新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験し、養護教諭の養成において感染症対策を総合的かつ実践的に学ぶための教材開発が急務である。そこで、新型コロナウイルス感染症対策を題材として、感染症対策を危機管理の視点で総合的かつ実践的に学ぶためのケース教材を開発し評価した。ケース教材を作成し、養護教諭養成課程の大学生75名を対象に、ケースメソッド教育方法を活用した授業を行った。評価として授業後に学生にアンケート調査を実施した。授業の満足度、授業目標の達成度、ディスカッションへの参加状況、問題解決思考、今後の活用可能性は5点満点中、平均4点以上と高得点であった。学生の代表的な記述を到達目標に振り分けて整理したところ、【感染症対策を危機管理の視点で捉えることの重要性】【感染症対策をチームで行う重要性】【予測する力、先を見据えた対応の大切さ】【日頃から協力体制を構築しておくことの大切さ】【子供に起きている事象を多角的に観る必要性】【養護教諭が置かれる立場の疑似体験】のカテゴリーが抽出された。評価から、学生は当事者意識を持って授業に参加し、感染症対策を危機管理と捉えたうえで、養護教諭がチームの中で果たすべき役割について具体的に考えていたことが示され、教材は有効であったと評価できた。よって、学生に当事者意識を持たせること、教育目標に沿った多角的な視点を盛り込んだケースを用いること、学びを共有する機会を作ることで、学生は感染症対策を総合的かつ実践的に学ぶことができる可能性が示された。
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