認知行動療法研究
Online ISSN : 2433-9040
Print ISSN : 2433-9075
49 巻, 2 号
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資料
  • 清水 未来, 吉良 悠吾
    2023 年 49 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/09/16
    [早期公開] 公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、自己開示する内容の深さを踏まえて、大学生の友人に対する自己開示と聞き手の受容的反応、抑うつの関連を明らかにすることであった。インターネット調査会社を利用し、大学生を対象に1カ月間にわたる2時点の縦断的な調査を行った。2時点ともに回答した350名のデータを用いて相関分析と階層的重回帰分析を行った結果、友人から受容的な反応を得られやすい人は自己の否定的な性格や能力に関する話といった深いレベルの自己開示を行いやすく、深いレベルの自己開示を行ったうえで聞き手から受容的反応を得られることで、抑うつの低下が生じることが示された。一方で、深いレベルの自己開示を行ったが聞き手から受容的な反応が得られない場合、抑うつが悪化してしまう危険性も示唆された。そのため、深いレベルの自己開示を促すとともに、相手から受容的な反応が得られるように、適切な自己開示を行うスキルを身につける必要性が明らかとなった。

展望
  • 嶋 大樹, 井上 和哉, 本田 暉, 高橋 まどか
    2023 年 49 巻 2 号 p. 63-74
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/09/16
    [早期公開] 公開日: 2023/04/18
    ジャーナル フリー

    本研究では、外来臨床での標的行動選定プロセスの整理および標的行動の位置づけにおける特徴の記述を目的とし、うつ病もしくはうつ状態にある者への行動的支援に関する文献をレビューした。国内外の複数のデータベースにて関連論文を検索し、11件の研究を採択した。そのうち10件で複数の標的行動に関する記述が認められ、7件で標的行動の継続測定に関する記述が認められた。各文献における選定プロセスは、その要素から1)プログラムに基づくもの、2)希望に基づくもの、3)価値に基づくもの、4)日常生活アセスメントに基づくものとして大別可能であった。また、標的行動の主たる位置づけは、1)当該標的行動の増加自体が目的となっているもの、2)なんらかの目的達成の手段であるものに分類可能であった。しかし、標的行動選定に至る臨床判断プロセスについての記述が全般に少ないため、事例報告における当該情報の充実化が提案された。

実践研究
  • 藤田 知也
    2023 年 49 巻 2 号 p. 75-85
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/09/16
    [早期公開] 公開日: 2023/04/14
    ジャーナル フリー

    反抗挑発症(oppositional defiant disorder: ODD)は小児期において高い有病率が知られている。一方、ODDに関する実証的な研究は少なく、特に多職種連携による介入や行動的介入の症例研究は見当たらない。本症例は、母親に対して反抗的行動を示したODDの男子児童に対して、多職種連携による行動的介入を実施し、単一事例実験デザインによりその効果を検証した。介入は家庭および学校へ訪問を行い、先行子操作、トークンエコノミー、余暇行動の形成が導入された。介入の結果、加害行動と破壊行動は軽減し、余暇行動の獲得が確認された。その効果は1年後および2年後のフォローアップ期においても維持していた。このことから、ODDに対して多職種連携による行動的介入の有効性が示唆された。

  • 小野 昌彦, 江角 周子
    2023 年 49 巻 2 号 p. 87-97
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/09/16
    [早期公開] 公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究では、断続的不登校状態であった中学2年生の生徒Aに対する登校行動の形成と維持のため、主張反応法の客観的適用条件を追加した包括的支援アプローチを適用し有効性を検討した。対象の不登校は、発現前条件が発表スキル、対人スキルの不足による特定授業への負の予測から生じる身体症状、発現時条件が身体症状の訴えに対し保護者が休ませるのみの対応をしたこと、維持条件が家庭滞在によるストレス低減と考えられた。そこで、不登校発現前条件を軽減、不登校発現時条件・維持条件を消去し登校行動を形成することを目的として、主張反応法を適用条件確立後に適用した。主張反応法適用準備のためセッションを7回(約3カ月)行った後、主張スキル遂行のための遠隔支援を27回、母子面接1回を実施した。主張スキル遂行後、中学卒業までの約1年間および高校3年間無欠席であった。本研究で提案した条件が有効であることが示された。

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