Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
ISSN-L : 1345-8647
5 巻
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 仙石 康雄, 松岡 誠, 杉木 真一郎, 田中 成典, 栗田 典之, 関野 秀男
    2004 年 5 巻 p. 1-8
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/03/24
    ジャーナル フリー
    巨大分子の電子状態を計算する手法の1つとして、Fragment 分子軌道(FMO)法がある。FMO法は分子をフラグメントに分割して計算することにより、通常の分子軌道(MO)計算では計算不可能な巨大分子の電子状態を計算できる。FMO法の計算精度およびコストはフラグメントの分割方法に大きく依存する。我々は、密度汎関数法(DFT)に基づくFMO法を独自に開発し、これを用いてDNAの電子状態を塩基分割及び塩基対分割の二種類のフラグメント分割方法で計算した。これらの計算から得られた分子の全エネルギーとMO分布について通常のDFT法による結果と比較した結果、塩基ごとに分割したFMO計算は、塩基対ごとに分割したFMO計算と同程度の計算精度で、全エネルギーとMO特性を得ることができることが明らかになった。
  • 岡野 克彦, 佐藤 耕司, 金井 和明, 船津 公人, 堀 憲次
    2004 年 5 巻 p. 9-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/29
    ジャーナル フリー
    電子付録
    1,4-dihydroquinoline-3-carboxylic acid構造を持つキノロン誘導体は医薬品として製薬各社により開発されている。その鍵反応である芳香族求核置換(SNAr)反応の反応物、中間体、生成物の電子状態やエネルギー、物理化学的係数等の計算値、および溶媒や反応温度等の実験条件パラメータをGA-PLS法の説明変数とし、反応収率を目的変数としたSNAr反応における反応のモデル化(予測)を試みた。その結果、一部の構造についてはモデル化が出来なかったものの、求核種やキノロン環の構造ごとに分類することと、分子軌道(MO)計算により得られた値を用いて、反応の収率を予測することが可能であることが示された。又、一般的なHONO、LUMOのエネルギーのみよりも、それらにエネルギー準位が近い複数の軌道のエネルギーを用いた場合のほうが、外挿性に優れるという結果が得られた。しかしながら、モデル化された例では共通する説明変数が多く選ばれているものの、反応機構と直接関係がないと考えられる変数、たとえば、生成物のHOMO、LUMOのエネルギーや電子密度等も高い目的変数の説明分散(R²)を得るためには必要であった。GA-PLS法により選ばれた説明変数は、求核種やキノロン環の構造の種類により異なる。求核種やキノロン環の構造により説明変数が異なることは、反応が同一の機構で進行しているという実験からの予想に反する。そこで、パラメータ化の困難な要素に関する分類を試みた結果、単離条件による分類を行なうことで、化学構造によらずモデル化が可能であることを見出した。これは、収率を目的変数としたことで、実験条件の差が大きく影響を及ぼし、モデル化を困難にしていたことを示している。このようにMO計算により比較的容易に得られるパラメータを用いたモデル化は可能ではあるが、副反応や実験条件等の理由によって統一したモデル化が困難になっていることが明らかとなった。
  • 薄木 亮, 仙石 康雄, 松岡 誠, 田中 成典, 栗田 典之
    2004 年 5 巻 p. 19-25
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/17
    ジャーナル フリー
    カタボライト活性化タンパク質 (Catabolite Activator Protein:CAP)は、環状AMP(cAMP)と結合しCAP-cAMP複合体となりDNAの特定部位に結合し、RNAポリメラーゼのDNAへの結合を促進する。その結果、DNAからRNAへの遺伝情報の転写が促進される。我々は、この機構を明らかにする目的で、AMBER力場を用い、CAP-cAMP複合体、CAP単体、CAP-cGMP複合体の安定構造を解析した。その結果を基に、CAPの2量体へのcAMP結合により、CAPの構造(特に2量体間の相対位置)がどのように変化するかを明らかにした。さらに、cAMPの代わりに、cGMPが結合した場合の構造変化を解析し、何故、cAMPのみが、CAPのDNAへの結合能を増大させるのかを検討した。
  • 堀 憲次, 山口 徹, 岡野 克彦
    2004 年 5 巻 p. 26-34
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/08/06
    ジャーナル フリー
    目的化合物の新規合成経路を創生する手段として、合成経路設計システムが既に実用化されている。このようなシステムは、一般的に複数の合成経路を提案するが、多段階で反応を考えた場合、その合成経路の数は級数的に増加し、経験豊かな合成化学者でもその選択に迷う場合がありえる。一方、提案された合成経路の存在の有無は、理論計算を用いた反応解析により、実験を行うことなしに判断することができる。さらに溶媒効果や置換基効果を考慮した計算を行えば、提案された合成経路の容易さも評価できると考えられる。これは計算化学を情報化学的に得られた未知の合成反応に適用することにより、それらの合成経路のランクづけが可能であることを示している。しかしながら、両者を融合した合成経路開発は、その有用性にもかかわらずこれまでほとんど行われていない。本研究では計算化学と情報化学を融合して、実験化学者が合成経路設計システムを利用して新たな合成経路を開発する時に有用な遷移状態データベースとその周辺プログラム、将来性について述べる。
  • 高木 達也, 岡本 晃典, 横田 雅彦, 安永 照雄
    2004 年 5 巻 p. 35-46
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/09/14
    ジャーナル フリー
    情報科学技術の発展につれて、大量のデータから役に立ち、理解しやすい情報を抽出する手法であるデータマイニングが、医薬学分野においてもより重要性を増しつつあり、例えばDNAマイクロアレイや疫学研究のデータといった大量データを要する研究に応用されている。しかし、治療に対するリスクファクター解析のように、入力された独立変数(属性)の検証を、データマイニングによって構築されたモデルを利用して行うことは容易ではないため、その検証が重要視される医薬学分野では、データマイニング法の適用が盛んとは言い難い状況にある。二分木はそういった手法の一つであるが、今回、我々はリサンプリング法を利用し、樹状モデルによる分類の結果と属性の関係を明らかにすることができる新規手法を開発した。この新規手法により、樹状モデルに対する属性の重要性の情報を得ることができる。さらに、この手法は二分木に似た手法への応用も可能である。
  • 貝原 巳樹雄, 稲葉 光一, 菊池 紀之, 佐藤 稔
    2004 年 5 巻 p. 47-51
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/10/01
    ジャーナル フリー
    近年、食品の産地表示に関わる問題がしばしば報告され、日本の食卓に欠かせないワカメもその例外ではない。産地偽装の可能性が指摘される食品を進んで消費する気持ちにはなれないであろう。もし産地の判別が可能ならば、産地偽装表示に対する抑止力となる。そこで、分光スペクトルとその化学情報解析を用いて、産地判別の可能性を検討した。その結果、太平洋、日本海、黄海といった生育海域による分類の可能性が示唆された。分類の方法として、まず、分類木により重要変数を選択し、選択された変数を用いた主成分分析によって、明確な分類が得られたものと考えている。今後、さらに試料数を増やして検討することが必要である。
  • 出立 兼一, 夏目 貴行, 田中 成典, 樋口 高年, 栗田 典之
    2004 年 5 巻 p. 52-61
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/10/27
    ジャーナル フリー
    1重鎖及び2重鎖DNA中の電荷移動機構及び電荷移動量の違いを理論的に解明するため、分子動力学法(MD)及び分子軌道法(MO)を用いた解析を行った。具体的には、12塩基から成る1重鎖及び2重鎖DNAの構造を作成し、MD計算により安定構造を求めた。その構造に対し、半経験的MO法を用いて、電荷移動に関係するフロンティア分子軌道のエネルギーレベルと空間分布を詳しく解析した。さらに、それらのエネルギーレベルから、ホール及び電子に関する移動積分を見積り、DNA電気伝導解析シミュレータを用いて、1重鎖と2重鎖DNAの電流電圧特性の違いを明らかにした。
  • 杉浦 史卓, 津村 直哉, 小林 浩, 栗田 典之
    2004 年 5 巻 p. 62-69
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/05
    ジャーナル フリー
    癌転移抑制効果を持つキメラ蛋白質の一部である生理的物質ビクニンの電子状態を、半経験的分子軌道計算により解析し、フロンティア分子軌道の分布からビクニンの化学反応部位の特定を試みた。さらに、ビクニン中の反応部位に関係すると考えられるいくつかのアミノ酸を他のアミノ酸で置換し、置換による電子状態の変化を解析した。その結果を基に、ビクニン中のどのアミノ酸が化学反応特性に重要であるかを予測した。
  • 津村 直哉, 杉浦 史卓, 小林 浩, 栗田 典之
    2004 年 5 巻 p. 70-78
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/11/30
    ジャーナル フリー
    副作用の無い癌転移抑制剤として、ウロキナーゼを含むキメラ蛋白質が開発された。このキメラ蛋白質のレセプター結合部位であるウロキナーゼのATF(Amino Terminal Fragment)部位に対し、AMBER力場により最安定構造を決定した。その部分構造の水中での電子状態を半経験的分子軌道法により計算し、化学反応に関与すると思われるHOMO(最高占有分子軌道)、LUMO(最低非占有分子軌道)の空間分布から、ATF中の相互作用点を予測した。さらに、HOMOが分布するアミノ酸を他のアミノ酸及びアミノ酸類似分子で置換し、置換による相互作用点の変化を解析した。
feedback
Top