【目的】プラスチック粒子が摂取された場合、細胞内に取り込まれるのか、また取り込まれるのならばどのような影響を示すのかについて議論がある。近年、直径0.1μm程度のポリスチレン粒子が細胞に取り込まれ、その一部はリソソームに集積することが報告された。リソソームはオートファゴソームおよび後期
エンドソーム
の分解の場であることから、リソソームへのポリスチレン粒子の蓄積が、オートファジーの動態および、後期
エンドソーム
で生成されるエクソソームの分泌へ影響を与えることが予想される。本研究ではCaco-2細胞を用いて、ポリスチレン粒子のオートファジーやエクソソーム分泌への影響を評価した。
【方法】ヒト結腸癌由来細胞株Caco-2細胞を用い、200μg/mlの未修飾又はアミノ基修飾のされた直径0.1μmの蛍光ポリスチレンビーズを24時間処置した。オートファジーはMDC染色およびLC3ウエスタンブロットで検出した。後期
エンドソーム
はCD63抗体を、リソソームはLAMP-1抗体を用いた蛍光免疫染色にて観察した。エクソソーム分泌は、培養上清エクソソーム画分のCD63ウエスタンブロットで評価した。
【結果と考察】ポリスチレン粒子は細胞に取り込まれ細胞質内に斑状に分布し、その一部はLAMP-1タンパクと共局在したことからリソソームへ蓄積したと考えられた。MDC染色陽性オートリソソームのサイズの増大と数の増加が見られ、LC3-IIタンパクも増加したことから、オートファゴソーム分解の抑制が示唆された。また後期
エンドソーム
のサイズの増大と数の増加と共に、僅かではあるがエクソソームの分泌の増加が観察された。後期
エンドソーム
のリソソームでの分解が抑制された結果、エクソソーム分泌量が増大したのではないかと考えられた。これらの結果は、取り込まれたポリスチレン粒子が細胞の生存調節機構に影響を与えることを示唆している。
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