日本シミュレーション学会論文誌
Online ISSN : 1883-5058
Print ISSN : 1883-5031
ISSN-L : 1883-5058
16 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
通常論文
論文
  • 寺田 耕輔
    2024 年16 巻2 号 p. 32-47
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/10
    ジャーナル フリー

    角形鋼管横断面を衝撃圧潰すると,通常では上下面は断面内側に大きく変形し,両側面は断面外側に押出されるように変形する.これに対して,本稿で提案する加工法を適用すると,上下面は平面形状のままで,両側面は断面内側にコンパクトに折り畳まれる.この変形パターンは周囲に危害を与えず,両側面を重ねて折り畳むことで衝撃エネルギー吸収性能を向上させる利点がある.また,鋼管構造物においては,配管,配線,フォーク爪など他部品との干渉を避ける必要がある箇所,鋼管と鋼管が交差する箇所などがある.このような箇所は,現状では切欠きや切断加工により開口部を成形している.そして,材料を切除するために構造強度が低下する対策として,補強材を付加することが多い.これに対して,本稿で提案する加工法を適用して開口部を成形すると,材料を捨てることなく圧潰部として残留するため,構造強度の低下が抑制され補強材を付加しなくてもよい利点もある.本稿では,角形鋼管の両側面を断面内側にコンパクトに折り畳む加工法の研究開発を進め,FEM(有限要素法)解析で事前検討し実験検証を行った結果と得られた知見について報告する.

  • 西川 憲明
    2024 年16 巻2 号 p. 81-90
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/01
    ジャーナル フリー

    大規模なマラソン大会やウォーキング大会において,スタート時の混雑を緩和するために,従来のスタート方式であるマススタートではなく,グループを形成して連なる波のようにスタートするウェーブスタートを採用する取り組みが試行的に進められている.本論文では,歩行者の振る舞いを記述する微視的モデルと巨視的モデルを相補的に利用することで,大規模なウォーキング大会における参加者が感じるイベント満足度を最大化する,群集スタート方式についての網羅的な探索を実施した.その結果,ウェーブスタートにおいて,ウェーブの配置形態やスタートのタイムラグをどのようにすべきかを定量的に明らかにした.

JSST2023 学生セッション特集
論文
核融合・プラズマ及び関連分野の研究に関する可視化研究特集
巻頭言
論文
  • 三宅 智也, 田中 祐希, 坂本 尚久
    2024 年16 巻2 号 p. 48-59
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    多大な計算時間を必要とする大規模数値シミュレーションを機械学習モデルなどの近似モデルで置き換えることにより,大幅な計算時間短縮が期待されるサロゲートモデルに関する研究が注目されている.しかし,シミュレーションによって出力される数値データが大規模であった場合は,サロゲートモデルによって出力されるデータも大規模となり,解析時の可視化処理が困難な状況が発生する可能性がある.大規模なシミュレーション結果を対象にした場合,可視化処理も考慮したサロゲートモデル(画像ベースサロゲートモデル)が構築できれば,数値データを出力することなく可視化結果画像を直接出力できるようになり,可視化を介した解析において大幅な効率化が期待できる.本研究では,数値データを対象とする複数の可視化画像と,そのときのシミュレーションパラメータを一緒に学習することで,画像ベースサロゲートモデルを構築する.開発する学習モデルは,敵対的生成ネットワークモデルをもとにして構成され,その一部である生成器に対して,特徴抽出を効率化するためにピクセルシャッフルを適用することで,学習損失の収束を高速化する.実験では,本手法を実際の数値シミュレーションに適用し,既存の学習モデルと同程度の予測精度を保ちつつ約2.7倍の高速化に成功した.

  • 足立 和也, 岩田 憲, 松島 大晟, 坂本 尚久, 野中 丈士, 畢 重科
    2024 年16 巻2 号 p. 60-71
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/26
    ジャーナル フリー

    データの入出力問題が顕在化している大規模数値シミュレーションに対して,シミュレーションと同時に可視化も行うことでデータ出力コストの大幅な削減が期待されるin-situ可視化に対する要求が高まっている.しかし,in-situ可視化では,事前に設定したパラメータをもとに可視化された画像が出力されるため,解析段階でのデータ探索の対話性欠如が問題となっていた.このような問題を解決するために,本研究では,シミュレーション実行中に,どのタイミングで,どの視点位置から可視化すれば良いかを自動的に判断することができるスマートin-situ可視化に注目する.この方法では,空間内の複数の視点から最適な視点を評価し可視化するが,視点数の増加に伴い最適視点推定コストも増加していた.本論文では,シミュレーション結果の時間発展の状態から時間領域の重要度を計算することで,最適視点推定コストを低減し,それをもとに計算されるカメラ移動経路推定における可視化コストを削減する方法を提案する.実験では,歯茎摩擦音発生シミュレーションに本手法を適用し,その有効性を評価した.

  • 宮内 智香, 平井 敬, 永野 康行
    2024 年16 巻2 号 p. 72-80
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/26
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は低コストかつ容易に免震層水平剛性を推定する新たな推定手法を構築することである.免震建物の挙動を適切に予測するためには免震層水平剛性が明確になっている必要がある.しかし,竣工後の免震建物における免震層水平剛性は経年劣化や温度履歴等により設計時とは異なることがある.現在確立している推定手法は,時間的・経済的コストが大きいものが多い.本推定手法では,中程度の地震動発生時に加速度計で観測された地震動加速度波形を入力とした地震時建物応答シミュレーションを実行し,免震層水平剛性と免震層最大変位の関係を算出する.これとけがき式変位計によって測定された免震層最大変位を比較し,免震層水平剛性を推定する.本研究では,提案する推定手法が適用可能となる条件を数値実験によって明らかにした.

  • 中川 匡弘
    2024 年16 巻2 号 p. 91-109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,カオス同期現象を利用した秘匿化モデルを提案する.具体的には,正弦波関数を非線形写像とした大域結合系のカオス同期条件を示し,カオスマスキング手法用いた秘匿化モデルを提案する.また,SIDBAの標準画像の画素値を送信メッセージ信号としたシミュレーションを行い,復元画像の通信路ノイズに対するSNR特性について述べる.さらに,カオス力学系の統計的指標の一つである不変測度に対するFrobenius-Perron方程式を逐次代入法で数値的に解く手法を提案する.

feedback
Top