認知リハビリテーション
Online ISSN : 2436-4223
19 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
特別寄稿
  • ~その臨床症状,病態,治療の可能性~
    福井 俊哉
    2014 年 19 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル オープンアクセス

    認知症に伴う進行性失語を呈した6 症例を提示して,失語型,原因疾患,治療について論じた。症例1~3はDLBにlogopenic/phonological(LP)型失語が合併したと考えられるが,MIBG心筋シンチ所見が典型的ではなく,うち2例の脳脊髄液(CSF)Aβ 42 およびp-tauの所見はAD病理の合併を示唆した。症例4は身体症状を欠くがDLBの可能性が高く,他症状に遅れて非流暢型失語を合併した。症例5はADによる典型的なLP型失語を呈した。症例6では臨床症状とSPECT所見からFTLDを考えたが,発症時より健忘が明確であり,MIBG心筋シンチとCSFバイオマーカーの結果からADとDLBが合併した可能性が考えられた。認知症に伴う進行性失語に対してAD病変が関与する可能性があり,この場合,失語に対して抗AD薬の効果が期待できる。DLBが失語を呈することも示唆されるが,結論に至るためには症例蓄積が必要である。

原著
  • 〜健全な食生活遂行支援を目指して〜
    光森 洋美, 大出 道子, 佐野 睦夫, 宮脇 健三郎, 松井 元子, 大谷 貴美子
    2014 年 19 巻 1 号 p. 14-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル オープンアクセス

    施設入居中の高次脳機能障がい者7 名に対して,2~3 名を1グループとして1クール3ヵ月間,週1回3時間(計12回)の調理訓練を含むリハビリテーションプログラムを実施し,その効果を作業療法士と管理栄養士の視点から検証した。プログラムは,ITを活用し,社会生活復帰後の健全な食生活遂行を目指して実施したもので,栄養学の基礎講習と調理実習からなっている。健全な食生活遂行のための「栄養バランスの良い献立」の概念習得には,「献立作成ゲーム」を用い,加えて,調理訓練には,症例自らゲームを利用して立てた献立を自立して調理できるよう,「調理ナビゲーションシステム」を利用した。その結果,7名全員の「栄養バランスの良い献立」への理解が深まり,「調理への自信」獲得が認められた。以上の結果より,症例の健全な食生活実践の可能性が示唆され,本プログラムの有効性が認められた。

  • 大東 祥孝, 藤 若菜, 原山 恵梨子, 田浦 一樹
    2014 年 19 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル オープンアクセス

    アルツハイマー型認知症発症後,解離性同一性障害を示した症例を報告した。その発現機序として,二重に構造化された意識─記憶複合体を想定し,進化論的に後期に発生した高次複合体が早期に発生した一次複合体を制御しきれなくなる事態を想定した。そうしたことの生じる大きな要因として,高次複合体の果たす「ファサード」が弱体化し,一次複合体から生起する進化論的に低次な人格(意識─記憶複合体)が前景にでるのではないか,という仮説を提起した。

  • 松井 沙織, 酒井 浩, 清水 賢二, 田後 裕之, 高橋 守正
    2014 年 19 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル オープンアクセス

    左頭頂葉病変により失行症を呈した症例に対し運動学習訓練を行った。症例は上肢訓練,日常生活動作(以下;ADL)介入時に環境や状況に応じた動作の誘発が困難であり,四肢の関節運動が表出されず体幹の前後屈運動のみが出現することが特徴的であった。さらに保続・固執を認め,誤動作を修正することは困難であった。そのような症例に対して,標的関節運動を単関節運動まで分解し,動作の自由度を下げて反復学習を行った。さらに段階的に参加関節数を増やし組み合わせていくことで,目的とする上肢操作,ADLに即時的な改善を認めた。標準高次動作性検査の結果から,症例に見られる特徴を,Rothiらの行為処理モデルにおける入力系と出力系の連絡障害が主要な問題であると考えた。目的動作を分解し単関節運動まで動作を簡略化することで,正しい関節運動のみが選択される状況を作り出し,目的動作をエラーレスで誘導できるようになったと考える。

  • 俵 あゆみ, 南 千尋, 蜂谷 敦子, 鈴木 可純, 納谷 敦夫
    2014 年 19 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/05/26
    ジャーナル オープンアクセス

    受傷から14年近く経過した外傷後の低酸素脳症の1症例について,デイケアでの課題が自発的に実施できるようになることを目標にToDoリストを用いた訓練方法を検討した。症例は32歳男性。全般的な認知機能の低下に加え,重度の記憶障害を呈し,発症から12年後より当院デイケアに通っているが,1年9ヵ月経過してもカレンダーのチェックなど毎回の課題を自発的に実施することができなかった。そこで,まず,デイケアで実施する課題を明確にし,それを記載した立てかけ式手めくり型のToDoリストを作成した。次にこのリストの4つの使用パターンを試行し,自発的に課題を実施した達成率を比較した。その結果,ToDoリストとチェックリストを併用するパターンが有効であった。今後はデイケア内の行動だけでなく,日常生活に汎化する支援について考えたい。

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