本研究の目的は、高校生の抑うつとソーシャルスキルの行動スキルとの関連性について、相手の行動の意図を読み取る解読スキルや、対人場面において生じる感情をコントロールする感情統制スキルといった、ソーシャルスキルの認知過程スキルが調整効果を持つかどうかを検討することであった。高校1年生を対象に質問紙調査を行い、有効回答が得られた184名について階層的重回帰分析を行った結果、感情統制スキルが低ければ、主張性スキルが高いほど抑うつが高かった。また、解読スキルが低ければ、関係性を築くスキルが高いほど抑うつが低く、解読スキルが高ければ、関係性を維持するスキルが低いほど抑うつが高いことが示された。このことから、高校生の抑うつの低減のためには、主張性スキルとともに感情統制スキルを身につける必要があることや、解読スキルの高い生徒が持つ他者の反応を気にする傾向が、行動スキルの抑うつ低減効果を弱める可能性が示唆された。
本研究では、自閉症スペクトラム障害特性(以下、ASD)を背景とするひきこもり状態にある人の家族を対象とし、ASDに特化したCRAFTプログラムによる介入を実施した。本プログラムは、個別セッションと集団セッションの併用型とし、対象者は本人相談につながりにくい9家族12名の親であった。本介入の結果、ひきこもり行動チェックリストの得点が改善され、本人10名中6名が相談につながり、別の1名はアルバイトを開始した。また、家族の心理的ストレス反応(SRS-18)の低減も認められた。本介入では、ひきこもり状態にある本人がASD特性のなかでも受け身型で、なおかつ対人不安の強いタイプに効果的であった。一方で、参加した親のなかでパートナーにもASD特性が疑われる場合は、精神健康度(GHQ-28)が介入後に低減したが、フォローアップ時には再上昇が認められた。
本研究は、心理教育とセルフモニタリングを用いて皮膚むしり行動への介入を行い、約3カ月で奏効した症例研究である。皮膚むしり行動は、その症状が重篤になると精神疾患の皮膚むしり症と診断され、その決定的なエビデンスのある治療はいまだ確立していない。本報告では、皮膚むしりをやめたいと訴えるクライエントへ1回30分、計9回のセッションが実施された。心理教育では、習癖(くせ)のメカニズムと対策案、爪かみや皮膚むしり体験者の情報などのオリジナル資料を用いた。ホームワークでは、皮膚むしり行動に拮抗する適応的な代替行動の試行とセルフモニタリングが導入された。その結果、皮膚むしり行動を制御できる自分自身に気づき、複数の代替行動が増加、皮膚むしり行動も減少した。効果は半年後にも維持されていることが確認された。
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