Journal of Serviceology, Vol.3, No.2, pp.18-24, 2019
超高齢社会においても経済的に持続的発展が可能な社会を構築するためには高齢者を含む幅広い年代の生活者全てにとって快適な生活空間・サービス現場・労働環境について検討・設計していく必要がある.我々は,これらの環境内における人間の実際の活動を科学的・工学的に計測・分析した結果に基づく空間設計やプロセス設計を実現することを目指して,IoT技術により得られる大規模な実環境データと,限られた規模ながらも統制のとれた実験室環境で計測される脳活動・生体情報・視線情報といった深く高品質なデータを結びつけてモデル化するための計測・分析技術を確立することを目標に研究を続けている.
しかし,実務の現場では,厳密に実験条件を制御することは極めて困難であり,計測で使用できる機器に制約があることも多い.そこで本研究では「ラボの現場化」をVirtual Reality技術により実現することで,実環境と「実質的に同じ意味を持つ(=バーチャルな)」データを取得する計測手法をVirtual Human-Sensingと定義し,その方法論,性能向上のための要素技術開発,実用性の検証などの取り組みについて論じる.
本論文ではVirtual Human-SensingのためのVRシステムService Field Simulatorとそのマーケティング調査への応用について述べ,その実用性と利点を実証するための実際のビジネスシナリオを含む2つのケーススタディについて述べる.1つ目のケーススタディにおいては店頭マーケティング調査を実店舗と仮想店舗で実施し,比較することで類似点と相違点について論じる.また, 2つ目のケーススタディとして実際にバーチャル店舗を用いたマーケティング調査の結果を通して,提案されたService Field Simulatorの実用性を示す.
和文概要:大隈 隆史(産業技術総合研究所)
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