日本女性科学者の会学術誌
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最新号
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巻頭言
総説
  • ウン シンイン, 近藤 科江, 門之園 哲哉
    2024 年 24 巻 p. 8-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/26
    ジャーナル フリー

    キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法は、がん治療に画期的な進展をもたらし、従来の治療法に抵抗性を示す難治性がんや再発性がんに対しても有効な治療効果が報告されている。CAR-T細胞はCAR分子を細胞表面に発現させた遺伝子改変T細胞であり、患者から採取したT細胞にCAR遺伝子を導入することで作製される。CAR-T細胞を患者の体内に戻すことで、CAR-T細胞はがん特異的抗原に結合してがん細胞を認識し、CARシグナルを引き起こしてがん細胞を死滅させる。しかし、CAR-T細胞療法の課題として、CAR-T細胞の疲弊、および正常組織細胞の攻撃による毒性やサイトカイン放出症候群などの重篤な副作用が知られている。これらの課題を解決し、CAR-T細胞の機能を向上させるには、CARの抗原結合親和性を最適化し、CARの活性化および疲弊レベルを制御することが有効である。本総説では、CAR-T細胞療法について紹介し、主な課題を要約するとともに、結合親和性の最適化によるCARの機能向上に向けた最新の研究動向を紹介する。

  • 今西 未来
    2024 年 24 巻 p. 24-30
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/26
    ジャーナル フリー

    生命活動の設計図としてのゲノム配列の重要性に加えて、塩基の化学修飾が、遺伝子発現の制御をはじめ様々な生命現象に影響を与えることが明らかになってきた。エピトランスクリプトームと呼ばれるRNAの化学修飾は、ゲノムから転写された情報をいかにタンパク質へと変換するかを決定づける重要な役割を果たす。中でも、高頻度で転写産物に存在するN6-メチルアデノシン(m6 A)はRNA の安定性や局在、翻訳などを制御し、発生や分化、がんなどの疾病にも関わる。RNA のメチル化状態をRNA 配列選択的に調節することができれば、様々な生命現象におけるRNA メチル化の機能の解明や、創薬標的としての展開が期待される。本稿では、RNA 配列選択的にアデノシンのメチル化状態を制御する分子ツールに関して、その設計原理と最近の進展を紹介する。

研究紹介
  • 上村 麻衣子
    2024 年 24 巻 p. 17-23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/26
    ジャーナル フリー

    辺縁系優位型加齢性TDP-43脳症(limbic-predominant age-related TDP-43 encephalopathy, LATE)は、大脳辺縁系領域を中心に観察される、TDP-43凝集体を主体とした病理所見で、加齢とともにその出現頻度が増加する。またLATEの特徴として、海馬硬化の他、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)やレヴィ小体病(Lewy body disease, LBD)といった他の神経変性疾患に合併する事が多い。我々は、ペンシルベニア大学神経変性疾患研究センターに保管されている剖検脳サンプルの解析により、ADやLBD、またはその混合病理に合併するLATEの臨床病理学的特徴および遺伝学的特徴を明らかにした。病理学的分析では、LBDに合併するLATE(LATE-LBD)とADに合併するLATE(LATE-AD)ではLATE病理の海馬分布が異なっており、LATE-LBDではLATE-ADと比較して、アンモン角3(CA3)における神経細胞質内包含体がより多く、C末端切断されたTDP-43からなる細かな神経突起がCA2から海馬台へと広がっていた。これらの神経突起病変の一部はリン酸化α-シヌクレインと共局在していた。LATE-LBDのステージングでは、LATEの神経病理学的変化がLATE-ADよりも早く歯状回と脳幹に広がることが示された。LBDにおけるLATEの出現頻度は、LBDサブタイプまたはAD病理学的変化と独立して、認知障害と関連していた。遺伝学的解析では、LATE-LBDステージは、TMEM106B rs1990622およびGRN rs5848の遺伝的リスク変異と関連していた。これらの結果は、ADやLBDにおけるLATEの多様性を浮き彫りにすると同時に、今後の臨床研究における患者の適切なリクルートの必要性も示唆している。

随想
  • 功刀 由紀子
    2024 年 24 巻 p. 31-37
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/26
    ジャーナル フリー

    法人化前の日本女性科学者の会は、本部と支部の組織で構成され、各支部では独自の活動が盛んであった。SJWSの法人化等、体制変更や事業運営方法の変更により、支部独自の活動は縮小傾向を見せて行った。長期間関西支部理事を務めてきたが、独自の支部活動を継続できなかった反省を含め、支部理事であった当時の意識変化を振り返ってみた。

    COVID-19の感染拡大が落ち着いた現状でも、理事会や学術大会等定例活動にはWebの活用が有効である。一方で、新たなブロック活動として、地域行政への貢献活動や女性活躍の人材ネットワーク支援など、学術方面のみならず多様な方面での活躍がSJWSには期待されるのではないだろうか。

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