大正九年の調査開始以来、一貫して増加を続けてきた北海道の総人口は、平成二年の国勢調査では五六四万四千人となり、初めて〇・七%のマイナスを記録することとなった。また、厚生省人口問題研究所の「都道府県別将来人口推計」によれば、今後もこの人口減少は続き、二十年後には五三〇万六千人程度となると予想されている。しかし、この人口減少は、道内の市町村において一様に進行するわけではなく、従来から観察ざれる人口集中傾向を反映する形で、地域間の格差をさらに増大させてゆくと思われる。
本研究のねらいは、北海道の人口減少が、各市町村で今後どのように進行してゆくか、また、その結果として地域の人口構造や分布をどのように変化させてゆくかをコンピュータ・シミュレーションにより明かにしてゆくことにある。
このため、本論文では、その第一歩として、北海道の人口動向を踏まえ、統一的な手法に基づく、市町村を単位とする人口推計の必要性について論じるとともに、地域人口推計システムのデザインを行い、その機能と制約条件を示した。また、このシステムのプロトタイプを作成し、ケーススタディとして十勝圏の地域人口を取り上げ、同地域の今後の過疎化と高齢化について予備的な分析を行い、全国推計や都道府県推計では捉えられない地域人口の動向や、その広域的かつ長期的な分析の重要性を提示した。
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