日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
39 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 松原 道男
    1998 年 39 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1998年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    本研究は,電気回路を対象に生徒の全体的処理の評価法を,ニューラルネットワークによるモデルから明らかにすることを目的とした。中学校第3学年を対象に,全体的処理を調べる調査と分析的処理を調べる調査を行った。両得点の相関を求めた結果,全体的処理の評価は,分析的処理の評価とは関係がないことが明らかになった。また,ニューラルネットワークによる生徒の全体的処理の分析結果から,電流が強くなるのは,直列に乾電池が増えた場合ととらえる生徒は多いが,並列に抵抗が増える場合ととらえる生徒は少ないことが明らかになった。さらに,抵抗のつなぎ方によらず,抵抗が増えると電流が弱くなるといったとらえ方をしている生徒が多いことが明らかになった。

  • 平野 俊英
    1998 年 39 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 1998年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    本研究は,小学校理科教育課程における内部構造の差違が学習者の電磁気概念形成へ及ぼす効果について検討することを目的とした。昭和43年改訂版及び平成元年改訂版学習指導要領の施行下で実施した学習者の概念理解調査の結果比較を基に,次のことが得られた。(1) 現行の学習者の正答率は20年前よりも低下したが,較差は大きくない。回答選択の学年変動にも顕著な差違は見られない。これらは概念形成経路の差違ではなく,同一経路上の到達度の低下によるものと見なせる。巨視的には教育課程のシークエンスによる概念形成への影響はあまり大きくないと考えられる。ただし,内容変更を受けた学年では短期的な回答選択の変動が現れている。(2) 現行の学習者の経験は質的・量的に低下したことが考えられる。学習初期の基礎段階での識別・分類活動は以前より重視されないために,学習者の概念は概念化が不十分なままで留まっている。この点から,教育課程のスコープが概念形成に与える影響は大きいものと考えられる。

  • 松森 靖夫, 萬木 敏樹
    1998 年 39 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1998年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    発生や遺伝をはじめとする生物の学習にあたっては教材生物の生活史に関する認識は非常に重要である。しかしそれらに対する配慮はあまりなされていないように思われる。そこで本研究では身近で良く知られた生物の1つであるカブトムシの生活史に対する高校生の認識を把握するための調査を行った。その結果,得られた知見としては以下のものが挙げられる。1 カブトムシが成虫で冬眠すると回答した高校生が全体の約半数に及ぶ。2 親子2世代のカブトムシが同時に存在すると考えている高校生が存在する。3 冬に「メスは冬眠,オスは死ぬ」というように雌雄によって寿命が異なると回答した高校生が存在する。このようなことより,生命の連続性に関わる学習において高校生の教材生物の生活史の認識へも配慮することの必要性を指摘するものである。

  • 中島 稔, 戸北 凱惟
    1998 年 39 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 1998年
    公開日: 2023/02/24
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,次の二点にある。第一は,葛藤教材を同時に提示することによる概念変容を調査し,その効果を明らかにすることである。また,その結果に基づいた授業方略を提案し,その有効性を検証することである。その結果,次のことが明らかになった。(1)溶解時の質量保存概念の変容に有効な葛藤教材は類推を促す粘土課題であること。(2)しかし,概念の定着には粘土課題だけでは十分ではないこと。(3)砂課題や木片課題の慈藤教材を同時に提示する認知的方略を導入した授業が有効であること。

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