日本シルク学会誌
Online ISSN : 1881-1698
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5 巻
選択された号の論文の37件中1~37を表示しています
論文
  • 山田 晶子
    1996 年 5 巻 p. 1-7
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     布の吸湿過程では、吸湿により布温度が上昇し、温度差によって生じる大気の流れを観察することが出来た。その流れが吸湿の律速因子と考えられるので、繊維体積率と通気度の異なる絹布を試料として検討した。20°C, 65%R. H. の環境で繊維体積率を変えた絹布の吸湿と放湿実験を行い、それぞれの速度定数を比較した。その結果、吸湿速度定数の方が、放湿速度定数よりも、約2倍大きく、更に、吸・放湿速度定数とも、絶乾重量との積で表すと一本の直線で表され、布構造の影響は認められ無かった。しかし、吸・放湿速度定数を厚さの関係で表すと、綿状の不織布が、織物やニットなどの通常の布より著しく大きい速度定数を持つことが分かった。また、吸湿と放湿速度定数を、式を用いて推定し、比較的近い値を得ることが出来た。
  • 坂部 寛, 藤井 明
    1996 年 5 巻 p. 8-13
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     汗汚れの付着した絹布の湿式洗浄 (中性洗剤、弱アルカリ洗剤、粉石鹸) および乾式洗浄 (パークレン) を行い、汗の洗浄効果および絹布への影響を検討した。未汚染布と汗汚染布を湿式洗浄した場合、洗浄液のpH値に差が見られ、汗汚れの除去が確認できた。しかしながら、弱アルカリ洗剤および粉石鹸洗浄後の絹布表面のpH値が上昇し、アルカリ成分の残留がラウジネス発生の一因であることを示唆した。また、絹布の表面色を測色したところ、粉石鹸およびパークレンで洗浄した場合、汗汚染布のb*値 (黄色味) は洗浄後も高い値を示した。これは石鹸かすあるいは再汚染物の付着によることが走査型電子顕微鏡観察から明らかになった。
  • 香川 敏昭
    1996 年 5 巻 p. 14-18
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     マイクロ波照射の繭乾燥に与える影響の照射出力と送風温度の関係について調査検討した。その結果、同一の送風温度内では、照射出力と乾燥時間は反比例の関係にあることが認められたことから、任意の設定出力に対しての乾燥時間を概ね推定できることが明らかになった。
     さらに、送風温度が60°Cの場合には、100°Cに比べ乾燥速度が約60%から70%低下し、また、照射出力を低下させると乾燥速度への影響が大きくなることが認められた。
  • 重松 正矩
    1996 年 5 巻 p. 19-23
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     生糸におけるかせ糸の枠角に接触した箇所の生糸解離張力の測定方法を考案して揚返し時の張力とかせ糸の膠着力との関係を測定した結果、かせ糸の枠角解離張力は揚返し時の張力にほぼ比例すること及び最適の枠角解離張力 (枠角膠着力) は28中では約0.2gであることが分かった。
     さらにその方法で界面活性剤や薬剤を使用し、濃度を変化させてかせ糸の枠角膠着力を測定した結果、かせ糸の解離張力の差異を的確にとらえることが分かり、揚返薬剤の作用などに関して有効な評価法であるものと思われる。
  • 高林 千幸, 中屋 昭, 星野 伸男
    1996 年 5 巻 p. 24-29
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     これまで開発を進めてきたネットロウシルクの繰糸機構全体を小型化し、自動繰糸機に組込み易い形態に改良した。形成枠は、送出し装置 (形成棒) を3本から4本へ変更したことにより、繭糸と形成枠の滑りがなくなり繭糸の網目構造が保持され、安定した形態のネットロウシルクの繰製が可能となった。接緒機構は、新たに設けた接緒棒で絡交桿全面から形成枠の後方まで繭糸緒を導く方法としたため、これまでのような手接緒による長いずる節の発生が抑えられるとともに、有効接緒効率が向上した。また、カバリング撚糸機構や複合繰糸機構を組込んだことにより、多用な用途に適応するネットロウシルクの繰製が可能となった。
  • 中島 健一, 高林 千幸, 中屋 昭, 小池 文江
    1996 年 5 巻 p. 30-34
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     シルクトウ繰製装置の一部を改良して、布団や衣類の中綿用として利用可能なシルクウェーブを開発した。シルクウェーブを布団に用いる場合には嵩高性が要求されるので、繭糸繊度や繰製条件がその嵩高性に及ぼす影響について検討した。その結果、繭糸繊度が細い蚕品種ほど、また内層部へ移行するに従い嵩高さ及び嵩高圧縮弾性率の高い素材が得られた。また、繰糸張力が増す条件で繰製したものほど揚枠後の収縮率は大きくなり、その結果、嵩高さは増すが嵩高圧縮弾性率は低下する傾向を示した。このことは、シルクウェーブは通常の生糸とは繰製方法が異なり、巻取機に巻かれるまでに乾燥されるため、巻取機上で乾燥応カを受けないこと、たとえ張力が大きくなっても揚枠後の収縮率が大きくなることによリ、繭糸固有のクリンプが発現すること等により嵩高さが増すものと考察された。
  • 青木 昭, 蓜島 富士江
    1996 年 5 巻 p. 35-41
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     繭毛羽を使ったネオスパンシルク (生絹紡糸) を利用して、綿カーゼに類似の構造をもつシルクガーゼを開発した。後練りによる繭毛羽の減量効果と紡績糸の構造によって綿ガーゼに近い含気率をもたせ、綿ガーゼを凌ぐ吸水性を示した。また、同等の圧縮リジリエンスにより綿製品並みの膨らみを保持し、引張強さ・伸び率が大きいなどの特色をそなえている。
     織物の構成が極めて粗のため経・緯糸のスリップが起こりやすく縫製が著しく困難である。そこで、精練前の生機を縫製してから精練する方法を工夫して、この問題を克服した。泡練り法で作製したTシャツの着用試験では、新しい着用感をもち、洗濯等の管理も容易であるなど好ましい材質感との評価を得た。
  • 上石 洋一, 小松 秀和, 太田 正徳, 岩崎 健洋, 石井 克明, 玉村 日出隆
    1996 年 5 巻 p. 42-47
    発行日: 1996/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     3―メルカプトトリメトキシシラン (MPMSi) で前処理を行った絹に, 過硫酸カリウムを開始剤としてメタクリル酸2ヒドロキシエチルを用いたグラフト重合を行った。前処理はイソプロピルアルコール (IPA) と水との混合溶液中で行い, 混合比や処理時間を変化させた。前処理を行った絹のグラフト率は, 前処理を行わない絹のグラフト率よりも大きく, 前処理の効果が認められた。IPA100%の系で前処理を行ったグラフト絹の電子顕微鏡観察を行うと, グラフトポリマーの表面沈着が観察された。
平成8年度製糸絹研究会賞受賞記念講演要旨
第44回製糸絹研究発表要旨
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