学術論文には一般に①問題提起,②仮説(問題提起に対する暫定的答え),③仮説の検証(論証をベースとする)の3点が含まれる。問題提起は何らかの事象(患者の示す臨床的症状など)を対象として疑問から始まる。疑問には大きく分類して実態調査タイプの疑問(何々はどうなっているのだろう)と,仮説検証タイプの疑問(なぜ,何々は何々なのであろう)の二つが想定できる。前者の疑問には実態を調査することにより解答が得られるが,後者の答えは実態調査からだけでは解答が得られない。すなわち,仮説検証タイプの答えはあらかじめその答えを仮説という形で提示しておく必要がある。言い方を変えるなら,問題提起に含まれる疑問は仮説によって暫定的にでも答えられる疑問になっている必要がある。仮説の内容は可能なかぎり新規なものである必要があり,その仮説内容に関連する先行研究の吟味が仮説形成に重要となる。また,仮説の正否を判断するには仮説内容を実験,観察,調査などにより検証する必要がある。仮説として主張している内容を裏付けるのは実験,観察,調査などにより得られる経験的事実としてのデータであるが,これだけでは不十分である。データと主張なり結論をつなげるためにはその理由づけとしての論拠(理論的背景,実験補助仮定など)が必要となる。
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