痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
44 巻, 2 号
痛風と尿酸・核酸
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
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総説
原著 1
  • 大山 博司, 大山 恵子, 諸見里 仁, 藤森 新
    2020 年 44 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    当院痛風外来を2016年6月から2017年5月までの1年間に初診し,発症年齢についての聞き取りとクリアランス検査が実施されていた男性痛風患者358例について痛風の発症年齢と痛風発症に及ぼす要因を検討した.痛風発症年齢の平均は41.9±10.8歳で,年齢階級別にみると40歳代が最も多く36.9%,次いで30歳代が33.8%,50歳代が13.1%,20歳代以下が9.8%で,70歳代以上の高齢発症は1.4%に過ぎなかった.若年層(特に10歳代)での痛風発症に及ぼす要因としては肥満の関与が大きく,10歳代を除く全年齢層で飲酒習慣を認め,特に60歳代で顕著であった.病型は排泄低下型が多かったが,60歳代は腎負荷型が他の年齢層に比べて多く存在した.食生活の栄養学的な質的量的変化を伴う環境要因の変化に基づいて,わが国の痛風発症の若年化は30-40歳代の増加を主体として1965年から1984年までの20年間に起ったが,その後は発症年齢の若年化は進んでおらず高齢化の傾向も認められないものと考えられた.

原著 2
  • 久原 とみ子, 大瀬 守眞
    2020 年 44 巻 2 号 p. 167-176
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    アデニンフォスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)欠損症はadenineをフォスホリボシル化してAMPを合成するサルベージ経路に障害のある疾患である.その結果,adenineが蓄積し,そのadenineはキサンチンオキシダーゼにより8-hydroxyadenineを経て2,8-dihydroxyadenineへと代謝される.2,8-dihydroxyadenineは水溶性が極めて低く,尿管内で析出し結石性腎症を引き起こす.日本人の約1%がAPRT遺伝子欠損の保因者と推定されており,疾患の頻度は高い.有効な治療法があり,日本ではAPRT遺伝子とその変異の研究が早くからなされたにも拘らず,未だに発症から数年,数十年を経て診断に至る例が報告されている.海外でも診断が著しく遅れている現状が相次いで報告され,診断に至る新たなアプローチが不可欠と考えられているが,その具体案は示されていない.

    著者らは1996年以降,gas chromatography-mass spectrometry(GC/MS)を用いる尿メタボロミクス(GC/MS-based urine metabolomics)により,本疾患の代謝物レベルでの診断(化学診断)を行ってきた.化学診断後に遺伝子解析した症例では全例に変異が確認された.本研究では既に症例報告がなされた4名についてメタボローム解析手法とデータを開示し,本法が早期診断の新たなアプローチとなり得ないかを改めて考察した.疾患の判定は本疾患の指標物質を予めターゲット化し,被験者の計測値の健常群からの乖離度を対数変換し求めたz-scoreに基いて行った.z-scoreは2,8-dihydroxyadenineでは6以上,8-hydroxyadenineも5以上で判定に迷う値はなかった.指標物質は患者尿に常時,高濃度に存在しているので,僅かの随時尿から一両日で本疾患を特定できる.GC/MSを用いることで,感度,特異度が高い上,メタボロミクスとしては極めて廉価に施行できた.診断には腎生検も酵素活性測定も不要と考えられた.現行の診断ガイドラインにある沈査や結石の検査,酵素診断,遺伝子診断のみでなく,随時尿のGC/MS-メタボロミクスが診断の入り口としても確定診断としても補足採用されることを提案する.また,小児期/成人期早期の,血尿や腰部の疝痛など,尿路結石症の症状が認められ,通常検査で容易に診断されない患者に対し,随時尿のメタボロミクスによるハイリスクスクリーニングが周知されることを期待したい.

原著 3
  • 髙栁 ふくえ, 福内 友子, 山岡 法子, 安田 誠, 馬渡 健一, 奥 直人, 金子 希代子
    2020 年 44 巻 2 号 p. 177-185
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    本邦における「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」では,患者が食事から摂取するプリン体摂取目標値が400mg/日以下とされている.著者らは,これまで,発酵食品に着目し,酒粕に魚を浸漬すると,魚のプリン体が減少することを報告した.本研究では異なる発酵食品で,和食の定番である西京味噌漬けを検討した.めかじきを同量の西京味噌に1日間と3日間浸漬した.食品中のプリン体は,当研究室で開発された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた2つの方法で測定した.方法1では,試料を酸加水分解し,プリン塩基にまで分解したものを測定し,総プリン体量を求めた.方法2では,酸加水分解は行わず,遊離プリン体を分子種別に一斉分析する方法を用いて測定した.方法1で測定した総プリン体の結果は,めかじき(1日)は149.7mg/100gで,プリン塩基別ではヒポキサンチン(HX)類の割合が最も多かった.めかじき(漬け3日)では,めかじき(3日)と比較してHXが有意に減少した.一方,西京味噌(1日)では,総プリン体量は40.9mg/100gで,西京味噌(漬け1日)のHXが有意に増加していた.方法2で測定した,めかじき(1日)および(3日)には,遊離プリン体として存在するイノシン酸(IMP),イノシン(Ino),HXが多く見られた.めかじき(漬け3日)のInoが減少し,西京味噌(漬け3日)のInoが増加した.さらに,西京味噌(1日)および(3日)と,西京味噌(漬け1日)および(漬け3日)を固液分離した結果,西京味噌(漬け1日)および西京味噌(漬け3日)の液体側にInoが存在していた.これらの結果より,西京漬けは,めかじきに多く含まれるHX類であるInoを減少させたこと,その多くが西京味噌の液体側に移行したことが示された.西京漬けは魚の調理法として,高尿酸血症・痛風患者の食事療法に提案したい献立の一つと考えた.

原著 4
  • 西山 真純, 皆越 奈津子, 石山 裕子, 嶋田 英敬
    2020 年 44 巻 2 号 p. 187-193
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
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    痛風発作が春から夏にかけて多くみられることはよく知られており,原因としては高温による脱水や季節による食生活の変化などが挙げられているが定かではない.当地においては2019年5月〜9月の気温変動が例年よりも激しく,この短期間であれば食生活変化の影響を除き,気温変化と痛風発作の関連性が観察できるのではないかと考え調査を行った.2019年5月1日〜9月30日の間に痛風発作で当院外来を受診した初診患者105名(平均年齢48.2歳±12.5,中央値47歳,全て男性患者)の発症時期を聴取し,気象庁の熊本における気温データ(最高気温,最低気温,気温差)と照合してみたところ,5月は他月に比べ最高気温は低かったが,平均気温差は11.4℃と期間中最も大きく,患者数が最も多かった.また,一旦気温が低下した後,再上昇する際に患者数が増えている傾向が見られた.5月は気温の上昇や気温差が大きく,この気温変化に体が順応できていなかったことが発作を引き起こした理由の一つではないかと考えられた.また,尿比重を5月と8月に発作を起こした患者において比較したところ,5月の患者の方が尿比重が高めであるという傾向がみられた.このため,8月という気温の高い時期では気にかけて飲水をする者が多いが,まだ気温の低い5月では積極的に飲水をする者の割合が低いのではないかと考えられた.しかし,今回の調査は限定された期間内の結果であり,標本数も限られており,毎年同様の傾向が表れるのかどうかについては更なる検討が必要であると考えられる.

    今回の結果を踏まえ,今までは痛風発作は夏季に多いと指導を行っていたが,初夏といった季節の変わり目から痛風発作が多く出現するということ,その頃から飲水を心がけること等を考慮し患者指導を行っていくことで,よりきめ細やかな患者指導に繋げていきたいと考える.

原著 5
  • 横関 美枝子, 髙栁 ふくえ, 浅井 寿彦, 近藤 理帆, 大槻 美佳, 新井 英一, 川上 由香, 孰賀 佳冬, 土橋 卓也, 金子 希代 ...
    2020 年 44 巻 2 号 p. 195-202
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    痛風・高尿酸血症の治療には生活指導が重要である.栄養指導では,生活指導の重点項目の実態を把握し,評価することで,患者の生活に合致した指導を行うことが求められる.そこで,高尿酸血症患者のプリン体やアルコールなどの摂取量,頻度を簡単に調べることができ,さらに患者に役立つ情報を提供できるチェックシートを多施設・多職種で検討した.チェックシートは,血清尿酸値だけに偏らず勧められる食事を反映させるため,質問項目を“摂り過ぎに注意する食品群”,“多めに摂ってほしい食品群”に分けた.項目を分けたことにより患者の回答が回避・誘導されないようにするため,質問用の『あなたの尿酸確認シート』とフィードバック用の『あなたの食事アドバイスシート』の2種類のシートを作成した.管理栄養士が栄養指導時間内で摂取したプリン体量の概算ができるように「メニュー毎のプリン体概算表」,「肉類・魚類に含まれるプリン体量中央値・平均値」を作成した.さらに患者資料として1日の食事量やプリン体目安量を視覚的に理解できる「プリン体が分かる!1日の目安量」を作成した.これらのシートを用いることで,効率的な栄養指導およびアセスメントが可能となり,患者教育の教材としても有益なものになる可能性が考えられた.

第53回日本痛風・尿酸核酸学会総会記録
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