日本女性科学者の会学術誌
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6 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
総説
  • 藤田 礼子
    2006 年 6 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    本総説では、芳香族複素環化合物に分類される2(1H) —ピリドン誘導体の不飽和性に着目したDiels-Alder反応について概説する。2(1H) —ピリドンをジエンとするDiels-Alder反応を、無極性溶媒中で行うとイボガアルカロイドの骨格であるイソキヌクリジン(2-アザビシクロ[2.2.2]オクテン)誘導体を一工程で与え、極性溶媒中で行うと6-アザビシクロ[3.2.1] オクテン環を与えた。また、2(1H) —ピリドン誘導体をジエノフィルとするDiels-Alder反応は、2(1H) —ピリドン環上の電子吸引性基の位置により、化学選択的に反応が進行して、イソキノリン誘導体またはキノリン誘導体を与えた。

  • 後藤 佐多良
    2006 年 6 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    人口の高齢化に伴う高齢者の健康上の諸問題は社会的・経済的負担を増し先進諸国の共通の課題となっている。その背景には老化という複雑かつ不可避の4生物現象が存在する。本小論ではタンパク質の酸化傷害およびその代謝回転の加齢変化に焦点をあてて老化のメカニズムと老化介入についてモデル動物のラット・マウスを使った研究の現状を解説する。加齢に伴いタンパク質分解酵素プロテアソームの質的変化が生じ、タンパク質の分解半減期が延長する。このため酸化などで修飾された機能不全タンパク質が蓄積しやすくなる。この変化が老化メカニズムとして重要と考える。老化介入に関しては食餌制限と定期的運動の老化介入メカニズムについて述べる。タンパク質およびその代謝の加齢変化は中老齢期の食餌制限および定期的運動によってかなりの程度若齢化する。これらの知見にもとづいて抗酸化剤摂取やホルモン補充療法といったいわゆるアンチエイジング医療が注目される現状に批判的な立場から討論する。

  • 池田 啓子
    2006 年 6 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    ナトリウムポンプは、ほ乳類動物細胞の細胞膜に存在し、細胞膜内外のナトリウムイオンおよびカリウムイオンの濃度勾配を維持する能動輸送ポンプである。このナトリウムポンプは細胞の生存にとって必須の機能を担う酵素であるが、複数のアイソフォーム遺伝子を進化させたことで各アイソフォーム遺伝子が特異的な生体機能を有するようになったと考えられてきた。筆者らはナトリウムポンプ α2サブユニット遺伝子欠損マウスを作成、その表現型を解析し、α2サブユニットが中枢神経系において種々の輸送体との特異的な機能共役を行うことを見出した。また、遺伝子欠損成ヘテロマウスは恐怖/不安が強く、中年期以降には肥満傾向を示し、ヒトの生活習慣病のモデルマウスになる可能性が明らかになった。本稿ではα2サブユニットの特異的機能に焦点をあて、生体内での役割について紹介する。

原著論文
  • 宮地 和幸, 木村 実穂, 大島 範子
    2006 年 6 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    ゼブラフィッシュの体側部には黒と白の縞模様が交互に並んでいる。魚の紋様形成に色素細胞がどのように関与するのかを知るために、ゼブラフィッシュの皮膚における色素細胞の分布について調べた。濃青色の縞の部分では、青色を呈する虹色素胞が黒色素胞の上部(体表側)に位置していたが、褐色がかった背側では、黒色素胞と黄色素胞が虹色素胞の上部に分布していた。それらの虹色素胞内では、非常に薄い光反射小板が等しい間隔で規則正しく成層し、一定の角度で傾斜していた。おそらく、非理想型重層薄膜干渉により青色が発現していると思われる。濃青色部分の黒色素胞の下方(真皮下層部)には、銀色に輝く別のタイプの虹色素胞が観察され、それらの虹色素胞では反射小板が真皮に平行に並んでいた。ここでは理想型重層薄膜干渉により銀色が発現していると思われる。白色の縞の部分では、黄色素胞の下方に3~4層、虹色素胞が密に存在している。このように、各部位における色素細胞の配置の違いが、ゼブラフィッシュの紋様形成に関与していることがわかった。

調査・報告
  • 鹿内 ヒロ子, 山本 宏子, 葛西 さつ子, 對馬 和子, 細川 せい, 内海 文子, 荒谷 美智, 長内 侑子
    2006 年 6 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    2002年(平成14年)6月に発足した青い森・科学BBLは、生涯教育に科学教育が欠如している現状を踏まえ、身近な自然観察を導入部として大人にも青少年にも幼児にも楽しく有益で科学的素養が自ずと高まるようなセミナーの開催に努めてきた。青い森・科学BBLの発足以前から始まっていた様々な科学普及活動も含めて、2002年(平成14年)6月の発足から2003年(平成15年)11月までの活動ついてはすでに概略を報告した。そこでの結論は、青少年の科学離れは大人の科学離れの反映であるから大人と子供を同時に対象とする型の活動が有効であるということであった。ここでは、2003年11月以後の2年間にあおもり県民カレッジ連携機関として青い森・科学BBLが試みた科学普及活動について報告する。

トピックス
  • 松下 祥子
    2006 年 6 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    本論文では、日本女性科学者の会奨励賞を受賞させていただいた記念に、著者が行ってきた自己組織化を利用した機能材料の作製を紹介する。サブマイクロサイズの微粒子を集積した規則構造体は、光を散乱し、オパール様の光沢を持つ。作製方法としては、重力とブラウン運動を利用した自然沈降法、微粒子の間に働く横毛管力を利用した移流集積法などが成立している。しかしながら、1990年代前半まで、これらの規則構造体は「中途半端なスケールの周期を持ち利用価値が低い」と言われてきた。著者は、この微粒子凝集体を利用して、光の半導体と言われるフォトニック結晶の基礎研究を、そして光電気化学マイクロビーカー、ダイヤモンド電子工ミッターアレイ、色素増感型太陽電池など幅広い応用展開を行ってきた。これらは、化学にとらわれることなく、物理の新概念を導入した結果である。今後も、各分野が融合し、発展するお手伝いをしていきたいと考える。

  • 笹川 澄子
    2006 年 6 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2006/03/31
    公開日: 2024/03/14
    ジャーナル フリー

    著者が属する六ヶ所村読書愛好会は平成7年に六ヶ所村文化協会設立を機にその傘下の文芸サークルとして発足した。以来、読書愛好会会員は「文に化す」活動を地道に続け、平成17年9月、発足十周年記念行事を日本女性科学者の会との共催で開催するに全った。著者は基調講演の機会を与えられた。講演では、読書愛好会会員の大部分が女性であることに鑑み、ノーベル賞を引き合いに、古今東西を問わずなお今日的課題である「男女共同参画]の実態を見つめ、また、読書愛好会発足十周年にちなみ、本会の初心を再訪することを試みた。この記念行事が日本女性科学者の会との共催でなされたので、トピックスとして講演内容を報告したい。

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