認知行動療法研究
Online ISSN : 2433-9040
Print ISSN : 2433-9075
48 巻, 3 号
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原著
  • 淨沼 和浩, 伊藤 大輔
    2022 年 48 巻 3 号 p. 235-245
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/01/15
    [早期公開] 公開日: 2022/09/12
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、認知行動的要因とマインドフルネス特性が認知的反応性に及ぼす影響を明らかにすることと、Major Depression Episode(以下、MDE)未経験者においても、マインドフルネス特性の認知的反応性に対する影響が見られるかを検討することであった。18歳以上の312名を対象に、過去のMDE経験、自動思考、行動活性化、マインドフルネス特性、抑うつ、認知的反応性に関する測定尺度を実施した。階層的重回帰分析の結果、否定的な自動思考を修正することに加えて、自分の考えに対して判断的にならないようにすることや、現在の瞬間に注意を向けながら行動できるようになることで、認知的反応性が低減する可能性が示された。また、マインドフルネス特性を高めることは、MDE経験の有無にかかわらず認知的反応性を有意に低減させるため、初発のうつ病治療においても再発予防効果が期待できると考えられた。

展望
  • 宮崎 友里, 重松 潤, 大井 瞳, 笹森 千佳歩, 山田 美紗子, 高階 光梨, 国里 愛彦, 井上 真里, 竹林 由武, 宋 龍平, 中 ...
    2022 年 48 巻 3 号 p. 247-259
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/01/15
    [早期公開] 公開日: 2022/10/05
    ジャーナル フリー

    インフォームド・コンセント(Informed Consent: IC)は、心理療法を提供する際にセラピストが道徳的な義務として行うことが必須とされている。一方で、心理療法のICでは多くの場合、心理療法を実施する期間や費用の設定に関する形式的なIC取得が多い。また、心理療法におけるICは、セラピストの治療関係の重要性をよりよく理解するのに役立つといった側面や、心理的な支援のプロセスにおいて大きなバイアスとなる可能性があるなど、心理療法に与える影響について指摘されているが、わが国でそれらを概観した研究はない。そこで本稿では、心理療法におけるICの現状や研究動向について述べたのち、IC取得が困難な場合の対応や国内施設における心理療法のIC取得に関する現状を報告し、心理療法のICの理解を深めることを目的とする。

実践研究
  • 内田 空, 池田 浩之
    2022 年 48 巻 3 号 p. 261-271
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/01/15
    [早期公開] 公開日: 2022/09/12
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、就労後を見据え、就労前の統合失調症患者にWebシステムを用いたセルフモニタリングを導入し、その効果を検討することであった。就労移行支援事業を行う法人に通所する統合失調症患者2人を対象に導入とフィードバック(週2日のコメント+3回の振り返り)を行った。効果測定は導入前1回、導入後2回の計3回行った。事例1では自身の睡眠状態を把握し、振り返りのなかでその傾向に気づくことで、自ら改善するための方法を考えることができるようになった。事例2では幻聴や思考停止について、そのタイミングと傾向をつかむことで、自ら考えた予防策を実施し、継続することができた。最後に就労支援領域における支援方法と今後の課題について考察した。

  • 村山 桂太郎
    2022 年 48 巻 3 号 p. 273-284
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/01/15
    [早期公開] 公開日: 2022/07/12
    ジャーナル フリー

    注射恐怖症の患者に対してApplied Tension法(ApT)を施行した際、患者の生理学的指標を継時的に測定しそれを共有した事が、治療の進展に寄与したと考えられたため報告する。患者は20歳代の女性で、採血や点滴時に気分不良が生じるため、病院受診を長期間回避していた。治療は曝露法と筋緊張法を組み合わせたApTを用いた。治療者は、気分不良の原因である循環動態の変化を脈拍数と血圧値という客観的なデータとして測定した。測定は曝露前、曝露時、筋緊張法施行時と継時的に行い、ApT後にその推移を患者と共有した。12セッションを経て採血時の気分不良は生じなくなり、採血に対する患者の不安は消退した。10週間後のフォローアップセッションでも気分不良の再燃はなかった。ApTにおいて脈拍数と血圧値の推移を患者と共有することで患者自身が病態と治療の仕組みについて理解が進み、治療の進展に寄与できたと考えられた。

  • 杉山 智風, 髙田 久美子, 伊藤 大輔, 大谷 哲弘, 高橋 史, 石川 利江, 小関 俊祐
    2022 年 48 巻 3 号 p. 285-295
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/01/15
    [早期公開] 公開日: 2022/09/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、高校生を対象に問題解決訓練を実施し、抑うつ、活性化、回避に及ぼす介入効果を明らかにすることであった。あわせて、問題解決訓練の実施前後にかけての活性化/回避の変化によって、抑うつに対する介入効果に差異がみられるか、検討を行った。本研究では、高校生1年生253名を対象として、1回50分の問題解決訓練を実施した。その結果、対象者全体において抑うつ得点、活性化得点、回避得点の有意な変化は示されなかったが、活性化/回避の機能的変容が生じた可能性のある群において、抑うつ得点の有意な低下が示された。このことから、抑うつ低減において、問題解決訓練による問題解決スキルの習得だけではなく、対処行動の促進と強化子の随伴の重要性が示唆された。

  • 菊田 和代, 石川 信一
    2022 年 48 巻 3 号 p. 297-307
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/01/15
    [早期公開] 公開日: 2022/09/08
    ジャーナル フリー

    社交不安症に対する認知行動療法(CBT)の効果は実証されているが、職域において早期に社交不安症状とプレゼンティズムに介入した研究は乏しい。本研究では未診断の社交不安傾向をもつ従業員13名に対し、対象者の業種と職業に最適化したCBTのプログラムを用いて介入を行った。CBTのプログラムは、隔週で7回の基本セッションを実施したのち、3か月間の実践セッションを実施した。実施前と基本セッション後、実践セッション後に、社交不安症状とプレゼンティズム、障害度が評価され、プログラムの前後で社交不安症状とプレゼンティズムに改善が認められた。この結果から、職域においてCBTに基づいたメンタルヘルスの二次予防的介入が有効であり、特に、業務で生じている問題に直接的に介入することにより、プレゼンティズムを改善できることが示唆された。

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