日本女性科学者の会学術誌
Online ISSN : 2186-3776
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13 巻, 1 号
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総説
  • 佐藤 美由紀
    原稿種別: 総説
    2013 年 13 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    ジャーナル フリー
    卵子は受精によってすべての細胞に分化しうる胚へと変化する。モデル生物である線虫fertilizationを用いた解析から、この時期には発生と連動して分泌・エンドサイトーシス・オートファジーといった細胞内輸送系が制御され、細胞内外成分の再編成が起きることが明らかとなってきた。また受精卵において、オートファジーは精子から持ち込まれた父性ミトコンドリアとそのゲノムの分解を担うことを見出した。多くの動植物においてミトコンドリアゲノム(mtゲノム)が母系からのみ子孫に受け継がれる母性遺伝という現象が知られているが、そのメカニズムはよくわかっていなかった。われわれの結果から、オートファジーによる父性ミトコンドリア分解がmtゲノムの母性遺伝を成立させるために必須なメカニズムであることが明らかとなった。
  • 川口 奈奈子
    原稿種別: 総説
    2013 年 13 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞は、冠動脈の血管が閉塞することによって、心筋細胞まで酸素や栄養素が運搬されなくなり、心筋細胞が壊死に陥ることにより、心臓の機能が異常になり、発症する。2003年頃、心臓内に、幹細胞が存在することが報告され、心臓内の幹細胞を用いた心筋細胞の再生が心筋梗塞の治療に注目されるようになった。著者のグループも、将来心筋再生医療につながることを目標とした心臓内幹細胞の基礎研究を行ってきた。2006年、4つの転写因子を導入することにより、マウス線維芽細胞からでも胚性幹細胞と同様なpluripotencyを有するinduced pluripotent (iPS) cellが作製され、iPS細胞から心筋細胞への分化、高い純度の精製方法が確立されつつある。また、最近では、ヒトの線維芽細胞に転写因子を導入して直接心筋細胞の作製に成功する報告が出され、注目されている。本総説では、我々の研究結果をまとめるとともに、心筋再生に関する最近の知見についてまとめた。
SJWS特別企画
  • 宇野 賀津子
    原稿種別: SJWS特別企画
    2013 年 13 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日の地震/津波に端を発した福島第一原発事故は、福島県を中心に多大の放射能汚染をもたらした。その低線量放射線の生体への影響をめぐって、科学者間の意見が分かれ混乱が生じた。筆者は、学振チームの一員として、地域の放射線計測と説明会に参加し、低線量放射線の生体への影響は、1)、放射線が直接遺伝子を傷つけるのでなく、大部分は活性酸素によること、2)、遺伝子障害によって変異細胞が生じても臨床がんにいたるには、20年から30年の年月がかかること、3)、免疫機能はがん化を抑制する最後の砦であるのでストレスによる免疫力低下はがんリスクを上昇させること、4)、今後の生き方、食生活で、低線量放射線の影響は克服可能であると、講演で強調した。この過程で、科学者がリスク評価をきちっとし、リスクコミュニケーションの技術取得の必要性を痛感した。併せて、異分野連携による、この被害の克服の必要性を痛感した。
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