アマルガム修復
は,19世紀末以来比較的信頼できる修復法として主として臼歯咬合面に適用されてきた.しかし,水銀による環境汚染への懸念と生体への影響の懸念から,アマルガムの使用は減少していった.アマルガムの代替材料として,審美性・歯質への接着等の長所を有する臼歯用コンポジットレジンが開発され,コンポジットレジン修復の頻度が高くなってきているのは,臨床上実感するところである.そこで,
アマルガム修復
から臼歯用コンポジットレジン修復への置換の推移と現況を知るために,1997年から2006年までのK女子短期大学歯科衛生学科新入生1,159名における歯科検診結果から,智歯を除く臼歯咬合面におけるコンポジットレジン修復率と
アマルガム修復
率の経年的変化を調べた.その結果,臼歯咬合面におけるコンポジットレジン修復率と
アマルガム修復
率は,1997年からの3年間はほぼ同率であり,1997年にはすでに臼歯のコンポジットレジン修復率は
アマルガム修復
率と同じレベルであることがわかった.しかし,2002年以降コンポジットレジン修復率は経年的に増加し,
アマルガム修復
率は経年的に減少して,2006年ではコンポジットレジン修復率は
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率の約14倍になった.つまり,1990年以降に修復したと推定される臼歯咬合面では,コンポジットレジン修復が
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より多いことが明らかになった.さらに,臼歯咬合面を,大臼歯・小臼歯・上顎臼歯・下顎臼歯に分割した場合のそれぞれのコンポジットレジン修復率と
アマルガム修復
率を比較検討した結果,大臼歯・上顎臼歯・下顎臼歯におけるコンポジットレジン修復率と
アマルガム修復
率の1997年から2006年の経年的変化は,臼歯全体と同様の傾向を示した.しかし,小臼歯のコンポジットレジン修復率は10年間で変化はなく,臼歯咬合面のコンポジットレジン修復率の増加は,大臼歯のコンポジットレジン修復率の増加を反映していることが示唆された.
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