日本シルク学会誌
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2 巻
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論文
  • ―繰糸張力を指標とする最適煮繭条件設定への試み―
    木下 晴夫, 但馬 文昭, 宮島 たか子, 嶋田 恵美
    1993 年 2 巻 p. 1-6
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     煮繭によるセリシンの膨潤・軟和度と深く関わっていると推測される繰糸張カに注目して、繰糸張力と繰糸特性値との関連性等について検討した結果、繰糸張力は解じょ率、ビス量、大中節成績等の繰糸特性値と相関があると認められた。また、煮繭要因の中では触蒸温度の影響が繰糸張力に対して最も大きいことが明確になった。これらのことから、繰糸中の多種多量の繰糸特性値を収集することなく、繰糸張力の値だけから繰糸状況を推定し、最適煮繭条件を見いだすことへの可能性が確認できた。
  • 但馬 文昭, 木下 晴夫
    1993 年 2 巻 p. 7-11
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     煮繭工程の適正な温度制御を行うためのファジィ推論による意思決定支援システムを開発し、実験によりその有効性を検証した。本システムは次に示す3つの機能を持つ部分より構成される。(1)煮繭条件間の相互作用を排除するため多変量解析法により、煮繭条件を互いに独立な3つの温度パターンに集約する。(2)この温度パターンと繰糸成績の関係に対して上位のファジィ推論を適用し、最適煮繭温度パターンを選択する。(3)選択された最適煮繭温度パターンの成分と煮繭工程各部の標準温度と現在の温度との差を入力とし、修正後の煮繭工程各部の温度を出力とする下位のファジィ推論による煮繭工程各部の修正後の温度を出力する。このシステムを使用して煮繭・繰糸実験を行った結果、2回の温度の修正により、生糸糸長は2%減少し、糸故障回数は横ばいであったものの、索抄緒効率が40%、解じょ率が19%と大幅に改善され、適正な煮繭工程制御が可能となることが確認された。
  • 赤羽 恒子, 坪内 紘三
    1993 年 2 巻 p. 12-18
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     原料繭糸質に由来する生糸の繊度むら要因として、繭糸繊度、粒内偏差、接緒間隔等があげられる。極細、太繭糸繊度の繭で14d~33d程度の生糸を繰製し、それらの項目と生糸の繊度むらについて検討した。生糸の繊度むらについては、イブネステスターでそれぞれの生糸のU%(平均偏差率)を測定した。その結果、繭糸繊度の太い繭ほどU%に与えるこれらの項目の影響は大となり、繭糸繊度が1.5D程度に小さくなるとその影響はほとんどなくなる。同時に太繊度繭でも粒内偏差が小さめで繭糸長が長く解じょ率が高ければU%も低くなる。反対に中繊度繭でも粒内偏差が大きめで繭糸長短く解しょ率が低いとU%は高くなることが明らかになった。
  • 白 倫
    1993 年 2 巻 p. 19-25
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     生糸繊度の連続特性を示す一般的な自己相関モデルを構築してそれの繊度偏差成績に及ぼす影響について検討した。実際調査と自己回帰モデルに基づくシミュレーション実験により繊度偏差成績の変動に考察を加え、生糸繊度の連続性と繊度偏差との関係を表す基本的な知見を得た。
  • 清水 重人, 大浦 正伸
    1993 年 2 巻 p. 26-30
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     今後、繰糸中の繭粒付数を画像処理によって自動的に計測する粒付数計測システムを開発するために必要な基本事項、例えば、システムの構成法、画素数と繭粒付数との関係などについて検討を行った。このシステムは、CCDカメラにより一定枠内の繭の画像を2値化し、その画素数をパソコンに取り入れて面積として粒数を連続的に計測しようとするものである。このシステムの基本的な機能を検証するために、まずカメラと測定対象物との距離と画素数の関係を求めた。次に室内の台上に置いた煮熟繭について、繭の粒の大小別および繭層の厚薄の層別の画像計測を行った。その結果、台上に置いた煮熟繭の計測画像を2値化処理後、画素数から繭粒付数を計数できる可能性を得た。
  • 石黒 善夫, 神津 剛夫, 石井 昭衛
    1993 年 2 巻 p. 31-37
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     生糸検査における節・糸むら検査は、現在セリプレーン検査により目視で行われている。しかし検査の客観性、検査員の養成、多くの人手を要する等問題点も多い。このため、検査の改良、特にエレクトロニクス技術による代替が要請されている。
     我々は、節検出には半導体レーザセンサを使用し、糸むら検出にはCCDラインセンサを用いた装置を考案した。実験を繰返し、現行検査と比較検討しているが、実用化の可能性が得られた。現在、検査精度の向上と試料採取の方法を検討するなど、実用化に向けた研究過程にある。
  • 青木 昭, 那須 杜子明, 蓜島 富士江, 中島 康雄
    1993 年 2 巻 p. 38-45
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     絹紡糸、生糸を経糸として、緯糸には繊度および構成の異なるネットロウシルクを織り込んでシャンタンを試作し、外観・風合い・ドレープ性などの観察評価から適合する経・緯糸の組合せを検討した。その結果、ネットロウシルク150d~200dを緯糸とする場合には、経糸に絹紡糸72/2を使うことにより、外観・風合いの良好なシャンタンを製造できることがわかった。また、織段の分解調査により、繭糸の解じょ糸長および繭糸の繊度開差が織段の幅および程度に関係の深いことを確認した。
  • 加藤 弘, 赤羽 恒子, 於保 正弘
    1993 年 2 巻 p. 46-50
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     広食性蚕品種 “あさぎり” 、 “新あさぎり” 絹糸の酸性染料による染色性を普通蚕品種 “朝・日×東・海” 絹糸と比較しながら、平衡染着量および染色速度の立場から検討した。酸性染料、直接染料などの染料アニオンと静電気的結合が可能な繊維内部に存在する有効染着座席数は、 “あさぎり” > “新あさぎり” > “朝・日×東・海” であるとみなされた。広食性蚕品種絹糸は普通蚕品種絹糸より染料に対するビルドアップ性のよいことを認めた。さらに普通蚕品種絹糸に比べて広食性蚕品種絹糸の方が染色速度は速く、繊維内部への染料の拡散もしやすいことがわかった。
  • 河原 豊
    1993 年 2 巻 p. 51-53
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     アルカリ処理した野蚕絹糸(さく蚕糸、天蚕糸、ムガ蚕糸)にグルコースオキシダーゼ(GOD)を吸着させ活性測定等を行ったところ、さく蚕糸を用いたとき最も高い活性が認められた。アミノ酸分析ではアルカリ処理および品種間による酸性/塩基性アミノ酸比率に違いは認められなかった。アルカリ処理での重量減少率はさく蚕糸が他に比べ大きかった。これらのことから、さく蚕糸をアルカリ処理したとき他の野蚕糸に比べて、GOD吸着量・活性量が大きくなったのは、酵素~繊維間のイオン的相互作用が変化したためではなく、比表面積等の増加が影響したためと推定した。
  • 平出 真一郎, 高木 秀昭
    1993 年 2 巻 p. 54-59
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     絹フィブロインフィルムの紫外線透過率と絹フィブロイン処理布の紫外線透過率及び反射率を測定することにより、絹フィブロイン処理布の紫外線吸収特性を検討した。絹フィブロインフィルムは300nmより短波長側に紫外線吸収があり、特に、280nm付近に強い吸収が認められた。しかし、日焼けや皮膚障害に関係する紫外線領域(波長範囲:400~290nm)での吸収は僅かであった。セルロース系繊維やビニロンなど繊維自身による紫外線吸収が僅かな場合には、絹フィブロイン処理により、処理布の紫外線反射率と透過率が低下した。一方、ポリエステルなど繊維自身による紫外線吸収が大きい場合には、処理効果は明確ではなかった。
  • 秋山 大二郎, 平林 潔
    1993 年 2 巻 p. 60-67
    発行日: 1993/12/03
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     絹糸を粉末化し成形物を作製した。この絹成形物の物性は、フィブロイン粉末の性質により影響を受けることがわかった。
     絹の粉末化の方法については2つの方法を検討した。塩化カルシウム処理法では、絹フィブロイン分子の切断は少ないがランダム構造を多く取る。一方、硫酸処理法はフィブロインの非晶領域を破壊するので相対的に結晶化度の高い粉末が得られることがわかった。しかし、硫酸処理時間が必要以上に長くなると微結晶の崩壊も起こり、成形物の強度は低下する傾向を示した。
     得られた粉末を成形し強度の測定を行った結果、絹成形物に用いられる絹粉末は硫酸で2時間処理したフィブロイン粉末を用いた物が良好な強度を示した。つぎに絹粉末水分による成形物の性質をしらべた結果、水分率8%の絹粉末を用いた成形物の強度は、他の水分率の絹粉末より高い強度を持つことがわかった。また、成形物の成形条件を調べた結果では120°C,30分が最も適していた。
     そこで、絹粉末をメタクリル酸エステル(MMA;メチルメタクリレート、GMA;グリシジルメタクリレート)で化学修飾した。その結果、絹―GMA成形物の耐水性が向上し、強度(310kg/cm2)が著しく向上した。さらに絹とGMAの化学結合形態を調べた結果、絹フィブロインのC末端にエポキシ基が結合していることが確認された。
第41回製糸絹研究発表要旨
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