伊豆沼・内沼研究報告
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3 巻
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 大高 明史
    2009 年 3 巻 p. 1-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    2008年6月の調査で,伊豆沼と蕪栗沼から3科にまたがる25分類群の水生貧毛類を記録した.このうち,伊豆沼で確認されたフユナガレイトミミズは,本種の最北の記録である.伊豆沼沖合の湖底に見られる貧毛類群集の構成は,中部から東北日本に分布する浅い富栄養湖の構成とよく似ており,ユリミミズが優占し,イトミミズを欠くという特徴を持っていた.日本の他の富栄養湖と比較すると,伊豆沼沖合の貧毛類群集は密度が低く,その原因として魚類による高い捕食圧が推測された.伊豆沼沿岸部の水草帯では,葉上性のミズミミズ科が優占し,蕪栗沼では,おそらく植生が豊富な低湿地の環境を反映して,底生種,葉上種,湿地性種が混在する貧毛類群集が見られた.

  • 南谷 幸雄, 横山 潤, 福田 達哉
    2009 年 3 巻 p. 13-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    伊豆沼・内沼周辺にてミミズ相の調査を行なった.その結果フトミミズ科6種(うち1種は未記載種の可能性がある),ツリミミズ科2種の計8種が採集された.このうち,Apporectodea trapezioides (Dùges, 1828)は東北地方初記録であり,宮城県内の陸生大型ミミズの既知種はこれを含めて29種となった.

  • 川瀬 成吾, 藤田 朝彦
    2009 年 3 巻 p. 19-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
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    シロヒレタビラAcheilognathus tabira tabiraはコイ目コイ科タナゴ亜科に属し,各地で個体数が減少しており,環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に指定されている.琵琶湖では1995年からシロヒレタビラの採集記録がなかったが,2008年にエリで本亜種を採集することができた.琵琶湖において本亜種の個体数が増加していると示唆された.現在,滋賀県では外来魚駆除などの試みがなされており,外来魚は減少している.その結果として個体数が増加した可能性がある.しかし,いまだ外来魚が優占しているので,今後も外来魚駆除を継続し,琵琶湖の在来魚の動態に留意する必要があるだろう.

  • 横山 亜紀子, 横山 潤
    2009 年 3 巻 p. 25-30
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    伊豆沼の砂泥サンプルを実験室内で静置したところヒカリモが発生した.光学顕微鏡による形態観察の結果,黄金色藻特有の色調をもった浮遊相細胞と,長短2本の鞭毛をもつ遊泳細胞を確認した.遊泳細胞を単離培養し,詳細な形態観察を行なった結果,本藻は葉緑体に半埋没するピレノイドをもっていた.これらの形態的特徴はChromophyton vischeri (=Ochromonas vischeri ) と一致した.単離培養株から18SrRNA遺伝子の塩基配列を決定し,既報配列と比較したところ,C. cf. rosanofii CCMP2751株と99.9%の相同性を持つことがわかった.自然状態での発生ではないものの,伊豆沼は現在報告されているヒカリモの発生地の中では最北限となる.

  • 鎌田 健太郎, 平出 亜, 西田 守一, 藤本 泰文, 進東 健太郎
    2009 年 3 巻 p. 31-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    2006年より伊豆沼でオオクチバス産卵床の調査を, サイドスキャンソナーを用いて実施してきた. その結果, 産卵床は底質が砂でリップルが形成されていない(波浪の影響が少ない)範囲に集中していると推察することができた. また, 2007年の調査ではリップルは, 風速5m/s 程度以上で起こる波浪が誘因となり, 細粒土(シルト, 粘土)のような緩い底質材料が移動することにより形成されると考えられた. 2008年ではこれらの知見を踏まえて, サイドスキャンソナー調査結果から伊豆沼湖岸全周におけるオオクチバス産卵適地の抽出を行ない, 抽出した産卵適地でオオクチバスの産卵の有無を確認し, 抽出した範囲の妥当性を検証した. そして, 抽出した産卵適地環境(砂が広範囲に分布しているエリア, かつ, 水際にヨシなどの植生・障害物が分布しているエリア)は, 既往文献の知見と整合するものであった.

  • 船山 典子, 益田 芳樹, 毛利 蔵人
    2009 年 3 巻 p. 41-47
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    伊豆沼・内沼水域の岸近く5 カ所で淡水カイメンを採集し,その骨片の形状から種を同定した.カワカイメンEphydatia fluviatilisの生息の有無を調べることが当初の目的であったため,各地点で生息している全ての淡水カイメンの種類を調べたという調査ではないが,ヨワカイメン,ミュラーカイメン,ヌマカイメンの3種類の淡水カイメンの生息を確認できたので報告する.伊豆沼・内沼からの淡水カイメンの報告は75 年ぶりであり,ヨワカイメンはこれまで記録がなかった種である.

  • 安野 翔, 千葉 友紀, 嶋田 哲郎, 進東 健太郎, 鹿野 秀一, 菊地 永祐
    2009 年 3 巻 p. 49-63
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
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    宮城県北部に位置する伊豆沼の中央部において,底生動物相の調査を2006年4月から2008年9月まで行なった.ユスリカ科幼虫6種,貧毛類のイトミミズ科の種群,ヨコエビ類のモリノカマカKamaka morinoi Ariyamaの計8分類群が採集された.底生動物の個体数密度(平均値±SD)は,359±329個体/m2であった.優占分類群は,オオユスリカChironomus plumosus (Tokunaga),(152±114個体/m2),モンユスリカ属の一種Tanypus sp.(155±239個体/m2),イトミミズ科(192±114個体/m2)であった.オオユスリカは富栄養湖及び過栄養湖の指標種である.また,やはり富栄養湖及び過栄養湖の指標種であるアカムシユスリカPropsilocerus akamusi (Linnaeus)が低密度 (6±10個体/m2)ながら採集された.一方,クロロフィルa濃度及びセッキ深度の年間平均値から算出したCarlsonの栄養状態指数 (Trophic State Indices; TSI)は富栄養湖の範囲内の値であった.したがって,現在の伊豆沼は,水質,底生動物相のどちらの面からも富栄養湖と言える.1986と1987年に行なわれた底生動物相の調査報告と比較すると,ユスリカ科幼虫で今回の調査と共通して出現した分類群は認められなかった.当時の調査ではオオユスリカやアカムシユスリカといった富栄養湖の指標種が確認されていないため,その後20年程の間に富栄養化が進行したことが示唆される.

  • 久米 学, 鳥居 千晴
    2009 年 3 巻 p. 65-72
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    2000年から2003年に5月から7月にかけて,北海道東部の別寒辺牛川支流大別川で20種類の淡水魚類が採集された.トミヨ属淡水型とジュズカケハゼは,調査期間を通して数多く採集されたことから,大別川付近に定住する優占種であると推察された.それに対して,イトヨ太平洋型,キュウリウオやアメマスなどの遡河回遊性魚類は大別川を産卵遡上の際に,一時的に生活の場として利用すると考えられた.これらのような淡水魚類の出現パターンの差異は,生息する魚類が多様な生活史を有することを反映していると考えられる.そして,別寒辺牛川の広大な汽水域では,魚類が利用できる多様な生息場所が維持されており,さまざまな生活史を持つ魚類の生息が可能となっていると考えられる.

  • 柿野 亘, 林 大介
    2009 年 3 巻 p. 73-80
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
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    2006年7月30日にメッシュに区分した,休耕した谷津田でシマドジョウの採捕調査をし,生息分布を把握した.その結果,水口および水尻で生息密度が高い傾向がみられた.採捕された個体のほとんどが稚魚であった.生息密度が高かったメッシュでは流水によってすり鉢状の深みが形成され,底質は砂混じりのシルトであった.対象とした谷津田は田越し灌漑によって谷頭側で谷津田とのみ水域ネットワークを有しており,谷頭側の谷津田を介して本種が移入したと考えられた.

  • 藤本 泰文, 星 美幸, 神宮字 寛
    2009 年 3 巻 p. 81-90
    発行日: 2009年
    公開日: 2017/11/10
    ジャーナル フリー

    定期的に調査を行なっていた宮城県北部の溜め池にオオクチバスが侵入した.すぐに捕獲作業を行ない,82個体のオオクチバスを捕獲した.環境調査の記録から,オオクチバスが侵入して13日が経過した段階で捕獲したと考えた.胃内容物を調査した結果,オオクチバスは1個体あたり3.0個体の水生生物を捕食していた.溜め池に生息する水生生物の個体数推定を行ない,オオクチバスによる水生生物に対する捕食数と捕食率を算出した.その結果,オオクチバスは溜め池に生息した13日間で,溜め池に生息する約9,000個体の水生生物のうち,タナゴ1,687個体,トウヨシノボリ400個体,エビ類718個体,アメリカザリガニ267個体を捕食したと推定された.これは生息個体数のそれぞれ37.9%, 31.0%, 35.0%, 21.2%に相当する.侵入初期のオオクチバスによる水生生物への影響を報告した事例はこれまでになく,本研究の結果は,オオクチバスが水生生物を大量に捕食する性質を持ち,今回のように生息する水生生物の約1%に相当する個体数が侵入した場合においても,強い捕食圧を与え,その水域の水生生物を急減させることを示した.

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