日本サンゴ礁学会誌
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22 巻, 1 号
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短報
  • 岡地 賢, 伊藤 馨司, 長田 智史, 比嘉 義視, 津波 昭史
    2020 年 22 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    沖縄県のサンゴ礁保全再生事業において,恩納村漁業協同組合が養殖した群体から採取し,陸上施設で基盤に付着させた約10cmのミドリイシ属5種(Acropora tenuis, A. hyacinthus, A. digitifera, A. donei, A. valenciennesi)を,2013年11月から2014年3月にかけて恩納村前兼久地先に植え付けた。これらのうち,個々に識別した群体を2014年5月から2016年5月まで約半年間隔で撮影し,写真上で群体の長径と短径を測定して幾何直径と近似面積を算出するとともに,輪郭をトレースして投影面積も求めた。近似面積と投影面積との間には高い相関がみとめられたが,近似面積の方が大きく,その割合はA. tenuisが8.1±1.1%,A. hyacinthusが5.4±0.9%,A. digitiferaが9.2±1.0%,A. doneiが18.5±2.1%,A. valenciennesiが16.9±1.9%であった(値は平均±標準誤差)。5種につき個々の群体の約半年毎の2年間の成長量から,ゴンペルツ成長式によって成長率を推定した。これによると,A. hyacinthusA. valenciennesiは植え付け後2年目以降も大きくなる一方,A. tenuisA. digitiferaA. doneiは2年目から3年目にかけて成長がゆるやかになる傾向が見出された。植え付け後の成長を直径や面積で見積もれるようになったことで,移植の計画段階において植え付け密度や被度,そして,食害防止や食害を受けた場合の追加植え付けなど積極的な管理が必要な期間に関する目標設定が可能となるであろう。

解説
資料
学会賞記念論文
総説(川口奨励賞記念論文)
  • 中村 隆志
    2020 年 22 巻 1 号 p. 45-60
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/26
    ジャーナル フリー

    サンゴ礁スケールでのサンゴの環境変化に対する応答を予測する重要性が高まっているが,(1)環境因子が複合的に影響する,(2)生態系の応答が非線形である,(3)環境自体がダイナミックに変動するといったことから,その予測は簡単では無い。これらの問題をクリアして予測を可能とするために,まず,サンゴのポリプスケールの生体内の物理・化学・生理学的な応答を詳細に記述し,複合的な環境ストレスに対する応答が再現できるサンゴポリプモデルを開発した。次に生物-環境間の相互作用も含めたダイナミックに変化する環境自体を再現し,なおかつサンゴの応答も評価できるようにするために,このサンゴポリプモデルを流動-物質循環モデルに組み込んだサンゴ礁生態系モデルの開発を行った。今後,サンゴポリプモデルに様々な応答モジュールを組み込んでいくことで,より現実的なサンゴ礁生態系の複合環境影響を予測ができるようになると期待される。

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