脳損傷者にみられる意識にのぼらない認知の例として,相貌失認患者に対して皮膚電気反応を使用した研究,視野欠損患者にみられる盲視の現象,統覚型視覚性失認患者の視覚運動行動,半側無視患者の強制選択反応について述べ,意識にのぼらない記憶の例として口頭では全く覚えていないことを書字で正しく記述できた青年Neilの例,Damasioらによる“Good” Guy “Bad” Guy Experiment,さらに視覚イメージを喪失した症例の再認記憶について述べた。
高次脳機能障害に対するアウェアネスが低下した若年の右被殻出血症例の治療介入による神経心理学的機能,および社会的認知機能の経過を検討した。入院時に機能訓練を行った結果,ADLとAPDLは一部介助レベルに,知的機能,記憶機能,遂行機能などの神経心理学的機能は1 標準偏差以内に改善した。一方,固執,アウェアネスの低下,他者の意図への認知の低下など社会的認知機能低下が残存した。退院後,職業リハビリテーションへの移行に向けた生活習慣の確立を目的に行動変容介入を行った。生活習慣の確立,趣味活動の参加などに対して容易に動機づけでき,活動レベルが拡大した。一方,失敗時の内省,コミュニケーション,就労への展望などに問題が残り,自己の病態および他者の意図へのアウェアネスの障害が関連していると考えられた。
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