最近, 健康・医療に係る大量の生体情報の医療への利活用が進み, 人工知能 (AI, Artificial Intelligence) 技術などを用いた多種多様な機器の開発が加速している. これらの機器の中で, その使用目的や提供形態などから医療機器に該当するものは, 医薬品医療機器等法にもとづき安全性, 有効性などを確保することが求められる. 医療機器の性能を承認後に変更するには一部変更承認などを経る必要があり, 結果的に市販後の性能変化は段階的であったが, AI技術によって創成される医療機器は, 承認後の速やかな改良・改善, 市販後に常に性能が向上するといった従来の医療機器にはない特性を有するケースがある. そのため, 性能などの段階的な変化を前提とした承認事項の変更スキームとは異なる, 常に変化することを前提とした新たな薬事規制の枠組みが必要となる. 実際, 令和元年の医薬品医療機器等法の一部改正に係る議論の中で, 医療機器の特性を踏まえた新たな承認制度の在り方が俎上に上り, 一定の範囲で継続した改良・改善を可能とするスキームが構築されている.
本稿では, 国内での承認事例などをもとに, AI技術の進歩に伴い芽吹きつつある性能が常に変化しうる医療機器について, 規制法上の課題とその解決の方向性を議論する.
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