日本健康相談活動学会誌
Online ISSN : 2436-1038
Print ISSN : 1882-3807
5 巻, 1 号
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原著論文
  • ―フォーカス・グループ・インタビューによる小学校、中学校、高等学校の視点の抽出―
    鎌塚 優子, 岡田 加奈子
    2010 年 5 巻 1 号 p. 40-65
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

     本研究は、養護教諭が子どもに心の問題が存在する可能性があると判断するとき、その根拠としてどのような視点をもち、具体的に子どものどのような状態に着眼しているかについて、小学校、中学校、高等学校別に抽出することを目的とした。

     2007年1~7月にかけて、小学校、中学校、高等学校の養護教諭を対象とし、各学校種、2グループずつ計38名を対象にフォーカス・グループ・インタビューを行った。

     その結果、11視点あることが明らかとなった。『視点』の共通点は『視点1:日常的に捉えている子ども達・一般的な子ども達の症状・状態・行動との表れの違い』『視点6:頻繁に起こっている、または続いている同じ症状・状態・行動』『視点7:保健室への決まった来室パターン』の3視点であった。しかし、子どもの症状、状態、状況、行動、情報等について、捉えられやすい着眼点が異なり、それらは、発達段階における特有の心身の表れや単なる一過性の悩みに起因する心の問題だけでなく、発達の偏りや成長するに従って精神病理性に関連する状態を捉えていることが明らかとなった。学校種別には、それぞれの発達段階にみられる特徴等、学校種による独自の視点があった。また、集団へのアセスメントも行っていることも明らかとなった。以上の結果から養護診断開発においては、心理・発達・精神面での診断名の検討と発達段階別の診断指標が必要となることの可能性及び集団を診断する診断名、診断指標が必要であることが示された。

論文
  • ―授業期間と夏季休業期間を比較して―
    石原 絵美理, 小林 正子
    2010 年 5 巻 1 号 p. 66-76
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

     肥満は小学校高学年で高い出現率がみられるが、先行研究では夏季休業期間の生活習慣の乱れが肥満の引き金になると指摘されている。そこで本研究は、小学生の授業期間と夏季休業期間の生活習慣を比較し、体重や肥満度の増加との関連を検証して、児童生徒の健康管理に役立てることを目的とした。そこで、東海地方の市立小学校一校の4~6年生を対象に、1年次からの身長・体重をグラフに表し発育状況を把握すると共に、授業期間と夏季休業期間の生活習慣について質問紙調査を行った。調査は夏休みを挟んだ7月と9月に実施した。そして発育グラフと2回の質問紙調査が揃った児童208名(男子94名・女子114名)を分析対象とし、9月時点の肥満度によって肥満群と非肥満群に分類した。その結果、肥満群は4月から9月にかけての体重と肥満度の変化量が非肥満群より大きかった。また肥満群にはすでに低学年から9月の体重が大幅に増加する児童が多かった。さらに、肥満群は夏季休業期間の睡眠時間が短く、食事の乱れがあり、ルームエアコンの1日中使用も多く、授業期間・夏季休業期間とも外遊びや運動する機会が少なかった。これらから肥満形成には睡眠、食事、運動が関連しており、先行研究と同様に夏休みの生活習慣が体重増加を引き起こすことが推察された。肥満を防ぐ対策としては、7月にも体重測定を行い、夏休みの過ごし方に注意を促し、発育グラフを用いて継続的に健康管理を行うことが有効であると考えられる。

  • 難波 知子
    2010 年 5 巻 1 号 p. 77-87
    発行日: 2010/04/30
    公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、健康相談活動における「関係者との連携」に着目して、発達障害のある子どもの支援体制づくりにかかわる養護活動を検討し、その活動内容を明らかにすることである。研究対象者は、小学校に勤務する発達障害、慢性疾患などのある子どもに対する支援経験が豊富な熟練の養護教諭一名である。半構成的面接法による調査を行って8事例のデータを収集した。データ分析は、質的記述的方法を用いた。その結果、発達障害のある子どもの支援体制づくりにかかわる養護教諭の活動内容として、【相談窓口となる】【情報を収集する】【関係者同士の協力関係をつくる】【養護教諭と関係者の情報・行動を連携させる】【専門機関とのつながりをつくる】【ケース会を企画調整する】の6つのカテゴリが導かれた。養護教諭は【相談窓口となる】ことで、発達障害の子どもと共に歩む保護者や担任の思いを受け止め、いつでも・どこでも・だれとでもかかわることのできる養護教諭の特質を活かして【情報を収集する】活動を行い、発達障害の発見に寄与するスクリーニングの機能を果たしていた。また、【関係者同士の協力関係をつくる】【養護教諭と関係者の情報・行動を連携させる】【専門機関とのつながりをつくる】【ケース会を企画調整する】ことを通して、複数の関係者や関係機関の支援をコーディネートする役割を担い、支援体制を整える活動にかかわっていることが示唆された。

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