日本サンゴ礁学会誌
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11 巻, 1 号
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追悼
  • 土屋 誠
    2009 年 11 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    日本サンゴ礁学会初代会長の山里 清先生が2009年2月13日に逝去された。体調を崩して入院されていたが,まもなく退院可能というお話を伺った矢先のことであり,あまりにも突然の悲報であった。
    私が初めて先生にお会いしたのは,西平前会長に連れられて琉球大学理学部付属瀬底臨海実験所の開所当時のセレモニ—に参加した時であった。とは言ってもその時はご挨拶した程度であったと記憶している。その後,東北大学理学部付属臨海実験所に勤務していた折,全国臨海臨湖実験所長会議で何度かお会いする機会に恵まれた。1983年に琉球大学に赴任した後は毎日のようにお話を伺うことが出来たので,30年以上にわたってご指導いただいたことになる。
    先生のサンゴ礁研究に関する情熱が溢れるほどのものであったことは誰もが知るところである。その分野の教育研究を中心とした琉球大学の国際化に向けた取り組みの数々は枚挙にいとまがない。英語で教育を行う留学生のための特別コ—スの設置に真っ先に手を挙げ,琉球大学でそのプログラムが開始されたのは1989年であった。全国に数多くある特別コ—ス(現在では名称が変更になっている)の中でも充実したコ—スであるという評価を得ていることは先生のご功績である。ご自身も積極的に留学生を受け入れられ,先生の研究室を卒業したメンバ—は現在各国でサンゴ礁研究に関わっている。
    先生が代表者となって採択された数々の科学研究費補助金による研究に分担者として参加させていただいた経験がある。海外ではタイと韓国での調査研究にご一緒させていただいた。タイのチュラロンコン大学との学術交流を開始された先生はシャム湾のサンゴ礁研究を企画され,活発な相互交流を進められた。これらの調査のヘルパ—として活躍した学生が,その後日本などで学位を取得し,さらにさまざま大学等において指導的立場で研究教育活動を継続していることを喜んでおられた。
    先生の国際的な活動に対する功績は,Ecole Pratique des Hautes Etudes(フランス高等教育研究院)から名誉博士号を,またタイ王国から勲章を授与されたこと,あるいは太平洋学術協会の名誉会員へ推挙されたことなどに如実に表れている。
    国際サンゴ礁シンポジウムの日本(あるいは沖縄)誘致に関する思いは極めて熱いものがあり,幾度となくお気持ちを聞かせていただいた。日本サンゴ礁学会の設立につながったこの誘致活動は,先生のお気持ちなくしてはあり得なかったものである。1996年,パナマで開催された第8回の国際サンゴ礁シンポジウムで次期開催地を決める会議があったが,私たちは準備不足を感じていたので立候補をしていなかった。休憩室の一角で私たちが今後の対応策を相談していた時,先生が「我々も今回立候補しよう。」と強くおっしゃったことに並々ならぬ決意を感じたものだった。その後,先生のご指導の下で準備を進め,日本サンゴ礁学会の設立,第10回国際サンゴ礁シンポジウム準備委員会の設立と歩を進めることが出来た。2000年,インドネシアのバリで開催された第9回の国際サンゴ礁シンポジウムでの誘致活動が成功し,次回開催地として沖縄が選ばれた時の喜びに満ちあふれた笑顔は忘れられない。
    日本サンゴ礁学会は,2004年に開催された第10回国際サンゴ礁シンポジウム(沖縄大会)の開催準備や運営を通して大きく成長し,発展を遂げた。先生が願っておられた,我が国のサンゴ礁研究の発展と若手の育成,美しいサンゴ礁の保全,日本サンゴ礁学会のさらなる発展に務めることが私たちの責務である。
    心からご冥福をお祈りいたします。
サンゴ礁保全・再生セクション
原著論文
  • 田村 實
    2009 年 11 巻 1 号 p. 9-22
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    サンゴ礁生態系は豊かな生物多様性を通じて,沿岸住民に対し生態的・社会的・経済的利益をもたらしている。そのため,近年のサンゴ礁保全管理方法の確立には,自然科学的なデータに加えて社会経済的な情報を取り入れた政策決定プロセスがとられている。そこで,阿嘉島周辺海域におけるサンゴ礁の社会経済的な情報を明らかにするため,住民に対してアンケート調査を行った。その結果,住民はサンゴ礁の社会経済的価値を高く評価したとともに,サンゴ礁が荒廃している状況を広く認識していた。また,サンゴ礁の生態系や景観に関する非利用価値を評価するため,仮想評価法を用いて算出した支払い意志額の推定値は,1人当たり年間平均8,153円であった。さらに,サンゴ礁保全に関しては,ほとんどの住民がその必要性を認識していたとともに,コミュニティが主体となった保全活動への参加意欲を示した。そこで,政策決定者は,コミュニティを中心に据えた信頼関係を高め,利害関係者のネットワークを構築するとともに,生態系とともに社会経済的な情報に基づく明確な活動内容の有り方を示す必要がある。
特集セクション
原著論文
  • 深見 裕伸, 野村 恵一
    2009 年 11 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    和歌山産のタカクキクメイシMontastraea valenciennesiには形態的2型が認められる。1つは,莢壁間の接合が弱く,群体を縦に割るとサンゴ個体ごとに筒状にバラバラと綺麗にはがれる型(莢壁分離型),他の1つは,莢壁間の接合が比較的強く,群体を縦に割ると個体間で分離せずに個体が割れる型(莢壁癒着型)である。この形態差は種内変異であるのか,種レベルの相違であるのかを判定するために,交配実験を行った。その結果,形態で分けられた2型は,接合子の和合性は極めて低く(受精率0.5%以下),型間には種レベルの相違があることが明らかになった。しかしながら,これらの2型に真のM. valenciennesiが含まれているのか,あるいはどちらもM. valenciennesiに酷似した別種(隠蔽種)であるのかという分類学的位置の決定までは行えなかった。
短報
原著論文
  • 野村 恵一
    2009 年 11 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    串本は北緯33℃という高緯度に位置しながら,黒潮の影響を強く受けるため,造礁サンゴ類が豊富にみられる。また,当地は古くからテーブルサンゴの群生地として知られ,その姿はこれまで変わることなく維持されてきた。ところが,1990年代後半以降,当地のサンゴ群集に質・量の両面にわたる変化が認められるようになった。量的変化としては,2000年をピークにサンゴ群集の被度が減少し,最近の5年間は低い被度レベルで推移している。質的変化としては,これまで当地ではまったくみられなかった南方系のサンゴが定着を始めて種多様性が高まるとともに,新参種による優占種や群落の置換が生じている。串本でみられるこれらのサンゴ群集の変化は,1990年代より継続する高水温現象によって生じたものと考えられる。
  • 杉原 薫, 園田 直樹, 今福 太郎, 永田 俊輔, 指宿 敏幸, 山野 博哉
    2009 年 11 巻 1 号 p. 51-67
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    高緯度域の造礁サンゴ群集は,地球温暖化による表層海水温(SST)の上昇や海洋酸性化といった地球規模での撹乱の影響指標として,現在注目されつつある。そこで本研究では,高緯度域の造礁サンゴに関する基礎データを収集することを目的として,鹿児島県甑島列島から島根県隠岐諸島にかけてみられる造礁サンゴの生息環境と群集構造の定量調査を2002年から2009年にかけて行った。その結果,生息種数と被覆率がともに高い造礁サンゴ群集は,どの海域でも波浪エネルギーが中程度で濁度が小さいと推定される地点(外洋に近い島陰あるいはやや遮蔽的な湾口)の水深10m以浅で多くみられた。また,これらの生息範囲は,緯度の増加に伴ってより波浪の影響の少ない内湾の浅海域あるいは外洋に近くても水深の深い環境へと局所化する傾向が認められた。甑島列島上甑島でみられた造礁サンゴ群集の優占種は,亜熱帯性の卓状・枝状AcroporaA. hyacinthusA. muricata)と板状のPavona decussataであった。長崎県五島列島の福江島と若松島では,外洋側で温帯性の卓状AcroporaA. glauca, A. japonicaA. solitaryensis)が,内湾側で被覆状~塊状種(Leptastrea pruinosa,Mycedium elephantotusHydnophora exesaなど)と温帯性の枝状AcroporaA. tumidaA. pruinosa)がそれぞれ卓越していた。長崎県壱岐と対馬では,温帯性の卓状Acropora種は全くみられず,塊状のFavia spp.と葉状~被覆状種(Echinophyllia spp.やLithophyllon undulatumなど)が大部分を占めていた。隠岐諸島では,塊状~被覆状のOulastrea crispata,Alveopora japonicaPsammocora profundacellaの生息が確認されたのみで,これらの種は生息群体数も少なく散在的な分布を示す群集(個体群)を構成するに過ぎなかった。
フォトギャラリー
  • 野村 恵一
    2009 年 11 巻 1 号 p. 69-70
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    1991年6月に宮崎県延岡市島野浦(32°40′10"N, 131°49′50"E)にある南北浦海中公園1号地区を初めて訪れた。ここでは,前年に宮崎放送の取材で60ものオオスリバチサンゴ大群体からなる群落が発見されており,その視察が目的であった。ところが,最初に目に飛び込んで来たのは,テーブルサンゴ(おそらくクシハダミドリイシ)の累々とした死骸で,海中公園指定時(1974年)に評価された自然資質(今井ら1967)は既に消失していた(図1A)。一方,この死滅群落のやや深所,水深約4.5mの転石混じりの砂地上で,直径数mの密集したオオスリバチサンゴ群体群が観察された。群体が大きいことや数が多いこともさることながら,どの群体も美しいバラの花弁状の形をなし(図1B),国内では比類のない本種の大群落であると思われた。その後,1993年に本群落を保全するために,本群落の周囲まで海中公園区域の範囲が拡張された。
    オオスリバチサンゴ群落が発見されてから18年が経過した2008年に,再び宮崎放送の取材で本群落に異変が見つかり,同放送の要請を受けて2009年1月に島野浦を訪れ,群落全体をカバーする簡単な調査を行った。確認できた群体数は48で,群体の平均長径は約2m,最大のものは一部分解したものも1つに含めると8mに達した(図1C)。しかしながら,確認できた群体の中で,ほぼ健全と判断されたものは約2割(10群体)に過ぎず,他は転倒(図1D),明瞭な破損・分解(図1E),群体の一部もしくは全体の斃死が認められた。特に転倒群体は全体の5割(24群体)に及び,また,転倒は長径3m以下の中型以下の群体で顕著で,ここでも,国内の他のサンゴ群生域同様,荒廃ぶりが目立った。さらに,健全群体でも底面が砂上に現れ(図1F),転倒しやすい不安定な状態にあることが確認された。これらの観察結果と現地での聞き取りから,群落の悪化はいつ頃から起こったかは不明であるものの,悪化原因として当該海域で投錨する漁船のアンカーと,底砂の減少の2点が可能性として挙げられた。その後,2009年5月に地元の要望と漁協の協力を受けて,延岡市はオオスリバチサンゴ群落の周囲に投錨注意ブイの設置に着手した。これは,本群落の保全と復元に向けての重要な第一歩となろう。
  • 山野 博哉, 浪崎 直子
    2009 年 11 巻 1 号 p. 71-72
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    2007年11月28日,千葉県館山市波左間(北緯34度58分,東経139度47分)でエンタクミドリイシの出現が初めて報告され,地球温暖化による水温上昇の影響の可能性が示唆された(読売新聞 2007)。それ以前に報告されたエンタクミドリイシの分布北限は伊豆半島であった(西平・Veron 1995)。我々は,当海域でのエンタクミドリイシの分布及び群体サイズの確認と,エンタクミドリイシ群体の過去の写真の収集を行って変化を明らかにし,さらに館山周辺の海水温データを収集し,変化の要因を考察した。
    2009年6月5日に,水深約8mの岩場において,我々は読売新聞(2007)が報告したエンタクミドリイシ1群体に加えエンタクミドリイシ1群体を観察した(それぞれ群体1,2とする)。両群体はすでに一部が白化して斃死しており,2009年7月6日には群体1は群体の大部分が斃死,群体2は群体全部が斃死した(図1d, e, i, j)。群体の直径はそれぞれ約18cm及び9cmであった。2007年11月7日の群体1及び2の直径はそれぞれ約15cm及び7cmであった(図1a, f)。すなわち,これらのエンタクミドリイシの成長率は0.6-0.9cm/年と算出され,成長率を考慮すると,これらの群体は1999年前後に定着・加入したと推測される。群体1,2ともに少なくとも2008年12月15日までは健全な状態であった(図1c, h)。
    水温は調査地点より約1km離れた坂田(東京都水産試験場・千葉県水産試験場・神奈川県水産試験場・静岡県水産試験場1986-2009)と調査地点近傍(波左間海中公園)でそれぞれ1985年及び2004年から計測されている。坂田の最寒月平均水温は0.06度/年の有意な上昇傾向を示した(t-test; p=0.0267)。1997年から2000年にかけては最寒月平均水温が約15度に達し,この水温上昇により,定着したエンタクミドリイシが生残できた可能性がある。一方で,2009年は2-3月の2ヶ月にわたって水温が13度前後になり,この長期間の低水温によりエンタクミドリイシが斃死したと考えられる。
    最近,サンゴ分布が地球温暖化による水温上昇によって北上している可能性が指摘され,エンタクミドリイシ分布の北上が熊本県天草でも報告されている(野島・岡本2008)。館山はサンゴ分布の北限域にあたるため,サンゴ分布の北上の最前線と言え,そこでは本報告で示唆されるように水温の変化とともにサンゴ分布がダイナミックに変化している。群体1の一部は生存しているため,今後モニタリングを継続することにより,最前線でのサンゴの動態と,それに基づく北上の可能性が検証できるであろう。
原著論文
  • 渡邊 美穂, 岩瀬 文人, 横地 洋之
    2009 年 11 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    造礁サンゴの群集構造と動態に重要な役割を果たしている幼生加入について,四国南西海域の高緯度造礁サンゴ群集で周年にわたる季節変動を調査した。2007年と2008年に,本海域内の須ノ川,西泊,桜浜の3地点で,設置期間を2ヶ月とする定着板の設置と回収を繰り返した。造礁サンゴ幼生の定着は,5月から9月に設置した定着板で観察された。定着量のピークは,2007年は7-9月,2008年は6-8月で,それぞれ定着板1セットあたり1.7個と2.1個であった。種類別では,ハナヤサイサンゴ科が72.1%で最も多く,次いでハマサンゴ科が12.6%,ミドリイシ科が6.0%であった。これは,本海域の造礁サンゴ群集ではミドリイシ属が優占することと一致しなかった。幼生の定着パターンは種類によって異なっていた。ハナヤサイサンゴ科では,定着は5-7月から9-11月までのおよそ半年にわたったが,本海域での幼生放出期に当たる期間前半で多かった。ハマサンゴ科も同様の期間で定着がみられたが,季節変動は不明瞭であった。ミドリイシ科の定着は,本海域でのミドリイシ科の産卵時期である7月から8月の短期間に集中した。本海域での造礁サンゴの幼生加入は,サンゴ礁域に比べて少なくハナヤサイサンゴ科の割合が高いという,高緯度造礁サンゴ群集に特有の特徴が見られた。
  • 渡邊 剛, 島村 道代, 山野 博哉
    2009 年 11 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    世界で最も高緯度に位置する長崎県の壱岐サンゴ礁より採取されたキクメイシ属サンゴ骨格の酸素・炭素同位体比を莢壁と軸柱の骨格構造別に分析し,その結果を生育時の環境記録と比較を行った。その結果,軸柱と莢壁は形成のタイミングが異なっており,キクメイシ属サンゴの場合,莢壁の同位体比の方がより正確に環境を記録することがわかった。また,壱岐のキクメイシ属のサンゴ骨格は,主に水温や日射量などの環境変動を記録しており,今後,温帯域の古環境復元に用いることができる可能性があるが,より信頼性の高い指標として用いる場合は,分析に用いる骨格要素を厳密に選別しその形成時期を詳細に検討することが求められる。
  • 山崎 敦子, 渡邊 剛, 岨 康輝, 中地 シュウ, 山野 博哉, 岩瀬 文人
    2009 年 11 巻 1 号 p. 91-107
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    温帯域の造礁性サンゴは地球温暖化や海洋酸性化の影響を敏感に反映し,骨格に記録していることが期待される。温帯域に生息する造礁性サンゴ骨格を用いた古環境復元の可能性を検討するため,高知県土佐清水市竜串湾において塊状のPorites lutea(コブハマサンゴ)骨格のコア試料を採取し,骨格の酸素・炭素同位体比分析及び軟X線画像解析,蛍光バンド観察を行った。現場の水温変化と比較するとサンゴ骨格の酸素同位体比には低水温が反映されていなかった。また軟X線画像解析の結果,低水温時には高密度バンドを形成し,骨格伸長量及び石灰化量が高水温時に比べ大きく減衰することがわかった。以上の結果からも本研究試料のサンゴは低水温時に骨格成長速度が著しく低下していると考えられる。炭素同位体比の値は2001年から2008年にかけて増大傾向にあった。蛍光バンドは2001年から2005年の間で強く観察された。また,2001年に竜串湾で起こった集中豪雨による懸濁物質の流入から竜串湾の濁度は数年間を経て減少しており,サンゴの光合成量が徐々に増大していることが示唆された。本研究試料は今後,コア全尺の分析により過去数百年間の海水温の変化を検出できる可能性がある。また,同時に竜串湾沿岸の開発や漁業,災害を記録していると考えられ,長期間にわたる竜串湾の歴史を復元できることが期待される。
  • 中尾 有伸, 山野 博哉, 藤井 賢彦, 山中 康裕
    2009 年 11 巻 1 号 p. 109-129
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    1970年頃から日本各地でサンゴに関する様々なモニタリング調査が実施されている。しかし,その多くは調査方法や取得データのフォーマットが異なっており,調査結果の相互比較が困難という問題があった。このことを踏まえ,本研究では,サンゴの被度に関する報告書やモニタリングデータを収集し,統一的なフォーマットでデータベースを作成して分析を行なった。その結果,日本近海のサンゴ被度の経年変化は海域ごとに大きく異なることが示された。今後は,水温や天敵密度といった,サンゴ被度を左右するストレス要因に関するデータを同様に分析して被度変化と比較することで,ストレス要因がサンゴ被度に与える影響を海域ごとに定量的に評価することが可能になると考えられる。
  • 屋良 由美子, 藤井 賢彦, 山中 康裕, 岡田 直資, 山野 博哉, 大島 和裕
    2009 年 11 巻 1 号 p. 131-140
    発行日: 2009/12/01
    公開日: 2010/08/07
    ジャーナル フリー
    地球温暖化に伴う海水温上昇は,造礁サンゴ(以下,サンゴ)の生息域を高緯度側に移動(北半球においては北上)させる,或いは白化の規模・頻度・強度を増大させることで,将来のサンゴの分布や健全度に多大な影響を及ぼすと考えられる。本研究では,高解像度気候予測シミュレーションで得られた月平均海面水温(SST; Sea Surface Temperature)から見積もられた簡易指標を用いて,日本近海を対象に温暖化に伴うSST上昇が日本近海の潜在的なサンゴの分布および健全度に及ぼす影響を評価した。その結果,現在は南九州沿岸に存在する主なサンゴ礁の形成北限と新潟・千葉沿岸にある高緯度サンゴの分布北限が,21世紀末にはそれぞれ北部九州沿岸と青森・岩手沿岸に至る可能性が示された。また,南西諸島ではサンゴの白化や大量死をもたらす深刻な白化を誘発するような高水温が出現する頻度が増え,現在では単発的に報告されているサンゴの白化が,21世紀半ば以降にはより通常の現象として認識される可能性があることが示唆された。
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