培養液のN形態とpHがそ菜のMn過剰障害に及ぼす影響について検討するため, キュウリ, トマト, ホウレンソウ, キャベツ, レタス, セルリーを供試して水耕試験を行った. 処理はMn0.5, 30, 100ppmと, NO
3,NO
3+NH
4 (1:1), NH
4 を組み合わせ, さらにpHを4と6の2段階とした. なお施用全N濃度はいずれも12me/
lの一定とした. 処理は原則として3週間行った.
1. Mn 標準レベル (0.5ppm) では, NH4区に種々の害症状がみられ, pH
4 のほうがpH6よりも著しい傾向があった. Mn高濃度のNO
3, NO
3+NH
4両区では, トマト, ホウレンソウに上位葉の葉脈間クロロシスが, またキャベツ, レタス, セルリーに下位葉の葉縁クロロシスが発生した. これらの Mn 誘導クロロシスはNO
3+NH
4区のほうがNO
3区よりも軽度の場合が多く, また pH4 と pH6 とを比べると同等かもしくは前者のほうが軽度であった. Mn 過剰によるネクロシスの褐斑の発生は, NH
4 の施用割合の多い区ほど軽度であった.
2. Mn 標準レベルにおける生育はNO
3, NO
3+NH
4両区とも大差がなく優れたが, NH
4 区はかなり劣った. Mn 処理濃度の高まりにつれて NO
3, NO
3+NH
4 両区の生育は阻害されたが, 後者のほうが前者を上回る生育を示す場合が多かった. NH
4区の生育量は多くの場合, Mn レベルとは無関係にほぼ一定して低かった. pHの影響については, Mn 標準レベルでは各N処理区を通じてpH4のほうがpH6より生育が劣ったが, Mn高濃度では両pH間の生育差は縮まり, NO
3, NO
3+NH
4両区では逆に pH4 のほうが上回る場合も生じた.
3. Mn処理濃度の高まりにつれて, 各種そ菜の葉中Mn 含有率は著しく増大したが, NH
4 の施用割合の増大は Mn 集積を抑制した. また pH4 のほうが pH6 よりも葉中 Mn 含有率が低い傾向がみられた.
4. NH
4区は多くの場合, 葉中 Mn 含有率の高低にかかわらず生育量がほぼ一定して低かった. しかし NO
3, NO
3+NH
4 両区においては, 一般に葉中Mn含有率が高いほど生育阻害が著しく, またこの関係は両N処理区間で差が認められなかった. ただ, ホウレンソウでは, pH4 におけるこれら両区の生育は, Mn よりも低pHの影響を強くうけた.
5. 以上より, NH
4+, H
+はそれら自身の害作用が問題にならない濃度範囲内においては, そ菜のMn吸収を抑制し, Mn過剰障害を軽減する効果があると認められる.
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