オレオサイエンス
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特集総説論文
腸内細菌脂質代謝研究を基盤とする新規機能性脂質の開発
小川 順岸野 重信
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2014 年 14 巻 9 号 p. 375-380

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抄録

食事脂質に由来する不飽和脂肪酸が腸内細菌により飽和化されることを見いだした。新たに見いだされたこの飽和化代謝系の解析を通して,水酸化脂肪酸,オキソ脂肪酸,部分飽和脂肪酸,共役脂肪酸を代謝中間体として同定し,これらの脂肪酸の宿主組織における存在を確認した。また,これらの飽和化代謝中間体の生理機能を評価した結果,初期代謝産物である水酸化脂肪酸が腸管上皮バリアの損傷を回復する機能を有すること,さらには,水酸化脂肪酸,オキソ脂肪酸が核内受容体PPARsやLXRの制御を介して脂肪酸代謝を制御することを見いだした。すなわち,腸内細菌の脂肪酸代謝に依存して腸管内に特異的に生成する脂肪酸分子種が,宿主であるヒトの健康に何らかの影響を与えている可能性が示された。これらの知見は,腸内細菌叢制御と食事脂肪酸組成制御により,腸管内での新たな機能性脂肪酸の産生を介して,生活習慣病予防ならびに健康増進が可能となることを示している。本稿では,腸内細菌脂質代謝を俯瞰するとともに,代謝中間体の生理機能解析,乳酸菌機能を活用する新規機能性脂肪酸生産プロセスの開発を解説する。

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© 2014 公益社団法人 日本油化学会
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