2022 年 46 巻 2 号 p. 303-312
本研究は,社会認知的キャリア理論(Social Cognitive Career Theory, SCCT)に基づき,我が国におけるSTEM キャリア選択に影響する要因とその性差を検討した.OECD が実施したPISA2015調査の日本データを用いて,SCCT のキャリア選択モデルを追試した結果,当該モデルは日本の高校生のデータにも十分に適合することが明らかになった.多母集団同時分析の結果より,STEM職業志望への有意な影響が認められた要因としては「自己効力感」「結果期待」「興味」「社会経済文化的背景」があった.このうち,「結果期待」「興味」「社会経済文化的背景」の影響には有意な性差が見られたが,「自己効力感」の影響には性差が見られなかった.本研究の結果に基づけば,STEM キャリア選択者を増加させるためには,性別ごとに異なる介入方法が有効である可能性がある.