我国における代表的なナチュラルチーズを用い, 調理時における溶け方, 混ざり方について検討した結果, 次のことが明らかになった.
1) チーズの溶け方は熟成度が進むにつれて溶けにくくなり,
ゴーダ
チーズ2カ月,
ゴーダ
チーズ5カ月はよく溶けるが,
ゴーダ
チーズ9カ月は溶けにくい.
2) エダムチーズは試料中水分含量も少なく, 粉砕時の粒子径は小さいが, 撹拌ならびに加熱時の影響は最も受けにくい.
3) チェダーチーズは一般に溶けやすいとされているが, 本実験ではエダムチーズと似た傾向を示した.
4) プロセスチーズは軟化するが溶けにくい.またスフレーにしたとき, 味の面ではにがみが感じられた.
5) ナチュラルチーズの味, 香り, 弾力などは熟度により著しく異なり,
ゴーダ
チーズでは5カ月熟成のものが最もすぐれていた.未熟の2カ月ではカビ臭が強く, 過熟の9カ月では酸味, にがみが強いなど, いずれもテーブルチーズとして適さない.しかしスフレーに焼きあげると, 未熟や過熟の欠点は緩和され, 風味上の問題が主となる.したがって調理にチーズを用いる場合は, 熟度により使用量を調節する.また目的に応じて熟度を選ぶことが必要である.
6) チーズの溶け方は, チーズスフレーの舌ざわりや組織に影響をおよぼすと思われたが, 本実験ではその影響は認められなかった.
本実験を行なうにあたり, ご指導を賜りました雪印乳業技術研究所, 種谷真一氏, 本学の柏木希介教授, 野口駿教授に深く感謝申し上げます.また測定の便宜をはかってくださった東京大学応用微生物研究所, 東京農業大学, 本学の美川トク教授に, 試料をご恵与くださった雪印乳業株式会社に, そして実験に協力してくださった朝倉美幸さん, 佐藤真理子さん, 渡辺やよいさんにお礼申し上げます.
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