本研究は,ハトが同異弁別課題を遂行する際の,条件性刺激に対して要求される,分化反応のメカニズムを明らかにすることを目的とする.実験Iでは,ハトにまず縦縞,横縞の刺激を使った見本合わせ課題が訓練された.次に,1対の色刺激に対して縦縞または横縞を選ぶ同異弁別課題が与えられた.半数のハトには,分化反応と選択刺激との対応関係が見本合わせ訓練時と同じに与えられ,もう半数には関係が逆転するように与えられた.その結果,分化反応がハトの課題遂行を統制していることが示された.実験IIでは,同じハトが新たに2群に分けられ,新しい色刺激を使った転移テストが与えられた.その結果,条件性刺激となる色刺激対と分化反応との対応関係が逆転すると,正反応率がチャンスレベルまで落ちた.これらのことから,分化反応を要求するハトの同異弁別課題の遂行は2つの学習過程から成ると考えられる.すなわち,ハトは(1)刺激対の同異関係によって分化反応を行い,(2)分化反応に基づいて選択刺激に反応する.分化反応は選択刺激の選択の手がかりとなると同時に,条件性刺激のカテゴリー化を促進する方向にも働いていることが示された.
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