バイオフィリア
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2015 巻, 2 号
Special Edition (Articles of the English Abstracts and Japanese Manuscripts)
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
序文・祝辞
  • 滝沢 茂男
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 94-96
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    国際バイオフィリアリハビリテーション学会理事長・バイオフィリア誌編集長として特集号発行に当たり一言ご挨拶申し上げます。バイオフィリアジャーナルは日本国立国会図書館から日本語誌バイオフィリアリハビリテーション研究の後継誌と位置づけられました。日本バイオフィリアリハビリテーション学会の協力で、これまでの日本語誌掲載論文を世界の読者にお知らせできる機会を得ました。
    いよいよ世界の人々の期待に応えることが出来る。
    この特集号の発行は私にとって大きな喜びです。私は医師でも技師でも理学療法士でもありません。その私がこの研究に関わってきた事情を以下の順でこの祝辞で述べさせていただきます。「緒言」、「なぜ政治家を続けなかったの?」、「私(私の母)だけが治せる」「負けるのになぜ出るのだ」、「寝たきり老人を歩かせる」、「介護が少なくて済む社会を作る。」、「医師の参加」、「私は群を診る。」、そして「2 つのお願い」となっています。 終わりになりますが、研究へのご支援ご検討と、読んだ読者諸兄の研究参加をお願いしてご挨拶に致します。
  • Pokorski Mieczyslaw
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 97-98
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    私は国際バイオフィリアリハビリテーション学会の発展を支援してきた。その成果もあり,この学会活動の重要性は着実に増大している。 最近,学会活動の中心となっているジャーナルは,2011年から発行され,8巻に及んでいる。以下は前号祝辞で述べたが,大変重要な内容であり,再掲する。
    「医療とリハビリテーション関係者は,しばしば健康な手で,麻痺や機能損傷と診断された腕を動かしている患者の姿を見ている。このような運動は,運動により有益な影響を得ようとする他に,理学療法士による一種の他動運動に等しい。しかしながら,足の重さ自体や負荷の大きさから,患者の健康な手を利用して,麻痺した脚を動かすことはどちらかと言うと不可能である。 患者が患者自身の麻痺した脚を動かすことが可能になったら,どのような影響があるかとの疑問が生まれる。この疑問が,リハビリテーション医療における医学と工学の共同研究の出発点であった。日本で麻痺した脚を健全な足の運動で,自分で動かす事の出来る単純な装置が開発された。それ以来,私は根本的な生理学のメカニズムにおける有益な影響を探るべくこの研究に参加している。 これまでの研究では,このような自律訓練の効果は,皮層血流の拡張による,大脳機能の活性化に見られている。 麻痺した患者の他動運動によるリハビリテーションが何年もの間行われてきたが,障害が基本的に変化していない状態で持続している。 現状のリハビリテーション医学の置かれている状態を改善すると共に患者の障害を改善するために,我々は分子遺伝学から得られた診断結果あるいは医学的判断が寄与できたことを示してきた。我々はそれらの結果をリハビリテーションにおいて医工学の共同研究の努力によって達成したのである。」
    私は,今回日本の研究者によって日本学会のジャーナルに発表された多くの論文を,国際的に読まれるべき論文であるかを査読した。 私はこれらの論文が人類の福祉向上に寄与すると確信している。
  • 木島 英夫
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 99-100
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    私はバイオフィリアリハビリテーション学会設立時に会長を務めた。それまで21世紀リハビリテーション研究会と称したが、初代会長は滝沢恭子氏、2 代は福井圀彦氏、3 代で名称が替り、記名の学会になった。学会設立時の就任挨拶で、「介護・依存から自立へ・2025 年で16%弱と想定される要介護老人の発生を10%以下にする。を実現するため、会員諸兄の一層の研究努力を期待致します。」と述べたが、国内ばかりでなく、世界に目を向けた活動を継続している状況は期待に違わぬ活動と喜んでいる。
    私がこの学会の会長に就任したのは、「寝たきりをなくすという滝沢茂男氏の努力がどのような結果をえられるか見守る」ことが中心であった。
    氏は、政治家として大成することを嘱望された藤沢市の青年議員であった。高齢社会への深い洞察を持ち、広い視野を持っていたからこそ、誰も気づく事のなかった訓練結果と手法の特異性、そして手法のシステム化・プログラム化が可能なほどの合理性に気づき、市会議員の座を投げ打ち、引退する県会議長の出馬要請に応じることなく、この研究に取り組んだ。氏がこの国際活動を国内学会の部会として立ち上げ、部会長を務め、さらには国内学会全会員合意の下、独立組織に再編して、理事長として活動を継続していることは望外の喜びである。
    思えば、志をたて、親である滝沢恭子氏の実施しているリハビリテーションの方法をシステム化し、着実に世に出す努力を続けていた氏から、「泣き言」といってもよい「僕がドクターならはやいのに」との言葉を聞き、私が協力を申し出てから、20 年を経た。当時理学療法士の参加による組織としてかなりの実績をあげていたが、論文発表をする医師はいなかった。そのままでは個人の経験が個人の経験のままで終わってしまったことであろう。元日本臨床整形外科医会故金井司郎理事長と相談し、論文採用に向けて、氏を全国の臨床整形外科医会々員に紹介し、説明に当たってもらい、その後論文をまとめて、発表したことは忘れられない。多くの藤沢市内臨床整形外科医会々員の協力も得て発表したこの論文が、学会へ進歩する基礎となった。当時、学会への組織変更にあたり、「思いたつ者はいても実現できるものはほとんどいない」として、監事を快諾する医師や、ES細胞を利用した神経伝達機構の再生を研究する部会を提案する内科医がいた。
    氏の提唱する、高齢障害者の自立こそが、団塊世代の高齢化に伴う社会崩壊を防ぐとの認識は、時代の移り変わりと共に重要になり、識者の中では共通の認識になっている。神経伝達機構再生研究の提案は実現できずに終わったが、世界で活動する本学会の今後の焦点として、分子遺伝学からの脳機能再建が課題になっていると聞く。今回PubMed 登録にむけて、日本語論文集を再編し、世界の読者へ知識を提供することになった。我々のこれまでの研究がまだ陳腐化していないことは医学改革の困難さを示している。ぜひ広く英知を集め、簡単ながら、効果の高いタキザワ式リハビリテーションがリハビリテーション医療の中核になるよう読者各位の研究参加、普及推進を期待している。
  • 矢野 潮
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 101-102
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    今回、研究を人類に役立てるための米国のパブメド登録申請の準備として,記念号を発行するに当たり,The BIOPHILIA journal の編集長,滝沢教授から祝辞を求められました。大変名誉なことと喜んでいます。
    氏が予見していた人類の高齢化が明らかになっています。そして,氏は予見から必然を知り,挑戦を続けてきました。この人類の高齢化による社会崩壊を,リハビリテーション医学改革により阻止するという大事業が,世界中の医師の協力で,実現できるなどだれが予期できたでしょうか。私はこの記念号が人類の福祉向上に大きく寄与でき,さらに高齢化による社会崩壊を阻止できると確信しています。
    懐古し,祝辞に致します。氏とお嬢さんは私の患者さんです。昔,氏が市長選挙に落選したとき,「どうして立候補したのだろう(当選は期待できないのに)」とふとつぶやいた言葉がお嬢さんから伝わったようです。お嬢さんが通院を続けている事情もあり,手紙をもらいました。私は20数年前の昔の事ながら,その手紙に非常に驚いたことをいまでも覚えています。
    その手紙は次のようでした。
    選挙の意味「団塊世代高齢化による高齢社会到来への危惧」と「リハビリテーション医学の改革で高齢者の自立が図れることからその危惧を取り除くことが出来ること,選挙運動がそのための一粒の種子になれること」,「リハビリテーション医学改革の道程の険しさと長さが予測できること」と「政治家に戻れるかどうか不明であるが,社会貢献の視点で結果を恐れず取り組む必要があったこと」,そして,学年は違うが大学の同窓生として,共に学んだことのある状況を説明し,「大学時代に社会貢献をもって自身の生活を律すると決めた」ことで結んでいました。
    それまで研究チームに一人の医師もおらず研究推進の弱点でしたが,この選挙を見た医師が研究に参加したと聞きます。氏の結果を恐れない挑戦が想定どおりの結果を生んだようです。その後折に触れ氏から提供された,時事通信の記事で進捗を知ることが楽しみでした。
    氏と世界中の有志からなる「家族」のように緊密に連携した医学・工学・社会科学の研究チームに,こころからの賛辞を送り,そして,今後の研究の進展を期待しています。
再録報告
  • 滝沢 茂男, 木村 哲彦, 木島 英夫, 牧田 光代, 遠藤 敏, 滝沢 恭子
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    開発には二面がある。その1は新規な物品の開発である。特許を受け,その特許に基づいて製品を開発する。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成により開発したソリ付き歩行器開発はこの一面を示している。その2は方法開発又は用途開発である。ヘンリーフォードが,それまで趣味の領域であった自動車を,庶民の移動手段,貨物の運搬手段としたのはその一例である。近年のビジネス特許も同様であろう。我々の目指す方法開発又は用途開発としては,ギリシア時代からの神話「杖をつき三本足で歩く」から「歩行器を利用し六本足で歩く」を提案した。これは発想の大転換である。用途開発の可能性に関して,歩行器開発に関する問題点,そこから生まれた開発補助金獲得と事業化の問題点,開発に伴う用途開発の必要性と可能性,そして本研究が生んだ実現可能性について述べた。
再録論文(研究)
  • 滝沢 茂男, 滝沢 恭子, 大内 二男, 谷島 朝生, 森田 能子, 木村 哲彦
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    目的: 一人の理学療法士(PT)が多数の患者の訓練指導を行うタキザワ式リハビリテーションを実施してきた。実施施設には、入所者・患者には身体機能低下の著しい人,重度の痴呆を有する人が多かったが,評価は個別に記述してきた。一療法士対入所者・患者多数で実施するため、実施しているPT は評価表作成のための負担が大きかった。複数施設において実施することになり、またPT の負担を減らす必要があったので、各施設で利用する機能評価表が必要になった。方法: 実施状況の後方視による現状分析を行い,運動種類及び回数等で表す事が出来るよう定型化を行った。結果: 定型化しチェック式で対応可能に作成した。身体機能経過記録として,頭部、体幹、下肢、移乗・移動に区分し、定型的に評価出来るよう作成し、図示した。拘縮、失認の有無、立位・歩行の状況,トレーニングと部位、回数を記録出来るようにした。考察: 問題点をあげ短期,長期の目標を立てる事が可能になり、複数施設で利用できるようになった。評価記録の省力化が図れた。
  • 滝沢 茂男, 青木 信夫, 牛澤 賢二, 武藤 佳恭, 牧田 光代, 長澤 弘, 遠藤 敏, 増田 信次, 川澄 正史, 高田 一, 木村 ...
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:一つの器具により二つの目的すなわち,段差等のある家屋内で行う介護作業時に,取扱いが容易で自由な移動が可能な機器と高齢障害者が創動運動により介護から自立にすすめるためのリハビリテーション器具の双方の機能を利用でき,狭いスペースを有効に利用できる車輪移動式のリフトの開発を目的とした。段差が利用の障害になる使用環境に於いて,車輪移動式のリフトの実用性は低かった。対象:この欠点を補い,機能の高い器具を提供する為に,創動運動兼用リフト装置の部品研究:①滑動安定板(そり)を備え,移動用のキャスターを取付けた脚部,②昇降ガイド部(機器収納部,運転牽引アーム,昇降部,昇降駆動部,昇降駆動制御部からなる),③上肢訓練用部品懸架装置取付装置,④上肢訓練用部品懸架装置,⑤運転牽引アーム,⑥ブレーキ装置,⑦パワーアシスト機構と,完成した場合の利用意識調査を研究した。方法:部品を試作し,神奈川県産業技術総合研究所において,ソリはたわみ試験,脚部は段差乗り上げ試験,前輪段差乗り上げ繰り返し走行試験,負過重試験を行った。開発後の普及可能性調査のため,大都市圏である東京都,大阪府,京都府,愛知県と一部三重県の合計2000箇所の介護老人保健施設,訪問看護ステーション,特別養護老人ホーム,療養型病床群を持つ病院に対しアンケート調査,機器展示会における聞き取り調査を実施した。結果:現在使用中の部品強度による安全性を確認し,開発可能性を明確にした。特に,脚部構造物中央に70Kgの過重,引っ張り力245Nで繰返し試験を行った。ソリ及び構造物は壊れず,たわみ試験では,ステンレスソリ検査の結果,ブレーキに使用できる可能性を確認した。アンケート回答で,新しい考え方や方法に対して意欲的な姿勢を認めた。タキザワ式・ソリ付き歩行器の双方に関し,認知度は低いが関心は高かった。考察:商品化の可能性・重要性が確認できた。普及には,諸外国と同様な利用に関する法整備の必要性が明確になった。
  • 野本 洋平, 山下 和彦, 家本 晃, 滝沢 恭子, 滝沢 茂男, 小山 裕徳, 川澄 正史, 斎藤 正男
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    下肢創動運動は,下肢機能回復の観点からリハビリテーション効果が定性的に報告されている。リハビリテーション効果の向上には,下肢創動運動を歩行や立位制御の観点から定量的に解析する必要がある。本研究は,立位保持能の観点から下肢創動運動実施時の筋電図および関節可動範囲を定量的に評価した。対象者は脳卒中後片麻痺者2名である。計測した筋は,立位保持に必要な長指伸筋,ヒラメ筋,腓腹筋,大腿直筋,内側広筋,外側広筋とした。その結果,下肢創動運動の実施により,患側の主動筋,拮抗筋に筋活動が認められ,運動力学的見地から協調的な活動が認められた。下肢の関節可動範囲の解析より対象者の痛みを誘発せずに最大可動域の確保が確認でき,筋電図の結果と合わせてリハビリテーションへの有効性が推測できた。
  • (第1報:評価指標の抽出)
    滝沢 茂男, 武藤 佳恭, 家本 晃, 高田 一, 松岡 幸次郎, 牛澤 賢二
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    我々は座位で器具を用い行う創動運動を中心としたタキザワ式リハビリテーションの機序解明研究を行っている.効果を上げているこの手法を評価する指標を抽出するため,下肢前後運動の運動範囲,運動回数及び運動速度を検知しデータ化する機器を開発し,さらにサーモグラフィーを用い,下肢創動運動の実施による身体的影響評価を行った.実験では経時的な追跡を行い,その間のリハ効果の計測を試みた.開発した下肢運動機能測定装置改良後に収集した画像の対比及び3回の下肢運動評価の結果,下肢前後運動の運動範囲は拡大し,運動速度は向上し,またサーモ画像の対比によれば運動前後には体温に差異が見られ,効果を明らかにでき,評価指標の抽出に成功した.
  • (社会保障・介護保険関連)
    滝沢 茂男
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    目的:高齢者に対する青年の意識は時代と共に変化するのであろうか。方法と対象:介護保険導入前後の20歳代の意識調査を行った。1977年実施の調査に対応した現代の青年の意識調査を実施し,対比したので,その結果を報告する。1977年のアンケート調査回答者は20-27歳の男女23名,2012年,現代の青年意識調査として,20-25歳の青年26名,内(男性16名,女性10名)の意識を1977年と同質問でアンケート調査した。1977年は質問紙調査であり,2012年のアンケート調査には,インターネットのグーグルアンケートを用い,1977年の質問と同内容で実施した。結果:1977年と2012年の回答を分析した結果,特別養護老人ホームの認識(p<0.01),同利用に関する意識(p<0.01),老人が社会問題になるか(p<0.05),について示したとおり有意な違いが見られた。介護保険以前の青年の意識は家族で老親を扶養する意識が高く,特別養護老人ホームの認知が少なく,利用にも積極的ではなく,そこから,老人が社会問題になるとの意識が高かった。考察:介護保険下では,要介護度が高く寝たきりになるほど,施設はサービス報酬を多く受給でき,入所しやすい。施設介護の可能性を高める介護度の重度化が市民にとっても望ましいのである。社会保障経費削減を可能にし,高齢者の増加が社会問題になる要素を減らすために下記の2点の法整備が介護保険制度について必要と考察する。(1).家族介護者への賃金支給の選択肢を設ける。(ドイツの現金支給:ドイツの介護保険のように在宅で老親を介護すれば賃金が出る。日本も同様にすれば,施設介護希望も生活保護受給も軽減できる可能性が生まれる。) (2).施設において介護度が向上(介護が少なくなる:例,要介護5が要介護3に変化)したら,施設の収入を厚くする。
  • 長岡 健太郎, 木村 哲彦, 森田 能子, 滝沢 茂男
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    褥瘡予防未実施減算の導入が有り,褥瘡予防に適切な器具の開発が望まれている。我々はベッド数226床の療養病床を持つ医療施設及び介護老人保健施設において,3角形のクッションを利用した。この利用に関し,長時間の連続利用により,3角形の頂点部分が3ヶ月程度でへたるという欠点があった。柔軟で,血液循環を阻害しない利点を保持し,欠点を改善するため,あらたに5角形のクッションを開発し,利用し,評価した。評価方法は器具耐久性を10kg連続荷重および免荷実験により評価し,改善を確認した。効果の検証は圧力分布評価により行い,体圧分散に成功していることを確認した。当院勤務者に実施したアンケート調査で回答者101名中88%,89名が常時体位変換に利用している状態が明らかになり,新開発の有用性が確認できた。
  • 村上 亜紀, 滝沢 茂男, 木村 哲彦, 長岡 健太郎, 森田 能子
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    褥瘡の発生予防を目的に,あらかじめ回答を設定した質問紙調査では明らかにならない介護者看護師等従事者の意識解明と,高齢者障害者の褥瘡を実際に無くした施設の特徴を抽出する目的で自由回答によるアンケート調査を実施した。得られた回答のテキストマイニングによる分析を行い,これまでの研究で明らかにできなかった当該施設の特異的な三角クッション利用が明らかにでき,また,自由記述の分析から従事者の意識を明らかにできた。以上から局所圧力200mhg以下・2時間以内の体位変換を実現している施設と現状となくすべく努力している施設の利用機器の差異を明らかにでき,褥瘡予防の体位変換実現のための仮説を得たと思われるので,結果を報告する。
再録論文(医療)
  • 滝沢 茂男, 武藤 佳恭, 木村 哲彦, 牛澤 賢二, 滝沢恭子 , 長岡 健太郎
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 158-166
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    目的: 回復度基準の一部導入が行われた。回復を目的とせず,障害を受容し,たとえば利き手交換などによる生活の再構築を目指したリハビリテーション(リハ)医療にとって,回復度基準の導入は大きな転機である。対象と方法:我々はリハ医学に回復度基準の導入が可能と考えており,検証のため高齢障害者の褥瘡を実際に無くした施設療養型医療施設のリハ医療の現状について研究を行った。リハの実施に伴う障害老人の日常生活自立度の変化を調査した。結果: 要介護度に即した例外ないリハの実施が,褥瘡予防に寄与すると共に,自立度を向上させていたことが分かった。(Wilcoxonの符号付順位検定 -1.970a P=.049) 考察:自立度の向上が検定されたことは,今後の回復度基準の導入にも有益と思われる。評価方法も困難であるなどとの意見があるが,研究結果がその導入に寄与し,さらに進むものと考えられる。
  • 長岡 健太郎, 滝沢 恭子, 森田 能子, 滝沢 茂男, 牛澤 賢二, 木村 哲彦
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 167-175
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    褥瘡の発生予防を目的に,障害を負った特に高齢者障害者の褥瘡を実際に無くした施設の現状を,利用器具,それによる体圧分散の実際,実現するための計画,計画の実施と実施体制,日常的な栄養管理,それらすべてを時系列でデータ化することにより明らかにした。研究では,全面的に導入されているプログラム化リハで要介護度に即した例外ないリハの実施と,褥瘡予防のためのコジャックの法則で求められる患者の2時間以内の体位変換と局所圧力200mmhg以下の体圧管理を実現していた事が明らかになった。このことにより,「対象となった療養型医療施設における要介護度5の入院患者の褥瘡患者は最小で0%,最大で4.7%,平均2.8%」の実現が可能になったと考察する。
再録総説
  • 岡本 雄三
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 176-189
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    今後のリハビリテーション(以後リハビリ)医学の発展に役立てるように,私の経験と,その経験から生まれた地域リハビリはこうあるべきと考える手法と内容について,総論を述べる。はじめに,これまでの経験を述べる。そこから得られた障害をもつ高齢者の自立へ向けた日常生活に関し,今日までのリハビリのあり方を問う。その後,生活内容を改善するために「這う」という行動を生活に取り入れるとどのように生活が楽になるかを示す。そしてその動作を獲得するためにはどのようなリハビリが必要なのかを述べ,さらにその実践による生活者の状況を示す。
  • (バイオフィリア リハビリテーション学会報告)
    滝沢 茂男
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 190-194
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    はじめに: 2006年に開催した国際・国内大会の開催と意義を紹介した。大会のオーストラリア側準備委員長を勤めた特許弁護士のマークプリン氏を取り上げ,脳血管後遺症などで障害を得た身体機能を高い割合で改善可能な新しいリハ手法に関する多くのオーストラリア特許から強く興味を持った事を紹介した。初めて,外務省の後援を得たこと,そして,次回国際大会は,平成20年9月大会長ポコロスキー教授(Prof. M. Pokorski)の下,ポーランド共和国ワルシャワ市で,ポーランド学術会議(Polish Academy of Sciences)と共催で開催する準備が進んでいることも紹介した。
    問題の指摘:事例を示し,リハビリテーション医学革新の必要性を述べた。既存のリハ医療に関する脳卒中合同ガイドライン委員会の著作(2004年版)を紹介し,日本リハビリテーション医学会(当時理事長・慶應義塾大学リハビリテーション医学千野直一教授)報告として,「脳卒中リハビリ医学・医療での治療法,訓練手技などは臨床経験に基づいて行われてきた領域が多く見られ,全般的にはエビデンスの面からは妥当性が十分とはいえず,今後のさらなる研究が待たれるといえよう」との報告を引用した。
    解決への取り組み:筆者の大会挨拶を引用し,革新へ向けた我々の取り組みを示した。「リハ医学の革新による障害の克服が,人口ピラミッドが逆転するという人類にとって未曾有の変革期に,超高齢社会に佇む人類の救済に他のどのような手段にもまして意義があり,我々の学会の活動がその実現を可能にする。」また,同時に進行している6件の公的研究を紹介した。
    研究を組織してきた筆者の思い:リハ医学革新(リハ医学を「障害の受容」ではなく「障害を克服し,身体機能を取り戻すことの出来るリハ医学・医療」に変革)の研究を,医師や技術者ではない著者が,無給で進める中で,自ら「風車にロバで進むことを,自身が馬に乗った騎士で城中の美女を救いにいくと一人思いこんでいたドンキホーテ」に比較せざるを得ないほどの困難に直面した事もあった事を振り返った。そして,今日では研究の進展に伴い,そう遠くない将来に実現できると確信している。
    結語:人口ピラミッドが逆転するという人類にとって未曾有の社会においても,人類が皆希望をもち豊かに暮らせることが重要である。その実現のために,社会保障負担を軽減し,次世代に過度に依存せずにすむ持続可能な社会を構築する必要がある。高齢者に対する「国民一般の意識改革」も必要である。その確立のために,高齢者が自立できる社会構築の為の哲学・医学・工学・社会科学・公共政策研究まで含めた広範な領域の研究を進めている。読者の研究への参加を期待している。
  • 木村 哲彦
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 195-206
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    褥瘡は治り難いもの,そして治し難いもの,然し予防できるものと言うことは多くの症例を扱ってきた医療者は知っていた。それを科学的根拠に基づいて学会に提言したのは1960年代の半ば頃からであった。著者はロダンアンモン発色方で1),2),KOSIAKはバルーンによる圧力測定を根拠にほぼ同じ結果を報告している3)。褥瘡,床擦れと言われた100年前より発生原因,物理学的対策,薬物学的対策について多くの研究が成され,病理学的な特性,生化学的特性に関する病態についても判明した事実は多い4),5),6),7),8),9),10),11),12),13),14),15),16),17),18)。褥瘡の発生機序,組織学的変化などに関する報告は多くの学術雑誌に見られたが,褥瘡についての知識の普及に反し,予防すれば予防可能である筈の褥瘡患者の数の減少する気配は一向に薄く,厚生労働省も健康保険点数に於いて未対策の医療機関の入院患者に対する減点政策を採るに至った。更に2年後の改正時に予防対策を前提とした入院点数を付するに至っている。然し,褥瘡管理が行き届かぬ医療機関に対し,健康保険点数減算措置がとられた後に,医療機関は本腰を入れて予防に力を投入するところとなった結果,行政は素早く減算措置から予防体制を整えた医療機関に保険点数の加算を行う所となった。我々研究班は,予防の至らぬ点を憂い,現状を究めて解決策を得んと意図し,長年にわたり啓発に努めてきた所であるが,平成17-18年文部科学省科研費19)と平成18-19年財団法人テクノエイド協会研究助成金20)により,予防効果に関する研究に従事した。その利用器具開発,研究手法,内容,結果の詳細は,長岡ら21),滝沢ら22),村上ら23)が報告している。特に長岡は, 長岡病院グループはKOSIAKの提唱する徐圧による予防の効果を立証し,「コジャックの法則(局所圧力200mmHg以下・2時間以内の体位変換)に則して,体位変換を実施すれば褥瘡の発生を見ない」を実現した病院の状況について報告した24),25)。しかし,一般の医療機関に於いては40年来学会等を介して我々が褥瘡の弊害と予防の可能なことを提唱してきたことが殆どの医療機関では生かされてこなかった実態がある。本稿では以下,実施したアンケート調査から,政策として,褥瘡対策未実施減算導入がどのような影響を与えたかを述べる。著者を含め,直接データ採集に関わった本研究グループを構成するメンバーは次に挙げる医療機関及び人員による。平成17-18年度文部科学省科研研究:(当時) 木村哲彦(国際医療福祉大学・大学院・教授),滝沢茂男(リハビリエイド有限会社・バイオフィリア研究所・研究員),長岡健太郎(医療法人湘南健友会長岡病院・診療科・理事長),牛澤賢二(産能大学・経営情報学部・教授),山下和彦(東京電機大学・工学部情報メディア学科・ポスドク),森田能子(川崎病院・リハビリテーション科・部長),村尾俊明(財団法人テクノエイド協会・常務理事)平成18-19年度財団法人テクノエイド協会研究:(当時) 木村哲彦(前出),滝沢茂男(バイオフィリア研究所有限会社・研究所長),森田能子(前出),岡本雄三(医療法人帰厳会岡本病院 院長),長岡健太郎(前出),長澤弘(神奈川県立保健福祉大学リハビリテーション学科・教授),牛澤賢二(前出),川合秀治(社団法人全国老人保健施設協会副会長),和田里佳(立花整形外科通所リハビリテーションセンター・所長),白澤卓二(東京都老人総合研究所分子老化研究グループ・研究部長),塚田邦夫(高岡駅南クリニック院長),足立かおる(岡本病院副院長),村上亜紀(湘南看護専門学校専任教員),高田一(横浜国立大学教授)
再録論文(研究)
  • 高田 一, 横山 耕一郎, 新谷 真功, 松浦 慶総
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 207-215
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    車いすを使用している人体のモデルを作成し,走行中のシミュレーションを行うことにより,振動や衝突,外乱等に対する応答データを得ることができる。ここでは,最も人体に影響があるとされている段差通過時などの挙動についても解明し,実験と比較検討した。その結果,人体が剛体リンクモデルであっても,効率よく人体挙動を再現するシミュレーションモデルを作成することができた。また,段差通過時に人体が発生させる反射的なモーメントに対してはフィードフォワード制御を加えることにより実験値に近づけることが解明された。
再録 症例報告
  • 機能訓練事業参加の在宅障害者の生活支援
    芝原 美由紀
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 216-221
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    障害者の在宅生活の継続に身辺処理動作(セルフケア)の機能維持は重要である。今回,T市の肢体不自由児への機能訓練事業を担当する機会を得た。そこでこの事業を10年余利用している脳性まひ4事例の経過を見直した。利用目的は,時間の経過と共に変わり,生活は学校卒業という大きな転換期をむかえていた。家族と本人は在宅生活の継続に不安を感じている事が判明した。家族が機能維持を望む背景に,脳性まひの障害特性から身辺処理動作の機能維持の困難さや家族介助の負担が示された。しかし,4事例とも医療機関の受診や専門職種の関与が少なかった。家族不安を具体的なニードとして,相談支援事業へと結びつける必要性が示唆された。
再録報告
  • 蒔田 寛子, 川村 佐和子
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 222-233
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    訪問看護を利用している高齢独居療養者の療養生活と支援から,療養生活に必要な機能を分析し,支援を一般化するとともに訪問看護師の果たすべき役割を明らかにすることを研究目的とした。研究目的にそって分析した結果,9の独居療養生活機能のカテゴリーと,9の独居療養生活支援機能のカテゴリーが抽出された。これらは,高齢独居療養者の生活にそって段階的に分類する軸と,誰がその機能を担うのかという2つの軸で示すことができた。そして,今後を予測し支援,他の支援者への指導,という訪問看護が果たす役割が確認できた。今後の課題は,支援のコーディネートを誰がするのか考慮した,職業としてではない支援者の支援を含めた支援の組織化である。
  • ―豊橋在宅リハビリテーション連絡会における意識調査からー
    辻村尚子 , 牧田 光代, 内藤 貞子, 角谷 幸宏
    2015 年 2015 巻 2 号 p. 234-240
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2016/04/20
    ジャーナル フリー
    施設中心の医療介護から生活の場へ政策が変化してきている地域業務に携わる医学的リハビリテーションスタッフが医療施設と地域でのリハビリテーションについて違いを感じているのか意識調査を行った。結果,その目的については違いを感じているものの,ゴールについては大きな違いをもっていない。アプローチについては地域では「生命終焉までの見守り」や「生活継続の見守り」という「見守り」の概念が導きだされた。医学的リハビリテーションスタッフは医療技術者としての教育を受けてきており,それを地域,特に訪問リハビリテーションに活かし,その上で「精神的QOL」を含めた全般的な「QOL」の向上及び生活支援をしていく必要がある。今後の課題は生活維持のための機能維持とは何か,「見守り」とは実際にどうすることなのか等,医療施設でのリハビリテーションから地域リハビリテーションへ結び付けていく具体的方策の開発が必要である。
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