瘍は大きさや局在部位、その他の条件によりUSでの描出が困難となることがあるが、消化管を含めた腫瘍のスクリーニング検査としてUSは有用であると思われた。        
  • 木村 裕恵, 松下 次用, 吉田 正樹, 野坂 博行, 山瀬 裕彦, 川島 司郎, 平石 孝
    セッションID: P1-B4-8
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)血清クレアチニン(Cre)は性・年齢による影響をうけるため正確に 腎機能を反映しないとされる。このため日本腎臓病学会から腎機能の評価にe―GFRを用いることが提唱されている。そこで、今回、本院のドック・健診受診者の腎機能をe-GFRで評価し、その有用性について検討したので報告する。 (対象・方法)対象は平成21年3月~7月までの受診者、男219名、女350名(計569名)である。改訂MDRD簡易式により血清Creからe-GFRを算出し、性・年代別に集計し、有用性を評価した。 (結果)男性のCre平均値は0.82±0.11、女性は0.58±0.08(基準値:男0.5~1.0・女0.2~0.8)であった。男性の年代別のe-GFR平均値は、20代97.1±15.9、30代94.8±10.0、40代82.8±9.1、50代82.1±12.8、60代76.9±13.2、70代↑75.5±12.8。女性の20代104.8±18.0、30代96.3±15.6、40代87.1±13.9、50代83.0±11.8、60代80.9±15.1、70代↑74.8±17.9であった。日本腎臓病学会のCKDステージ分類ではステージ_II_(e-GFR60~89)をGFR軽度低下としている。e-GFRの結果からするとステージ_II_は、男性131名(59.8%)、女性164名(46.8%)。ステージ_III_は男性16名(7.3%)、女性14名(4.0%)であった。 (まとめ)腎機能の指標としてe-GFRは血清クレアチニンよりは鋭敏とみなされるが女性高齢者では体表面積で補正したe-GFRで評価すべきと考えられた。  
  • 住田 知隆, 安藤 正司, 小林 望, 越川 和博, 松田 盛功, 川合 信也, 水谷 弘二, 吉村 恵介
    セッションID: P1-B5-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    画像診断法の進歩により、少ない侵襲で脳の形態が診断できるようになり、磁気共鳴映像(MRI)を主な検査として脳の診査を行う「脳ドック」と呼ばれる試みが1988年頃より、北海道の新さっぽろ脳神経学科病院で最初に行われました。1992年には、日本脳ドック学会も設立され、色々な研究や検討がなされてきました。日本脳ドック学会では平成7年「脳ドックあり方委員会」を設置し、同年、全国の脳ドック実施施設を対象にアンケート調査を行った。 その結果を踏まえて脳ドックの水準と有効性の向上を目指してガイドラインを提示しました。
    今回、上記のような事から当院、脳ドックのガイドライン中の主な発見の対象所見について検討した。
    【方 法】
    平成20年度 当院の脳ドック受診者の所見および判定について検討する。
    年齢別/性別件数 年齢別/総合診断 性別/総合診断
    MRI所見/血圧 MRI所見/糖代謝 MRI所見/脂質代謝
    MRA所見/血圧 MRA所見/糖代謝 MRA所見/脂質代謝  など
    上記の項目について検討した。
    【結果】
      受信者数 882名(男性 495名 女性 387名)
      平均年齢 57.95歳(男性 57.62歳 女性 58.38歳)
    MRI所見より
    異常なし       515名 58.39% (男性 293名 女性 222名)
    無症候性脳梗塞    304名 34.47% (男性 162名 女性 142名)
    無症候性脳梗塞+その他 21名 2.38% (男性 15名 女性 6名)
    その他の所見      42名 4.76% (男性 25名 女性 17名)   etc
    【おわりに】
    今後も脳ドックの水準と有効性の向上に取り組んでいきたいと思います。
  • 鳥居 剛也, 三須 憲雄, 鈴木 正康, 金岩 秀実, 中神 信明, 中神 未季, 牧野 富久代, 天野 博子, 片岡 孝司
    セッションID: P1-B5-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     渥美病院は、渥美半島にある唯一の中核病院で、医療・福祉・保健事業の総合展開を図っており、市民病院に匹敵する役割を期待されている。特に保健事業においては、田原市行政と連携を密にしており、市の推進する多くの健診事業に関わっている。中でも他の市町村には少ない「脳ドック」を田原市の健診項目にして、当院健康管理センターで行っていることは大きな特徴である。当センターでは、脳外科医と相談して脳血管異常・脳梗塞など早期発見・予防を目的として、健診対象年齢を50歳、60歳とすることを田原市行政に提案した。協議の結果、平成15年度より、その年度に50歳、60歳になる方は、「節目健診」のオプションとして「脳ドック」を受診できるようになった。このことにより、毎年違う住民の方が平等に「脳ドック」を受けることができるようになっている。今回、「脳ドック」のデータ集計を行い、「脳ドック年齢別男女判定区分」「受診状況」等の報告をする。平成21年度の「脳ドック」受診者数は、143名(男65名、女78名)であった。異常ありは、19名(13%)であり、その内訳は、要経過観察13名、要精密検査6名であった。今後、行政との協力体制を強め、脳ドックをより受けやすくするとともに、当院の受入れ枠を拡大して、脳ドック受診者を増やすことで、脳疾患の早期発見に努めて、地域の健康管理向上を推進してゆきたい。          
  • 塩澤 秀樹, 岸本 恭, 安達 亙, 平島 良子, 小林 小百合, 小林 修司, 熊崎 木綿子, 小松 俊雄, 窪田 真弓, 岡安 さとみ
    セッションID: P1-B5-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    甲状腺超音波スクリーニングの有用性について 塩澤秀樹、岸本恭、安達亙、JA長野厚生連富士見高原病院外科 平島良子、小林小百合、小林修司、熊崎木綿子、小松俊雄 同臨床検査科 窪田真弓、岡安さとみ 同健康管理課 当院人間ドックでは検査項目の一つである女性の乳腺甲状腺検診受診者および男性の腹部超音波検診受診者に甲状腺超音波スクリーニングを実施してきた。今回我々はこの甲状腺スクリーニングの有用性について検討した。対象は2008年4月から2010年3月までの当院人間ドック甲状腺超音波スクリーニング受診者のべ5461人中複数回受診をのぞく実質受診者3944人について検討を行った。要精検者は176人で精検受診者は124人(精検受診率70_%_)であった。腫瘤性病変では125人の要精検者のうち10人の甲状腺癌(発見率0.25_%_)が発見された。平均腫瘤径は13mmであった。内訳は10mm未満が4例、10mm以上の症例が6例で、このなかで1例に下内深頸周囲のリンパ節転移を認めた。び慢性疾患では甲状腺機能亢進症3例、慢性甲状腺炎29例が発見された。甲状腺超音波検査は比較的簡便であり甲状腺癌の早期発見だけでなく甲状腺機能異常のスクリーニングとしても有用な検査と考えられる。しかし近年10mm以下の微小甲状腺癌について積極的に精査を行わず経過観察を行う方針をとる施設が増えてきておりその治療には慎重を要すると考えられる。
  • -抗甲状腺抗体(抗サイログロブリン抗体)の検討-
    佐藤 繁樹, 木田 秀幸, 佐々木 沙耶, 坂下 あい子, 紅粉 睦男, 井川 裕之, 真尾 泰生
    セッションID: P1-B5-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】甲状腺疾患は糖尿病に次いで頻度の高い内分泌代謝疾患であるが、健診項目に取り入れている施設は少ない。当院ドック健診では、2005年度より血清TSH測定を実施し、甲状腺機能障害の実態把握と早期診断・治療に努め、本学会でも報告してきた。精査・治療を必要とする例が比較的多く認められたことより、今回は、抗甲状腺抗体である抗サイログロブリン抗体(TgAb)を測定し、自己免疫性甲状腺疾患の頻度などの臨床的検討を行ったので報告する。【対象・方法】2007年度に当院ドック健診受診者16,596例中4,277例において、凍結保存した血清を用いてTgAbを測定した。対象は男性2,648,女性1,629例で、年齢は16~87歳,平均年齢は男性53.0,女性52.0歳であった。TgAbはCosmic社RIA法にて,血清TSH値はCLIA法(化学発光免疫測定法)にて測定した。正常値は、各々0.3U/ml未満,0.36~3.67μU/mlとした。【結果】1) TgAb 陽性率:男性12.2,女性24.6%で女性が高率であった。2)年代別の陽性率(図1):男性の40歳以下7.7,41~50歳9.2,51~60歳13.2,61~70歳15.7,71歳以上20.1%であり、女性は各々19.7,23.0,26.9,27.6,24.7%であった。男女ともに年代とともに陽性率は高くなった。3)血清TSH値:男性のTgAb陰性例1.38±1.25,陽性例1.86±1.95μU/mlであり、女性は各々1.61±1.16,1.98±1.65μU/mlであった。男女ともに陽性例で血清TSH高値を示した。4)年代別の血清TSH平均値:男性TgAb陰性例は、40歳以下1.18,41~50歳1.22,51~60歳1.36,61~70歳1.62,71歳以上2.07μU/mlであり、陽性例は1.44,1.57,1.91,2.03,2.23μU/mlであった。女性の陰性例は、各々1.36,1.42,1.66,1.93,2.26μU/ml、陽性例は1.82,1.76,2.04,2.24,2.11μU/mlであった。血清TSH値は年代とともに高くなったが、TgAb陽性例の方が高値であった。【結語】自己免疫性甲状腺疾患(大多数は橋本病)の頻度が高率なことが判明した。血清TSH値も抗体陰性例に比べて高く、甲状腺機能低下に移行し易いと思われるが、治療を含めたその取り扱いに関しては慎重な対応が必要である。
  • -カテゴリー判定の比較検討-
    須貝 祥子, 細木 和典, 小林 雅弘, 加藤 美保, 佐藤 真知, 戸田 康文, 李沢 幸悦
    セッションID: P1-B5-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    当院の平成19年度乳がん検診成績を全国集計と比較すると、要精検率(8.77%)は全国集計と比べても遜色ない結果であった。これに対し、がん発見率(0.13%)、陽性反応的中率(1.43%)については、全国集計と比べ低い値であり、検診精度の低さが疑われた。
    そこで今回、当院における乳がん検診の精度向上を目的に、技師・医師間でMMGのカテゴリー判定を比較検討し、検診精度の評価を行った。 その結果、技師がカテゴリー3、医師がカテゴリー1・2とした症例は190例(48.97%)あり、技師の読み過ぎの傾向が示唆された。考えられる要因として、背景乳腺、乳腺濃度不足といった画像・画質に関わる因子が挙げられた。当院では、現在デジタルMMGが稼働し、モニタ診断となっているため、デジタル系の利点から、背景乳腺や濃度不足にとらわれず、より読影しやすい環境へと改善される事が期待される。 その他にも、読影ミス、カテゴリー判定ミスといった読影に関わる因子が挙げられ、今後は読影力の向上、技師間の読影認識の統一が必要と考える。
    発見された乳がん症例の詳細より、腫瘍径が小さくなるにつれMMGでのカテゴリー判定が下がる一方、echoでは悪性を疑う所見を認めていることがわかった。また、MMGで悪性石灰化を疑うものの、echoや細胞診ではnpと診断された症例があった。この症例はその後、マンモトームによって乳頭腺管癌であることがわかった。このように、マンモグラフィ単独では指摘できない乳がん症例もある為、echoやマンモトームといった他のモダリティーにも視野を広げ、乳がん検診の精度向上に努めたい。 
  • 鈴木 晴子, 山崎 緑, 清水 正子, 畑中 美幸, 岡田 香純, 川原田 和子, 西村 晃, 矢納 研二, 濱田 正行
    セッションID: P1-B5-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 我が国の子宮頸がん検診受診率(以後、受診率)は、21.3%と他の先進諸国の約1/3である。今回は、当院女性職員(以後、職員)の検診受診状況を明らかにすることで、検診実施施設として、我々が受診率向上のために今後取り組むべき課題について検討した。
    [対象と方法] 職員553名に対し、アンケート形式で受診状況を調べた。(有効回答数:456)
    [結果と考察] 職員の受診率は全体で51.3%(234名)であり、その内77.4%が当院で受診している。年齢階級別でみると、50~54歳が80.0%と最も高く、20~24歳が11.1%と最も低かった。全国の水準と比べるといずれの年齢階級でも当院の受診率は高かった。受診理由は、「ドックのコースに含まれていた」が62.1%と最も多く、「不安がある」が次に多かった。非受診の理由の中には、妊娠以外で婦人科を受診することへの抵抗や今まで検診の機会がなかったこと、などが自由記載回答でみられた。当院では、職員に受診が義務付けられる“職員健診”の他に、35歳からは“人間ドック”が受診できるよう健康保険組合が補助している。人間ドックのコースに子宮頸がん検診が含まれているので、当院の受診率は全国と比べ高いと考えられる。職場では、定期健康診断が各職員の自己管理と健康増進への意識付けとして重要な役割を担っているので、その機会を利用して子宮頸がん検診を受診できるような制度を設ければ、人間ドックの対象とならない若年層の受診率も向上するのではないか、と思われる。
    [まとめ] 今後HPVワクチン接種による子宮頸がんの発生率の低下と、早期発見・死亡率の低下を目指すために、特に若年層の受診率向上を図る様々な制度構築を検討し、子宮頸がんについての正しい知識・情報の啓蒙が必要である。
  • 日高 好博, 齊藤 和人, 草野 健, 前之原 茂穂
    セッションID: P1-B5-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    演題 脈波伝搬速度・臨床検査値と酸化ストレス防御系の関係                                                           発表者氏名 日高好博(ひだか よしひろ) 共同演者名 齊藤和人、草野健、前之原茂穂 所属鹿屋体育大学・鹿児島県厚生連健康管理センター キーワード: dROM・BAP・酸化ストレス      【目的】酸化ストレスの増加はPWVを速めることや抗酸化力が高いと頸動脈の内中膜厚が薄いことは良く知られている。しかし、PWVとは関与しないとの報告もみられる。そこで、酸化ストレス防御系をdROM test値(酸化ストレス)、BAP test値(抗酸化力)、BAP/dROM比(潜在的抗酸化能)により評価し、baPWV・臨床検査値との関係を検討した。 【方法】鹿児島県厚生連健康管理センターを受診し(H21年1月~同年3月)、baPWVの検査を受け、かつABI>0.95・hsCRP値0.1mg/dl未満の309名を対象とした。 dROM testとBAP testは生化学自動分析装置(日本電子BM2250)を用いた。PWVはformPWV/ABI(日本コーリン社)を用いて測定し左右平均のbaPWV(mPWV)、mABIを、生化学はFBS、HbA1c、HDL、TG、TC、LDL、尿酸、hsCRPの指標とdROM値、BAP値、BAP/dROM比値で各々3分位した3群間で比較検討した。統計は分散分析を用いた(P<0.05)。【結果】1)dROM値が高い群ほどHbA1cとhsCRPが有意に高かった。2)mPWVも平均値の増加傾向を認めた。3)BAP値が高い群ほどTCとTGは有意に低かった。4)BAP/dROM比値が高い群ほどHbA1c、TC、LDLとhsCRPが有意に低かった。5)mPWVも潜在的抗酸化能の高い群が有意に低値を示した(P<0.05)。【考察】dROM値は先行研究の報告の通りhsCRPと相関したので、dROM値は炎症を反映していると思われる。潜在的抗酸化能を示すBAP/dROM比値は今回検討した全ての指標と有意に負の相関を示し、酸化ストレス防御系の指標としては有用と考えられた。又、酸化ストレスの増加や潜在的抗酸化能低下は早期の動脈硬化の指標としてのPWV値を上昇させると考えられた。
  • 堀川 俊二, 梶谷 真也, 徳本 和哉, 要田 芳代, 川上 恵子, 只佐 宣子, 竹増 まゆみ, 岡野 典子
    セッションID: P1-C1-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的・方法】高齢者糖尿病患者は様々な合併症や慢性疾患を認める場合が多く、さらに易感染性から高齢者糖尿病の入院患者の増加が予想される。高齢者糖尿病患者の緊急入院の実態を調査することは、緊急入院を予防し、ひいてはQOL維持、向上を目的とした高齢者糖尿病管理を行うために重要と考える。 そこで今回、JA吉田総合病院内科に緊急入院した2型糖尿病患者255例を対象とし、年齢により70歳未満(以下_I_群)、70~80歳未満(以下_II_群)、80歳以上(以下_III_群)の3群に分け臨床背景と治療経過を調査し比較検討を行った。【結果・考察】入院例は_I_群に比して_III_群で有意に緊急入院が多く(p=0.003)、平均入院期間においても_III_群で有意に入院期間が長い結果となった。(p=0.029)さらに_III_群では死亡例が多く、死亡例の入院原因は感染症が12例と最も多く、次いで脳血管障害4例であった。入院原因はどの群においても感染症が最も多く_I_群に比べて_II_群および_III_群で有意に多かった。(p=0.007), (p=0.034) 感染症の内訳は、各群とも呼吸器感染症が最も多く、次いで尿路感染症の順であった。感染症例にてインスリンが開始、必要量が増量となった症例は、年齢とともに増加し、_III_群で最も多かった。 低血糖での緊急入院例では_III_群で最も多く、低血糖入院例はほぼ重症低血糖であった。その原因としては食事摂取不足、アルコール摂取が影響した可能性、治療薬の過剰投与が推測された。このうち_III_群の2名が独居であり、5名が認知機能障害を認め、治療状況はほとんどが経口血糖降下薬での治療例であった。 高齢者糖尿病患者は年齢とともに緊急入院患者は増加し、入院期間は長かった。高齢者では多種の基礎疾患を有し、生体機能も低下していることから重症化しやすく、予後が不良であるため早期の発見、受診が重要と考える。
  • -患者の手本となる手技を目指して-
    三品 君枝, 野澤 彰, 福田 環, 飯野 直子, 入江 洋美, 高橋 文子, 加藤 英代, 蛇沼 俊枝, 柏崎 達也, 梶 由依子
    セッションID: P1-C1-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】BR 患者のインスリン注射手技の間違いの原因の一端が看護師の手技にあることが分かり、看護師を対象にインスリン注射実技研修会を行った。看護師教育は、H18年度から実施し、看護師の85%が受講した。H20年からは、新人教育の一環として研修会を開催している。この研修会により、「患者の手本となる注射手技」が看護師に浸透し、患者指導の効果があったので報告する。BR 【研修会の内容】BR 1)研修目的:インスリン注射に関する知識及び技術を習得し、患者の手本となる。BR 2)研修内容:_丸1_インスリン注射薬の種類と作用 _丸2_インスリン注射手技の演習 _丸3_SMBGの演習 _丸4_低血糖時の対応方法BR 【結果及び考察】BR ・研修後アンケートでは、90%以上が勉強になったと回答。自由意見では、「知っているつもりでいたが、間違っていたことに気付いた。」「一つ一つの手技には理由があり勉強になった。」など、研修に対して肯定的な意見が多かった。 ・糖尿病支援チームの各部署スタッフの評価では、「間違った手技で注射している看護師を見かけなくなった。」と改善がみられる。BR ・糖尿病外来の患者教育担当看護師の評価は「教育入院した患者のほとんどが、正しい手技を実践している」「以前は間違った注射を行っていた患者も正しい手技に修正された」「退院後の指導で誤った手技を指摘された患者から、看護師さんも同じようにやっていたという指摘がなくなった。」というものである。BR ・低血糖発作に対する標準的な対応方法が浸透した。BR インスリン注射手技・スタッフ教育・チーム医療procedures insulin
  • 椎名 君江, 伊藤 祐子, 九頭見 節子, 三浦 光江
    セッションID: P1-C1-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1. はじめに 今回インスリン自己注射に向け指導開始となった患者は高齢であり、記銘力の低下、そして視力障害があり、インスリン自己注射指導には援助の工夫が必要であると考えた。援助の工夫をした結果、インスリン自己注射を覚え退院していった。今回の指導を振り返り、インスリン自己注射指導にどのような効果があったかを明らかにしたいと考えた。 2. 研究目的 指導方法、援助方法を振り返ることでどのような関わりが効果的であったかを明らかにし、今後の指導に役立てたい。 3. 研究方法 ステップ1からステップ6までの6段階にわけたチェックリストを作成、そのチェックリストをもとに、導入時から退院までの経過を分析していく。 4. 結果 インスリン指導を1日2回行い、一端は全部『できる』になったが、その次の日には『できる』部分も忘れてしまって『できない』になってしまい、指導内容の中に根拠を入れ、また、家族介入が必要であると判断し、家族にもインスリン自己注射を指導していった。その結果、できない部分は家族に補ってもらう形ではあるがインスリン自己注射を覚え退院していった。 5. 考察 面接を行ったことで、情報収集、アセスメントができ指導にやくだてることができたと考える。指導項目の中に根拠を入れて指導したことは意味づけとなり、一貫した指導ができたと考えられる。患者と看護師との間に信頼関係の形成ができたことで患者自身が自信を持ち、行動に変化がみられた。患者の行動や意欲を判断し、タイミング良くインスリンの指導を取り入れたことも効果があったと考える。 6. まとめ 指導前の面接で患者の背景がわかり指導に役立つことができた。改めて、患者に指導していくということはただ単にパンフレットを渡すだけではいけないということを感じた。高齢者の特徴を踏まえ指導内容、指導方法、指導教材など変更していくことが大切であり、継続して指導していくことが必要であることがわかった。そして、高齢者の場合、家族介入は必要不可欠であることがわかった。
  • 丸山 順子, 目黒 理恵子, 八幡 和明
    セッションID: P1-C1-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>糖尿病患者の足病変の予防、早期発見、また悪化の防止を目的に医師の診察と連携してリアルタイムにフットケア外来を継続してきた。その実績の評価を得て他病院からも多数の重症足病変患者の紹介を受け入れるようになった。過去5年間のフットケア外来の活動内容について報告する。
    <結果>足壊疽は25名で大半は他病院からの受け入れであった。マゴットセラピーを施行した患者9名、一部でも切断に至ったもの6名と重症潰瘍が多かった。その他のケア内容は、胼胝や鶏眼処置が18名、白癬ケア20名、爪の手入れ18名、皮膚乾燥や亀裂ケア3名、水疱などの創処置12名であった。足の変形があったり胼胝が繰り返しできる患者にはフットプリントをおこない、その原因を探り足底板を作成した。白癬の患者は非常に多く、自宅でのケアの注意点を指導した。また、創処置が必要な患者や切断歴のある患者には、現在の足に対する思いや日常生活上で困ったことはないかなど気持ちを確認していった。足病変を持つ患者のケアの問題点としては、視力障害などにより自己管理が難しい、胼胝処置など専門的なケアが必要などであった。フットケア外来を通して患者の自宅でのケアの質が向上し、ケア物品を購入する、足病変につながる自己流の処置を改める、足の異常に気づき早めの受診行動をとるといった患者の行動変容がみられるようになった。
    <考察>足への関心が乏しい患者でも根気よく関わってゆくことにより、自ら日々のケアができるようになり、ケアの方法や足の変化を看護師が定期的に観察し支援してゆくなど、患者の検査データもふまえタイミングを逃さず対応してゆくことで足病変の悪化を回避し、患者のケアの継続につながってゆくのではないかと考える。
  • -糖尿病問題領域質問表(PAID)による分析-
    石川 弘美, 清水 梢恵, 横山 美智子, 木曽 匡, 八幡 和明
    セッションID: P1-C1-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    糖尿病は生涯治療を継続していかなければならない疾患で患者の負担は大きいと思われる。入院患者の治療への心理的負担度を知るために、アキュチェックインタビュー(ACI)を行い入院時と退院時でどのように変化するのかについて分析した。 〔対象〕平成20年8月~平成21年7月までの糖尿病教育入院患者84名(男性57名、女性27名)で平均年齢は60.75±13.0歳であった。 〔方法〕ACIは必ず個室で面接を行いその中で糖尿病問題領域質問表(PAID)を通して分析した。PAIDとは「糖尿病であること」「治療をすること」「他者との関係」などに関連する感情負担を20項目にまとめた質問表で、各項目の質問に1~5までの主観的な5段階で評価をつけてもらう。負担に思う気持ちが高いほど点数が高くなる。その点数の変化に注目した。 〔結果〕 全体的な感情負担を入退院時で比較してみると、PAIDの総点数の平均は、入院時42.7点、退院時38.7点であった。またそれぞれの項目の平均点数は、入院時6.0点、退院時5.1点といずれも退院時には軽減されていた。 患者背景の違いではインスリン治療の有無では注射ありの群で負担がやや高い傾向にあった。キーパーソンの有無についてキーパーソン無しの群でやや高い傾向がみられた。 性別、就業の有無、入院の回数では有意差は認められなかった。 [考察]教育入院システムでは、糖尿病の治療や検査、知識の獲得がより効率的にできるように計画されているが、心理面への配慮は十分とは言えない。入院時の患者の感情負担がどこにあるか把握した上で、傾聴する姿勢を持ちながら、その負担を軽減するようにかかわることで、治療意欲が高まり、自己管理がしやすくなると考えられる。私たちは患者の感情状態について学び、知る努力を続けていく事が必要であると考える。
  • 江田 美幸, 塩田 春美, 加藤 英代, 近澤 珠聖, 三品 君枝, 斎藤 道子, 小林 千鶴, 高橋 春奈, 蛇沼  俊枝, 梶 由依子
    セッションID: P1-C1-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】BR  総合病院の外来診療は「3時間待ちの3分診療」と言われます。そんな状況の中で、患者教育を実践しようとすると、「時間がないので別の機会に」というのが患者の反応でした。これは、待ち時間に対するストレスで、教育指導を受ける心の余裕がないことが大きな要因になっていると考え、待ち時間の短縮及び有効活用に取組んでいます。今回は、糖尿病外来で待ち時間を有効活用した患者教育の取組みを紹介します。BR 【糖尿病外来の受診経路】BR 1.従来の受診経路と〔待ち時間〕BR  __丸1__受付→〔5~15分〕→__丸2__検査伝票受け取り→__丸3__採血・採尿(採血室)→__丸4__血圧・体重測定→〔(検査が確定するまでの時間:40~50分〕+(診察の進行状況による待ち時間)〕→__丸5__診察→__丸6__会計→__丸7__薬受取り→__丸8__帰宅 2.待ち時間短縮の改善点BR 1)オーダリングシステム導入により、検査伝票受け取らずに検査が可能になった事BR 2)検査実施から検査確定までの待ち時間に患者教育(栄養指導・療養指導)することで、無駄な待ち時間を減らした。 3.年間療養指導者数の件数(平成21年度実績)BR  療養指導(615件)、栄養指導(2,423件) 【結果及び考察】BR  待ち時間のイライラを減らしたことで、好評価を受けており、療養指導件数が確保された。その結果、患者教育が充実した。今後の課題は、指導スペースと指導スタッフの確保である。BR 待ち時間短縮  糖尿病外来指導  チーム医療
  • 小池 孝康, 和田 範文, 島田 武, 太田 くるみ, 河合 則子
    セッションID: P1-C1-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>当院では、糖尿病療養指導に関する病棟間の統一化、スタッフの育成を図るため、平成21年2月より糖尿病入院病棟を中心としたチーム合同カンファレンスを開始した。また以前より、当院糖尿病療養指導士(平成22年現在9名)による外来患者への糖尿病教室や、スタッフの為の勉強会を行っていた。今回は院内で統一した糖尿病指導体制の確立が必要との意見もあり、両者から挙がった問題点を院内に発信していく体制を整えるため、平成21年10月より糖尿病マネジメント委員会が発足した。これらの活動内容の紹介とともに、平成19年度より地域連携活動として行っている近隣病院との教育チーム医療カンファレンスについて報告する。 <現状と問題点>当院では糖尿病療養指導のマニュアル化が完全に整備されておらず、個々の病棟によって対応が異なっていた。その為、毎年多数の新入職員が各病棟に配備されるが、療養指導が曖昧になっている点が懸念されていた。また、各職種の指導内容の相互連絡も不十分であり情報共有の場が無かった。 <対策>糖尿病教育入院病棟を中心とし合同カンファレンスを立ち上げ、医師、看護師、理学療法士、管理栄養士の情報交換の場とし、入院患者の症例検討を行うとともに、各部署の療養指導の実態調査を行った。 <活動>実態調査の結果からやはり各病棟間での指導内容には大きな差があり、既存のクリニカルパスも上手く機能していなかった。そこで、糖尿病マネジメント委員会を発足。検討課題としてマニュアルの整備、クリニカルパスの見直し、院内勉強会などを行ってきた。それと並行して当院での活動内容を近隣病院との教育チーム医療カンファレンスで報告、情報交換を行い質の向上を目指した。 <まとめ>問題点を整理した事で、これまで曖昧になっていた療養指導の実態が浮き彫りとなった。カンファレンスにより情報交換の場ができ、教育入院患者に対してチームでの統一したアプローチが可能な状況となってきた。今後も質の高い医療が提供できる体制を整備するために、定期的な勉強会、カンファレンスを開催していく必要があると思われる。                           
  • 小林 千鶴, 高橋 春奈, 杉田 恵, 竹田 悦子, 蛇沼 俊枝, 加藤 英代, 塩田 春美, 江田 美幸, 三品 君枝, 梶 由依子
    セッションID: P1-C2-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    目的:当院では、栄養指導室を診察室の隣室に2か所設け、診察日に栄養指導を行うことで、診察までの待ち時間を効率的に利用し実施している。栄養指導は1ヶ月に約250件行っており、より効果的でニーズにあった栄養指導方法の検討を目的としてアンケートを実施したので報告する。
    方法:継続的に栄養指導を受けている患者で、2008年12月の1ヶ月間に指導を行った患者(男性110名、女性120名)を対象とした。内容は、_I_栄養指導の待ち時間、_II_指導の間隔、_III_指導形式、_IV_食事体験教室への参加、_V_指導効果についてアンケートを行った。
    結果:_I_待ち時間30分以内が75%で「適当」と回答した。_II_次回指導までの間隔は、検査値や指導効果により医師と管理栄養士と患者で決めており平均3~4カ月であるが、86%が「適当」と回答した。_III_集団指導と個人指導のどちらを希望するかは、55%が「個人指導を希望」と回答した。_IV_食事体験教室は、「参加したい」が33%であった。_V_指導効果は86%で指導後に実行していた。
    考察:栄養指導の待ち時間や次回指導までの間隔については75%以上が適当となり、患者自身も診察までの待ち時間を有効に利用できているためと考えられた。個人指導希望者は、個人にあわせた目標の提案で安心感や満足度に繋がっていると示唆されたが、「他の人の工夫を知りたい」という意見もあった。その為、患者が参加してみたいと思えるような食事教室の開催など患者同士でコミュニケーションがとれる場の提供も必要であると考えられる。また、栄養指導後に多くの患者に行動変容が起きているが、指導内容にマンネリ感があるなど継続した栄養指導を希望しない声も聞かれた。今後はさまざまな視点から患者が実行・継続できる目標設定をすることや、適切な資料を用いることで魅力的な栄養指導を行い、患者にあわせたQOL向上の支援を行っていきたいと考える。
  • 中島 みどり, 飯塚 真理子, 冨島 洋子, 大場 瞳, 今井 泰平
    セッションID: P1-C2-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    《目的》当院では医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師、理学療法士など多職種からなる「糖尿病療養支援委員会」を設置し、チーム医療による電子クリニカルパスを用いた糖尿病教育入院を毎週行っている。糖尿病教育入院患者における栄養指導後の意識効果を検討したので報告する。《対象及び方法》2007年1月から6月までの糖尿病教育入院実施者、6ヵ月後、12ヵ月後、24ヵ月後、36ヶ月後のHbA1cの推移及び栄養指導効果について教育入院後3年経過した患者58名を対象に口答にてアンケート調査を実施した。《結果》男性60%女性40%で、罹患歴は平均10年である。入院時HbA1c平均8.9%、6ヵ月後平均6.7%、1年後平均7.2%、2年後平均7.2%、3年後平均7.4%であり良好なコントロールが持続していた。アンケートでは「指示量を把握している」75%「目標体重を知っている」72%「栄養のバランスに気をつけている」82%「規則的な食事時間を心がけている」77%「1日3食たべている」92%と食事に関して気をつけていることが伺える反面、5割近い患者が間食をやめることが出来ないでいる。また間食をしている患者に「食事療法が難しい」と感じている傾向が見られた。食事に時間がかけられないで早食い傾向になってしまう、運動習慣がないと回答している患者も5割を占めた。また教育入院時アルコールを飲んでいた患者は男女合わせて16名であり、禁酒出来た6名、禁酒は出来ないが飲む回数または量を減らしたと回答した患者が10名であり、アルコール摂取者全員に行動変容が継続出来ていることがわかった。《考察と課題》今回面接によるアンケート調査を実施したことにより、病気に対しての不安や悩みの多さ、患者個々人の考えなどを知ることができた。今後チーム医療による指導や専門分野での関わりの必要性を強く感じた。また、食事管理意識の低い患者を対象に、定期的な指導・家族への指導を考慮した個別栄養教育が必要であり、個別対応の重要性を感じた。
  • -生活習慣調査と平成19年県民・健康栄養調査の結果を比較して-
    井原 朗子, 宮尾 真由美, 横田 佐和子, 酒井 寿明, 秋月 章
    セッションID: P1-C2-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】糖尿病の治療には食事、運動、薬物療法があり、食事療法は全ての糖尿病患者に重要である。また、食生活は生活習慣により大きく影響を受けることから、栄養指導では、生活習慣の改善を含めた指導が必要と考えられる。そこで糖尿病患者の生活習慣の特徴をふまえた栄養指導及び生活指導を行うために生活習慣を調査・検討した。【対象及び方法】当院の外来・入院糖尿病患者で1型糖尿病を除く60歳以上の104名に、欠食の有無、飲酒状況、間食の有無、喫煙の有無、睡眠時間、ストレスの有無、運動の有無をアンケート調査し、平成19年長野県民健康・栄養調査の60歳以上の結果(HbA1c6.1%以上又は血糖降下薬使用者又はインスリン注射使用者を11%含む)と比較検討した。また、糖尿病患者の生活習慣と食行動レベルに応じて5つに分類した食行動変容ステージを比較検討した。【結果】糖尿病患者は朝欠食、間食のある人が多かったが、維持期の女性では朝食欠食のない人が多く見られた。また糖尿病患者は喫煙者が多かったが、準備期と維持期の男性は禁煙者が多く見られた。さらに、糖尿病患者は運動習慣のある人が少なく、準備期の男性、無関心期と関心期の女性に運動習慣のない人が多く見られた。【考察】朝欠食の是正には欠食者のステージを把握し維持期に進めていく指導が必要と考えられた。食生活に気を付けている人は禁煙ができたと考えられたため、禁煙者のステージを把握し準備期以上の場合は禁煙のチャンスと捉え栄養指導と同時に禁煙指導を行うことが望ましいと考えられた。食生活に気を付けていない人は運動の習慣もないと考えられたため、運動療法の必要性を認識させ、個別に具体的なカリキュラムの立案をすることが必要と考えられた。
  • 小林 憲司, 林  安津美, 脇阪 涼子, 矢神 真奈美, 鷲野 香織, 山本 絢子, 加藤 大也, 澤井  善邦
    セッションID: P1-C2-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】肥満糖尿病の治療の最大の目的は、インスリン感受性を回復させ、正常な血糖状態を取り戻すことで、それには体重を減らすことが先決である。そのため、当院ではクリニカルパスによる糖尿病教育入院を実施しいるが、昨年より肥満糖尿病患者において、入院時にフィットメイト(呼気ガス分析装置)を用いてRMR測定を行い、入院食のカロリー設定を検討している。今回我々は肥満2型糖尿病患者に従来のエネルギー設定群(標準体重×30kcal)とRMR測定を用いたエネルギー設定群とに振り分け体重、糖代謝、脂質代謝について比較し検討したので報告する。 【対象】当院糖尿病教育入院(2週間)のBMI25以上の2型糖尿病患者20名。いずれも試験期間中は治療方法の変更は無し。 【方法】対象となる患者を従来のエネルギー設定群とRMR測定を用いたエネルギー設定群に振り分け、2週間介入した。その前後に体重及び血糖、HbA1c、中性脂肪、LDL-コレステロール、HDL-コレステロールの測定を行った。 【結果】_丸1_体重においては従来のエネルギー設定群に比べて、RMR測定群の方に有意に減少傾向がみられた。_丸2_糖代謝においては両郡共に血糖、HbA1cに有意に差があると思われる。_丸3_脂質代謝においては、両郡共にLDL-Cは有意に差があると思われるが、HDL-Cは有意な変化が認められなかった。 【考察】肥満2型糖尿病患者において、RMR測定を用いたエネルギー設定は、従来のエネルギー設定群に比べ効果的に体重が減少し、糖代謝を改善する可能性が示唆された。
  • ~国産トマトピューレを患者給食に~
    石井 洋子, 佐藤 作喜子, 杵淵 香純, 柳田 奈央子, 杉本 悠貴, 菅沼 徹
    セッションID: P1-C2-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉トマトピューレ、トマトの水煮などトマト料理の調味料は輸入のものが多く、国産のものを見ることは少ない。平成17年から開始している地場野菜グループとの「地産地消」の取り組みの中で、トマト生産農家と当院スタッフで規格外品のトマトを利用したピューレの作り方マニュアルを作成し、ピューレを使用したレシピを検討したので報告する。 〈方法〉ハウスでのトマト栽培は、1年間に2回の収穫時期がある。今回の取り組みは、11月からの収穫に合わせ生産者、フードアドバイザー、病院栄養士でトマト加工準備のための連携会議を実施、同時に県内の先進地を見学し指導を受けた。12月初旬にJAいせはらの調理室を利用して、トマトピューレを試作し、マニュアルの検討をした。試作したトマトピューレは、病院栄養士と調理師で病院給食のトマト料理に使用し、実施献立に取り入れた。平成22年1月には、市民を対象にした減塩食とトマト料理の料理教室を開催し、地場野菜と手作りトマトピューレについて理解を深めてもらった。料理教室ではアンケートを実施した。 〈結果と考察〉今まで廃棄していたトマトからトマトピューレ作る取り組みは、国産の食材にこだわる病院と利用を模索していた農家にとってメリットとなるものであった。料理教室でのアンケートでは、地場のトマトピューレを使用したトマト料理は好評であった。市販のトマトピューレよりも糖度が高く、適度な酸味もあり、素材の味が活かされているという意見が多かった。単価については、トマトが規格外のため1/3の価格で購入しているが、輸入(病院で使用)のものより価格が高く今後の課題になっている。規格外の農産物については、今後も利用法を考え積極的に使用していきたいと考えている。                                                                                                                                                                              
  • 中村 崇仁, 深見 沙織, 柳田 勝康, 山田 慎悟, 重村 隼人, 伊藤 美香利, 岩田 弘幸, 朱宮 哲明, 西村 直子, 尾崎 隆男
    セッションID: P1-C2-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】近年、わが国では食生活の変化や生活様式の変化に伴い、小児生活習慣病とよばれる症状を有する子どもが増加傾向にある。この問題を解決するため、食を通じた子どもたちの健全育成、すなわち「食育」の必要性が言われている。今回我々は、入院児に対し、料理を作り提供する医療従事者の立場から食育活動に取り組んだ。
    【対象と方法】対象は、当院こども医療センターに入院中の1~5歳の幼児食を喫食する小児とその保護者。2010年2月より毎週火曜日に「お子様ランチ」という新メニューを提供し、その中で食育に関する取り組みを開始した。この食育の取り組みを評価するため、保護者に対し毎週1回アンケート調査(2010年4月~)を行った。尚、本取り組みは当院治験臨床研究審査委員会の承認を得ている。
    【結果と考察】「お子様ランチ」を栄養バランスの良い、見た目も楽しい、嫌いな食材も食べられるように工夫し、節分や雛祭り等の季節行事にも合わせたメニューとした。保護者には、献立に使用した食品の栄養の話、食育の意義、レシピの紹介等を記載したパンフレットを配布した。入院児には、遊んで楽しめるぬり絵をトレイに添えた。
     これまでに4回行ったアンケート調査の集計結果は、「お子様ランチ」の献立内容はよい64.9%(48/74)、盛付けはよい81.1%(60/74)、普段の病院食よりも子どもの反応はよい48.6%(36/74)、苦手な食べ物が食べられた18.9%(14/74)、ぬり絵で遊んだ+これから遊ぶ68.9%(51/74)、食育パンフレットは役立つ74.3%(55/74)、食育に興味はとてもある+少しある94.5%(70/74)であった。保護者からは「量が多かった」、「小さい子どもにはもう少し小さく切ってあると食べやすいと思う」等の意見もあった。
     病院給食での「お子様ランチ」は、入院児に対して楽しい食事の提供ができ、保護者には食育について考える機会となった。今後もこの取り組みを継続し、子どもたちのための食育活動に生かしていきたい。
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