日本救急看護学会雑誌
Online ISSN : 2189-6771
Print ISSN : 1348-0928
ISSN-L : 2189-6771
25 巻
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研究報告
  • 石橋 采佳, 今井 多樹子
    原稿種別: 研究報告
    2023 年 25 巻 p. 29-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/19
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:救急・集中治療領域において予期せぬ患者の死を経験する家族への看護を構造化し、記述することを目的とした。

    方法:救急・集中治療領域の看護師11名を対象に半構造化面接を行い、その内容をKJ法により図解化・叙述化した。

    結果:家族への看護は【救命への尽力】【看護の可視化・言語化による受容促進】【そばに寄り添い・見守り・語りかける】【患者をめぐる家族の理解】【個別性に応じた柔軟な対応】【家族への患者情報の提供】【患者・家族間の交流促進】【臨終時の保清・環境・時間調整】【看護の難しさを踏まえた研鑽・他の看護者への協力要請】の島に収束した。島同士の関係性から、救急・集中治療領域において予期せぬ患者の死を経験する家族への看護は、重症患者を中核とした救命と終末期の狭間で、【救命への尽力】から、やがて訪れる臨終時の看護、すなわち【臨終時の保清・環境・時間調整】に至るまで、最善のケアに尽くす看護師としての誠意が家族に伝わることの重要性が浮き彫りとなった。

    考察:看護師は【救命への尽力】という形で医療者の誠意が家族に伝わることにより、家族自身が患者の状況を受容できるようになるものと考えていた。救命が最優先される医療現場で、看護師として患者の予後を想定しながら終末期の看護を意図し、看護の難しさに直面しつつもチーム医療の中で自らが考える最善の看護に尽くしていた。

実践報告
  • 大麻 康之, 小原 弘子, 前田 千晶, 盛實 篤史
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 25 巻 p. 1-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル オープンアクセス

     われわれは、救急外来から入院せず帰宅する救急搬送患者に対し、救急外来看護師間で統一した帰宅時支援を行う「帰宅支援フローチャート」(以下、フローチャート)を作成し、帰宅時支援を行った。本研究の目的は、フローチャートの使用実績を基に帰宅時支援が必要な患者の特徴を明らかにすることである。

     フローチャートを用いて地域の相談窓口を説明する支援レベル3、医療ソーシャルワーカー(Medical Social Worker 以下、MSW)を通じて地域の専門職に情報を提供する支援レベル1および2に分類し、支援レベルに応じた帰宅時支援を行った。帰宅時支援患者の背景、フローチャートの各評価項目などのデータを収集・分析した。

     帰宅時支援を提供した患者は2年間で206人であった。全ての支援レベルにおいて、外傷あるいは救急搬送理由である症状や徴候の原因を明確に特定できない状態にあった高齢患者であった。支援レベル1は、認知症医療や介護サービスを受けていない高齢患者が多く、支援レベル2は、医療および介護サービス体制の見直しが必要な要介護高齢者が多かった。今後、帰宅時支援を受けた高齢患者について、帰宅時支援後の経過、再受診および再受診理由に関するデータを収集し、再受診理由における生活上の課題の影響を検討することが必要である。

  • 澤田 裕二, 三木 珠美
    原稿種別: 実践報告
    2023 年 25 巻 p. 21-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/04
    ジャーナル オープンアクセス

    目的: BLSプロバイダー資格のある看護大学生が、オンラインBLS講習を非医療系大学生に試行的に実施し、教育効果を評価することで今後の講習における資料とする。

    研究方法:介入はZoomを活用し、ペットボトルを用いた胸骨圧迫・人工呼吸・AEDの操作などについて説明と実技を実施した。調査はWebにてBLSの知識テストを実施し、講習前後の合計平均点の差の検定と単純集計を行った。また、満足度・わかりやすさ・自信度については5段階で調査し、自由記載は質的記述的に分析した。

    結果:講習は6回開催し、受講者は22名であった。BLS知識テストの結果は、正解率が講習前45%から講習後94%に上昇し、平均点は、6.8(±2.5)点から13.2(±0.9)点に有意に上昇し(p<.01)、全項目で得点の上昇がみられた。満足度は5段階評価で「5」が86%、わかりやすさが77%、自信度が32%の評価であった。

    考察:BLS講習後にテストの得点が有意に上昇したことから、BLSの知識の習得につながっており、一定の教育効果があると考える。また、講習における工夫と改善が必要な内容も明らかとなった。満足度から、大学生にとってオンラインによる遠隔地からの参加や自宅の物を活用した60分間の講習は適していると考える。

調査報告
  • 日本救急看護学会倫理委員会, 森山 美香, 小倉 久美子, 八尾 みどり, 寺地 沙緒里, 山口 弘子, 林 みよ子, 谷島 雅子, 阿部 ...
    原稿種別: 調査報告
    2023 年 25 巻 p. 11-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:本調査の目的は、救急看護師の看護倫理および研究倫理に関する実態を明らかにすることである。

    方法:日本救急看護学会会員の臨床看護師を対象とし、看護倫理や研究倫理に関する質問紙を作成し、Webによる調査を実施した。

    結果:救急看護師224名のデータを分析した。回答した看護師は看護師経験10年以上が94.2%、救急看護経験10年以上が61.2%であった。51.8%の看護師が所属施設において倫理カンファレンスを全くしておらず、また83.0%が倫理カンファレンスの実施方法を学ぶ必要性があると回答し、自由記述から倫理カンファレンスの実施の難しさが明らかとなった。また倫理の根幹をなす倫理原則や倫理綱領および意思決定支援プロセス、研究倫理に関する学習ニーズは高いという結果であった。

    結論:本調査の結果は、倫理に関する関心が高く、部署内で看護実践や研究を指導・実施する立場にある熟練の救急看護師の看護倫理および研究倫理に関する実態を反映している。日本救急看護学会倫理委員会として、救急看護にかかわる倫理問題の解決に向けた倫理カンファレンスの具体的な実施方法や、救急医療の場における意思決定支援プロセスに関するセミナーなどを企画する必要性が示唆された。

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