昆虫病原性糸状菌である赤きょう病菌
Paecilomyces fumosoroseusのblastosporeの性状について
分生子
と比較検討した。乾燥状態での保存および水中保存のいずれの場合もblastosporeは
分生子
よりも不安定であった。各種消毒剤(昇汞水,石炭酸,クレゾール石けん液)に対する感受性試験ではblastosporeと
分生子
の間に有意差が認められなかった。紫外線処理および高温処理に対する
分生子
およびblastosporeの感受性は同程度であったが,超音波処理に対してblastosporeは
分生子
より感受性であった。カイコ幼虫に対するblastosporeおよび
分生子
のLD
50(菌数/1頭)値はそれぞれ4.5および2.4×10
2で,blastosporeが
分生子
よりも約50倍強い病原力を示した。しかし,塗布接種では両者の病原力の間には有意差が認められなかった。blastosporeまたは
分生子
をカイコ幼虫に注射した場合,blastospore注射区における菌数の増加は
分生子
注射区のそれより早かった。抗
分生子血清の凝集素価は分生子
に対して10倍以下,blastosporeに対して320倍であった。抗
分生子血清は破砕分生子
抗原に対して高い凝集素価を示すので,
分生子
の表層は抗原性の低い物質で構成され,その内部にはblastosporeの表層との共通抗原が存在するものと考えられる。
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