歯肉の厚さを探針で穿通して測定する手法が臨床でおこなわれている.この手法に比較して,超音波による測定は簡便で低侵襲であるが,プローブ圧と歯肉の変形量と歯肉における音の伝達速度(以下,音速)の関係は明確でない.本研究の目的はこれらの点を明らかにすることである.
ブタ下顎小臼歯部の歯肉を厚さ約2mm,長さ10mmの正方形にトリミングし,石膏で作った同サイズの箱に入れた.超音波厚さ測定機の測定条件を,軟組織中の音速として報告されている1,540m/sに設定した.微小試験機に接合した直径5mmのプローブを歯肉粘膜に垂直に接触させ,2分毎に接触圧を段階的に0.25Nずつ2Nまで上げた.微小試験機と超音波厚さ測定機から得た歯肉の変異量と厚さ,実際の歯肉厚さを記録し,これらのデータから歯肉粘膜中の音速を計算した.
歯肉の変形量は接触圧が0.5Nまでは一定でなかったが,0.75Nから2Nまでは一定であり,0.75Nにおける音速は1,567.8m/sであった.本研究においてブタの歯肉を用いたが,これらの結果から歯肉中の音速を1,567.8m/sに設定することで,歯肉の厚さを正確に測定することが可能であり,この方法は歯科再生医療への応用も考えられる.
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