行動医学研究
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13 巻, 1 号
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総説
  • 濱口 豊太, 金澤 素, 福土 審
    2007 年 13 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)は脳腸相関の異常が病態の中心をなす疾患群である。IBSの病態は、消化管運動異常、消化管知覚過敏、心理的異常で特徴づけられる。消化管知覚過敏の発生機序の解明に、脳腸ペプチド・免疫・粘膜微小炎症による消化管機能変化・遺伝子・学習・神経可塑性・脳内神経伝達物質およびヒトの心理社会的行動などから進歩が見られる。消化管への炎症や疼痛を伴う刺激が先行刺激となって内臓知覚過敏を発生させる機序の一つとしてあげられる一方で、腹痛や腹部不快感の二次的な増悪を心理ストレスが引き起こし、そのときの消化器症状が関連づけられている可能性がある。本稿は、消化管知覚過敏が発生するメカニズムとして考えられている消化管粘膜微小炎症後の消化管知覚過敏、繰り返される大腸伸展刺激後の内臓知覚と情動変化の視点から、ヒトの心理的背景と遺伝要因について概説する。
原著
  • 荒井 弘和, 堤 俊彦
    2007 年 13 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、一過性のウォーキング実施時間が感情の変化に与える影響、およびウォーキングに伴う感情を規定する認知的要因について検討することであった。本研究の対象者は、大学1年生82名であった。対象者は、15分間ウォーキング群または30分間ウォーキング群に割り付けられた。ウォーキング前後の感情の測定には、運動場面専用の感情尺度であるWaseda Affect Scale of Exercise and Durable Activity(WASEDA)およびFeeling Scale(FS)を用いた。さらに、ウォーキングに伴う感情を規定する「自分自身の身体に注目すること」および「汗」という2つの連合的要因と「いっしょに運動する人」および「まわりの景色」という2つの分離的要因からなる認知的要因が準備された。本研究は、2(群)×2(時間)の対象者間・内混合要因計画である。対象者はウォーキング前後にWASEDAとFSの評価を行った。対象者はさらに、ウォーキング後に、ウォーキング中の主観的運動強度(RPE)と、ウォーキングに伴う感情を規定する認知的要因の評価を行った。ウォーキングによる感情の変化とウォーキングに伴う感情を規定する認知的要因の評価は、ウォーキングの実施時間(15分間または30分間)によって異ならなかった。また、両方の群において、「いっしょに運動する人」および「まわりの景色」という分離的要因が、ウォーキング後の感情を説明していることが示された。そのため、ウォーキング時に、連合的要因に注意を向ける方略(連合的方略)よりも、分離的要因に注意を向ける方略(分離的方略)を用いることによって、ウォーキング後の感情が好ましくなる可能性がある。。
  • 市川 優一郎, 齋藤 慶典, 依田 麻子
    2007 年 13 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 2007年
    公開日: 2014/07/03
    ジャーナル フリー
    本研究は、対人不安を構成する状態的要因である自己呈示効力感が、心臓血管活動および心理的反応に与える影響を検討した。20人の大学生は、2人の評価者の前で2つのスピーチ課題を行った。1回目のスピーチ課題終了後、スピーチ能力に関して虚偽のフィードバック(高得点もしくは低得点)を受けた。安静および課題の各条件において、血圧、拍動間隔、心拍出量、総末梢抵抗を測定した。また、AACLとPANASにより実験参加者の主観的感情を測定し、STAI-Sにより状態不安を測定した。それらの心理指標は、安静後と各条件の間に回答を求めた。その結果、低得点フィードバック群においてスピーチ課題中の収縮期・拡張期・平均血圧が、高得点フィードバック群よりも増加した。また、低得点フィードバック群における心拍出量およびネガティブ感情が、高得点フィードバック群よりも顕著に上昇した。以上の結果から、対人不安を構成する重要な要因である自己呈示効力感の低下が、心臓血管活動の亢進を引き起こす可能性が示唆された。
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