行動医学研究
Online ISSN : 2188-0085
Print ISSN : 1341-6790
ISSN-L : 1341-6790
20 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総説
  • ―精神科医の立場から―
    清水 研
    2014 年20 巻1 号 p. 2-6
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/17
    ジャーナル フリー HTML
    がん罹患に伴う精神的苦痛は大きく、患者がうつ病などの病的な状況に陥ることも少なくない。心のケアを含めた緩和ケアが推進される中、精神腫瘍医(精神腫瘍学の専門性を持ってがん患者の精神・心理面の症状緩和を担当する医師)への要請は大きい。精神腫瘍医は精神保健における専門性を持ちつつ、身体状態を十分理解したうえで他職種と十分に連携することで、全人的な医療の提供を可能にし、その仕事の内容はまさに心身医学が目指す方向性の延長線に存在する。
  • 平井 啓
    2014 年20 巻1 号 p. 7-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/17
    ジャーナル フリー HTML
    がん患者は、身体症状のみならず、再発・転移に対する心配や漠然とした不安感、さらには人間関係のストレスなどの多様な問題を抱えている。これらのがん患者の抱える多様な問題に対して心理療法・精神療法による対応が行われている。最近では特に、行動医学的方法の一つである認知行動療法が注目されている。そこで筆者らは、平成19年度から厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「がん患者に対するリエゾン的介入や認知行動療法的アプローチ等の精神医学的な介入の有効性に関する研究」(明智班)において、認知行動療法の一つに分類される問題解決療法を日本のがん患者向けにアレンジしたプログラム開発を行った。問題解決療法の有効性は、海外では多数報告され、問題解決療法による介入によって、患者の問題解決のための対処能力が向上し、その結果患者が日常の様々な問題に対して効率的に対処できるようになり、精神状態やQOLを自らの力で維持できるようになると言われている。そのため、がんと診断され治療する過程で様々な心理社会的問題が日常的に生じるがん患者にとって、問題解決療法は最も適した心理的介入の一つと考えられる。そこで研究班では、術後乳癌患者36名を対象として、つらさと支障の寒暖計、抑うつと不安の尺度であるHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)日本語版を用いたスクリーニングを行い、心理的苦痛が大きいとされた患者に対して、5週間の問題解決療法プログラムによる介入を実施した。プログラムを完遂し、フォローアップ可能であった19名について解析を行った結果、介入前と3ヶ月後のフォローアップ時のHADS得点に統計的有意差がみられ、介入前後で得点の平均値は6.05 (SD=1.94) 点減少していた。また介入の効果量は0.82と高いことが示されたことから、この介入プログラムが、抑うつ、不安などのストレスを低減しQOL向上に寄与したと考えられる。このように問題解決療法は日本のがん医療において有効性を持った介入方法の一つであると考えられ、がん医療における問題解決療法の必要性と普及の方法について検討する必要がある。
  • 小田原 幸, 端詰 勝敬, 坪井 康次
    2014 年20 巻1 号 p. 12-16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/17
    ジャーナル フリー HTML
    2007年4月にがん対策基本法が施行され、治療の初期段階からの緩和ケアの実施が推奨されている。加えて、緩和ケアに関する大学の卒前教育の充実に努めるとともに、医師を対象とした普及啓発を行い、 緩和ケアの研修を推進すべく、教育・研修体制の拡充に努めるべきとされている。これを受け、医学部の卒前教育の動きは徐々にではあるが拡大している。東邦大学医学部においても、チーム医療、緩和ケアチーム、緩和ケア、サイコオンコロジーの講義が行われている。しかし、緩和ケアに関する講義内容は多様で、それぞれの教員の方針に任されている現状にある。加えて、講義形式の検討や教員同士の連携など、システマティックな取り組みが必要と考えられる。今回、筆者は4年生を対象とした緩和ケアチームの講義に際して学生にアンケートを行った。その結果、緩和ケアに興味がある学生は全体の60%を超えるものの、実態が良く分からないといった回答も多く見られた。今後はこれらの意見も参考にしながら授業内容やカリキュラムを整えていく必要がある。
資料
  • 渡辺 和広, 大塚 泰正
    2014 年20 巻1 号 p. 17-23
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/17
    ジャーナル フリー HTML
    本研究では、労働者を対象に、これまで身体活動の規定要因とされてきた、運動実施に対する自己効力感、結果予期、ソーシャルサポート、環境的要因、および、労働者に特有の要因である仕事のストレッサー、ストレス反応、職場のサポートが、余暇時の身体活動の規定要因となり得るかを検討することを目的とした。労働者302名(男性146名、女性156名、平均年齢42.7歳、SD = 11.4)を対象に、質問紙による横断調査を実施した。余暇時の身体活動量の指標は、国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire:IPAQ)の日本語版尺度の短縮版を用いた。共分散構造分析による分析の結果、自己効力感、運動に対する恩恵(Pros)と負担(Cons)、ソーシャルサポート、環境的要因、仕事のストレッサー、心理的ストレス反応を用いたモデルが構築された。自己効力感、およびProsとConsは、環境的要因、ソーシャルサポート、仕事のストレッサーといった要因と余暇時の身体活動量との関連を媒介した。なかでも自己効力感と余暇時の身体活動量との間に比較的強い関連が認められた。また、環境的要因は余暇時の身体活動量との直接的な関連も認められた。仕事のストレッサーから喚起される心理的ストレス反応は、Prosと負の関連、Consと正の関連が認められた。しかし、仕事のストレッサーは、自己効力感やProsとの間に正の関連が認められた。以上のことから、環境的要因やソーシャルサポートといった要因が、Prosや自己効力感を高め、Consを低めることで、余暇時の身体活動を促進する可能性が示唆された。また、仕事のストレッサーは、ストレス反応を高めることで余暇時の身体活動を低める可能性がある一方で、仕事のストレッサーに対するコーピングとして、余暇時の身体活動を高める効果も持つ可能性があることが示唆された。
feedback
Top