日本健康相談活動学会誌
Online ISSN : 2436-1038
Print ISSN : 1882-3807
6 巻, 1 号
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原著論文
  • ―小学校、中学校、高等学校別養護教諭の視点との相違―
    鎌塚 優子, 岡田 加奈子
    2011 年 6 巻 1 号 p. 34-54
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

     本研究では教諭が、心理的な問題があると判断するとき、その根拠として教諭がどのような視点を持ち、具体的に子どものどのような状態に着眼しているのか小学校、中学校、高等学校別に抽出すること及び先行研究である鎌塚ら19)が行った養護教諭との相違を検討することを目的とした。2007年2~6月にかけて、小学校、中学校、高等学校の教諭を対象とし、各学校種、2グループずつ計42名を対象にフォーカス・グループ・インタビューを行った。

     その結果、教諭が子どもに心理的な判断をするときの視点には9視点あることが明らかとなった。全学校種、共通にみられた視点は、『視点1:日常的に捉えている子ども達・一般的な子ども達の症状・状態・行動との表れの違い』『視点4:集団の中での周囲との関係性・反応に違和感』であった。『視点5:頻繁に起こっている、または続いている同じ症状・状態・行動』『視点6:普段及び以前との変化』であった。また、教諭は集団アセスメントの視点もあることが明らかとなった。教諭と養護教諭との視点の相違については、専門性の違い、役割、職種の特殊性が表れていた。教諭は子どもの日常生活や、集団生活の中での観察の着眼点があり、養護教諭は保健室という部屋の特殊性から捉えられる独自の視点があること及び子どもの心理的な問題を生理学的、臨床心理学的な点で着眼していることが明らかとなった。

  • 長谷川 久江, 竹鼻 ゆかり, 山城 綾子
    2011 年 6 巻 1 号 p. 55-70
    発行日: 2011/04/22
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

     本研究は、小学校の保健室登校の事例において良い方向へ向かったと考えられる連携に着目し、そこで行われていた連携に関する要因とその構造を明らかにすることを目的とした。

     2007年8月~10月、小学校において保健室登校にかかわった経験をもつ現職の養護教諭に半構造化面接を行った。作成した逐語録のすべての事例から、良い方向へ向かったと考えられる連携についてのコードのみ抽出し、類似のコードをまとめてサブカテゴリーとし、さらにカテゴリー化・コアカテゴリー化を行った。得られたカテゴリーについて、保健室登校が良い方向へ向かったと考えられる連携要因の構造化を行った。

     結果として、小学校における保健室登校が良い方向へ向かったと考えられる連携では、【子どもにかかわりのある少人数間での活発な活動】や【組織としての活発な活動】が有効に機能していることが示された。また《養護教諭の活動》として【養護教諭の意識的な支援活動】をもとに、教職員に支援を求めたり複数配置の利点をいかしたりしながら、初期の段階から【養護教諭からの報告・提案】を行い、【養護教諭が行う支援者間の関係調整】を図っていることが明らかとなった。さらに連携を支える体制として、【学校全体の協力的な雰囲気】や【外部支援機関の活用】【管理職の積極的な支援】から《支援体制の基盤》が示された。

論文
  • 岩井 法子, 佐光 恵子, 中下 富子, 久保田 かおる, 上原 美子, 福島 きよの
    2011 年 6 巻 1 号 p. 71-79
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、現職養護教諭が必要と感じている看護に関する知識・技術を明らかにするとともに、現職研修の有無と研修ニーズについて検討することである。そこで、A市の国公立小・中学校に勤務する現職養護教諭76名に対し、看護の知識・技術について郵送による無記名自記式質問紙調査を行った。

     その結果、43名の養護教諭から有効回答(有効回答率56.5%)を得た。日ごろから経験している「頭痛」、「かぜ」、「肥満」等の18項目は自信を持って対処・対応を行っていた。経験があるにも関わらず対処・対応に自信がない項目は「発達障害」であった。また、経験が少なくても緊急性が低い「火傷」、「包帯法」等の項目は、対処・対応時に自信があった。養護教諭としての経験について小・中学校で比較すると、「過呼吸・パニック」、「いじめ・不登校」、「摂食障害」、「睡眠障害」、「性に関する問題」の5項目は中学校で有意な増加が認められた。このことから、中学校に勤務する養護教諭は心の健康問題に対応するための知識・技術がより必要とされていると考えられる。養護教諭が行っている看護に関する知識・技術項目のいずれにおいても研修ニーズが高く、特に「心肺蘇生法」、「熱中症」等の緊急性が伴うものや、「新興感染症」、「アレルギー」、「発達障害」といった子どもの現代的な健康課題についての看護の知識・技術を必要としていることが認められた。

  • ―19項目版質問紙調査―
    西岡 かおり, 徳山 美智子
    2011 年 6 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

     養護教諭の活動は、教育活動として実践されておりPDCAサイクル(Plan―Do―Check―Action)が基盤となっている。その中でも「Check(評価)」は、次の実践を効果的に行うために不可欠なものである。しかし、養護教諭の実践に対する自己評価はその職の独自性や専門性から容易でなく先行研究も多いとは言えない。特に、養護教諭固有の役割である健康相談活動に対する評価は個々の子どもに対する心身両面への支援を対象としている。そのため、その実践に対する評価は教諭の教育実践評価に比べると実施や観点が明瞭ではない。

     本研究は、質問紙調査票を用いて養護教諭の健康相談活動に対する自己評価の実態を明らかにすることを目的とした。2007年9月から11月にかけ2県397名の養護教諭を対象に質問紙調査を実施した。結果は、次の通りである。

    1.健康相談活動に対する自己評価は概ね高かったが、他者評価に関する項目は低かった。

    2.研究的な視点を持ち取り組むことへの評価は低いが、中学校より小学校の養護教諭は研究的な視点を持って取り組んでいた。

    3.経験年数の多い養護教諭は、学校内外の連携やPDCAサイクルに関連する評価が高かった。

    4.健康相談活動に対する自己評価には、評価基準や評価尺度の検討が必要である。

実践研究
  • ―事例を通して学校における支援体制及び養護教諭の役割を考える―
    佐久間 浩美
    2011 年 6 巻 1 号 p. 89-106
    発行日: 2011/04/20
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、自傷行為を繰り返し自殺企図のある生徒に対して行った学校生活適応プログラムの実践結果から、学校における支援体制や養護教諭の役割について検討するものである。研究対象者は高校1年生の女子生徒A子であり、研究対象校は、都市部にあるB高等学校である。学校生活適応プログラムは、認知行動療法を活用したプログラムであり、精神的な課題を抱える生徒の感情を安定させ衝動的な行動を抑え、学校生活に適応させることをねらいとしている。学校生活適応プログラムの評価は、研究対象者が学校に適応していくまでの1年間の過程を分析した結果より行った。

     研究の結果、自傷行為を繰り返し自殺企図がある生徒に対して、他の専門機関と連携して支援チームをつくり学校生活適応プログラムに沿った支援を行うことや、養護教諭が支援チームをコーディネイトし保健室の機能を生かした健康相談活動を充実させることなどが、学校生活に適応させることに有効である可能性が示された。

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