バイオフィリア リハビリテーション学会研究大会予稿集
Online ISSN : 1884-8699
ISSN-L : 1884-8672
第18回バイオフィリアリハビリテーション学会
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大会会長挨拶
  • 白澤 卓二
    p. 1-
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/07/22
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     今回、第18回のバイオフィリアリハビリテーション学会を東京で開催することになりました。

     私は3度目の大会長を務めることになります。当初名古屋で開催予定でしたが変更になり、理事長として引き受けた次第です。

     振り返れば、第8回大会で「介護・リハビリ領域における科学的エビデンスとは何か」とその後の本学会の進路を決める課題で開催し、第9回学会の福井圀彦大会長の「神経・筋促通法の回顧と新たなる挑戦」というリハ医学改革にむけた反省と挑戦の大会につながりました。

     第13回大会では「加齢制御医学とリハビリテーション医学の融合とその進歩」を課題に、私の研究を中心として、その対比の中で自律的運動リハの重要性を検討し、翌年の第4回国際大会における「リハビリテーション医学の改革」という直接的な表現の研究大会開催につながりました。

     社会構造が急速に少子高齢化するなかで、高齢者の健康増進政策、介護保険政策の重要性が指摘されています。介護保険では介護予防が導入され久しいですが、大きな効果を上げることはありませんでした。そうした反省から、厚生労働省は、地域支援事業の「包括的支援事業」に「在宅医療・介護の連携推進に係る事業」を追加する介護保険法の改正法案を上程・可決されました。

    これまでの要介護度の悪化は全国的に著しい状況でした。「重度介護者への手厚い資金配分システム」の問い直しが、「在宅医療・介護の連携推進に係る事業」で、はじめて行われるのです。

     本大会は、「リハビリテーション医学における神経幹細胞と神経新生」と題しました。

     これまでの大会開催時と同様に主催する大会が、大きな意味を持つよう祈念して題しました。要介護度の悪化を防ぎ、超高齢社会を持続可能にするためには、リハビリテーション医学を改革し、そのコンセプトを「障害の受容」から治癒には至らないまでも「障害の克服」への改革する必要があります。

     本大会がその基礎になることを期待して、18回の歴史の中で初めて、日本医師会から講師を派遣して頂きます。また、今後の研究課題であるITとリハビリテーション医学の連携に関連して、すばらしい研究施設を持つ(国立)岩手大学から講師にご参加頂きます。

     

     私はこの学会の創立メンバーですが、いよいよ私たちの研究活動が社会に必要とされ、多くの人々の幸福の実現に寄与できる日が近づいていると感じています。

     まだ少数の研究者による学会です。克服しなければならない課題も多く、これからも継続的な研究活動が必要です。本大会への多くの方々の参加をお待ちしています。

    終わりに理事長として、この学会への多くの学際的な研究者のご参加を期待し、歓迎します。

総会講演
  • We become the impelling force of the revolution of hope through our study. Let’s form ranks with us.
    滝沢 茂男
    p. 2-
    発行日: 2014/08/23
    公開日: 2017/07/22
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    We become the impelling force of the revolution of hope through our study.

    Let’s form ranks with us.

    What is the Revolution of Hope?

    It is what starts two paradigm shifts.

    The first paradigm shift is to overcome their disabilities and enable to live with little care for the increasing elderly and disabled elderly in number by restructuring the rehabilitation medicine with adopting autonomous rehabilitation medical treatments named TAKIZAWA Method (United States Patent: No.7153250) .

    The second paradigm shift is to enable the coming super-aged society sustainable by their contribution to the society.

    In other words, it enables to maintain our society and the social security by restructuring the rehabilitation medicine.

    All the patients who need the rehabilitation medical treatments have been treated as much as they needed in Japan.

    Rehabilitation medical specialists were doubled from 810 to 1,787 specialists and physical therapists increased 470% to 100,560 therapists over ten years, ending in 2012.

    While some might think that the people who need care decreased, the patient load doubled from 2,180,000 people in 2000 to 5,540,000 people in 2012. This means that rehabilitation medical treatment needs to be restructured.

    We are studying the related research fields including medical science, engineering, and social science in order to integrate the various aspects of a complex aged society and to establish a super aged society sustainable. We have been and will be focusing on how to restructure rehabilitation medicine and assisting patients in reacquiring bodily functions by overcoming their disabilities and dysfunctions. Finally, we are pursuing to make “impairment” an obsolete word.

    Learning from history, an important movement is born from the effort of a small group.

    Let’s form ranks with us, meaning you and the Biophilia people.

公開市民講座 講演
  • 葉梨 之紀
    p. 3-
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/07/22
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    21世紀に入って、先進各国では社会保障制度の見直しが進められている。

    このきっかけとして

    第1に、1990年代から始まっている資本主義制度の限界、各国の財政政策の混乱及び金融制度の崩壊であり、結果としての社会保障制度の行き詰まりがある。

    第2に、その原因として20世紀に急速に拡大した世界的な人口増加(20億人⇒70億人)と、先進国における少子化・高齢化がある。(人口減少)

    日本の社会保障制度も、終戦後の右肩上がりの経済成長期に作られた医療制度、年金制度も現状を維持できなくなり、年金制度改革や医療費削減、平成12年からは高齢者対策として介護保険制度が始まった。しかし、これも20年以上続いたデフレと2008年アメリカ発のリーマンショックとそれに続く世界的な金融恐慌により、財政的に維持できなくなり、頻回に制度改革を行なっている。その方向は

     1に、財政の節減であり国家の社会保障費の縮小

     2に、個人の責任で自分の生活や健康を守る事(自助)

    に主体を置いており、新自由主義経済の方向に沿っている。少子高齢化による人口減少がこれに拍車をかけており、戦後の団塊の世代が大挙して後期高齢者(75歳以上)になる2025年は目の前であり、待ったなしの状況となっている。

    国・厚生労働省は、拡大する貧富の格差や地域の医療崩壊、介護難民に対して生活保護を初め、各種の政策や制度改革を模索しているが、現状との乖離が目立つ。その問題と解決方向を考えてみたい。

  • 大川井 宏明
    p. 4-
    発行日: 2014/08/23
    公開日: 2017/07/22
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    【実験ハウスのつくり】

    岩手大学健康見守り実験ハウスは岩手大学キャンパス内に2007年に建てました。機能としては自宅に近い環境の中で、実験条件を自由に変えながら、生活動作、体調の変化を原則毎日計測できるようにしたものです。

    【実験の目的】

    健康が重要であることは誰でもわかっていますが、健康とは何かについては回答に困ります。健康は測ることができないことが理由の一つだと思います。そこで「健康指標」をつくることを目標にしています。

    【実験の着眼点と手段】

    自分でも、人に訊いてもわからない健康を誰に(何に)訊くか。本研究ではその生命活動そのものを司る自律神経系に訊きます。具体的には自律神経活動の反映とされている呼吸、脈の情報に、無意識動作(寝相)の推移を加えた3点が対象です。

    【わかってきたこと】

    前述の3点について新たな知見を得ました。その例は講演時に詳しくお話しします。ここで強いて2,3例挙げるならば、各数値の推移に現れる再現性に現れた生命活動の精巧さ、寝相の重要な意味、90分周期説に対する誤解です。

    【波及効果の例:サービス科学の展開】

    もの、情報、行為等を介して提供者と被提供者の関係をまとめてサービス科学というようになってきました。提供者は被提供者がどれだけ満足してくれたか知りたい。これを自律神経に訊いたという例も採り上げます。

基調講演
  • 白澤 卓二
    p. 5-
    発行日: 2014/08/23
    公開日: 2017/07/22
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    2010年の日本人の平均寿命は女性が86才、男性が79才で、日本は世界一の長寿国、人生80才時代に突入した。20世紀には平均寿命が50才から80才へと30才も飛躍的に延伸し、現在も延び続けている。2001年にはヒトゲノムが解明、我々のゲノムには2万3千個の遺伝子があることが判明した。多くの遺伝子がアルツハイマー病などの高齢期の神経疾患や認知症の発症に関与していることが示唆されている。一方で、双生児の疫学研究から、高齢期の認知機能や神経機能が遺伝素因ばかりでなく、環境要因にも大きく左右されることが判明している。環境要因の中でも、生活習慣病の予防に重要な要因として栄養と運動と生きがいが高齢期の神経疾患の発症に重要な要因となっている。また、再生医学の発達とともに多くの組織に幹細胞の存在が明らかとされているが、脳にも神経幹細胞が存在することがモデル動物やヒトで証明されている。本講演では、神経幹細胞と認知症などの神経変性疾患との関連性や神経幹細胞が高齢期でも外界からの刺激により増殖・分化し新たな神経回路を形成できることを解説する。また、これからのリハビリテーション医学にこの神経幹細胞の増殖と神経新生をどのように臨床応用するかに関して展望を述べる。

  • 滝沢 茂男
    p. 6-
    発行日: 2014/08/23
    公開日: 2017/07/22
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    筆者は2001年以来、頻回に社会技術研究課題へ応募してきた。維持可能な超高齢社会確立のためのリハ医療の再構築の必要性を多面から指摘し、この改革こそが社会を持続可能にする社会技術研究であると主張したのである。主要な申請の題名を列記すると、2001年:バイオフィリア リハ ネット構築と高齢者活躍社会の研究、2003年:超高齢社会が適応する新文明の構築に向けて、2007年:人口ピラミッド逆転社会における高齢障害者の自立生活可能社会確立の研究、等である。

    「我々の研究は、3側面を持っています。1はリハ医学研究であり、2は産業面やリハ実施効率化の面からの機器開発研究です。3が社会科学研究です。3の研究の重要性は、1および2の研究結果が社会に好影響を与えるために、国民の意識改革が必要である事に起因しています。」は、2001年の社会技術研究推進事業応募理由冒頭である。「医療社会学ですすめてほしい」が審査者の意見であり、残念ながらその後のどの申請でも、社会変革に資するという研究の本質に理解を得ることは出来なかった。

    活動を振り返ると、筆者の前職が市会議員であり、その視点で本研究の必要性を認識し、研究を推進してきた。

    その成果は、研究中心の学会を組織し、科研費8件等を得て実施した研究の進展もあり、甘利明経済再生大臣から「本研究は国策に合致している」との大会祝辞を第10回国際大会と第17回国内学会で得た。また、国際学会は期待が大きく、本年はISPRM(www.isprm.org/)大会でポスターが請求され掲示された。さらに今回日本医師会から講師派遣許可を得て、葉梨前常任理事の講演が実現した。

    こうした我々の研究を社会技術研究費申請から振り返るとともに、今後進めるべき研究を以下の順で示す。

    1. 改善しようとする政策およびその課題は何か

    2. 解決しようとする社会的課題は何か

    3.「誰に」「何を」与えることを狙うのか

    4.どのような方法で行うのか:リハ医療改革コンセプトの明確化

    研究① 手法の有効性を既存のリハ医療実施群と自律的運動リハ導入群との間のランダム化比較試験(RCT)を行う。

    研究② 我々は脳機能回復・改善の重要性・可能性に着目しており、マウスによる効果測定を行う。

    研究③ fMRI・fNIRS研究と脳波計を用いた研究を行い、脳機能に与える効果を示す。

    研究④ 障害克服状況の客観的評価システム研究を、既存研究と合せ、新たに分析用データを収集して、また医学・工学の知見を統合しデータを分析し、数値化する。それにより客観的評価システムを構築する。

    研究⑤ 老老介護における腰痛予防等を含む在宅リハ実施可能なシステム開発・法整備提案を行う。

    ①-⑤には機器開発が付随する。

    5. どのような体制で行うのか

     (皆様の変わらぬご協力をお願いします。)

研究発表
  • 谷瀬 彩乃, 梶井 康子, 白川 敦子, 中野 もも, 佐藤 悦子, 梅垣 佳津枝, 蓮村 友樹久
    p. 7-
    発行日: 2014/08/23
    公開日: 2017/07/22
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    超高齢化社会を迎え,介護用食品の需要が高まっている.しかし,摂食・嚥下障害を考慮した食事の多くは見た目や食感が損なわれ食事の満足度や喫食率低下の原因となっている.そこで開発されたのが広島県保有の特許技術「凍結減圧酵素含浸法」(以下,「凍結含浸法」という)である.組織細胞間隙を広げるため食材を一旦凍結・解凍した後,減圧装置の中で食材内部の空気と外部の専用酵素兼調味料(TORON)を置換することで食材本来の形,風味を保ったまま硬さを制御できる新しい技術である.当施設ではこれまでに施設内NST(Nutrition Support Team)の設立などにより多職種協働で摂食・嚥下障害のある方への介護・医療対応の充実を図ってきたが,今回食べることの喜びを再び持つこと,満足度・食欲の向上が実現できると考えこの凍結含浸法による食事(凍結含浸食)を導入したので報告する.

  • 櫻井 暁洋, 大矢 哲也, 山下 和彦, 小山 裕徳, 川澄 正史
    p. 8-
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/07/22
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    極度のX 脚O 脚,土踏まずの喪失,足部アーチの乱れなどの足部の異状を放置することで外反母趾や骨格変形などの重大な症状に発展する.これらを未然に防ぐために,X線検査を用いることで,足部の異状を発見し,対処している.しかし,X線検査には専用の装置が必要なため,設備や時間が制限される.さらに被験者に対して被曝の可能性があるなど問題も多い.そこで本研究では後方下腿および踵部の体表画像をカメラで撮影し,踵骨傾斜角をはじめとした踵部および下腿の角度の画像解析によって足部の異状を発見する簡易的手法の検討を行っている.

  • 和田 里佳, 立花 敏弘, 滝沢 茂男, 牛澤 賢二
    p. 9-
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/07/22
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    当施設は、PTによる個別訓練の他に、パワーリハビリ(マシン3台)、タキザワプログラム(パタコロ、プーリー等)を日常のリハビリ訓練に取り入れている。タキザワプログラムは介護度の高い重介護者から介護予防まで等しく取り入れられる為、個別以外の全症例に基本プログラムとして行えている。

    介護保険では通所リハに対し利用者のニーズに応じて、6時間以上(1日)、3時間以上(半日)、1時間以上(短時間)等きめの細かい対応を求めている。

    本論では、そのきめの細かい対応の実践を明らかにすると共に、当施設の実施しているリハビリの有効性を明らかにするため、開所以来の効果を介護度の1年単位変化で計り、通常行われているリハビリ実施施設の介護度変化の比較可能な先行研究を調査し、当施設リハビリ結果と対比分析したのでその結果を報告する。

  • 清水 大輔, 田中 敏幸, 武藤 佳恭, 滝沢 茂男
    p. 10-
    発行日: 2014/08/23
    公開日: 2017/07/22
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     脳の活動状態を調べる計測装置としてNIRS (Near Infrared Spectroscopy) というものがある.脳活動を計測する装置は他にfMRI,PETなどが存在するが,NIRSは近赤外光を頭皮から照射し,非侵襲で計測できる簡便さから近年注目され,リハビリやブレインマシンインターフェースなど多岐にわたる分野での応用が期待されている.しかし他の計測装置に比べ空間解像度が悪いことが問題となっており脳が活性化した位置を正確に推定することができず,応用研究への課題となっている. 本研究では,NIRS計測で得られた結果から脳内部の状態を推定するという逆問題を考え,NIRSの空間解像度の向上を目的とする.

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