本研究は,クロモジ(Lindera umbellata)精油を用いたアロマテラピーの介入によって,要介護の高齢者に及ぼす生理面への影響や介護者の介護負担度などを検証した。対象者はデイサービスを利用する人の中から同意の得られた10人で,平均年齢は82.1±7.0歳であった。研究デザインとして,精油を使用しない対照期間,クロモジ精油を使用するアロマ期間をそれぞれ4週間設けた。結果,ストレスの評価指標である唾液コルチゾール濃度および認知機能の得点は試験区間や介入前後による有意差はなかった。施設職員の介護負担度は,介入前と比べ,対照期間2回目,アロマ期間1回目,2回目有意に減少した(p<0.05)。バイタルサインとして,脈拍は試験区間や介入前後による有意差はなかったが,血圧は収縮期血圧,拡張期血圧の一部でアロマ介入後に有意に低下した(p<0.05)。感情分析は,各活動回に有意な差はなかったが,対照期間とアロマ期間の期間ごとの比較では,対照期間よりもアロマ期間のほうがポジティブ感情は増加し,ネガティブ感情は低下した。これらのことから,クロモジアロマの塗布は認知症予防やストレス軽減につながる可能性があることが示唆された。
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