絹糸を粉末化し成形物を作製した。この絹成形物の物性は、フィブロイン粉末の性質により影響を受けることがわかった。
絹の粉末化の方法については2つの方法を検討した。塩化カルシウム処理法では、絹フィブロイン分子の切断は少ないがランダム構造を多く取る。一方、硫酸処理法はフィブロインの非晶領域を破壊するので相対的に結晶化度の高い粉末が得られることがわかった。しかし、硫酸処理時間が必要以上に長くなると微結晶の崩壊も起こり、成形物の強度は低下する傾向を示した。
得られた粉末を成形し強度の測定を行った結果、絹成形物に用いられる絹粉末は硫酸で2時間処理したフィブロイン粉末を用いた物が良好な強度を示した。つぎに絹粉末水分による成形物の性質をしらべた結果、水分率8%の絹粉末を用いた成形物の強度は、他の水分率の絹粉末より高い強度を持つことがわかった。また、成形物の成形条件を調べた結果では120°C,30分が最も適していた。
そこで、絹粉末をメタクリル酸エステル(MMA;メチルメタクリレート、GMA;グリシジルメタクリレート)で化学修飾した。その結果、絹―GMA成形物の耐水性が向上し、強度(310kg/cm
2)が著しく向上した。さらに絹とGMAの化学結合形態を調べた結果、絹フィブロインのC末端にエポキシ基が結合していることが確認された。
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