認知リハビリテーション
Online ISSN : 2436-4223
11 巻, 1 号
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特別寄稿
  • ―ヒトの音声言語の理解を目指して―
    小嶋 祥三
    2006 年 11 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2023/09/02
    ジャーナル オープンアクセス

    ヒトの音声言語の起源を検討する基礎資料として,系統的に最も近いチンパンジーの聴覚と音声の機能を次の7点から検討した。1.聴感度と弁別閾,2.音声知覚,3.母音的音声grunt の発声,4.聴覚認知,5.発声訓練,6.音声発達,7.母子音声交換。

    チンパンジーはW字型の聴感度を持ち,周波数,強度分解能はヒトよりも劣っていた。かれらは音声の低い周波数成分を手がかりに知覚していた。かれらは[u], [o] [a]と聞こえる音声grunt を出した。視覚―聴覚見本合わせの獲得は難しいが可能だった。しかし,名前を理解している証拠は得られなかった。なお,かれらは音声による個体識別の能力は例外的に優れていた。かれらの音声は自発性が乏しく,可塑性が小さかった。訓練で音声の頻度を変化させることは可能だった。訓練の効果は母子間の音声交換にあらわれ,訓練を受けた個体のみが頻繁に自分の子どもと音声交換を行った。

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