アロマテラピー学雑誌
Online ISSN : 2189-5147
Print ISSN : 1346-3748
ISSN-L : 2189-5147
22 巻, 1 号
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原著論文
  • 丸山 奈保, 上野 匡, 安部 茂
    2021 年 22 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー

    植物精油は,アレルギーや急性炎症など,さまざまなタイプの炎症症状の緩和に効果的であると言われている。本研究では,精油の炎症に対する作用特性を明らかにするため,花粉症などI型アレルギーの素過程として,刺激によるヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)からの一酸化窒素(NO)産生に対して,精油の抑制効果を検討した。精油は,花粉症などにアロマテラピーでよく使用される6種を用いた。HUVECを密集状態に培養したプレートに,精油,刺激剤であるカルシウムイオノフォアA23187を加え50分培養した後,培養上清に分泌されたNO量を測定した。6種の精油の0.001%での抑制作用を比較したところ,ティートリー精油とレモングラス精油は抑制作用が強く,ゼラニウム精油,ラベンダー精油と続き,カモミール精油とユーカリ精油では有意な抑制は示されなかった。好中球の活性化抑制作用などの炎症の素過程と比較したところ,種々の炎症反応に対する精油の作用特性には違いがある可能性が示唆された。炎症にかかわる反応のさまざまな素過程に対する精油の効果を比較し,その作用特性が明らかになることで,炎症症状のケアに対する精油の組み合わせや使用法などを提案する上での理論的基盤の確立が可能になると考える。

研究ノート
  • 小林 奈保子, 下田 実可子, 清水 綾音, 川原 正博, 田中 健一郎
    2021 年 22 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2021/02/05
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー

    皮膚は表皮(ケラチノサイト),真皮(ファイブロブラスト),皮下組織から構成されており,生体内部の保護や体温調節などの役割を果たしている。また,表皮最下層の基底層にはメラニンを産生するメラノサイトが局在している。一方,紫外線(UV)などの刺激に曝されると,皮膚障害(ケラチノサイトでの細胞死)・メラノサイトでの過剰なメラニン産生・ファイブロブラストでのコラーゲン産生低下が起こる。このように,皮膚がUVに繰り返し曝露されると,酸化ストレスによる障害が蓄積し,シミ・シワを特徴とする「光老化」が引き起こされる。そこで,本研究では,酸化ストレスによる皮膚障害を抑制する精油を網羅的スクリーニングにより発見することを目的として実施した。その結果,ラベンダー精油がケラチノサイト保護とコラーゲン産生低下の回復,ジャスミンAbs.がメラニン産生抑制とコラーゲン産生低下の回復という複数の保護作用を持つことを見いだした。また,これらの保護作用は抗酸化作用を介する可能性が示唆された。今後さらなる解析を行い,酸化ストレスによる皮膚障害を抑制する最適な精油を提案したい。

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