箸やハサミのような道具は,初めは使いこなすのに苦労するが,繰り返し練習することで自在に使えるようになる。このような道具を使うスキルが人間の小脳に獲得される過程や,異なるスキルが小脳の異なる場所に獲得される様子を調べた脳活動計測実験について解説する。また,獲得された複数のスキルを,状況に応じて適切に選択するメカニズムの特性について調べた行動実験について解説する。一連の実験結果は,1)スキルの学習には誤差の情報が重要な役割を果たすこと,2)互いに干渉するスキルを適切に読み出すには,スキルの意識的な理解が重要であることを示していた。以上のような脳のメカニズムに関する研究から,行為や運動のリハビリテーションでの効率的なトレーニング方法に示唆できることを考察する。
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