【はじめに】歩行自立度判定に有用な評価指標としてTUG・FBS・5m 歩行等がある.しかし,施設ごとに病棟環境や患者特性が異なるため,有用な評価指標・カットオフ値について独自に検討が必要だと考えた.本研究の目的は,高齢入院患者の多い当院回復期リハビリテーション(リハ)病棟における棟内歩行自立度判定に有効な評価指標,およびカットオフ値を明らかにすることである.
【方法】対象は,2020 年9 月から2021 年2 月に当院回復期リハ病棟に入院した65 歳以上の患者66 名であり,経過の中で繰り返し測定した結果を含む110 データを解析対象とした.測定項目は,歩行自立度,Frail CS‐10,5m 歩行時間,Timed Up & Go(TUG),Berg Balance Scale(BBS),6 分間歩行距離(6MD)とした.歩行自立度は,歩行形態を問わずFIM6 点以上を自立,5 点以下を非自立とした.測定時期は,入棟時,退棟時,加えて毎月第1 週に測定した.分析は,従属変数を歩行自立度(歩行自立・非自立),独立変数をFrail CS‐10,5m 歩行時間,TUG,BBS,6MD として多重ロジスティック回帰分析を行なった.抽出された因子についてROC 曲線を用いてカットオフ値を求めた.
【倫理的配慮】倫理審査委員会の承認を得た.
【利益相反】開示すべき利益相反はない.
【結果】多重ロジスティック回帰分析の結果,6MD とFrail CS‐10 が有意に選択された(モデルχ二乗検定:p<
0.01).ROC 曲線の結果,カットオフ値は6MD が228m/229m, Frail CS‐10 が2 回/3 回であった.
【考察】6MD は,脳卒中患者の歩行自立の判定にも用いられ,運動耐容能だけでなくバランス能力を含む様々な機能を包括した指標であると考えられた.高齢者の下肢筋力の評価として開発されたFrail CS‐10 は,棟内自立歩行のカットオフ値は2.5 回という報告があり,本研究を支持するものである.回復期リハ病棟における高齢入院患者の歩行自立度判定に6MD とFrail CS‐10 が有用であることが明らかとなり,施設ごとに自立度判定を検証する意義を示唆した.
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