水溶液を分けるという場面を用いると,子どもが「溶ける」という現象を本当に理解しているのかどうかや,「溶ける」ということ以外の「飽和」や「保存」などについてどのように考えているのか調べることができる。そこで,本研究では,水溶液を二つに分けるという場面を用いて,「濃さ」に対する子どもの考えを中心に水溶液に関する学習前の子どもの認識状態を調査した。その結果,水溶液の濃さに対する子どもの考えは,次の五類型になることが明らかになった。このうち,A以外は,科学的に誤った考え方である。A. 水溶液が溶質と溶媒から構成されていることを捉えながら濃さを考えている。B. 溶媒と水溶液の考えを混同しながら,溶質だけに着目して濃さを考えている。C. 水溶液中の溶質について考えることはできているが,溶媒だけに着目して濃さを考えている。D. 溶質と溶媒の両方について考えることができておらず,水溶液の量に着目して濃さを考えている。E. 水溶液の色や濁りで濃さを考えている。また,これらの結果を踏まえて,適切な水溶液概念を形成するために,授業設計や展開における留意点などについて提案した。
本研究の目的は,水中の物体に働く浮力に関する素朴理論について,中学生から大学生にわたって検討することである。とくに,水中における物体の形状と深さに関連する素朴理論間の関係を明らかにするとともに,平らな物体の方が同体積・同質量の立方体や球状の物体よりも大きな浮力を受けるという考え方としての「平ら理論」の実態を解明することである。さらには,平ら理論と学校的な問題の解答の仕方との関係を検討することである。調査の対象者には,質問紙によって6つの問題が課せられた。その結果,次のことが明らかになった。(1)物体の形状と深さの両方の素朴理論をもつ対象者が多い。(2)物体の形状に関係する素朴理論としては,「平ら理論」をもつ対象者が多い。(3)学校的な浮力の問題を正しく解くことのできる対象者の約50%以上が,他の問題には「平ら理論」を適用する。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら