本研究では,「小数×小数, 小数÷小数」に関して, 数の大きさは同じであるが,問題場面の状況が異なる問題を提示したとき, 児童がどのような問題場面の状況の立式に困難を示すかを明らかにすることを目的とする。調査結果の分析・考察から,「小数×小数, 小数÷小数」の立式に関して, 次のような事柄が明らかになった。(1) 乗法に関する「問題の構造」の理解は, 長さと重さ→重さとかさ→かさと面積の順に低くなり,「大×小」方略に依存している児童が, 約 15%いる。そして,「問題場面の状況」から, 乗法を行えばよいと考えた児童は, 2/3 以上いると考えられる。(2) 除法に関する問題 2・5・8, 問題 3・6・9 における「問題構造」の理解は低く,「大÷小」方略に依存している児童は, 1/4 程度いると考えられる。また,「問題場面の状況」から, 除法を行えばよいと考えた児童は, 問題 2・5・8 では 2/3 程, 問題 3・6・9では 1/2 ~ 2/3 程いると考えられる。(3) 乗法に関して,「長さと重さ」と「かさと面積」の間には有意な差があり,「問題場面の状況」が立式に影響を及ぼすと考えられる。
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